Takepuのブログ

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日本決勝T進出

2010-06-25 15:43:01 | Weblog
引き分けでなく3対1とデンマークに勝って、堂々と決勝トーナメント進出。カメルーン戦、オランダ戦を通じて、岡田監督は選手のコンディションと戦術を見極めてきたようだ。スタート時は「4141」でなく阿部、遠藤の2ボランチ、長谷部を少し上げ気味にした「4231」。引き分け狙いではなく、攻撃し、得点を挙げ勝って決勝トーナメントに行くとの決意と意図を選手たちに示した布陣だろう。ただ、デンマークの攻撃をつかみきれず、前半10分過ぎまでに、長友、遠藤に直接指示して阿部をアンカーとする「4141」に戻す。ただ、攻める意識は変わらず、長谷部は頻繁に最前列まで攻撃に出ている。
カメルーン戦では恐怖心もあったのか、守備を重視しすぎるがあまり、前線、中盤から相手を追いかけてのチェックはあまり見られず、自陣に深くひいてカメルーンの攻撃を待ち構えるやり方。長谷部、遠藤はまったく攻撃に参加できなかった。外にボールを蹴り出すだけ。この教訓からオランダ戦では前に出るようになったが、逆にオランダの猛攻時には守備に戻った長谷部、阿部が最終ラインに埋没して、被弾時にはシュートを決めたスナイダーへのマークが甘くなっていた。
デンマーク戦では、相手の攻撃が怖くてもDFラインを下げすぎることはせず、中盤との間を詰めて相手にスペースを与えないように注意深くラインコントロールしていた。

メンバーチェンジも的確だった。松井を岡崎に、大久保を今野に、遠藤を稲本に替えた。もし岡崎でなく、長身でヘディングに強い矢野だったら・・・。チームは「守りきればいい」と解釈して守りを重視して、デンマークの息の根を止める3点目は入らなかっただろう。全体が自陣に引きすぎて、デンマークの総攻撃を受ける形になり、試合はどうなっていたかわからない。岡崎には足の止まった松井に代わり、前線から相手の出球を抑えるディフェンスをしつこくして、チャンスがあれば点を取れ、と指示されていたはずだ。

2006年ドイツ大会第1戦対オーストラリア戦を思い起こす。1点リードしてジーコ監督は、FW柳沢に代わりMF小野を投入した。ジーコの意図を測りかね、FW陣はボールを持てる小野を基点としてもう1点獲ろうと考えた。宮本以下消極的なDF陣は、小野がひいて1点を守りきろうと思った。その結果、前線とDFラインの間にぽっかりとスペースができ、屈辱的な逆転負けを喫した。宮本が嫌いなわけだからではないが、ジーコ監督の意図は「もう1点取れ」だろう。スピードがなくオーストラリアの攻撃に手を焼き、引いて守っていた宮本は自らの判断ミスと体格的欠点を隠すためにああいっている。ジーコの意図を選手に徹底させなかった監督の手腕のなさ、選手の意思統一の欠如。ドイツ大会を教訓に、岡田監督はきわめて明快な選手起用で答えた。

大久保が疲れたためフレッシュな選手で守備を固めようとした。今野は本来ボランチの選手。試合を終わらせるための交代で、稲本も守備を重視して長谷部の負担を減らそうとの交代だ。オランダ戦で長谷部を交代させてチームが機能しなくなったことを教訓に、長谷部はフル出場、彼をフォローする形で今野や稲本を入れた。(写真は大久保と岡崎。いずれも今年2月2日の大分でのベネスエラ戦。間違っても南アフリカには行ってませんから)

試合が終わった後の岡田監督の会見が興味深かった。
デンマークのパワープレーに対して、複数の打つ手(選手交代)はあったがしなかったのはなぜか?との質問に、「いいボールを蹴らさない、しっかり競る、こぼれ球を拾うという原則を堅持していた。バランスを崩したくなかった」。想像はしていたが、矢野を入れなかった理由がわかった。
大会前と選手起用や戦術が変わった、との質問に対しては「われわれがやろうとしているサッカーの中心となる選手の不調がJリーグを通しても、また代表で集まっても続いた。戻るんじゃないかという期待を何人かの選手に対してしていたが、踏ん切りをつけないといけないというところにきて、起用法、システムを変えた」と中村俊輔について語った。そしてこれは遠藤や大久保も指していると思う。ただ、彼らは徐々に調子が上がってきたと認識して使っているという。
中村については「おそらくそれはW杯という重圧。日ごろ出ている選手の方がそういう傾向が強かったので、いろいろ話をしてみてもW杯の重圧みたいなものを感じたので、思い切ってここは決断しないといけないということで、システム、メンバーを変更した」。ドイツ大会といい、今回といい、中村俊輔は本当にビビリというか、ワールドクラスの選手ではない、本番で活躍できない、という評価が露呈してしまった。そこを見抜いて、中村をはずしたチームを急造で作った岡田監督の決断が、決勝トーナメント進出につながったのだと思う。
アジア予選を突破するための攻撃的な選手も、本戦では通用しない、と組織的な守備を優先したチーム作りを徹底、中村憲剛や内田ではなく、阿部や駒野を重用した。
ただ、フランス大会では三浦カズを見切って最後に外したことで、対マスコミ、対サポーターでしこりを残した。今回はここも学習していて、南アフリカに連れていっただけでなく、負けてもいいオランダ戦で交代出場させて、最終的に「使えない」と判断、引導を渡している。会見でも「もしW杯の重圧とか不調がなければ、前のやり方でもいけたかもしれない」と中村を擁護している。

で、中村がいなくなったあと、右サイドに本田を置くのではなく、1トップに当てたのは、ギャンブルといえどもすごい。オランダ戦はまったくダメだったが、デンマーク戦では本来の1.5列目の選手の本田が、トップでよくポイントを作ってボールをキープ、攻撃の起点になっていた。本来MFの本田をFWにしたことで、タレントの宝庫で過剰気味のMFのメンバーから、長谷部、松井、遠藤、阿部、稲本を効果的、機能的に使うことができた。海外経験の乏しい岡崎では、あれだけボールを収めることはできなかっただろう。

闘莉王もすごい。デンマークがパワープレーになっても、ハイボールをことごとく跳ね返していた。ワールドクラスのセンターバックとしての評価を得られるのではないだろうか。W杯後、長友、阿部などともに海外移籍を果たせるかもしれない。

ただ、問題がないわけではない。岡田監督も会見で「まだまだいろんな意味で世界との差はあると思う。互角に攻め合ったら、うちの選手はそこそこやるが、同じ数のチャンスを作ったら決定力の差でやられる可能性が大きい」。後半、遠藤がゴール前正面でボールを得たとき、シュートチャンスだったのに本田に縦パスを入れてチャンスをつぶした。闘莉王も決定的な場面でシュートを外した。オランダ戦の後、オシム監督の発言として報じられていたが、日本には「殺し屋」の感覚が足りない。
中3日で29日にパラグアイ戦。どう調整、修正していけるのだろうか。FK2本だけで評価されるのではなく、日本サッカーの組織と機能を高めて、世界に新しいスタイルを見せつけてほしい。