Takepuのブログ

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中国軍の考え方。劉源論文

2013-02-13 02:29:56 | 時事
中国船による日本の自衛隊艦船への火器管制用レーダー照射が、習近平総書記(中央軍事委員会主席)を中核とする中国指導部の総意によるものなのか、あくまでも軍の一部勢力の単独行動なのか、現在では後者ではないか、との考え方が主流になりつつある。事案発生後の2月4日付の人民日報系の商業紙「環球時報」は、中国人民解放軍総後勤部の政治委員、劉源・上将(大将)の報告「さらに長い戦略機遇期(戦略的チャンス)を維持するためには手を出すときには出すべきだ」を掲載した。この時期の中国軍の考え方が反映されているような、ある意味挑戦的な内容だ。



背景として、劉源とは、1950-60年代初頭、毛沢東が人民公社と大躍進政策で失敗した後、「経済調整期」として国民経済を回復させ、毛沢東から国家主席職を手放させて上海での半隠遁生活に追いやり、後の文化大革命で毛沢東や江青四人組の権力闘争の最大標的となった劉少奇・元国家主席の子という、いわゆる「太子党」。習近平総書記とも盟友関係にある。反米感情が極めて強いといわれている。

戦略機遇期(戦略的チャンス期)とは、トウ小平が改革開放の初期に提唱した経済優先の平和路線で、戦争をする可能性が低い国際情勢を見極めて、その間は経済発展に力を入れようというものだ。

劉源論文の内容をかいつまんで紹介すると:
 今回の第18期党大会で再度強調されたように、国際国内情勢を総合的に判断すると、戦略的チャンス期には条件の変化がある。中国の経済建設は何度か途切れさせられてきた。最初は清末の洋務運動が日清戦争によって打ち切られた。二番目は中華民国の時代で、資本主義の発展段階にあったが、日本による中国侵略戦争で途切れさせられた。現在我々の経済建設は鍵を握る時期にあり、偶発的事件で再び途切れさせられるようなことがないようにしなければならない。米国と日本は我々の発展を恐れ、我々に追い抜かれないようにいろいろと策を講じている。当然、長期にわたり戦略的チャンス期を平和的に発展させるために、「手を出せるときに手を出す」ことは排除しない。
トウ小平が説いた「韜光養悔」(冷静に観察し、足元を固め、落ちついて対処し、能力を隠し、ボロを出さず、決して先頭に立ってはならない)や、臥薪嘗胆の越王勾践が恥に耐え続けたのはなぜか、その後の発展で強大になった後にそれらを踏みつけるためだ。だからこのチャンス期とは耐え忍ぶことではない。

と、あとはトウ小平やら胡錦濤やら、いろんな人の言葉を自分にいいように解釈して、つまりは、過去に2度、日本が中国の発展を妨害してきたように、今また日本は中国の発展を妨害している。そうならないように、今は戦う時だ、とたきつけているように読める。

太子党つながりで薄支持を続けていたとして中央軍事委副主席や党政治局委員に入れなかったといわれる劉源。総書記就任直後に深セン訪問などで、トウ小平の南巡講和のあとをたどり、改革開放とトウ小平路線の継承を内外に示した習近平に対して、軍事的強硬路線をとるよう促しているのではないか。軍内にはその雰囲気、気分を察知する状況があって、習近平は尖閣諸島問題でも「棚上げ」の方向を示しつつあったのを押し戻すように、軍のどこかのレベルの判断で(もちろん現場の兵隊の個人的な判断ではない)、習の意に反したレーダー照射を独断で行ったのではないか。


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