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騙されやすい人の自尊心

2007年12月15日 | 時事
円天:タレント30人に関与で質問状 被害対策弁護団

 気持ちは分からんでもないが歌手やタレントだって「仕事」としてやったんぢゃねぇのか。L&Gのイベントに出演してたタレントが貰った報酬は(よしんば相場より高額だったとしても)あくまで「出演料」であり,それは被害者たちが得ようとしていた利益よりもなんぼか「まっとうな労働の対価」ではありませんか。

 それにこれは前にも書いた(年利36%って言ったら例のグレーゾーン金利の上限のはるかに上だよ)が,あの円天の利殖話なんて「信じる方がバカ」の類いの詐欺である。「事業への積極的関与が判明すれば,法的責任の追及も」と言うが,それを言ったらコロリ騙されて「オトクなのよ」と友人知人にも勧め,共倒れで損した人だって「積極的関与」はしてんぢゃないの?

 こういう話を聞くとオレ,むかぁし浅茅陽子が「エバラ焼肉のたれ」のCMに出演していながら正直に「私は菜食主義者なんでお肉は食べません」と言って非難され,結局干されてしまったことを思い出す。もし今でもL&Gの自転車操業が続いてたとしてごらん。そこのイベントに出演したタレントが正直に「あれはでも詐欺やないの?」と発言したら,会員の皆さんは彼または彼女を支持すると思いますか?

 もちろんなんも悪いことをしてないエバラ(あそこの「黄金の味」はオレも好きだ)とL&Gは同列には論じられない。が,「まだ詐欺だとバレてないL&G」とそのタレント,そして客の関係は,あんときのエバラと浅茅陽子と客(例えばオレ)の関係と同じだろ。賭けてもいいがあんたらはタレントを非難してL&Gを信じ続けると思うね。なぜって騙されるというのはそういうことだからだ。

 たとえばオレは上戸彩が結構気に入っているのだが,使ってるケータイは au (のプリペイド)である。AOKIでスーツも買わなければオロナミンCも飲まない。普通そうでしょ? 好きなタレントがCMやってるってのを理由にして金を使う人はそうはいない。ましてや虎の子のヘソクリかなんかを「あのタレントがイベントに出てるから」って理由で預けますか? L&Gのイベントに誰が出演したか知らぬが,そもそも被害者のうち自腹でその歌手のコンサートなりに行った人は,いるかも知れないが少数派であろう。

 ヒトには自尊心というものがあって,基本的に「ワタシは騙されない」と思っている。だから騙されたかも知れないという疑いが浮上するとまずそれを否定する。どうしても否定できなくなると自分がしでかした判断を他人のせいにする。つまり「ワタシがL&Gに騙された責任のいくばくかはイベントにでてたタレントの何某にある」と思うことで心理的にラクになるんだよね。特にこのテの「利殖詐欺」の場合,そう思うことで楽して儲けられると思ってしまった自分のセコサを見つめることから逃れられる。

 世の中には「詐欺に遭いやすいヒト」ってのがいる。1度騙されたヒトは懲りて2度と騙されないかというとさにあらず,詐欺師は1度騙されたことのあるヒトの名簿を「カモリスト」として珍重する。最近の認知症の年寄りを狙うような手口は別として(あれは詐欺というより断れない人を狙う恐喝だ),原野商法とかマルチとか「ぬれ手で粟的な得する話」に繰り返し乗ってしまうのはそのヒトがちゃんと「騙されたワタシ」に向き合わないからだ。

 自尊心というのは生きていくに必要なもんだが,必要以上に肥大しがちなもんでもある。肥大した自尊心は自分の現在の境遇が不当であり,もっといい状況にあってしかるべきだと思う。詐欺師はそこを衝くんだよ。……結局騙されやすい人ってのは自分が魔法でカエルにされた王子様かお姫さまだと思ってるのだ。それってつまりガキってことですよ,違いますか?



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