La Terrasse

カフェ文化、パブリックライフ研究家 飯田美樹のブログ。著書に『カフェから時代は創られる』

コロナ禍だから考えたい カフェや喫茶店の可能性

2021-03-11 18:12:31 | サードプレイスとしてのカフェ
クラブハウスでのカフェ・トーク、
『コロナ禍だからこそ考えたい 
カフェの可能性とは?』では
千葉県千葉市で自家焙煎コーヒーの
喫茶店を経営している
「じゃくう鳥」のオーナー
中田直樹さんと
お話させていただきました。
 
 
中田さんは5年前にお店をオープン。
コーヒーの名店として著名な
カフェ・バッハの田口さんから
焙煎の技術を学び、コーヒー豆を
売るお店としてスタートしました。
 
 
じゃくう鳥というのは、コーヒー
チェリーが大好きな鳥のこと。
コーヒー好きが集まる木のような
場所を作りたいという想いで
名付けたそうです。
 
 
開店時には、駅前や人通りが
多いところにした方がいいと
言われることも多かったそうですが
田口さんの「場所にこだわるな、
そこを一等地に仕立て上げれば
人はやって来る」という教えのもと
駅から離れた淑徳大学の近くに開店。
立地が悪いと人がやって来ないため
様々な努力をする必然性が生まれます。
 
 
その甲斐あって、じゃくう鳥では
お客さん同士の会話も生まれ、
あそこにいけば面白い人に出会えると
いわれる場所になりました。
もともと5種類から始めたコーヒーも、
今では19種類あり、好みに合わせて
選べるようになっています。
 
 
カウンターがあったおかげで
会話が生まれやすかったじゃくう鳥。
コーヒー好きが集まる店を目指して
いたとはいえ、病気から恋愛まで
様々な話題が話せる場になっていました。
 
 
コロナの緊急事態で現在店内は休業中。
それでも豆を買いに来るお客さんたちが
とても会話をしたそうだといいます。
これまでは人に会いたい、話したいと
自覚していなかった人も、コロナに
よってその重要性を痛感するように
なったのかもしれません。
 
 
カフェは「日常にある異空間」だと
中田さん。仕事をなんとか終えて
お店に行くこと、頑張ったらその店で
ケーキを食べること。それを励みにし
カフェを目指す人もいるでしょう。
 
 
在宅勤務が可能とはいえ、家庭という
ファーストプレイスとセカンドプレイスが
ごっちゃになった場所は、どんなに装飾を
こらし、庭でお茶をしてみたところで
サードプレイスの代替にはなりません。
そこには人との出会いもなければ
驚きや予期せぬ出会いもなく、あるのは
いつもと変わらぬ風景です。
 
 
コロナで人に会いたいという気持ちを
自覚した人が多いからこそ、
サードプレイスとして機能する
あたたかいカフェは、実は
待望されているのではないでしょうか。
 
 
そんな中、現在流行りのビジネスとして
オンライン・サロンが注目され、喫茶店の
多くは経営が困難になっています。
人が人と出会いたい、つながりたい、
話を聞いて欲しいと思っているのに、
そんな需要がオンラインに吸い取られて
しまうのはもったいないように感じます。
 
 
じゃくう鳥のようにあたたかく
人を受け入れてくれるカフェが増えたら、
そんな場所に行きたい人は
今こそ多いのではないでしょうか。
 
こうした需要があるにも関わらず、
多くの店が困難を抱えている理由は
もしかするとコロナだけでは
ないのかもしれません。
その一因として考えられるのは
店側の自己主張が強すぎることです。
 
 
2000年には東京でカフェブームが起こり、
その後ほとんどのカフェが閉店しました。
カフェは総合芸術だから、店主のセンスの
良さをそこで味わえばよい?
でもそうした店は店主の我が強く、
来た人はあまり自由に振る舞えません。
 
 
とはいえ今でも自己実現の場所として
カフェを捉えている人は多いようです。
 
 
インスタ映えするじゃくう鳥にも、
カフェを開きたいという夢をもって、
やたらと店内の写真を撮り、
その小物はどこで買ったのかなどと
聞いてくる方もいるそうです。
「ハコをつくりたがっている人は
多いけれども、ソフトが伴っていない
人が多いのでは」と中田さん。
 
 
カフェは単なるお洒落なハコで、
インスタ映えすればいいのでしょうか。
カフェの本質は一体どこにあるのでしょう。
それを考えさせられる機会になりました。
 
 
人をあたたかく受け入れ、
もてなしてくれる場所が自分の身近に
あるということ。日常の中の非日常で
元気をもらってまた頑張ろうと思い、
次の一歩を歩めること。そこに人を元気に
してくれる美味しいコーヒーがあれば
それほど素晴らしいことはありません。
 
そんなサードプレイスとしての
カフェであれば、お客さんとの関係も
相思相愛であたたかくなり、より一層
求められる存在になるのではないでしょうか。
コロナだからカフェはつぶれる?
いや、コロナ禍だからこそ、真のカフェは
もっと求められているのでは?と
可能性を感じられた時間でした。
 
 
※上記は3月10日にクラブハウスで開催した
第2回カフェトークでの中田さんや
参加者の方との会話をまとめたものです。
中田さん、みなさま、ご参加いただき
ありがとうございました。
次回は3月24日(水)20時から開催します。

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