『蜻蛉洲大和の国のサンライズタイム』ー外国人参政権反対、移民政策反対、背乗り工作反対!盗聴・盗撮は日本では犯罪です!ー

キラキラネームは日本の漢字文化を破壊するための、カルトの工作活動です!公務員の国籍条項と外国人土地法の復活求む!

漢字の話(キラキラネームの秘密、十三)

2017年06月21日 16時47分47秒 | 日記
二、世界に羽ばたけないキラキラネーム

さて、これまで過去の書籍について見てきましたが、最新版はどうなっているのでしょう。

以下に挙げるのは、2016年版「ベネッセ・ムック たまひよブックス たまひよ新百科シリーズ たまごクラブ特別編集」たまひよしあわせ名前研究所 顧問 栗原里央子[監修]『最新「最高の名前」が見つかる!赤ちゃんの名づけ新百科』に掲載されている名前です。

これは誰のために、或いは、何の為に書かれたのかよく分からない本です。日本人の為に書かれたのかどうかも怪しいものです。何故なら、例文の中に、歴代の総理大臣の名前も、偉人・立志伝中の人物の名も殆どありません。皇后陛下を始めとする皇室の女性の方々のお名前もありません。

そのわりに、「あいと」「おうが」「はるく」「りゅうく」「わく」「えな」「ここな」「さゆき」「じゅな」「にこ」「ひおり」「みおん」「みゆう」「ゆあ」「ゆうあ」「ゆわ」「りおん」「りのん」等々、何の事なのかわからない名前の見出しが立てられています。

例として挙げられている名前も、キラキラネームによくあるインチキ読みの他に、縁起のよくない・恥ずかしい・日本語の破壊を目論んでいるのではないか、と思われる漢字が含まれています。漢字の知識もさることながら、言語感覚がおかしい上に、日本についての知識も乏しいのではないかと疑いたくなります。



例えば、インチキ読みの名前では、

男の子なら、

一颯(いぶき)・翔生(かける)・匠音(たくと)・遼馬(はるま)・斗蒼(とあ)・駿仁(はやと)・南飛(みなと)・大翔(やまと)・結叶(ゆいと)・悠利(ゆうと)・悠詩(ゆうた)等々。

女の子なら、

愛心(あみ)・有桜(ありさ)・杏音(あん)・栞愛(かんな)・虹羽(こはね)・紡希(つむぎ)・爽(さわ)・真秀(まほ)・心桜(みお)・心穏(みおん)・光紗(みさ)等々。

読み仮名がなければ、全く違う読み方をすると思います。そもそも、真秀(まほ)って何でしょう?「秀」の字に「ほ」などという音も訓もありません。どうしてこの読みがでてきたのか想像もつきません。途方もないインチキです。爽(さわ)に至っては、ふざけているとしか思われません。例えば、「泳ぐ」「早い」の活用語尾を除いて語幹だけ取って、「およ」「はや」などと読んで、意味が通じるとでも思っているのでしょうか?


漢字の読みだけが不思議なのではありません。到底、名前には使われない、不可解な、或いは、卑猥な漢字も含まれています。以下に挙げるのは、同書で使われている名前と読みの例です。


この書の「読みから選ぶ男の子の名前リスト」には、例えば、

逸樹(いつき)・逸冴(いっさ)・逸平(いっぺい)等の「逸」。
「逸」は、漢音イツ・呉音イチ。この字は、辶に兎で、兎が逃げる、という意味です。そこから、はしる、逃げる、失う、なくす、隠れる等々の意味になります。熟語としては、「隠逸(世間からのがれる)」「秀逸(すぐれる、ぬきんでる)」「逸材(すぐれた才能)」「放逸(きまま)」「淫逸(みだら)」「逸声(みだらな音楽)」等々、好い意味も悪い意味もあります。「逸」は名前に使われた事があるらしく、名乗り訓には、「トシ・ヤス・ハヤ」があります。

零(れい)・零斗(れいと)・零央(れお)等の「零」。
「零」は、漢音レイ。この字はもともと、しずかに降る雨、の意です。そこから、おちる、ふる、おちぶれる、草が枯れおちる、あまり、わずか、こまかい等の意味になります。日本では、れい・ゼロの意味でよく使われます。熟語としては「零雨(れいう、こさめ)」「零細(れいさい、こまかい・わずか)」「零丁(れいてい、志を失い、落ちぶれて、孤独)」「零落(れいらく、草木の葉が枯れ落ちること、草の枯れるのを零といい、木の枯れるのを落という。また、落ちぶれること)」「零涙(れいるい、涙を落とす)」等。この字は好い字ではありません。普通は、人名には使われない字です。

伶斗(れいと)・伶恩(れおん)等の「伶」。
「伶」は、漢音レイ・呉音リョウ。形声文字で、人偏に、令の音符。この字は「弄(ろう、もてあそぶ)」「使伶(しれい、使役される人)」と同じ意味です。そこで、仕える人、小臣、こもの、こづかい、ひとりぼっち、落ちぶれる、さまよう等の意味があります。熟語としては「伶人(れいじん=弄臣、人君のなぐさみものとなる臣。また、楽人、楽士の意)」「伶官(れいかん、楽官の意。伝説時代の帝王黄帝の時、伶倫(れいりん)が楽官となり、その後、伶氏が代々音楽を掌ったので、この名がある)」「伶優(役者、俳優)」「伶丁(志を失って、孤独なさま)」等。「伶俐(れいり、さかしい、かしこい)」という熟語がありますが、「俐」は俗字で「伶俐」は方言です。「伶」は好い字ではありません。普通は、人名には使われない字です。


「読みから選ぶ女の子の名前リスト」には、例えば、

一伽(いちか)・風伽(ふうか)・桃伽(ももか)等の「伽」。
「伽」は、漢音カ、呉音ガ、慣用音キャ。この字は、もともと梵語の翻訳に使われた文字です。そのため、仏教に関する言葉や翻訳語に使われます。「伽藍(がらん、寺)」「伽羅(きゃら、香木)」、或いは、「伽馬(がま、ヴァスコ・ダ・ガマ)」等がこれです。但し、日本語の場合には「とぎ」の意味で使われます。「とぎ」とは、人のつれづれを慰めること、又、その人。夜の退屈紛れの話し相手。病人のみとり、介抱、看病。「夜伽(よとぎ、寝所にはべること、又、その人)」の事なので、この字は人名には使いません。まして、女の子なら尚更です。一伽・風伽・桃伽、知っていて使っているとしたら、悪質であると思います。


雅姫(みやび)・姫織(ひおり)・姫花(ひな)等の「姫」。
同書には、非常に多くの「姫」の字を使った名前がありますが、日本では伝統的に名前には使いません。その理由は大きく分けて二つあります。姫は、音キ・イ。この字には、「基本」の「基(キ、もと)」や、「王后」や「妾」の意味があります。また、周王朝は「姫(き)」姓なので、辞典を引くと「姫○○」という人物がたくさん出てきます。「姫漢(きかん、周と漢)」と言う熟語もあります。訓は「ひめ」。日本で「姫」と言うと、①、貴人のむすめ。「お姫様」等。②、貴女の名に添えて呼ぶ敬称。③、小さく愛らしい物の名に冠して言う。「姫リンゴ」「姫鏡台」等。④、娼妓、の意味があります。日本で「姫」の字を名前に使わない理由は、第一に、「殿」「殿下」「様」と同じ敬称だからです。「千姫」や「篤姫」は、「千」「篤」という名の女性を尊んで、「姫」という敬称をつけたのです。「○○殿」や「○○殿下」・「○○様」を一つの名前にしないのと同様に、「姫」も使いません。また、この字には「妾(めかけ)」や「娼妓(しょうぎ)」の意味もあります。江戸時代には、京坂で遊女の通称として「姫」が使われていました。もともと王室の姓ですし、日本では伝統的に、名づけの場では嫌われる文字です。


例えば、「生まれる季節から名前を選ぶ・春」の、

虹晴(こうせい)・虹太郎(こうたろう)・虹輝(こうき)・虹帆(にじほ)・虹香(にじか)・虹湖(にこ)の「虹」。
「虹」は、漢音コウ。「虹(にじ)」は、古代には龍の一種と考えられていました。雄が「虹(こう)」で、雌が「蜺(げい)」です。「虹蜺(こうげい)」という熟語もあります。天気の具合で、虹が二重に出ることがあります。色彩の鮮明な方が雄の「虹」で、暗い方が雌の「蜺」と考えられました。天子の旗には虹が書かれていたので「虹旗(こうき)」と言うと天子の旗の事です。但し、「虹」には、みだす・みだれる・潰れる等の意味もありますし、第一、すぐに消えてしまいます。人名に用いる漢字としては、あまり相応しくはありません。名乗り訓もありません。


ここに挙げたのは一部ですが、漢字の選び方からして、ひどくいい加減であると言えます。



ぜんぜん終わりませんでした。あと二回。。。多分

漢字の話(キラキラネームの秘密、十二)

2017年06月10日 17時54分41秒 | 日記
・読めない名前の作り方

そもそも、妊娠が分かって子供が誕生してから百日目の「お食い初め」までには、次の様な儀式が行われます。

妊娠五ヶ月目の戌の日には、神社にお参りして安産を祈願し、岩田帯を巻きます。戌の日に行うのは、犬は多産で、家を守り、よく吠えて邪気を払うとされているからです。また岩田帯は胎児を保護し、霊魂を安定させる意味もあると言われています。

子供が誕生すると、生後三日目に産土(うぶすな)様の守る土地の水で、子供の体を清め発育を願います。これが産湯です。七日目のお七夜には、子供の命名をして、親類や隣近所を招いてお祝いの席が設けられます。この時に、名前を書いた紙を神棚や床の間に貼ります。これは、家の神様に家族の一員としてお守りいただくようお願いをするとともに、親類や隣近所に、家族の一員である事をお披露目するためです。

出生届けは14日以内に、市町村の役所に届け出なければなりません。

誕生してから、男の子ならば三十一日目、女の子ならば三十三日目前後の最良の日に、神社にお参りをします。これが、初宮参りです。氏神様に誕生の報告と御礼をし、健やかな成長を見守って貰うよう祈願します。生後百日を過ぎると「お食い初め」を行います。食べ物に一生困らないようにとの願いから、お膳を用意し食べる真似をする儀式です。お膳にはお赤飯や鯛などの他に、歯が丈夫であるようにと小石も載せます。(「神社本庁・出産と育児に関する神事について」より)

以上が、誕生してから「お食い初め」までの儀式です。「お七夜」や「お食い初め」のお膳は、取り立てて豪華にする必要はありません。「石」も代々伝わる佐渡の赤玉も良い物ですが、河原から拾ってきた石でも良いのです。大切な事は、生まれてきた子供のためにお祝いをし、親類縁者、隣近所、土地の神様に、子供を家族の一員としてお披露目をする事です。


さて、これらの儀式から、誕生した子供に名前を付ける行為は、神様や親戚・隣近所に、一族の成員として紹介する事を前提として行われる事が分かります。家族の中で誰が名前を決めるとしても、少なくとも皆で話し合い、親戚や隣近所、或いは、土地の神様が見て恥ずかしくない名である事を前提として良い名前が選ばれます。


しかし、核家族化に伴い伝統的な文化から切り離され、しかも、誰もがパソコン・スマホ・携帯・電子辞書を所有する時代、「名付け」の場は、企業や出版社が構築する情報に、より左右される様になりました。情報がデタラメであると、日本人の名前が徐々に破壊される事になります。

例えば、以下に紹介するのは、2004年12月20日「高橋書店」発行、田宮規雄(たみやのりお)著の、『世界にはばたく赤ちゃんの名前』です。


この人物は、漢字の人名を紹介しながら、不思議な事に何よりも「音感」を大切にしています。

同書の「音から考える 女の子」の名前の「の NO」の「のあ Noah」の項には、「なめらかな流れで、優しく響く。同音の英語名もある。フランス語で「胡桃」」という説明の後に、

「乃亜・乃娃・能亜・埜亜・野亜」

の五つの人名が紹介されています。「娃」は漢音が「アイ」慣用音が「ア」で、「うつくしい・美人」の意味で使われる文字です。中国人の人名では見掛けますが、私は、日本人でこの字を使う人物に会ったことはありません。また、「埜」は「野」の古字ですが、この文字を使った人にも会った事はありません。

また、この本の書かれた目的ですが、「国境を越えられる名前とは」という項目には次の様に紹介されています。

「・未来を見据えて海外で通用する名前に

名前は、親から赤ちゃんへの一番初めの最高のプレゼントです。パパとママの愛情が形にできる第一歩ともいえます。「名は体を表す」のことわざもあるように、赤ちゃんがどのような人間に育っていくかは、この一歩にかかっているといっても過言ではありません。だからこそ、これからの時代を熟慮し、名前をつける必要があるのです。

日本は、今や国際社会の一員として、さまざまな役割を担っています。今後はますます海外での活躍の場が増え、世界にはばたくチャンスが高まっていくことでしょう。身近なところで考えても、留学、ホームステイ、海外の出張…。

さらに、インターネットが普及したおかげで、世界をつなぐアイテムは、ぐっと増えました。技術革新は進み、衛星を通じてのTV電話など、ますます地球の距離は狭まるばかりでしょう。ですから、これからの時代は世界に通じる名前を考えていくことも大事なのです。

・赤ちゃんに大きな夢を託して

名前を容易に変えることができない日本では、名前は一生のものという考え方が当たり前です。一生ついてまわるものだからこそ、名づけるパパとママは、視野を広めて考えなければなりません。あなたの子どもが、不快な思いや悲しい思いをしないですむように、また世界中の人から愛されるように、すてきな名前をつけてあげましょう。

大リーグのグラウンドやワールドカップの舞台で、高らかに呼ばれる名前を想像してみてください。そこまではいかなくても、海外の大学に留学して世界中の友人と談笑している我が子を想像し、いい名前をつけてあげましょう。」


プレゼントと言えばバッグ・靴等々が思い浮かびますが、「名前」は、誰かからの贈り物と言うような軽い物ではありません。それに、「世界に通じる名前」「世界中の人から愛されるように、すてきな名前」と言っていますが、「漢字」は「漢字文化圏」でしか使われていません。昔はベトナム等も含まれていましたが、現在では朝鮮半島は絶滅寸前で、中国大陸・台湾と日本で使われているだけです。漢字を使う以上、世界中の人が理解するというのは無理があります。


「・意外なところに落とし穴が

小さな島国の日本も、経済成長とともに、世界中の人に知ってもらえるようになりました。同時に多くの日本人の名前も、覚えてもらえるようになりました。

ところが、実際に海外の人に取材して調べてみると、意外な事実が判明しました。日本人にとってはごく平凡な名前でも、外国人にとっては覚えにくいばかりでなく、発音さえすぐにできないものが多かったのです。

日本語に英語の「th」の発音がないように、日本語の音で外国語にはないというものも、意外に多いのです。しかもローマ字という日本独自の表記方法は、外国人にはかえって混乱を招き、より難しく感じさせているところがあるのです…。」


海外でも通用する名前と言いますが、日本人の名前は、海外で通用しないのでしょうか。世界的なスポーツ選手と言えば、誰でも、野球の「イチロー、鈴木一朗」選手やフィギュアスケートの「羽生弓弦」選手、体操の「白井健三」選手を思い浮かべるでしょう。学問ならば、iPS細胞でノーベル賞を受賞した「山中伸弥」教授が有名です。皆、日本人らしい名前で、世界で活躍しています。これだけ見ても、上記の内容は事実と異なります。

私は、親が自分の子供にどの様な名前をつけようと親の自由であると思っています。世の中には、諸葛孔明が好きで子供に「孔明」とつけたり、ロシアが人工衛星の打ち上げに成功した事を記念して「衛子」と名づける人もいます。但し、その名前に対して、世間がどの様に評価するかは世間の自由です。キラキラネームとは非常識・異常な名前の事ですが、言外に名前を付ける親を非難する意を含んでいます。

その一方で、故意におかしな方向に誘導するような情報を流した場合には、その情報を流した人々の責任は、当然の事ながらそれを付けた親よりも重いはずです。

さて、次の漢字は何と読むでしょう?

乃亜・乃杏・乃娃・乃彩・希亜・希杏・乃葵・希空・希歩・希明・乃愛・乃蒼・和杏・希海・乃綾・乃碧・乃綺・心愛・叶愛・希彩・埜亜・望亜・野亜・望歩・希愛・希綾・和愛・音愛・望彩・望愛・望蒼・野愛

これらは、「株式会社ベネッセコーポレーション」が2011年2月28日に発行した『たまひよ新・基本シリーズ 赤ちゃんのしあわせ名づけ』田宮規雄 編の中の「音から選ぶ女の子の名」の「のあ」の項目に列挙されている人名です。

この本によれば全て「のあ」と読みます。


しかし、「希杏・乃葵・希空・希歩」を、誰かに読ませようとしても、恐らく、全く読めないと思います。※「心・叶・希・望・和・音」は「の」とは読みませんし、「杏・彩・葵・空・歩・明・愛・蒼・海・綾・碧・綺」は「あ」とは読みません。もし小中学生が国語のテストで、「心」「叶」を「の」と書けば「×」をもらうでしょう。「希望」は「のの」とは読めません。これらは既に万葉仮名でもありません。(※は後に詳述)

小中学生が国語の時間に「×」をもらうような読み方ならば、企業から出版された書籍に書かれた物であっても、矢張り「×」です。


既に述べたように、漢字は「表意文字」であるとともに「表音文字」でもあります。しかし、これら「名付け本」は、最新の名付けの方法として、意味とは関係無く付けたい名前の音を思い浮かべ、音に合わせていい加減に漢字を当てはめます。

掲載されている「名前」の例は、そのランキングからも分かるように、雑誌社が収集した情報に基づきます。こうした情報を基にして商品である「名付け本」が生まれます。雑誌に採用される「名前」は、購買行動に影響を及ぼしますので、奇妙で話題性があればあるほど、売れ行きは良くなるかもしれません。

雑誌は最新の名付けの方法を提案し、欧米風の名を付けることが正義ででもあるかのように宣伝するものの、「世界に羽ばたく」と言いながら、日本的な名前を否定した後に出て来た名前は、アニメ・外来語、漢字のインチキ読みであり、名付けの本に頻繁に採用されている「ランキング」が示すように、却って幼稚・下品・奇妙であるにも関わらず没個性になりました。


次回はいよいよ「キラキラネームの秘密」です。

漢字の話(キラキラネームの秘密、十一)

2017年06月10日 00時14分27秒 | 日記
一、読めない名前は何故作られるのか

日本には千五百年近い漢字の伝統があり、漢字一字に対する音と訓は、丁寧に研究され、適当にいじる事などできない物であると述べてきました。

明治以降、漢字を廃止して仮名書きやローマ字表記にしようとする一部の人々がいました。これらの人々の称える漢字廃止論やローマ字論は、世間に広く受け入れられるという事もなく、終戦後の一時期に注目されはしたものの、あまりに奇異で文字として使用するのに不適当であったために、社会から必要とされることはありませんでした。漢字廃止論は、そもそも、漢字の専門家から出てきた意見ではありません。

明治以降の漢字廃止論の論点は、その学びにくさが科学や文明の発展に悪影響を及ぼすという物でしたが、戦後から現在に至るまでの中国を見れば、漢字が科学文明の発展に悪影響を及ぼす事など無い事は、既に証明されたと言えます。ですので、漢字廃止論やローマ字論の様な、極端で誤った意見は、日本では復活する事はないように思われました。

ところが、平成に入って子供達に付けられた名前に、通常の漢字の使用方法とは違う奇妙な使われ方や、故意に難読・誤読を目的として付けられたのではないか、と思われる物が目立つようになりました。


・読めない名前の製造元

何故、奇妙な名前が続出するのか。それには幾つかの理由があるのですが、最も根本的な原因としては、制度上の問題を挙げる事ができます。

現在、子供の名前に使うことのできる文字は、戸籍法によって、常用漢字と人名用漢字の範囲内と定められています。しかし、その読み方については制限が無いのです。これは、熟語や熟字訓、或いは、人名に限って、伝統的に名乗り訓(なのりくん)とか人名訓という、漢字の音訓とは別の特種な読み方が存在する事によります。

熟語とは熟字とも言います。漢字を二字以上集めて一つの意味を表したもので、牡丹や蜜柑等々です。熟字訓とは、熟語を訓読みした物です。日本語に対して同一、または類似の意味にあたる漢字をあてた物で、梅雨(つゆ)や海苔(のり)等々がこれにあたります。

漢字の読み方に制限がない以上、仮に、日本で出版されている全ての「名付け本」に書かれた漢字の読みがデタラメ・インチキであったとしても、法律上は問題はない事になります。

そのため、学者でもなく漢字の専門家でもない、しかし、名付けの現場に一番近い「占い師」やマタニティ産業から流れ出る情報によって、読めない名前が量産され、同時に日本の漢字の破壊が進んでいるのです。


例えば、『世界で通じる名付けBOOK 子どもにつけたい外国語由来の名前』栗原里央子著の「名前のつけ方のルール その2」には次の様に書かれています。

「名前の読み方と長さは自由

 名前の読み方は原則自由。どのように読んでも法律上は問題ありません。実際、「蒼空」と書いて「そら」と読ませるようなあて字の例や、「海(まりん)」といった英語の読みをさせる名前もあります。また、漢字には音読み、訓読みのほかに、名前だけに使われる「名のり」という読み方もあります。たとえば「大(ひろし、まさる)」などがそう。ただし、いずれにしろ読みづらい名前では子供が苦労する場合も。常識の範囲で考えるのがベターです。漢字の組み合わせによっては「海月(くらげ)」など、変わった読みをする熟語になることもあるので、事前に丁寧に調べておきましょう。

 読み方同様、名前の長さにも決まりはありません。極端なことをいえば、落語でおなじみの「寿限無寿限無……」という名前もOKとなりますが、あまりに長いと書くのも呼ぶのも面倒。子どもに負担がかかってしまいます。ちなみにミドルネームをつけたい場合、「佐藤エイミー花子」という名づけは可能ですが、「エイミー花子」が名前になるので、国際結婚など特別な理由がない限りは、あまりオススメできません。

あて字例
天使 ▶ あんじゅ
純粋 ▶ ぴゅあ
音夢 ▶ りずむ
騎士 ▶ ないと

名のり例
陽菜 ▶ はるな
大  ▶ ひろし
淳史 ▶ あつし
美紅 ▶ みく」

この部分を読んで気になるのは、作者が「当て字」や「名乗訓」をよく理解しておらず、デタラメ読みの根拠にしている点です。

「あて字」

あて字とは、「宛字」とか「当て字」と書きます。その漢字の意味に関係無く、その言葉と同じ音や訓の漢字を「あてて」表すので「当て字」です。『万葉集』に用いられた万葉仮名もこれに当たりますし、私達の周囲には非常に多くの当て字があります。

例えば、
・滅多・面倒・面白い・天晴れ(あっぱれ)・仰山(ぎょうさん)・間柄・可哀想・頑丈・仰々しい・頓珍漢(とんちんかん)・愚図愚図(ぐずぐず)・素敵等々…。

数え上げればきりがありませんが、先に音があって、それに漢字を当てるから「当て字」です。ですので、海(まりん)・天使(あんじゅ)・純粋(ぴゅあ)・音夢(りずむ)・騎士(ないと)は、漢字にデタラメに外国語のような物を訓に似せて付けただけで、漢字を音に当てているわけではないので当て字ではありません。当然、蒼空(そら)・黄熊(ぷう)・泡姫(ありえる)も当て字ではありません。・朴槿惠(パククネ)・尹炳世(ユンビョンセ)等もこれに含まれます。


「名のり」

名乗り訓・人名訓とは、名前として使われる特種な読みの事で、忠の「ただ」、孝の「たか」等がこれに当たります。『大漢和辞典』には、「名乗り訓」が採用されていますが、その説明には「名乘の項に於ては、我が國の人名に用ひられる特殊の訓を列擧した。」と書かれています。「名乗り訓」と雖も、伝統に基づいていている物なので、適当に読んで良いというわけではありません。

ここでは、『大漢和辞典』に従って・陽菜・大・淳史・美紅についての「名乗り訓」を、説明したいと思います。


陽菜

「陽」とは、山の南面、或いは川の北面の明るい土地、ひなた、を表します。陰に対する陽の意でもあります。ですので、この字に「はる」の訓はありません。昔の日本人には、「陽」の字は名前として適当と思われなかったらしく、「名乗り訓」もありません。ですから「陽菜」は「はるな」とは読めません。



「大」には、おほきい、ひろい、あまねし等々の訓があります。「名乗」には「オホ」「トモ」「モト」の訓が紹介されています。「ひろし」は名乗り訓ではなく、普通の訓であると思います。

淳史

「淳」には、あつい、きよい、おほきい等の訓があります、「名乗り」には「アツ」の訓が紹介されています。また、「史」の訓は、ふびと。音は、シ。「名乗り」には、「サカン」「チカ」「ヒト」「フノ」「フミ」の訓が紹介されています。ですから、淳史を「あつし」と読む事は可能ですが、普通は淳の一字で「あつし」です。

美紅

「美」には、うまい、うつくしい、よい等々、非常に多くの訓があります。この文字は、非常に好まれたのでしょうか、「名乗り」には「ハシ」「ハル」「ヨシ」「ミ」「ミツ」「トミ」「ヨシミ(姓)」の訓があります。また、「紅」の音はコウ、グ。慣用音は、ク。訓は、くれない、べに。「名乗り」には、「クレ」「イロ」の訓があります。美紅を「みく」と読む事は可能ですが、夕焼けのような名前です。

この他、この本には次の様な名前が掲載されています。括弧内は、この本の指定する読みですが、全て間違っています。

・想寿(ソンジュ)・穂風(ホープ)・杏波(アロハ)・凜琶琉太(リベルタ)・栞(ジョリ)・希羽(ノワ)・望依(ノイ)・心優瀬(ミュゼ)・乃李(ノイ)・冬聖(トーア)等々。

漢字だけでは、何と読むのか想像がつきません。


現在、様々な書店から「名付け」に関する辞書が出版されていますが、正確な物は殆どありません。大切な子供達の名前です。常用漢字と人名用漢字の音・訓以外に「名乗り訓」を使う場合には、やはり『大漢和辞典』に従うのが最も正確であると思います。


さて、何故、奇妙な名前が存在するのかと言えば、それは、社会全体の常識に変化が生じたからです。つまり、特別に守らなければならない法律や制度が無かったとしても、普通、日本人ならしないであろう、という常識というか暗黙の了解が社会から消えて、どう読んでも良いのだから誰も読めない名前を付けよう、或いは、付けるように宣伝しようという人々が出現しました。

特に名付けの場を誘導する人々の書いた本は、「最高の名前」と謳いながら、書かれている内容は間違いだらけであるのみならず、西洋かぶれ、日本否定の雰囲気すらあります。要するに、デタラメな知識と無責任さによって名付けが行われるので、世の中の子供の名前が変なのです。


もう少し続きます。

『必ず国家の利益を守る』ー中朝国境配備の秘密ー

2017年06月08日 16時04分55秒 | 日記
先月書いて雑誌社に送り、ボツッた物です。興味のある方はご覧下さい(笑)


『必ず国家の利益を守る』ー中朝国境配備の秘密ー

中国東北部に暗雲が垂れ込めている。※中国人権民運情報センターが3月16日に伝えた所によれば、解放軍北部戦区 第39軍は、13日から鉄道・公道を使って、中朝国境付近に3000名の兵士を送っている。北朝鮮の領袖金正恩は、核実験を行う事を事前に習近平主席に知らせる事は無いので、中国側は北との国境付近に四つの放射線観測施設を設置し、24時間態勢で北の核実験を観測している。

 ※中国人権民運情報センター(中国人权民运信息中心)は、香港に本部を置く人権組織。  天安門事件の時の学生リーダー 盧四清(ろしせい)が、94年に設立した組織だ。彼  は93年7月に、当局からの迫害を避けて深玔から香港に亡命した。英国政府の庇護  を受け、7年後の2000年に永住権を獲得した。現在、民運センターの情報は、 ”ラ  ジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia、自由亚洲电台)”“ボイス・オブ・アメリカ  (Voice of America、美国之音)”“ラジオ・フランス・アンテルナショナル(Radio France   Internationale、法国国际广播电台)”"BBC中文台"の四つの放送局を通して、大陸の  聴衆に届けられている。

民運センターの情報を証明するように、3月13日、中国のウェヴ上に、瀋陽から丹東に向かう高速道路に大量のナンバー不明の戦車が出現した、と多くのユーザーが書き込んだ。※「ラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia、自由亚洲电台)」は、軍隊はG1113路を中朝国境付近に向かって進んでおり、そのため、瀋陽から丹東に向かうトラックは、バイパス304号を選ばねばならなかった。朝鮮の核実験と関わりがあると思われるが、ユーザーの投稿は既に削除されてしまっている、と伝えている。

 ※ラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia、自由亚洲电台)は、自由な報道や媒体に  触れる事の出来ないアジアの聴衆に対して、情報を提供する私営企業。米国の義会の  出資を受けて設立された放送局だが、政府機構に組み込まれているわけではない。

主に北朝鮮の暴走を止めるために、3月下旬から4月上旬にかけて米中間の交流が盛んであったが、北朝鮮も負けじと存在感を強めていた。例えば、3月19日には、米国務長官ティラーソンが習近平国家主席と会談した。会談の目的は、中国と共に北の核問題に対応し、並びに、習近平訪米の調整をする事と伝えられたが、それに合わせるように18日、北朝鮮は新型高出力ロケットエンジンの地上噴出試験を行った。金正恩総書記が指揮をした、と19日に朝鮮中央放送と朝鮮中央通信が報じた。

トランプ大統領と習近平主席の会談は、4月6日~7日の日程で行われたが、首脳会談の前日5日には、北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射している。

会談の終了後、トランプ氏は習氏を褒め称え、朝鮮問題解決に向けて、米中が足並みを揃えるかの如き報道が続いたが、それならば、何故、人民解放軍は鴨緑江付近の兵士を増員しているのだろう?

・38度線の意味するもの

私は大連の二百三高地を旅した事がある。遼東半島の南端に位置する丘で、海抜203mなのでこの名がある。映画にもなった「日露戦争(1904年~1905年)」の激戦地だ。2000年に訪れたが、「爾霊山」と書かれた忠魂碑は、文革時の破壊の痕跡も見られたものの、殆ど当時のままに立っていた。近くでは、地元の住民が畑から掘り出したという、軍の水筒や銃弾や金属片を、展示したり売ったりしていた。

「瓜分(かぶん)」という言葉がある。列強が中国を瓜のように切り分けるという意味だ。20世紀の幕開けと共に、列強は中国の分割統治に本腰を入れたから、中国人は、これを「瓜分」と呼んで恐れた。中国の東北三省は北から順に、ロシアと接する黒竜江省・吉林省・遼寧省で、遼東半島は遼寧省の南部に位置する、大陸で二番目に大きな半島だ。三国干渉(1895年)以降、ここはロシアによって占領されていた。しかし、二百三高地と日本海海戦の完勝によって、我が国が日露戦争に勝利し、ポーツマス講和条約で、ロシアは満州における権益と、遼東半島の租借権を日本のために放棄した。

忠魂碑を背にして旅順港を眺めると、遮る物は何も無く港全体が丸見えで、この丘を落とす事がどれ程重要であったか、どれ程の覚悟で臨んだ事かと、その苦労の丘を我々は失ってしまったのだと思った。

案内に立った中国人が、「朝鮮戦争の時には、毛主席の息子が戦地で亡くなっていますが、乃木将軍も、ここで息子を亡くしています。乃木将軍も、毛主席のように日本人から尊敬されているんでしょう?」、と聞くので、「乃木神社がというのがあって、神様になっていますよ。」、と答えた。その考え方に異論が無いわけではなかったが、彼等は乃木将軍と毛沢東を重ねて、二人ともに尊敬しているようだった。

毛沢東の長男 毛岸英の墓は朝鮮平安南道の「中国人民志願軍烈士陵園」にあって、「新華網 日本語版」によれば、2013年7月31日、金総書記も張成沢等を伴って参拝に訪れている。38度線は、中共にとって深い思い入れのある場所のはずだ。米中共同で北朝鮮に対抗する事などあり得るのだろうか?

・最後の一線

中共から見た金正恩氏は、中朝関係を修復する気もなく、北京に来ようともせず、また、朝鮮の指導者を辞める様子も無い。トランプ・習近平会談の前日に発射されたミサイルは、習近平氏の面子を酷く傷つけたに違いない。年若く、中共に対して何を考えているかも分からないのに、中国の東北・北京・上海は朝鮮のミサイルの射程内にある。

習氏の対北政策に注目が集まる中、米中首脳会談直前の4月5日、「環球時報」が朝鮮有事に関して「社説」を発表し、米朝に対する最後の一線を明らかにした。
『社説:米国は万が一にも朝鮮の核問題打開の方向を誤ってはならない』

「朝鮮の核問題はくすぶり続けているので、米国新政府が突破口を開こうとするのも無理はない。しかしワシントンが求める適切な打開の方向は、万が一にも表面的現象に惑わされる物であってはならない。

朝鮮の核問題は、見たところとても簡単だ。平壌は核兵器と中長距離ミサイルの開発に固執しているが、これは決して彼等に益をもたらす事はない。平壌に否応なしに核を放棄させる事は、同時に“平壌を救い出す”に等しく、中国が努力しさえすれば、平壌に理解させ、或いは、心からの願いではなくとも北京の要求を受けざるを得なくする事は、当然、難しい事ではない。

しかし、事実上、朝鮮半島と東北アジアは正真正銘“千々に乱れて収拾がつかず”、朝鮮は言うに及ばず、中日韓の三カ国を見ても、どれ程の物だと言うのだ?互いに矛盾だらけで、現在、ほぼ三つの辺が対立する三角形を形成しているではないか。

米国は東北アジアの乱局に対して重要な責任を負っている、と言わざるを得ない。米国は朝鮮半島の冷戦を終結させず、東北アジアの異なる国家に対して、或いは育て、或いは押さえつけ、或いは攻撃し、米国はこの地域に非常に多くの戦略的不信を植えつけておきながら、しかも朝鮮が積極的に核を断念する事を求めており、前提条件として朝鮮が信用できる大国グループが、朝鮮のために安全の保障と配備する事を挙げている。

平壌は、現在何も信用しておらず、しかも誰も信じず、原子爆弾だけ信じており、それさえ有れば安全、無くなればお仕舞い、と感じている。外界が北を制裁しても、朝鮮全域を完全な麻痺状態に追い込むのではなく、餓死者が出たという程度では、平壌は恐らく屈服などしないだろう。

米政府の、トランプが大統領に就任する以前の方法は、総じて言えば、一歩一歩朝鮮に対する制裁を強め、同時に韓国に対する安全保障と朝鮮に対する軍事的脅威を強化する、つまり朝鮮を押し潰そうとする方法だった。ワシントンはこれまで平壌と真剣に意思の疎通を図った事はなく、心配の種を除く事を通して、核を放棄させようとした。

この策略が明らかに役に立たなくなると、ワシントンは中国が協力しないと不満をこぼした。実は、中国の対朝制裁は既に非常に厳しく行っており、中国に対する非難は殆ど“虫眼鏡で粗探しをする”ようなもので、この種の批判の最大の効果は、ワシントンの対朝政策失敗の責任転嫁のために発揮される。

ワシントンが、もし本当に“単独で朝鮮に挑む”ならば、自己の選択が実は非常に限られている事を知るだろう。

継続して対朝鮮制裁を増強しても、そこから生まれる実際の効果は先細りで、つまり、制裁のてこを広げる余地は、既に幾らも残ってはいないと言える。もし、朝鮮に対して攻撃を仕掛けたとして、中露の態度は別にして、韓国は恐らく真っ先に耐えられなくなるだろう。ワシントンは、よしんば攻撃の効果を把握できたとしても、朝鮮の反撃の程度を把握する事は難しいからだ。米国のソウルに対する最大の公約は安全だが、高い確率で、米国の軍事攻撃は、平壌のソウルに対する大規模な火力の報復を招き、ワシントンの威信は必ずや失墜する事になろう。

米側が本当に朝鮮の核問題を解決したいなら、周辺国家間の対立を減らし、重要な共通認識に達するよう努力しなければならない。同時に、米国は平壌と通信チャンネルを開き、朝鮮に対する圧力が“戦う空間”を切り開く作用を起こすようにすべきだ。

中国は、朝鮮の核問題の早期解決を熱望しているが、しかし何が起ころうとも、中国には最後の一線があって、代価を推しまず守らねばならぬのは、東北の安全と安定だ。これに関連して、朝鮮の核活動は決して中国東北部に対して如何なる汚染も引き起こしてはならない。この他、朝鮮は大量の難民を出すような激動する情勢に向かうべきではなく、鴨緑江の対岸に中国と敵対する政権が出現する事は許さず、米軍は更に鴨緑江河畔に押し寄せてはならない。

ワシントンが、もし北京と協力を強化し朝鮮の核問題を解決しようと望むならば、その制定する所の政策は、中国側の上述の懸念に抵触すべきではない。

要するに、朝鮮の核問題の複雑さは客観的に見て、快刀乱麻を断つが如き解決が米国の願いである事は理解できるが、しかし、好い願望は堅実に行ってこそ、初めて好い効果を形成する。朝鮮を交渉のテーブルに引き戻す事こそ、ともかくも最も現実的な道といえるのだ。」(「環球網」『社説:米国は万が一にも朝鮮の核問題打開の方向を誤ってはならない(社评:美国切不可选错突破朝核困局的方向)』2017-04-05)

文中に紹介されている、軍事介入を示唆する「五つの最後の一線」、及び、北の核武装について補足すると、

一、東北の安全と安定
二、朝鮮の核活動は中国の東北を汚染してはならない。
三、朝鮮は大量の難民を出してはならない。
四、鴨緑江の対岸に中国と敵対する政権は出現させない。
五、米軍は鴨緑江に押し寄せるべきではない。

東北とは、既に述べた遼寧・吉林・黒竜江の三省。また、鴨緑江は、中国と朝鮮との国境になっている川だ。敵対政権とは38度線以内の政権を指す。東北の安全と平壌に敵対政権ができそうな場合を軍事介入の理由にしている以上、中国の判断如何で、いつでも軍事介入ができる。

また、北の核武装については、強く否定はしていない。実は、中国の評論家の意見には、北の核武装について肯定的な物も存在する。現在、世界には核兵器を保有する国が八ヵ国(常任理事国と、イスラエル・パキスタン・印度)、北朝鮮を含めると九ヵ国ある。その中で常任理事国の五ヵ国(米中露仏英)が、核兵器を合法的に所有している。米国は7000~8000発の核弾頭を所有しているが、朝鮮に対して数発の所有も認められないとはどういう事だ、と言う物だ。

朝鮮からの難民については、中国国内には多くの朝鮮族が住んでいるものの、多くの難民を引き受ける事は非常な危険を伴う。欧州でも難民の被害が出ているが、朝鮮半島の動乱で中国が巻き添えを食う必要は無い、という事のようだ。

人民解放軍の移動について、東北の安定・敵対政権・鴨緑江への進軍と、五つの条件を挙げるからには、米軍を念頭に置いている事は否定できない。

確かにトランプ・習近平会談は上手く行き、米中関係は順調に見える。実際、トランプ氏と習近平氏は馬があったのかも知れないし、中国側には経済的にも米国と歩調を合わせなければならない理由もある。しかし、米中関係は虚々実々だ。

5月1日、韓国に新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)が配備され、現在、運用可能な状態になっている。南シナ海問題も解決したわけではないし、航空母艦カールビンソンも配備された。事態は何も好転してはいない。では、中国の思惑は那辺にあるか?

・必ず国家の利益を守る

首脳会談終了後の4月13日、※「阿波羅(アポロン)新聞網」が次のような記事を配信した。

『中共の最後の一線を伝える:もし開戦になれば解放軍は鴨緑江を越え安全エリアを定める』

朝鮮半島に戦雲が広く垂れ込めている。以前、ある報道は、中共軍が中朝国境の鴨緑江に15万の大軍及び早期警戒機等を配備した、と伝えた。大陸のメディアは、今日、中共は既に最後の一線を米国及び北韓に通告し、核の汚染が東北地区を脅かす事を決して許さない、つまり、一旦、北韓が崩壊すれば、中共軍は鴨緑江を越えて安全エリアを定め、米韓軍が前進して鴨緑江に至る事を許さない、と報じた。

聞くところによれば、中共は米朝に対して最後の一線を通告し、もし、双方が軍事衝突を起こせば、中共は必ず国家の利益を守る。中共は北韓の核汚染が東北地区を脅かす事、及び、多くの北韓の難民が国境を越える事を許さない。中共の軍隊は、北韓が崩壊する場合、鴨緑江を越えて安全エリアを定め、米韓軍が鴨緑江に到達する事を阻止する。

中共軍が鴨緑江に大軍を配置した事に対して、中共国防部新聞局は、その報道は捏造であると回答した。外交部報道官もまた、情況を把握していないと指摘した。(「阿波羅新聞網」『中国の最後の一線を伝える:もし開戦になれば解放軍は鴨緑江を越え安全エリアを定める(传中共底线:倘开战解放军越鸭绿江划隔离区)』2017-04-13)

 ※「阿波羅新聞網」は米国の華字新聞、「阿波羅(アポロン)」は太陽神アポロン、「網」  はネットの意。特に中共内部・高級幹部の内幕等、中国大陸では取り上げる事の無い  記事に、光を当てる「新聞網」と言われている。文中の「北韓」とは北朝鮮の意。原  文にしたがった。

以上の事から、中共の今後の行動について幾つかの事が予想される。

先ず、中共がこのまま多少の制裁を加えつつも金正恩政権を見守るのであれば、北の核保有について、結局は寛容な姿勢を取ると思われる。しかし、それは米国の希望する解決とは隔たりがある。中共が表面的に求める物は、38度線と鴨緑江の間の政権が親中国である事なので、米国が金正恩氏を排除しようとする事については、柔軟な態度を示すものと思われる。但し、一旦、金政権が崩壊すると、人民解放軍は鴨緑江を越えて安全エリアを定める、と述べている。要するに、北の政権が崩壊した場合には、誰に義理があるわけではない。中共は直ぐさま半島の権益確保に乗り出す、と言う事ではないだろうか。そうして、中国に領土拡大の野心があるのであれば、半島情勢は、やはり波乱含みと言わざるを得ない。

  平成二十九年五月十五日

平和を愛する諸国民は核兵器を持っている。北朝鮮の公正と信義に信頼するには不安が残る。我らの安全と生存を保持するには、どうしたらよいだろう?

漢字の話に続きます。