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祝!安保関連衆院通過(腐敗の典型と「跨越式」の陥穽)

2015年07月22日 02時35分02秒 | 日記
『腐敗の典型と「跨越式」の陥穽 
     —中国の報道から見た高速鉄道—』

※文中の数字は原文に基づく物で、当時のレートは一元=十二円。

二○一一年七月二三日、午後八時二七分、浙江省の温州市内で、高速鉄道の追突事故が発生した。杭州から福州に向かうD3115次列車が、温州管内で雷のために緊急停車したところ、後続のD301次列車に追突され、車輌四輛が高架から転落。この事故による被害者は、二八日夜七時のCCTV(中国中央電視台)によれば、死者三九名、負傷者一九二名と発表された。

事故発生直後から、華字媒体は、香港・台湾は言うに及ばず、大陸各地、CCTVに至るまで一斉に取り上げ、「それ見た事か」と言わんばかりの報道を繰り返したが、報道が鉄道部に対して批判的だったのには理由がある。

中国高速鉄道は、人民の収入に対して乗車券が高価であるばかりでなく、開通直後から連日故障が報道され問題視されていた。特に七月一日から開業した「京滬(けいこ)高速鉄道」が一○日から一三日までに三度も故障したことで世論は騒然となった。鉄道部は事故を隠したかったかもしれない。しかし、列車が停車する度に乗り合わせた乗客がネットに書き込みをしてしまうので、事故は刻々と全土に知れ渡る。CCTVは故障の報道のたびに、「命に関わる事故ではない」とか「数年後には、完璧なシステムになる」と繰り返したが、人民の高速鉄道に対する不信は日に日に募って行った。

その上、今年二月、鉄道部の高級幹部二名が収賄容疑で逮捕され、不正蓄財が明らかになった事もあって、ひょっとすると、幹部の汚職一掃に民意を利用しようという思惑があったのかもしれないが、報道規制は敷かれなかった。

・高速鉄道の始まり
「京滬(けいこ)高速鉄道」の建設計画が、鉄道部から国務院に提出されたのは一九九三年の事。「京」は北京・「滬(こ)」とは上海市の簡称。北京と上海を結ぶ一三○○Kmの開発計画がもちあがったが、これには当時一四○○億元以上の投資が必要であり、中国経済を崩壊させる恐れがあるとして、学者及び鉄道部幹部からも反対意見が出て見送りとなった。

計画が、再び日の目を見るのは十年後。二○○四年一月七日、『中長期鉄路網計画』が国務院の審議を通過し、「京滬客専線」が批准され、中国の「高速鉄道」の建設が始まった。この背景には、前年の○三年、江沢民(九三~○三年、国家主席)の推薦により鉄道部部長に就任した劉志軍(りゅうしぐん)及び、鉄道部の強い希望があったと言われている。

○四年一月の『中長期鉄路網計画・発展目標』によれば、「小康社会(中流社会)の達成のため、鉄道路線は規模を拡大し・構造を完備し・質を高め・運送能力を速やかに拡張し、設備の水準を迅速に高めなければならない。二○二○年までに、全国の営業路線の総距離10万kmを目標とする。飽和状態にある主要幹線は、客車と貨物車を分離する。複線率と電化率は50%を目標とする。国民経済と社会の発展に貢献できる運送能力のために、主要な技術は先進国の水準と同等か、或いは、その水準に近づける事を目標とする。」と書かれている。

この計画について、二○一一年二月一四日出版の雑誌『財経』の電子版によれば、高速鉄道建設の動機は、当時、既に飽和状態であった主要路線の輸送状況を改善するため、試みに客車と貨物車を分け、客車はより早く、貨物車は積載量をより増やす事を計画した、と紹介する。それを証明するように、例えば、石炭の産出豊富な山西省大同と海運港の河北省秦皇島を結ぶ「大秦線」は、客車の運行を止めて、○四年四月から貨物列車専用路線に変わっている。

また、『中長期鉄路網計画』には、西部・中東部のための、新路線1.6万kmも含まれており、チベット・ウイグル等の少数民族自治区への物資の輸送も忘れてはいない。高原鉄道である「青蔵鉄道(せいぞうてつどう、青海省と西蔵(チベット)自治区を結ぶ路線)」が、この計画の通過後、完成予定より一年早く○六年七月一日に全通している事も考えれば、要するに、この巨大な建設計画には、鉄道網を完備するばかりではなく、少数民族区への軍備も含めた人・物の輸送を可能にし、更に、計画が進めば世界最長の高速鉄道を所有し、巨大な建設事業によって経済を牽引する事もできるという、政府にとっては真に有意義な計画だった。

こうして「高速鉄道」の建設が始まったが、四年後の○八年、世界金融危機の影響を受けて、計画は早くも変更となる。国務院が『中長期鉄路網計画』を経済刺激策として採用したためだ。新しい計画では、「高速鉄道」は2万km延長され総距離5万km、高速鉄道四二路線には、二○一二年までの完成目標が掲げられた。一見無謀とも思える計画の変更は、しかし、「高速鉄道」建設が最初から背負っていた運命とも言える。

・性急病
 「建国以来の中国共産党の認識と行動には慎重さと性急さが同居したが、結局は後者が 前者を押し流してしまう。…八○年代の経済改革のブレーンである馬洪(国務院経済技術発展研究センター総幹事)によれば、建国四十年来の経済建設に挫折をもたらした最大原因は「性急病」にある。「性急病」とは、「功をあせりすぎる」傾向だ。このために中国は四十年間に八回もの「大起大落(大きな浮き沈み)」の苦渋をなめつづけた。」小島朋之著『中国共産党の選択』より。

「性急病」は、毛沢東が共産党に遺した、遺伝子の一つだ。権力に執着するあまり、本来目的であるはずの物が、手段となる所に病理がある。

前出の『財経』によれば、例えば、○五年七月着工の北京・天津間120kmを結ぶ「京津(けいしん)都市間鉄道」は、最初の計画では、時速200~250kmで、投資総額一二三.四億元とされた。しかし、後に営業速度が時速300km以上に引き上げられたため、本来は在来路線を改修して使用するはずが、高速に耐える路線を新たに建設しなければならなくなり、その名目で投資総額は二○六億元を超えた。しかし、開業してみると、列車が時速300kmを超えるのは、全運行中二分一九秒間のみ。そのため一部メディアや研究者から、二分一九秒のために、投資総額が二倍にふくらんだと非難された。「京津鉄道」は開業後、毎年七億元の赤字を出し、そのうち六億元が、中国国内銀行から借り受けた建設費用の利息。投資をしたのは、鉄道部・北京市・天津市及び、中国海洋石油総公司(CNOOC)だが、そのうち北京鉄道局が四三億元を出資している。

また、湖北省武漢と広東省広州市を走る「武広旅客専用線」の場合、広東省・湖南省・湖北省を結ぶ全長1069kmの鉄道に、○四年の計画では、総工費は九三○億元と計算された。しかし、建設資材や人件費等の要因により、後に、一一六六億元に改められ、橋梁や新設の駅の建設を含めると、最終的には一二○○億元に膨らむと予想されている。従来は十時間以上かかった武漢-広州間を、三時間で結び、平均速度は313km/hで世界最速。鉄道部・広東省・湖北省・湖南省の共同出資で、鉄道部の中国鉄路建設投資公司が四六四億元を出している。銀行からの四六四億元の貸し付けに対して、毎年およそ二五億元の利息を払わねばならない。

全路線中、建設費用が最も高いのは「京滬(けいこ)高速鉄道」で、総額二二○九億元。これは、三峡ダムの総工費二○三九億元を抜いて、中国史上最高額の建設費と言われている。最初の計画からは、一千億元近く増額された事になる。普通、高速鉄道(客運専線)の路線の敷設は、1km毎に一億元と言われており、全長1318kmの路線に何故、二二○九億元もの費用が必要だったのかという事は、二○一○年春頃に、盛んに伝えられ問題視されていた。

これらの採算を度外視した開発のため、『財経』によれば、○九年一二月三一日までに、鉄道部の総資産二.四六兆元に対して、負債総額は一.三兆元。しかし、「新華社」電子版の二○一一年三月一五日の報道では、中国鉄道企業の負債総額は一.八兆元、資産に占める負債率はおよそ56%、更に、「財新ネット」に報じられた、五月五日の『浮かび上がる鉄道部の欠損』によれば、一一年、第1四半期は三七.六億元の赤字を出し、資本は二○一○年の第3四半期に比べて二一二七億元減少、鉄道部の抱える負債率は継続して上昇し、58.24%に達したと伝えている。

ふくらみ続ける赤字は、結局、高額の運賃として人民に転嫁される。例えば、「武広旅客専用線」の場合、湖北省武漢から広東省広州まで、一等七八○元、二等四九○元。前出の「財経」によれば、珠江デルタ(中国珠江河口の広州、香港、マカオを結ぶ三角地帯)の工場労働者のこの当時の月収は一五○○元~一八○○元で、二等で往復すると、月収の半月分が消えてしまう。普通列車の硬座の六八元に比べおよそ十倍。月収三千元のホワイトカラーでさえ高いと感じる運賃設定だが、鉄道部は「武広線」開通後、十三本の普通列車の運行を取りやめ、乗客が高速鉄道に流れるようにしむけていると言う。

・跨越式発展
劉志軍は鉄道部部長に就任すると、鉄道には「跨越(こえつ)式発展」が必要だと述べた。「跨越」とは、跨も越も「こえる」という意。「跨越式発展」とは、常軌を逸した発展。可能な限り短時間に、高水準の産業・技術・品質、効果と利益の実現を目指す事で、先進国に追いつき追い越す事を目標とするが、全体的な発展ではなく部分的に遅れていても良い。人口・資源・環境に配慮しながら持続的に発展し、一貫して経済に活力をもたらし続ける発展の事を指すようだ。現代版「性急病」とも言える「跨越式」は、最近の中国でよく使われる言い回しだ。

これを証明するように、○四年、国務院を通過した『中長期鉄路網計画』には、「快速拡充(速やかに拡張する)」「迅速提高(迅速に引き上げる)」や「加快鉄路発展(鉄道の発展を加速させる)」という表現が並ぶ。これは、毛沢東の掲げた「大躍進運動」のスローガンの一つである、「多く・速く・立派に・コストを節約して(多快好省)社会主義を建設しよう」、にも似ている。

毛沢東は「十五年で英国を追い抜き、二十五年でアメリカに追いつく」と言い、大衆製鉄運動や、人民公社の導入によって増産し、イギリスやアメリカに追いつくはずだった。しかし、例えば、土着技術の精錬で製造された鉄は使い物にならず、作物を食い荒らす雀を大量に駆除したところ、イナゴの大発生を招き深刻な不作に陥った。一説に、経済的損失は一二○○億元、五九年から六一年までの餓死者は、一五○○万人とも言われている。

「京津(けいしん)都市間鉄道」は、○七年一二月一五日に全線開通し、○八年のオリンピックに合わせて、八月一日から営業開始。「京滬(けいこ)高速鉄道」は、○八年四月に着工し、当初は五年の計画だったが、短縮されて二○一二年の春の運行開始予定となり、更に前倒しになり、一一年六月三○日に開通、七月一日から営業を開始した。これは、七月一日の、中国共産党設立九○周年に間に合わせたためだ。

本来は、安価で人民の満足する服務をする事が、共産党に課せられた課題だったはずだ。しかし、「功を焦りすぎる」あまり、一気呵成に先進国を追い抜き、世界水準に押し上げようとする。ひょっとすると、二○一二年に開かれる中国共産党一八回大会に向けて、或いは、二○一三年の国務院総理・全人代常務委員会委員長・政治協商会議全国委員会主席などの政府要職任期満了に向かって、高速鉄道建設という超巨大国家計画を、常軌を逸した速度で推し進めてしまう。「人民の為の服務」は栄達のための手段へと変化する。

二○一一年三月発表の「第12次五カ年計画(二○一一年~二○一五年)」に関する鉄道部の計画によれば、二○一五年までに、全国鉄道営業距離は12万Kmに達し、同年の全国鉄道客運量は三○億人、貨物運送量は四八億トンを目標とすると発表している。この計画に従って建設の続くかぎり、借入金と利息は急速に膨らみ、銀行からの莫大な借り入れと、その生み出す巨額の利子は、時間的に見れば二○一八年頃に、債務返済のピークを迎えると言われている。

・劉志軍の逮捕
二○一一年二月一二日、鉄道部部長 劉志軍が解任された。公式な理由は「重大な規律違反の嫌疑」との発表に止まった。しかし、順風満帆に見えた高級幹部が、俄に罷免されたとあって、様々な憶測を呼んだ。

香港《明報》の報じた所によると、重大な規律違反の疑いで辞職した元鉄道部長劉志軍は、鉄道の入札に関して、山西省の女性商人 丁書苗(ていしょびょう)と結託し、八.二二億元の仲介料を得たと指摘された。更に、ある報道では、仲介料は二○億元にのぼり、劉志軍は、この巨額な資金で官位を買い副総理になり、中央権力の中心である政治局に入ろうという計画まであった、と指摘している。

《経済観察報》の報道によれば、二○○七年以来、劉志軍は丁書苗等と共謀し、丁書苗の鉄道建設プロジェクトの入札を助けて利益を得、国有資産に巨額の損失を与えた。高速鉄道の多くの資材は、すべて丁書苗の経営する博宥集団からの提供で、市場価格に比べて二から三倍の価格だった。例えば、高速鉄道の二つの障壁・環島音屛は、内地の他の企業でも生産できるが、しかし劉志軍は、博宥の資材を使うよう指定した。

劉志軍は職権を濫用し、多くの企業に八個の鉄道建設プロジェクトを落札させ、丁書苗を通して、落札した企業に対して、投資額の2.5%~4%の仲介料、総額八.二二億元を手にした。その中から、丁書苗は個人的に四.二二億元を手にした。国家審計(監査)署の監査結果では、丁書苗はいかなる仲介サービスも提供していない。ただ黒幕に操られて、入札の結果に口を出したが、これは《入札法(招標投標法)》の規定に違反し、違法行為で不法な利益を獲得していた。

この他《多維新聞網》は、次の様に報じている。劉志軍事件の金額は二○億元に達しているが、他の汚職事件と違うのは、事件が発覚した時、劉志軍本人は一分も手を付けておらず、この二○億の賄賂は丁書苗の会社の口座に預けっぱなしにされていた点だ。捜査官の話によれば、丁書苗は、劉志軍は以前、彼女に「この金は無駄に使うな、俺のためにきっちり保管しておけ、後で必要になる金だ。」と命じた、と供述している。(『劉志軍20億を準備し 買官で副総理となる(劉志軍準備20億買官做副總理)』「香港明報專訊」2013年6月11日より)

例えば、国共内戦、朝鮮・中越戦争等も終結し、社会が比較的安定した時期に入った時、特別な能力もコネも血縁関係も無い人物が、党内で出世をするためには、どの様な道があるのだろうかと思う。チベットやウイグルを平定して共産党に差し出すにしても、暴動鎮圧に対する世界の目は厳しく、また、普通の幹部では、その様な好機に巡り会う事も難しい。しかも、現在、人民が共産党員になるのは、栄達のためだ。

中国高速鉄道は、○四年一月に『中長期鉄路網計画』が国務院を通過してから、僅か四年で300km/hの「京津都市間鉄道」を開通、翌○九年には、世界最長・最速の「武広旅客専用線」開通、○九年九月には、今回事故の起こった「温福、寧台温高速鉄道」、一○年二月「鄭西旅客専用線」、四月「福州・アモイ高速鉄道」、五月、成都と都江堰(とこうえん)を結ぶ「都灌(とかん)高速鉄道」、七月、上海と南京を結ぶ「滬寧(こねい)都市間鉄道」、一○月南京・上海・杭州を結ぶ「寧滬杭(ねいここう)高速鉄道」が開通し、一二年までに1.8万キロを目指す。

・四○日に五回と四日で三回
中国高速鉄道は世界最長・最速・発展速度も迅速、その上、工業や経済を牽引する事業だったかもしれない。しかし、性能と安全には早くから疑問が持たれ、「武広旅客専用線」や「京滬高速鉄道」が営業に入るや、様々な故障が頻発した。

事故に関する比較的早期の記事は、○九年一二月二六日開業の「武広旅客専用線」に関する記事で、開業して四○日で五回の故障報道が流れた。その報道と内容は以下の通り。

 *喫煙で発車できず
一二月二九日午後一五時頃、CRH2型G1048次列車(広州北発ー武漢着)で、設備故障が起こり、出発が遅れ、後続の列車も遅れた。鉄道部門の技術員が直ぐさま現場に赴き調査したところ、乗客の喫煙が原因だった。G1048次列車は一四時五○分発車のはずが、一七時三五分に二時間四五分遅れで発車。後続の列車二本も遅れ、数千名の足に影響が出た。「鳳凰視頻」は、これは国民の素養に関する事故と発表。(「騰訊新聞」『武広高速鉄道 喫煙のため発車遅れ 乗客車内に三時間缶詰(武广高铁因吸烟停运 乘客被关车内三小时)』2009年12月30日07:49、「鳳凰視頻」『星島:乗客喫煙違犯で武広高速鉄道の故障を招く(星岛:乘客违禁吸烟导致武广高铁故障)』2009-12-31 08:16:18 等)

 *ATPの誤作動
一二月三○日午後三時三○分頃、長沙南駅発広州北行きのG6009次列車の自動列車保護装置(ATP)が誤作動して警報が鳴り、長沙南駅に引き返した。列車は一時間一○分遅れの、午後四時四○分、長沙南駅を出発した。ATP系統の過剰反応だった。武広高速鉄道は開業初期なので、ATP系統は比較的敏感に設定されており、鉄道部門は実際の運行状況に基づき調整を行う、と発表した。(「鳳凰博報」『武広高速鉄道再度故障 保護系統の過剰反応で一時間遅延(武广高铁再遇故障 因保护系统敏感晚点1小时)』2009-12-31、「大河網」『武広高速鉄道はなぜ40日に5回も事故を起こしたのか(武广高铁为何40天5起事故)』2010年02月08日来源:大河网より)

 *メールで発覚
二○一○年一月一九日、G6008次列車が、一九時五○分に広州北駅を出発した直後に停車。数度に渉り再起動に失敗した。二○時二一分頃、乗客の一人が広州日報の読者で、広州日報の記者にメールを送った。事件が発覚した。二○時二七分のメールでは、列車は依然として止まったままで、乗務員が乗客の目的地を記録している、と書かれていた。三分後のメールでは、列車は動かず、多くの乗客が騒ぎ始めた。その四分後、列車は二○時三三分に、漸く正常に走り出した。この読者は一号車に乗車しており、列車長に原因を尋ねたところ、主電動機の故障で、もし再起動ができなければ、予備の車両で中継輸送をするつもりだ、と話したと言う。(「捜狐新聞」『武広高速鉄道走行中に再び故障 再起動に失敗し停車40分(武广高铁行驶中再出故障 重启未果停运40分钟)』来源:大洋网-广州日报 2010年01月20日より)

 *長沙で二時間
二○一○年二月三日、G1002次列車は九時一分広州南駅を出発し、一二時八分武漢駅に到着するはずだった。ところが、出発して八分後、列車はトンネルで二分間停止し、問題が発生したようだった。その後、九時五四分・一○時一分とそれぞれ停止し、最終的に長沙で修理のために二時間あまり停車した。車内には、凡そ一千名の乗客がいたが、事故が起きたのは昼時だった。乗客は列車側に食事のサービスを要求したが、列車側は上からの指示待ちだ、と答えた。そこで、今度は、自分で負担するので(付近に買い物に行きたいので、列車のドアを開けてくれ)、と要求しても開けるはずもなく、車上の食品も売り切れてしまっていた。空調が効いてはいたが、車内は息苦しかった。一一時二○分頃、13号車で、幼児が頰を真っ赤にして、息苦しそう、騒いでいた。母親は子供を抱いてドアの付近を行きつ戻りつしていた。父親は、「俺の子供は耐えられないんだ、子供を外に出してくれ、空気を入れ換えてくれ!」と叫んでいた。しかし、列車のドアは開かない。焦った父親は安全ハンマーでドアのガラスをたたき割った。その後、この父母と子供は警備員によって列車から降ろされた。午後二時五五分、列車は漸く終点の武漢に到着した。途中、車内放送での謝罪が流れた。列車側の説明では、機械の故障で、湖南省長沙で修理するしかなかった。この列車は、武漢直行の列車で、停車したのは線路上だったために、安全のために、ドアを開けて降ろす事ができなかった、と述べた。記者が今回の事件について武広高速鉄道に尋ねたところ、設備故障のために、一一時二二分に長沙南駅で臨時停車し、終点の武漢に約二時間遅れで到着した。長沙南駅では、直ぐさま乗客に対して食品と飲料水が提供された。鉄道部門は、列車の故障で影響を受けたG1002次列車の乗客に対して、深い謝罪の意を表した。現在、専門家と技術員が、事故車両の全面検査を行っている、と述べた。(「本地宝・広州交通」『2月3日武広高速鉄道故障で長沙で滞在2時間(2月3日武广高铁故障长沙滞留两小时)』2010年6月9日)

 *駅で一万人が足止め
二月七日午後四時頃、武広高速鉄道韶関(しょうかん)区間で設備故障が発生し、広州南駅発の九本が遅れ、一万人以上の旅行客が駅構内に足止めとなった。開業して一週間も経たない広州南駅は、突発事件の対処と、旅客への対応に課題を抱えていた。記者が七時三○分頃、広州南駅に着くと、まだ大量の乗客が、一階のホールに集められ、正確な発車時間が放送されるのを待っていた。鉄道警察と武装警察も、構内の秩序維持に務めていた。ホールには備え付けの椅子も無く、乗客は、新聞・雑誌、或いは、荷物を椅子代わりにして座っていた。鉄道部門がメディアに対して発表した内容には、“遅延した列車の乗客には、無償で食料と飲料水を提供する”、と書かれていたが、乗客は、食品も飲料水も手にしておらず、放送も聞いていない、と語った。売店は三階にあるだけ、トイレも一階には無いので、カップ麺を買うにも、トイレに行くのも、人の波を押しのけて行かなければならなかった。列車が復旧すると、警察・従業員とボランティアは、エスカレーターの前に待機し、順序よく乗客を二階の待合室に誘導していた。(「人民網」『武広高速鉄道韶関区間で故障が発生 広州南駅で足止めの客一万余(武广高铁韶关段发生故障 广州南站滞客万余)』2010年02月07日来源:《广州日报》)

「京滬(けいこ)高速鉄道」の場合は、六月三○日に開通、七月一日から営業を開始したが、七月一○日から一三日までの四日間に、三度の故障が起こり連日CCTV13で取り上げられた。建設費用最高額の高速鉄道が、連日故障した事で世間は騒然となった。

 *雷雨で停電か?
七月一○日午後六時頃、山東省管内で激しい雷雨が起こり、京滬高速鉄道の曲阜東(きょくふひがし)から滕州(とうしゅう)・棗荘(そうしょう)間で送電線が接触して停電した。この影響で、京滬高速鉄道の一九本に遅れが生じた。京滬線G39次列車に乗車して、北京から杭州に向かった乗客の話しでは、列車は午後六時五○分、山東省泰安で動かなくなった。窓の外には、高速鉄道の他の車両が停まっていた。車内の空調は効いており、照明も一瞬消えたが、すぐに戻った。その後、乗務員が来て、照明の半分を消したので、列車内は混乱した。乗客は皆、いつ頃、発車するのか知りたがったが、列車長からの明確な答えは無かった。その後、七時四一分、G39次列車は再び動き始めた。一○時三○分、乗務員が乗客に対して、この列車は一時間五○分遅れであると知らせた。同じ頃、京滬鉄道G151次列車も橋の上に停車していた。全車両停電で空調も停まり、乗客は車内に閉じ込められて、暑くて息苦しい、とミニブログ(微博)上へ書き込んでいた。(「sina全球新聞」『京滬高速鉄道19本の列車 雷電で接触故障により遅延(京滬高鐵19趟列車因雷電引發觸網故障晚點)』2011年07月10日 12:07新京報、その他)

 *専門家の意見
七月一二日一一時、京滬高速鉄道安徽宿州付近で、送電設備が故障し、応急修理を経て、一三時に復旧した。故障によって、少なくとも一一本が遅れて北京南駅に到着し、三本が北京南駅から遅れて発車した。列車が遅れた事に対して、鉄道部門は遺憾の意を表した。一二日午後、北京南駅地下一階の改札口で、行き先を示すボード上の、「G」から始まる京滬線の列車には、均しく“延着”或いは“延着未定”と表示されていた。記者が延着の列車を数えてみると一一本あった。今回の故障では、多くの乗客がミニブログ(微博)上に書き込んだ。ある乗客は、午前一一時頃、京滬線D182次列車は宿州のケーブルに接触したんだ。窓の向こうで火花が光り、悲鳴と共に列車は止まった。G14次列車の乗客によれば、蚌埠(ぼうふ)を過ぎたところで、時速30~45kmになり、五分後75kmになった。G109次列車の乗客によれば、八時四三分に北京南駅を出発、一一時三○分頃、山東省棗荘付近で停車。「車内の秩序は乱れず、空調も正常に作動、照明も問題なし。」列車は一二時五○分に再び走り始めたものの五分後に停車。午後一時三八分に再び走り始めた。

専門家は、事故発生とその結果からみて、今回の設備故障とは、送電系統に問題が生じたのだ、と分析する。京滬沿線は一区間おきに、三相22万ボルトを単相2万7500ボルトにする変電所があり、これが、牽引ステーションとなる。牽引ステーションの電流は“手と手をつなぐ“方式で、列車の走行中は、前後二つの牽引ステーションから電力が提供される。この方式では、もし、一つの牽引ステーションに問題が生じても、列車への電力の供給が保証できる。しかし、供給電力が減少すると、同じ時間内で、二つの牽引ステーションの間を通過する列車の数量も減少し、或いは、列車も減速する。ネットユーザーが、列車が走り出しても30~40kmほどで、その後70kmの速度が続いた、と書き込んだのはこのためだ。ケーブルの火花というのは、恐らく、ケーブルに接触した瞬間、高い電圧が流れ、施設を保護するための遮断器が働かず火花が出たのだ。もし、牽引ステーションが壊れても、電源を切り替えるだけなので、数秒か数分あれば済む。今回の電気系統の故障では2時間かかっているが、事故の確率から考えて、最も可能性が高い原因は三つ、第一は設備本体の品質の問題。第二は、設備の取り付け、施工の技術に問題がある。第三は、人為的な問題だ。天候の影響を受けた可能性は極めて低い、と述べた。(「sina全球新聞」『専門家 京滬高速鉄道は品質の問題で送電設備に故障が生じた疑いあり(专家称京沪高铁疑因质量问题发生供电设备故障)』2011年07月12日 11:27)

 *「おから」批判
一三日に、また停電事故が発生し、約二時間半の遅れが出た。四日間で三度の故障で、その施工の質と安全に、ネットユーザーからはまるで「おから」のようだ、との批判が噴出した。乗車していたユーザーによれば、一三日午前九時四三分、上海虹橋(こうきょう)発・北京南駅着のG114次列車は、一○時頃に突然故障し、一度常州北駅に停車した後、一一時四五分に鎮江南駅に到着した。出発後の最高時速は、僅かに130km程度だった。この時点で一時間四○分の遅れが出ていた。列車長の話しでは、前方の「信号が消えた」ので運行できない、という事だった。一二時四三分、乗客は別の列車に乗り換え目的地に向かった。幸いな事に、他の列車に影響は出なかった。ユーザーは「おからの様だ」と攻撃し、大学教授は、頻繁に事故が起きるのは、「送電技術が、必要なレベルに達していないのだ」、電気系統の専門家によれば、一、二時間で修理できるのは、設備と施工の質に関係があるからだ、と述べた。京滬高速鉄道は、全長1318km、中国の旗艦級工事として知られており、並びに、この高速鉄道の技術でカリフォルニア・英国での契約を勝ち取ろうとしている。しかし、京滬高速鉄道は、施工の質に疑問が持たれている事を除いても、少なくとも、十件の汚職事案が絡んでおり、鉄道部は営業のコスト削減のために、更に、350kmの最高時速も引き下げてしまった。((「sina全球新聞」『4日で3度の事故 中国京滬高速鉄道に「おから」攻撃(4天3次出包!中国京沪高铁遭轰「豆腐渣」)』2011年07月13日 18:51澳洲日报)

CCTV13の「NEWS1+1」は七月一四日晩の放送で、一○日から一三日までに起きた三度の事故を取り上げて特集を組み、事故が起こってからの人民の不満、例えば、事故原因と運転再開までの説明がない、停電で暑い、水も食料も満足に配られない、水がないのでトイレも流すことが出来ない等の問題を取り上げた。これに対して鉄道部の報道官王勇平は、鉄道関係を代表して謝罪し、「今は故障の集中する『産みの苦しみの時』すぐに停車するのは人命を尊重しているため。今後は、事故の場合は、迅速に原因を調べ、すぐさま修理し、同時に、迅速に乗客に知らせるようにする。」と述べた。しかし、番組放送後、僅か十日後に車両の転落事故が発生した。

・分散する性急病
今回、鉄道部部長の劉志軍、及び運輸局長の張曙光が逮捕され、脱線事故が起きてしまったが、地方幹部は今も鉄道建設に充分乗り気である上に、『中長期鉄路網計画』は国務院で批准されているので、俄に撤回する事はできない。いわゆる"四縦四横"(四縦は、北京を起点として上海・深玔・大連、及び、杭州から深玔。四横は、徐州から蘭州、杭州から長沙、青島から太原、南京から成都)を始めとする四二路線は、一二年までの完成目標を掲げ、一二期五カ年計画に対する鉄道部の計画でも、一五年までの敷設計画が立てられている。

銀行への負債は膨らみ経営破綻をきたしかねない上に、「性急病」にかかった高級幹部の汚職を考えれば、建造物が粗悪である可能性も出てくる。鉄道部部長の劉志軍は二○億元、張曙光はアメリカとスイスに二八億ドル、米国内三か所に豪邸を所有していたが、これは、湖北省下の地方都市の二○一○年のGDPに匹敵する金額であると言う。

鉄道部以外にも危険な建造物はある。創立九○周年記念として六月三○日に開通した、青島膠州湾大橋(ちんたおこうしゅうわんおおはし)は、山東省青島市で開通した世界最長、全長41.58 kmの自動車専用の海上橋。「山東高速膠州湾大橋建設総指揮長」の姜言泉(きょうげんせん)は「中国東部地区の海上橋の中で耐震性が最も高い」と豪語するが、CCTV13は開通一ヶ月後の七月四日に取材を行い、粗悪な工事の現状を報告している。

報道によれば、「青島膠州湾大橋」のガードレールのボルトとナットは締められておらず、酷い所では、ボルトも無く穴だけが開いている。或いは、ガードレールとの間に指が入るほどの隙間がある、ガードレールそのものが設置されておらず道路だけ、という状況で、一日に一万八千台が行き来している。路面は平坦なので、車はスピードを上げて走るが、照明灯も殆ど設置されていない。工事責任者の話では、照明灯を設置し完成するまでにあと二、三ヶ月はかかるという。

高級幹部の提唱する「跨越式発展」は、中国経済と人命を危険にさらしながら拡大を続けている。

・事件の行方
さて、脱線事故の発生後、七月二八日夜七時のCCTVの報道で、温家宝は事故現場で哀悼の意を表し、続いて病院に行き、被害を受けた乗客に対し、医療費の免除を約束した。事故現場で最後に発見された二歳八ヶ月の少女も見舞い、事故の遺族に面会して深々と頭を下げた。そして、事故原因を徹底的に追及し、公正な裁きをすると、テレビの前で約束する姿が全国に流れた。

事の真偽は定かではないが、事情通は、二○億の用途とは、恐らく劉志軍が検察部門に減刑のために支払う賄賂から、はては、政治局への路を切り開くための「買官」の費用が含まれている、と明かした。五八歳の劉志軍は、非常に大きな野心を抱いている。彼の家族は、劉志軍は「一意専心」国務院副総理になろうと頑張っており、現在、工業と交通主管の副総理である張徳江(工業、交通、人力資源、社会保障、企業改革、安全生産等担当)の地位を引き継ぎ、また、中央権力の中心である中共中央政治局に入るのだ、と言いふらしていた。劉志軍の政治的野心は、鉄道部門ではつとに知られており、彼が失脚した後、ある鉄道部の従業員が鉄道論壇に文章を発表し、「彼(劉志軍)は彼の願望を実現したはずだ。局に入った。もっとも彼が入ったのは公安局だがね。」、と。(『劉志軍20億を準備し 買官で副総理となる(劉志軍準備20億買官做副總理)』「香港明報專訊」2013年6月11日より)

買官は、売る者と買う者で成立する。当然、人民の目は国務院と政治局常委会(国家の最高指導部)に向けられる。国務院総理の温家宝としては、道義的責任上からも、共産党が人民の負託に応えられるという事を証明するためにも、報道陣の前で事故原因と公正な裁きを約束しなければならなかったはずだ。しかし、鉄道部の膿を絞り出し、共産党の正義を示す事は容易な事ではない。

例えば、今回の事故での死傷者数でさえ、二四日の「新華社通信」電子版では、死者三五名、負傷者二一○名。「東方衛視」(上海広播電視台傘下の衛星放送局)の放送では、二四日朝七時のニュースで、死者六三名、負傷者二○三名。結局、二八日、夜七時の「CCTV」(中国中央電視台)の報道で、死者三九名、負傷者一九二名に落ち着いたが、列車の中に千名が閉じ込められたり、駅で一万人が足止めされたという報道が連日流れているのだ。人民がこの数字を信用しているかどうかは疑問だ。その上、事故に対する反響が大きすぎて共産党政権を揺るがしかねないとの判断からか、或いは、鉄道部及び政治局常委会内部の抵抗からか、はたまた、海外での販売競争を懸念しての事か、事故報道は、二八日以降、急速に少なくなっていった。

・結び
「建造物の安全性は、技術よりも制作側の道徳心に比例する」と言ったのは、CCTVのアナウンサーだ。日本でも欠陥住宅が問題になったことがあったが、個人の会社と国家的計画とでは規模が違う。問われているのは、個人ではなく国家を代表する政権政党の道徳観念だ。

買官がただの噂に過ぎなかったとしても、或いは、権力闘争の果ての汚職の摘発に過ぎなかったとしても、摘発される幹部が後を絶たないのは、共産党内に蔓延る腐敗の深刻さを示している。汚職は鉄道部だけではない。通信業界では中国移動(チャイナ・モバイル)党組書記、副総裁の張春江が、○九年一二月から取り調べを受けていたが、一一年七月二一日に七四六万余元の不正蓄財をしたとして、政治的権利を終身剥奪・個人財産を没収の上、一審で執行猶予二年の死刑判決を受けている。(「THE WALL STREET JOURNAL中文版」『中国移動もと副副総裁張春江 執行猶予付死刑判決(中國移動原副董事長張春江被判處死緩)』2011年 7月 22日 17:22)

一九七八年秋にはじまった自由・民主・人権を求める運動「北京の春」の中心人物である魏京生は、「マルクス主義のプロレタリア独裁理論を「人としての平等な生活権をも否定する」と批判し、マルクス主義的な社会主義を「それが社会制度になったとき、例外なく非民主主義的、反民主主義的な専制的な社会主義となった」と批判した。」『共産党の選択』より。

先日、中国政府系格付け会社「大公国際資信評価」が、鉄道省発行の債券に「トリプルA」と最高の評価を与え続けていると報道された。高速鉄道の敷設による負債は、鉄道部以外に地方政府や企業も抱えている。負債を抱えていても、すぐに破綻をきたすわけではないが、この格付けの結果は、政府の情報操作ではないかとの疑いを禁じ得ない。

ただ、その一方で、脱線事故の報道に限らず高速鉄道の事故を伝えるニュースは、八月に入っても流れ続けており、この文章中に取り上げた記事もネット上では閲覧可能だ。今のところ、自浄作用が働いているのだろうか、報道の規制は完全には敷かれていない。この事は、困難な事ではあるにしても、胡錦濤・温家宝政権の、鉄道部の汚職を含めた事故の究明、或いは、共産党内の腐敗排除への意気込みが覗える。

ならば日本は、隣国の汚職に手を貸さないのは無論のこと、贈収賄の果てにできた負債を、何らかの形でも引き受ける事のないようにしたい。少なくとも、好調と言われて久しい中国経済が、実は破綻に向かって進んでおり、その状況に国務院でさえ手を焼いている事実を頭の片隅に置きながら、共産党の自浄作用に拍手を送りつつ、注意深く見守ることが肝要と思う。

  (終)


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