〈川俳会〉ブログ

俳句を愛する人、この指とまれ。
四季の変遷を俳句で楽しんでいます。「吟行」もしていますよ。

拾い読み備忘録(75)

2016年03月28日 18時14分36秒 | 小説
私たちは、ゾウゲヤシの畑から戻ってくる。いや、私たちは、ゾウゲヤシの畑から戻ってはこない。私と二人のホセファがゾウゲヤシの畑から戻ってくる。いや、私ひとりがゾウゲヤシの畑から戻ってくるが、そのころにはもう、日が翳りだす。この土地では、夜が明けないうちに、早ばやと日が暮れる。モンテレイはどこにいても、そうなのだ。朝起きて外を覗くと、もう暗くなり始めている。だからいっそ、起きないほうがいいのだ。
だが今、私はゾウゲヤシの畑から戻ってくるところで、時刻はすでに昼だ。かんかん照りの太陽がそこらの石ころをひび入らせる。きれいにひびが入ったところで、私はその石ころを拾い、瓜ふたつの妹たちを狙って投げる。いもうと、たちを。いもと、たちを。いも、たちを・・・・・。
「めくるめく世界」レイナルド・アレナス 鼓直/杉山晃訳 国書刊行会 1989年
                                  富翁

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