アルバニトハルネ紀年図書館

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『イワンのばか』

2012-04-12 | 読書

 十数年ぶりに読み返してみたら、とても面白かった。読みやすいのに何だか深い。
 実は、思い出すと少しいたたまれない気持ちになる、苦い記憶も蘇った。どういう物かというと、十代の頃に「自分はものすごくバカだ」と、身にしみて知った時の恥ずかしさだ。

 「無知の知」と呼ばれる考えは、倫理の授業で聞いて何となく知っていたけれど、中学や高校の頃、私は心のどこかで「自分はそんなにバカじゃない」と自惚れていた。そして私大の付属校に通っていた僕は、受験勉強をせずに進学してしまった。高校時代に「古代史ってわりと面白いなあ」と思っていたので、「何かそれっぽい講義も取ってみよう」と、軽い気持ちで日本史の授業を選んでみた。その最初の授業で、いきなり僕の知らない単語が繰り返された。
「まるくすしかん」
その言葉を知らなかったのは僕だけだったらしく、教室の皆は当然のように授業に参加していた。僕は動揺し、「その『まるくすしかん』って何なの?」と尋ねるのを、ためらってしまった。一年生だった僕は慌てて、図書館で「マルクス史観」が何なのかを誰にも知られないようにこっそり調べた。そして翌週から、「オレは『マルクス史観』が何なのか、前から知ってましたよ」と装いながら授業に加わり、自分の無知を隠し通してしまった。

 それは僕にとって、二重の意味で恥だった。受験勉強をせずに入学してしまった自分が、きちんと受験勉強をした生徒と比べて明らかに劣っていたのが、小さい方の恥。「マルクス史観」が話題となった時に、「僕それ、何なのか知りません」と正直に質問せず、こっそり調べてから知ったかぶりをしてしまったのが、大きい方の恥。「オレってこんなに無知で無能でバカだったんだ…」と、密かに落ち込んで己の愚かさを恥じた。

 『イワンのばか』に描かれている兄弟や国家の在り方には、現代でも学ばされる物があるような気がする。
 「私はバカです。バカなので、お金を稼ぐ方法を一種類しか知りません。そして、いつかは大病をするか老人になるので、お金が稼げなくなります。イワンの妹のように、障害を持って生まれてくる人もいます。だから年金とか社会保障とか、そういうのを国はちゃんと整えておいて下さい」
 そんなふうに解釈するのは、飛躍しすぎかもしれないけれど。

 現在の日本に当てはめてみれば、原発の再稼働や消費税増税の是非に関して、「断固反対」または「速やかに実施せよ」と断言するのは、私には難しい。感情によって「嫌です」と反対するのは容易くとも、実際には「私はバカなので、電力需給や経済の仕組みについて、隅々まで全てを自分で理解することはできません。専門知識を持っている人の指摘を参考にしながら、バカな私が納得できる政策を掲げている党や候補者に投票します」というのが、本音だ。裏返せば(あるいはイワンが老悪魔に尋ねたように?)、政府に「そんな言い方じゃ全然わかりません。オレにも理解できるまで、もっとちゃんと説明して下さい」といって教えてもらう権利が、私たちにはあると思う。


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