『週刊ヤングサンデー』の休刊により、強引にオプラ・ガルテ船内での騒動にケリが付けられた第20巻です。『週刊ヤングサンデー』2008年35号までと、『週刊ビッグコミックスピリッツ』同年41〜43号分を採録。
掲載誌の休刊を前提に描かれた部分なので内容に関して云々するのは避けたいのですが、バーディーとつとむの「二心同体」が須藤と早宮に知られてしまうという部分は少しだけひっかかりました。
『機動警察パトレイバー』(漫画版)が連載されていた頃、「読者は内海が黒幕だと知っているのに特車二課は知らない」という箇所が漫画情報誌(COMIC-BOXだったかな)で誰かに「謎解きの物語として破綻している」と非難されていて、当時私はそれは楽しみ方が間違っていると感じたものです。
「読者は本当のことを知っているのに登場人物は知らない」というのは、推理小説だったら決して使ってはいけない禁じ手だけど、これは「謎解き」を楽しむ物語ではなくて、「公務員の葛藤としがらみ」を軸に展開するギャグ漫画(だと私は思います)。それでいて、バーディー・シフォンも泉野明と同じように「お役人」に徹することの出来ない公務員で、本当は正義の味方をやりたいのに職場(体制)がそれを許してはくれないという葛藤を抱えている(いた)わけです。
末端の職員の愚直な正義感は社会全体の秩序を司る省庁の方針とは相容れない。未開の星の原住民を任務遂行中にうっかり殺してしまったという失態は「事故」として丸く収めるのがお役所の本来のあり方で、宇宙全体の利益を考えればその程度の失態は始末書一枚で不問に付し、バーディーがその後も命令通りに馬車馬のように働くのが本当。千川つとむの身体を修理するための費用だって税金ですよ(笑)? その「無駄遣い」を許す連邦にも、バーディーの上司にもいくばくかの良心があるという、それは「希望」だと言って良いでしょう。
ゆうきまさみ先生は過去に(あ〜るで)こんな自分でも公務員試験に受かったと自嘲気味に言ってますが、実は「公務員のドラマ」というテーマをずっと追い求めてきたのではないでしょうか。税金泥棒と揶揄され、お役人と罵られ、つまらない職業の代名詞のように言われる公務員だけど、彼等だって人間で、恋(発情)だってするし、理想だって持っていて、過去があるから今の自分があり、そして未来に夢みているモノだってある。
『鉄腕バーディーEVOLUTION』第1巻に続きます!
お薦め度:★★★★☆
漫画というのは夢そのもの。
ヤングサンデー休刊になんとなく罪悪感を抱いて(別に抱かなくていいんだけど!)、私は去年スピリッツやスペリオールも少しの間、買いました(笑)
店頭に溢れ、山のように積み上げられる漫画単行本や漫画雑誌は豊かさの象徴です。これを失えば国も滅びます。
いち個人では読み切れないほどに次から次へと刊行されるマンガは、戦後の焼け野原から這い上がった我々日本人が叶えた「夢」の一つなのだから。たとえそれが他の国々の犠牲の上に成り立っている幸せであっても。
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公務員云々は、確かにいろいろ考えさせられますね。
さんごだって、とさか先輩だって公務員だったもんなぁ。
ようやく揃いました。
俺は公務員の家に生まれたのでお役人様の味方です(笑)