今日はアメリカにとって記念すべき日である。民主主義がついに打ち勝ったのだ。私は先ほど歴代大統領同様に誓いを述べた。とはいえ、アメリカの歴史は私や数少ない誰かに委ねられているのではなく、全てのアメリカ市民に委ねられている。アメリカは何世紀にも渡って嵐や争い、平和な時期を乗り越えてここまでやってきた。我々の道のりにはまだ先がある。我々はこの危険な冬を乗り越えるために急ぐ必要がある。乗り越え、回復させなければならないものはあまりに多い。これほどの困難が一気に押し寄せた時代は、アメリカ史上でも初である。すでにコロナウィルスによる死者は第二次対戦中のアメリカの死者数を上回っている。何百万人もが失業し、何万もの企業が倒産している。人種差別の是正や、全ての人の平等という問題はもはや後回しにできない。その一方で極右や白人至上主義が台頭している。
こうした困難を乗り越えるため、アメリカの真髄を取り戻し、よき未来へと向かうためには、言葉以上のものが必要である。重要なのは一致団結することだ。今日、この就任式において私の魂全てが、ひとつのことに捧げられている。それはアメリカをひとつにすることである。アメリカ人を、そして国を再びひとつにすること。全てのアメリカ人にその大義に向かってほしい。団結すれば、われわれは素晴らしいこと、重要なことができる。こんな状況下で団結について語ることを、馬鹿馬鹿しい幻想のように思う人もいるだろう。どれほどまでにこの国が深く、現実的に分断されているか私は自覚しているつもりである。しかし、こうした事象は今にはじまったことではない。アメリカの歴史というのは、全ての人が平等に作られたというアメリカの理想と、人種差別や恐れなどが我々を分断する、厳しい現実との間の絶え間ない戦いだったのだ。
人々の団結がなければ、平和や進歩、国家は成り立たず、苦しみや怒り、カオスだけになる。現在はアメリカにおける歴史的危機と困難の時期である。前に進む道、それは我々の団結なのだ。それができれば失敗することはない、と私が保証する。アメリカにおいて我々が力をあわせて行動したときに失敗したことなど一度たりともないからだ。だからこそ今日、ここから、再び新たに歩き出そうではないか。お互いに歩み寄り、耳を方向け、理解を示そうではないか。アメリカの姿はもっと素晴らしいはずなのだ。108年前の大統領就任式では、投票権を求めた勇敢な黒人女性に対して何千もの抗議者たちが現れた。しかし今日、ついにアメリカ史上初の女性副大統領が誕生する。私に向かって「物事は変わらない」と言ってはいけない。
私は全てのアメリカ人にとっての大統領になるつもりである。私を選んだ人たちだけでなく、選ばなかった人のためにも尽くすつもりだ。カトリックの聖人、聖オーギュスティーヌは「国民というのは彼らの愛する共通の対象によって定義されている」と言った。アメリカ人が共通して愛するものとは機会、安全、自由、尊厳、尊敬、名誉そして真実である。
現在多くのアメリカ人が不安に満ちているのは承知している。仕事や健康、そしてこれから何が起こるのか。まったくだ。しかしその解決策は内にこもり、自分たちの殻の中にこもることではない。こうした馬鹿馬鹿しい戦いをもうやめようではないか。私の母がいったように、少しの間だけ、相手の立場に立ってみたらどうだろう。人生というのは何が起こるかわからない。ある時は手を借りる立場かもしれないが、ある時は手助けする立場になることもある。政治的闘争はわきにおいて、この困難な冬に国家として力をあわせて乗り切るべきである。夜中じゅう泣いていても、朝には幸せがやってくることは実際に起こる。我々は力をあわせて今を乗り越えなければならない。一丸となって。
私たちはこの類まれに困難な時期を乗り越えることができるのだろうか?子供達によりよい未来を手渡すことができるのだろうか?私はそうすべきであるし、それができると信じている。ひとつになれば、私たちは新しいアメリカの歴史を描くことができる。恐れや分断、暗黒ではなく、希望、つながり、光の物語を描くことができるのだ。未来のいつの日か、我々は歴史の呼びかけの答えたのだと言われる日が来るように。人々の目の前で民主主義や希望、真実や正義が消え去ったのではなく、生きを吹き返したのだと言われるように。そしてアメリカが自由を保ち、再び世界の指標となる日が来る様に。それこそがわれわれの先祖が与えてくれたものであり、我々が子孫に残すべきものなのだ。神がアメリカとアメリカ人を祝福してくれることを願って。
1月30日に開催したWorld News Café、バイデン大統領就任演説全文読解の要約です。