沢登りカヌーイスト

カヌー+沢登り=原始の渓へのフリー切符

丹沢1

2016年08月01日 | ミックス・バックカントリー・ツアー
2016年7月2日

大山詣り

江戸時代の完全自力踏破登山                                                                      

 江戸時代、信仰登山しかないという限られた登山環境で、今の高尾山より人気がある山があった。
それは、落語の演目になるほど江戸庶民に親しまれていた「大山詣り」だ。東京の南西約60kmに位置する丹沢の大山は、最盛期には江戸の5人に一人が年間に行ったと伝えられている。人気の理由は、通行手形が不要な手軽さと、大山講という集団旅行の流行がある。このころの登山の凄いところは、家を出てから帰ってくるまで、その間の旅行と登山とお参り、その全てを歩きによる自力踏破で完遂していたことだ。私も旅人気質なためHome to Summitと称し、30年以上前に自転車とそれを担ぐ登山で、家から山頂の往復を自力踏破していた。そんな自転車登山も装備が進化し、現在ではザックに入る自転車がある。今回はそれを使い、江戸時代の歩き旅の部分を自転車旅におきかえ、登山では自転車をザックに入れ担ぎ、一筆書きの踏破ラインで当時の江戸っ子に人気だった大山詣りの周遊コース、大山、江の島、鎌倉を巡る旅行登山に出かける事にした。

 「ザックin自転車登山」に使用する自転車のタイヤサイズは14インチ、これ以上大きいとザックに入れるのが難しく、これ以上小さいと長距離の場合は走破性が悪くなり危険だ。小径ホイール車だが車重8.3kgと軽く、9段変速あるので十分実用でも使える。それを入れるザックは、背面がジッパーでU字型に開くタイプが良く、今回は65Lサイズを使用した。

 早朝、まだ涼しいうちに日吉の自宅を自転車で発つ。当時、発達していた大山道は「全ての道はローマに通ず」が如く、大山を中心にして放射線状に数多く延びており、その痕跡は今でもそこかしこに残っている。その中でも最大のものが現在の国道246号線だが、自転車でその車道を走ると忙しなく大型車に追い抜かれ恐ろしい。明治時代に入り鉄道と車道が整備され、150年続いた大山詣りが急速に廃れたのもうなずける。道路では最強の自力踏破アイテムの自転車も、幹線道路では車道でも歩道でも邪魔者扱いだ。



国道から山へと向かう県道に入ると車は激減し、やっと落ち着いて里山を愛でながら走れた。最後は急登になり、3時間程で表参道登山口に到着。



ペダルを取り外し折りたたむだけなので10分程でザックに収まる。ザックには自転車と登山装備が入って11kg程、苦にはならない重さだが、暑さで大汗をかきながら大山頂上にある第一目的地の大山阿夫利神社の奥ノ院に到着。



ここは、江戸時代には鳶や大工など、高所作業者に特に人気があったそうなので、平成の高所作業者の私もそれにならい参拝。頂上で昼食後、ヤビツ峠に下山して自転車を組み立てる。



下り一辺倒の峠道での自転車は、山スキーのように担いできて良かったと思える爽快感だ。山を下りると金目川沿いに海を目指し、そこから江の島へ。山頂の神社で参拝後にSummit to Seaとは、昔の人は今より粋な登山を普通にしていたようだ。



第二目的地の江の島は女神で、男神である大山の片参りを忌んだ事から周遊に組み込まれていた。今では多くの外国人観光客でごった返し、参道は美味しそうな匂いで溢れている。海岸線の渋滞の脇を抜け、第三目的地の鎌倉で鶴岡八幡宮を参拝し、帰路を急ぎ日が落ちる少し前に帰宅した。

 なんとも駆け足な江戸時代の旅行登山擬似体験ツアーだったが、当時はこの150km越えるコースに6日間をかけ、その全てを歩いて成し遂げるのが一大娯楽だった事を考えると、江戸っ子は皆、強靭な体力の持ち主であったと感服するばかりだ。現代登山は山岳部分だけを切り抜き、その中で活動をしているが、江戸時代は自宅から山頂までの往復を全て歩いているので、完全自力踏破による登山としては黄金時代であったとも言える。
 
 そおいえば、大汗をかき大山を登っていたとき、見覚えのある顔が歩いてきた。「幹也さん!」昔の山岳会蒼氷の先輩、田中幹也さんに偶然出会う。沢登りをした後の下山中との事だが、ペラペラのザックにはヘルメットやロープどころか沢靴も入っていない。幹也さんにしてみれば旅も沢登りも日常生活の延長線上なのだろう。服装など、どう見ても沢登りどころか普通のハイカーにも見えない軽快さで、相変わらずいい加減に見える自然体だ。



「なんすか、その恰好は」と言ったものの、お互い単独で自分も同じような感じだったので二人して笑い、大汗をかいた身体に元気をもらった。
旅での一番の土産は思い出だが、落語の「大山詣り」のような人間臭いエピソードが一番面白いのは今も昔も変わらない。
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