第11管区海上保安本部(那覇市)の発表によれば、
十月一日から中国の海洋監視船が、
尖閣諸島沖の接続水域へ出入りを繰り返しており、
十日も海洋監視船四隻が出入りしていたが、
午後十一時までには姿が見えなくなった。
十一日朝も姿を見せてはいない。
(ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版、日テレNEWS24、十月十一日)
中国監視船が消えた理由については、
台風21号が接近し、尖閣諸島周辺海域がしけている影響とも見られるが、
別の理由も、あるのかもしれない。
今週に入り、日米中に関して、割に大きな報道が二つあった。
一つは、八日、共和党候補ロムニー前マサチューセッツ州知事が遊説先で、
「強い米国」をアピールし、
「…アジア太平洋区域では、中国の近頃の独断的行為が、
同区域の国家の身の毛をよだたせている。
もし米国がリーダーシップを取らなければ、
米国の利益と価値を共有していない国家が台頭し、
世界は更に暗黒に向かうだろう、
米国と同盟国は、暗い影に覆われてしまう…」と述べた。
「大紀元」十月九日『ロムニー;大陸独断 区域不安』
九月十九日には、
ホワイトハウスのカーニー報道官が、
「平和的な手段」を通じて領土問題を解決することを望むとの見解を示し、
領有権問題に関して米国は立場を表明することはしないとし、
外交的に両国が問題を解決することを望んでいる、と表明していた。
それよりも、一歩踏み込んだ発言となっている。
もう一つは、同日八日、
米下院委員会は安全保障上の脅威を理由に、
華為技術(Huawei Technologies Co. Ltd)と
中興通訊(ZTE)との取引を控えるよう促す報告書を発表した。
この二社に対する中国当局の影響力が、
安全保障上の脅威となる恐れがあるとして、
通信会社に両社との取引を控えるよう促した。
台湾や他の報道から補足すれば、
米国が華為技術を、一年間調査した結果、華為は解放軍との関係が深く、
北京当局が危機、或いは戦闘状態に入ったときに、
華為や中興の製品中に組み込まれたチップにより、
米国の国家安全系統を操縦される恐れがある、
というのがその理由。
但し、チップは見つかっておらず、
米側は、明確な証拠を挙げてはいない。
それで、中国外交部報道官も、
「我々は、米国国会が、偏見を捨て、事実を尊重し、
中米貿易関係にとって有益な事業を多く成し、
対立するべきではない事を希望する。」と反駁した。
しかし、例えば、○九から一○年にかけて、
「インド」では、華為・中興の製品に対して一時、禁輸措置が取られた。
今年一二年五月には、
英国「フィナンシャル・タイムズ」が、
EUが華為と中興に対してダンピングの疑いで訴訟を起こすと報じている。
二社には、政府の補助金を違法に受け取り、
欧州で原価より安い価格で商品を売った疑いが掛けられており、
もし、有罪になれば、この世界第二位と第五位の会社には、
懲罰性の高い関税が課される事になると言われている。
「sina全球新聞」五月二七日『華為と中興通訊は欧州のダンピング訴訟に直面している』
また欧州は一○年にも、中国製のデジタルカードの、
ダンピング・不正補助金についての調査を行っている。
オーストラリアでは、
全土に高速通信網を敷設する事業への参加について、
情報機関が政府に対して「危険性」を指摘した事により、
華為は拒否された。
米国、インド、オーストラリア等、証拠の有無は判然としないが、
華為が排除されるのには理由がある。
華為は、通信機器メーカーとしては世界第二位であるにも関わらず、
上場していない。
経営者の任正非(じんせいひ、任は人名には、じんの音)は、
人民解放軍の出身で、重慶大学を卒業している。
独学でコンピューターを学んだ。
八十年代、解放軍を除隊した者が、会社を興す場合、
解放軍が出資したり、軍幹部が退職して会社の代表になる事が多かった。
華為もこの様な状況で成立した通信機器メーカーで、
解放軍のネット関連の部隊の為に、通信機器を開発している。
更に、人民解放軍は二○一一年六月に
「ネット藍軍(網路藍軍)」を創設した事を明らかにしている。
「中国共産党新聞ネット」『中国はなぜネット藍軍を組織したのか』によれば、
2011年6月27日08:46 来源:人民ネット《人民日報海外版》
「最近、中国国防部の定例記者会見で、国防部報道官 耿雁生(こうがんせい)は、
軍隊のネットの安全を守るために、中国が既に「ネット藍軍」を組織した事を証言した。
(この知らせにより)上は専門家から下は軍事マニアまで、この話題で騒然となった。
何故 ネット藍軍なのか
「戦争とは不確定性にみちた領域である。
戦争中の行動が繰り広げられる状況下の四分の三は、
霧の中に包まれているように多かれ少なかれ不確実である」
名著『戦争論』の著者クラウゼヴィッツは、嘗て現代の戦争をこの様に詳説した。
「現代の戦争は濃霧に包まれている」事が、
各国が熱心に、情報技術とりわけネット技術の戦争への応用を推進させている原因だ。
ネット部隊は実は以前から存在している。
米国では1991年の湾岸戦争の時に、
コンピューターウイルスによってイラクの防空系統を粉砕し、
その後の、コソボ戦争、イラク戦争でも米国のネット部隊は重要な役割を果たした。
米国以外でも、英国・ロシア・日本・インド等の国々でも、
自前のネットセキュリティ保障部隊を組織している。
「西方国家の習慣で、攻撃部隊を赤のパーティーと呼ぶのは、
形態と色彩の一種の説明で
国防部の「ネット藍軍」には、別に特別な意味があるのではない。」
中国国際問題研究所の研究員 滕建群(とうけんぐん)は、
中国ネット藍軍の「色彩」問題については答えようとしない。
軍事演習中、しばしば対抗する双方を
「赤のパーティー」「青(藍)のパーティー」と称する。
「赤のパーティー」「青のパーティー」に特定の意味はなく、
双方を区別する標識に過ぎない。
目下のところ、国際的にも統一された規定はない。
中国軍事科学学会の副秘書長 羅援少将は、
中国の「ネット藍軍」は、部隊訓練時の呼称にすぎず、
当該訓練はサイバー攻撃に対する対応と予防措置だと述べた。
中国国防大学の軍事専門家 李莉(りり)は、
西方国家のサイバー戦部隊に比較して、
我が国のネット藍軍はまだ初級段階にある。
制度や規模の整ったサイバー部隊と言うよりは、
我が国の軍部が展開する、
一種のネット上の対抗訓練モデルと言った方が正しい、と述べた。
目的はネットセキュリティの保障
ネット藍軍は決してハッカーではない、
「恐喝ウイルス」「パンダ焼香ウイルス」「ディスクドライブのウイルス」
…各種のウイルスが中国のネットセキュリティを脅かしている。
軍事専門家、国防大学教授 張召忠によれば、
現在ネットに対する依存度はしだいに高まっているものの、
しかし、中国にはルートサーバーが一つもない。
また、ネットワークの、多くのソフトを含むハードウェアは、
基本的に、全て米国の物だ。
この点から見て、中国は単なるコンピューターの「ユーザー」でしかなく、
ネットのセキュリティはたいへん脆弱だ。
この様な環境の下、中国がネットの安全を保障する部隊を組織する事は、
必要不可欠である。
しかし、中国軍部が「ネット藍軍」の存在を認めると、
西方メディアは、「ハッカー」の嫌疑をかけた。
「中国のネット藍軍とハッカーとは本質的に異なる。
先ず、正当性から言えば、
ネット藍軍は、国家の関係部門により組織されたので、合法で正当性があるが、
ハッカーの多くは、私人の身分で活動を行うので、非合法で正当性がない、
次に、意図から言えば、
ネット藍軍は、国家のネットの安全を保障するという栄光の使命を引き受けているが、
ハッカーは、ウイルスの力を借りて、思うまま他人のコンピューターを攻撃する。」
滕建群によれば、ネット藍軍とハッカーとは、比較できるところがまったく無い。
多くの軍事マニアは次々にサイトに書き込みをして、
中国がネット藍軍を組織した事に対する支持を伝えた。
淮南(わいなん)《市民在線》に、ある軍事マニアは
現代化された戦争では、戦士が戦場で戦うに止まらず、
科学技術やネット上で闘う。
国防のためのネットワークの強加は、
国家の安全を保障するための新たな責任であり、
ネットに関する国防を重視すべきである、と書き込んだ。
別なマニアは、我々は戦いは望まないが、
準備はしておく必要がある、と考えている。
情報社会の歴史の必然
「彼を知り己を知れば、百戦あやうからず」これは今に至るまで伝わる戦争の法則だ。
情報技術が急速に発展する今日、
我々は効果的に、我が国の情報ネットワークの安全を保障する必要があり、
そこで、頼りになる優秀な「ネット藍軍」を必要としているのだ。
この様な状況下で李莉は、
ネット藍軍を組織するのは、十分に必要であり有意義だ、と考えている。
しかし、西方のサイバー部隊に比べて、
中国のネット藍軍は多くの問題を抱えている。
例えば、中国のサイバー戦の理念・サイバー戦部隊の役目・使命と条令を整え、
ネットワーク作戦用の施設を整え、
国際法の制定も、完成された物にする等だ。
「中国のネット藍軍の創設は、以前、我々が陸軍・空軍を創設したのと同様、歴史の必然だ。
その理由は簡単で、我々は情報社会で生活している以上、
この環境下での新時代の戦争にも、適応しなければならない。
中国のネット藍軍は、国家の側面から、或いは、戦争の側面から見ても、
経済の発展に、或いは、社会の安定に対しても、
非常に重大な戦略的意義を持っている。」
滕建群は、中国のネット藍軍が
国家の安全に寄与し、あるべき貢献を果たすと堅く信じている。」
記事は此処までです。
華為や中興との関係には直接触れられてはいないが、
中国の人民解放軍の中に、
報道官も認めた「ネット藍軍」という組織があり、
防御・攻撃の如何に関わらず実働隊で、
西方の国々からは、
「ハッカー部隊」であると考えられている。
この数年、米国は、米中合資のコンピューター製品を使用しており、
同時期から、不正アクセス問題が頻発、
米国に対して、ネット上のスパイ活動が最も盛んな国も中国。
米下院情報特別委員会のロジャーズ委員長によれば、
「我々は、この様に重要なネットワーク系統を、
中国政府と関係がある企業に渡すなど、安心できない」と述べた。
スウェーデンのエリクソンと業界トップの座を競いながら上場しておらず、
人民解放軍に技術や製品を提供している。
さらに、人民解放軍内部には「ハッカー部隊」があるとなれば、
米国が疑うのも、無理はないように思う。
米国は、ロムニー候補が対中強硬路線を打ち出した同日に、
下院委員会が安全保障上の脅威を理由に、
華為技術と中興通訊(ZTE)との取引を控えるよう促す報告を発表した。
世界で最も戦争に参加している国の事とて、
景気の低迷から抜け出すため、更には、軍事産業の発展のための、
次なる戦闘準備と取れなくもない。
ここで問題なのは、
米国の真意が何処にあるのではなく、
中国が、どう理解したかだ。
推測の域を出ないが、
尖閣問題に、米国が本気を出す可能性を前にして、
いち早く危険を察知した中国が、
火種となっている尖閣から姿を消した可能性もある。
そうなれば、今後は、対日宥和策を講じてくるかもしれない。
或いは、本当に台風による物か、はたまた十八大の影響か、
緊張の海からは、まだまだ目が離せない。
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