lizardbrain

だらだらぼちぼち

STEVIE WONDER JAPAN TOUR 2007

2007年03月04日 00時18分45秒 | 音楽

          

2007年2月28日 大阪市中央体育館

あれだけ大会場でのライヴを毛嫌いしていたワタクシだったが、自分でも予想もしていなかった東京ドームでのストーンズ観戦以来、すっかり方針転換してしまった。

「会場の大小なんて、どうだって良い。行ける時には行ってしまえ」と。

ただ、どうして体育館なんかでライヴをやるのか、、、、、、、?
それだけが気がかりだったのだが、だだっ広い会場のアリーナ席に座って天井を見上げてみると、なかなか立派な音響設備が備わっているようなので一安心。
場内の薄暗い照明のために、楕円形になった体育館の壁の様子は良く分からなかったが、単なる体育館では無い事は確かなようだ。

申し込んだチケットが当選した時点で、この大阪市中央体育館という施設について、ググってみたのだが、やたら、プロレスやバレーボールの試合の記事ばかりがヒットしてしまった事もあって、マジで心配していたのだ。
何よりも、アリーナ席のステージから20列目のほぼど真ん中という、イナカ者には有り得ないほどの好ポジションに座れた幸運を満喫し、場内に流れるスライの曲なんぞさも全て知っているかのような顔をし、リズムに合わせて、スネアドラム代わりに膝小僧を叩いたり、バスドラ代わりに床を踏みつけたりしつつ、開演を待った。
開演予定時刻の7時ちょっと前に、先ほどまで空いていた前の席に二人連れのお兄さん達が座ったのだが、その片割れの背の高いほうが、あろう事か、ワタクシの前の席に座ってしまった。彼は、ワタクシよりも背が高いだけでなくて、座高も高い。
座高が高いだけではなくて、小ナマイキにもニット帽を被っているので、余計に座高が高く感じられて仕方が無い。
ここは、体育館なのだ。
コンサートホールみたいに、後席に行くほど床がせりあがっているわけではなく、床は完全にフラットなのだ。
まさか、見知らぬ相手に対して、「もっと、小っちゃくなれ!」と、指示するわけにもいかない。

だいたい、大物ミュージシャンほど、観客を待たせる事がステイタスだと思っているのかどうか?
おそらく予定時刻から30分くらいは遅れただろう。
散々待たされたが、ステージ上にミュージシャン達が登場し、イントロが流れる中、手拍子と大歓声を受けて、バックミュージシャンに誘導されスティーヴィー・ワンダーが登場した時には、そんな不満など吹っ飛んでしまった。
そして、スティーヴィーがキーボードの前に座った時、先ほどからかすかに心配していた事が現実になった。
前列のニット帽青年のおかげで、ワタクシの視界が左右に分断されてしまうのだ。「もっと小っちゃくなれ。」と、声には出さずに心の中に呪いの炎をメラメラと燃やした。
だが、首を少し左に傾けてステージを眺めると、なんとかスティーヴィーの姿がニット帽の陰に隠れる事だけは避ける事が出来るようだ。
この日は、ワタクシの弱点である腰痛方面の調子も良く、いつでもスタンディング体制に移る覚悟も出来ていたので、
「仕方が無い、どうせ、すぐにオールスタンディングになってしまうのだから、しばらくこのままでガマンしよう。」
という方針を打ち立てたのだが、ワタクシの予想に反して、様子がおかしい。
スティーヴィーが登場した瞬間に、アリーナ席の一部ですぐさま立ち上がったグループがいたのだが、それは左右の端っこの方の座席で、ワタクシの席から見える中央寄りの座席のほとんどの人がお行儀良く座っている。
この段階でワタクシだけが立ち上がって、後ろの席の人に迷惑をかけるわけにも行くまい。
そのまま、左に首を傾けてステージを眺めていた。もちろん、既に1曲目の演奏は始まっている。
だが、様子がおかしい。
今度は、なんだか、ワタクシ自身の様子がおかしいのだ。

首を傾けながら眺めるステージの風景が、じんわりと滲んでくるのだ。
キーボードを弾いていたスティーヴィーがその左手を伸ばし、グランドピアノの上に置いたクロマチックハーモニカを手にし、流麗な間奏を吹き出した時から、何故だか滲んでくるのだ。
つい目を閉じてしまい、俯いてているとこぼれてしまいそうになるので、少しの間だけ天井を眺めていた。
確かに、スティーヴィーの曲は好きだ。
だが、良く聴いていたのは、友達が持っていた『KEY OF LIFE』というLP2枚半(?)セットのアルバムであったり、通り一遍のヒット曲だったりする程度だ。
ヒットした曲名は憶えていても、それが収録されたアルバムのタイトルすら憶えていないのがほとんどだ。
とりたてて、スティーヴィーの曲にまつわる悲しい想い出があるわけでもない。
それなのに、どうしてこうなるのかが良く分からない。
いよいよ、スタンディング体制になってしまうのが、一番の解消法だと思うのだが、先にも言ったように、周囲の状況は、ワタクシ単独のスタンディングを許してくれそうにも無い。

かねがねスタンディング否定派のワタクシであったが、こうなると、アリーナ全体がスタンディングに移行する瞬間を待つしか術が無い。

立ち上がれ若者達
GIVE PEACE A CHANCE

そして、その瞬間は、突然にやって来た。
何曲目だったろうか?
今日は無理だが、後日、どっかでこの日のセットリストを手に入れて確かめる事にしよう。
イントロでルーズなフレーズで遊んでいたスティーヴィーのクラヴィネットが、強烈にファンキーな閃光を放った時、ようやく、アリーナ席前方の観客達が、とりつかれたように一斉に立ち上がり、待望のスタンディング大会が始まった。
立ち上がって手拍子を打っていると、滲んでいた物が消えてなくなった。
「よしよし。」と思っていると、クラヴィネットを駆使した曲は、続く『迷信』で終わってしまった。
同時に、次に来る静かな曲調を予想したのかどうか、周囲の人達は、またもや着席してしまった。

う~~~~~~~~ん、、、、、、確かに、珍しくも礼儀正しくマナー遵守精神に富んだ大阪人の姿を目にするのも感動的ではあるが、、、、、、
今日のところは、ブッ通しでオールスタンディングでも良かったのに。
どうやら、君達とは、まだまだ意思の疎通が足りないようだ。
そして、またもや何曲目だったろうか?
バラードの名曲、『LATELY』で、ワタクシの異変が再びブリ返してきた。
エンディングでは、何故だか、ハーモニカを吹きながらスティーヴィーがステージ上手奥に退場してしまった。
ステージから去ったものの、ハーモニカの演奏は続き、その間、ステージ上の暗がりで何人かのスタッフが動いているのがボンヤリと見て取れる。

続いて、これまたバラードの名曲、『OVERJOYED』が演奏される。
イントロ開始と同時にキーボードの奥付近にスポットライトが当たり、先ほどスタッフがうごめいていたあたりにテーブルを挟んだ男女が何やら飲み物を手に座っている。
相変わらず、スティーヴィーは奥に引っ込んだままだが、スティーヴィーの唄声が聴こえて来る。
スティーヴィーの唄が始まると、テーブルを挟んでいた二人の男女が立ち上がり、ダンスが始まった。
立ち上がった二人は、どう見ても日本人のダンサー。
双眼鏡でじっくりと確かめたのだから、間違いない。
二人とも見知った顔ではないが、いや、男性ダンサーの方は、どっかで見覚えがあるような?
女性ダンサーは、杉本彩でも山本モナでもなさそうで、実にしっかりとした本職のダンスを披露している。
女性ダンサーは鮮やかなブルーのドレス、男性ダンサーもビシっときめたフォーマルで、踊っているダンスは、ここ最近バラエティ番組で目にする機会が増えた、いわゆる社交ダンスのようだ。
なるほど、このダンサー達のフィーチャーを強調するために、スティーヴィーがステージから消えていたのかもしれない。
曲の途中から、ようやく、スティーヴィーがステージに戻り、社交ダンスとスティーヴィーの唄の極めてオシャレなセッションが展開される。
しかし、いくらなんでも、『LATELY』『OVERJOYED』を2曲続けるのは、反則じゃないかい、、、、、、、、?
スティーヴィー、、、、、、、、、?

おかげで、一時的にスタンディングでおさまっていた物が、ブリ返してしまったではないか?
そして、それはワタクシ一人では無い様子で、前列右側の女性は、既にハンカチで防戦態勢に入っている様子。
そんなところをあんまりジロジロ見ては失礼だし、何よりもワタクシ自身に伝染してしまいそうだったので、目をそらすことにしたが。
おそらくこの日、決して悲しくなったわけではなくて、オープニングと同時に、トテモ美シイ物ニ触レタカラだと思う。
そして、『LATELY』『OVERJOYED』という、モット深クテ美シイ物ニ触レタのだ。

ワタクシの衰えた脳細胞は、この日の演奏曲をここで記す事は出来ないが、スティ-ヴィーの現在に至るまでのヒット曲で彩られたライヴだった。
本編最終曲(つまりアンコール前)の演奏前に、スティーヴィーによるメンバー紹介があった。(紹介の順番は忘れたが)女性コーラス3人、男性コーラス1人、キーボード、パーカッション、ドラムス、ベース、ギター、トランペットとサックス奏者の名が呼び上げられ、『OVERJOYED』で踊っていた二人のダンサーの名も紹介されて、再度、ステージに現れた。
スティーヴィーが呼び上げたダンサー達の名前は、確かに日本人の名前だった。女性ダンサーの名は、杉本彩でも山本モナでもなかった。
全ての紹介が終わった後、ステージ上のミュージシャン達がスティーヴィーを指差していた。
バックミュージシャン達のジェスチャーで紹介されたスティーヴィーに対しての大きな拍手の中、スティーヴィーは、『Singers and Dancers』にも感謝の気持ちを捧げていた。『Singers and Dancers』、、、、、、、、、、

この日のオーディエンス、つまり、ワタクシ達、観客の事だ。
だが、ワタクシは、ここでスティーヴィーに謝罪しなければならない。
「ボス。スティーヴィー。申し訳ない。ダンスは完璧にこなせたが、コーラスの方は、2箇所だけ外してしまった。次の機会があれば、再び、Dancer & Singer として現地採用されるように精進する事を約束させて欲しい。」

アンコールも終わって、いったん出口方向に3列分ほど進んだ時、Gジャンの上に着ていたジャケットを忘れてしまった事に気付いて、自分の座席に戻った。
パイプ椅子の下に畳んでおいたジャケットを取り上げて、椅子の背もたれに貼り付けられていた座席番号が印刷された紙切れが目にとまった。
家に帰ってから驚いたのだが、この紙切れがジャケットのポケットに入っていた。
いや、決して、ワタクシが持ち帰ったわけではない。
紙切れの方が、勝手にポケットに飛び込んできたのだろう。
まあ、この日が、2日連続の大阪公演の最終日だったわけだから、誰に迷惑をかけるわけでは無い。
それに、この件は、スティーヴィーに報告する必要も無いだろうと思う。



体育館を出て、プールの前まで来ると、最寄り駅の中央線朝潮駅の入り口がゴッタ返していた。
ハンドマイクを手にしたカン高い声のガードマンが、「現在、朝潮駅ホームは入場制限がかかっています。」と、何度も繰り返していた。
ホテルまではホンの2駅だが、とても歩いて行く気にはなれなかったので、行儀良く列に並んで待つ事にした。
まさか、1時間も待たされる事は無いだろうなぁ?
と不安だったのだが、予想に反して、10分後には(地上を走る)地下鉄に乗り込むことが出来た