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三伏の候

2009年07月23日 | うんちく・小ネタ

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「拝啓、三伏の候」

なんていう書き出しで始まる暑中見舞いを受け取ったことは有りませんか?
手紙の書き方辞典などで時候の挨拶を探すと、この「三伏」という言葉が見つかるかもしれません。

三伏は、夏の暑さが厳しい時期を表す言葉です。「三」とありますように、初伏・中伏・末伏の三つがあり、元々は暦注として暦の上に書かれていたものでした。

現在はあまり顧みられない暦注ですが、六曜などと違って平安時代の具注暦などにも登場している由緒正しい暦注です。
この日は、「季節と日の相性の悪い日」なので、占いで言えば「凶日」の一つとなります。

三伏の日がどのように決められるかというと、計算方法には幾つかの「流派」があるのですが、主流となっているのは、

  初伏 ・・・ 夏至以後、三度目の庚の日 (7/14)
  中伏 ・・・ 夏至以後、四度目の庚の日 (7/24)
  末伏 ・・・ 立秋以後、最初の 庚の日 (8/13)

とう計算方式です。( )の日付はこの方式で計算した2009年の日付です(もちろん新暦での日付)。「庚」は日の十干で「かのえ(金兄)」と読みます。

三伏の日は季節と日の相性が悪いと書きましたが、これはどんな意味でしょうか?
まず三伏の頃の季節を考えてみましょう。三伏の日付は年ごとに若干変動しますので、今年の日付で考えてみます。

  2009年の三伏は、7/14,7/24,8/13

日付を見ていただけで暑い頃だなと思いますね。この時期の季節としての特徴といえば、まずこの「暑い」をあげることになるでしょう。
暑い季節といえばそれは夏。夏は五行説では「火気」の季節です。三伏の頃は夏の暑さの厳しい時期ですから、夏の気である火気が盛んな季節です。

  三伏の季節 ⇒ 火気の盛んな季節 (夏の気の盛んな季節)

ということになります。
一方三伏の日はというと、「庚(金兄、かのえ)」の日です。金気は秋の気。ものが冷たく冷えて行く気です。「金兄」の兄は陰陽説の「兄弟」の兄で、性質の強い様を表します。
よって、

  三伏の日  ⇒ 金気の盛んな日  (秋の気の盛んな日)

ということになります。五行説には相性の良い「相生(そうじょう)」という関係と、相性のわるい「相剋(そうこく)」という関係が有ります。

相生は例えば木と火の関係があります。木は燃えて火を生み出しますからこれを、「木生火(木、火を生ず)」と書き、相性の良い関係と見ます。
相剋は例えば火と金の関係があります。火にあたると金属は融けてしまいますからこれを「火剋金(火、金に剋(か)つ)」と書き、相性の悪い関係と見ます。

上の例でも分かるとおり、三伏の日の季節は「火」、日は「金」ということで季節と日の関係が悪いのです。夏(火気)と秋(金気)という関係で言えば、

  夏の気が盛んで、秋の気を覆う(伏する)日

ということになります。
三伏は、前半部の「夏の気が盛んで」から、とっても暑い季節を表す言葉としても使われるようになり、夏という季節がその中に生まれた秋の気(庚の日の性質)を覆い尽くしてしまう日なので、季節と日の相性の悪い日ということで、「凶日」とされたのです。

「凶日」に関しては迷信以外の何者でもないので気にしないことですが、暑中見舞いに、「暑中お見舞い申し上げます」なんて書くより、「三伏の候」とさりげなく使ってみると、文面が引き締まるように思いますが・・いかがですか?

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