「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

法政大学vs筑波大学(第3回関東大学春季大会 2014.4.26)の感想

2014-04-29 17:32:10 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


束の間のセブンズの春が終わり、いよいよ関東大学ラグビーは春季大会に突入。昨年は大幅にシステムが変更になり、AからCの3つのグレードに分けた各グループ内での6チームの総当たり戦となった。果たして今年もシステムが変わるのかと危惧していたが、去年と同じ方式に落ち着いた。やはりこのスタイル(総当たり制)があるべき姿だと思うので、ひとまずは安堵している。

そういったシステムの問題はさしおいても、どうしても気になるのがリーグ戦グループ校のチーム作りの遅れ。元々、春の段階ではチームの仕上がりよりも選手個々のパワーアップとかスキルアップに重点を置き、シーズン直前の夏合宿でチームを仕上げるのが従来のリーグ戦スタイルだったと思う。が、それも春季大会で帝京をはじめとする対抗戦グループ校の基本線ができあがっているチームとのシビアな戦いに直面すると「格差」が拡がっていくのもやむを得ないと感じる。型にはめてガチガチにチームを作る必要はないが、最低限の方向性や約束事を決めて春の段階でもチームをまとめておくべきではないかと思う。そういった意味でも、本日の法政と筑波の闘いは興味深い。

実は、本日が初めての法政グランド訪問になる。春季大会は原則各チームのホームグランドでの開催になり、観戦位置もスタンドがある競技場とは違ってグランドレベルから。でも、これが(全体の動きを立体的に見ることには向いていなくても)意外といい。まずはホームチームが普段どんな環境で練習に取り組んでいるのがわかることが大きい。そして、目の前でプレーしている選手達を観ることで各選手のサイズやプレーそして性格などの特徴が掴めるのがグランドレベル観戦の醍醐味といえる。

京王線のめじろ台駅から「法政大学行き」のバスに乗って約20分で大学構内に到着。しかし、そこからさらに20分近く上りの道を歩かないとグランドに着かないことは知らなかった。余裕をみて早めに家を出たことが幸いして、キックオフの10分前に滑り込みセーフで試合場に着くことができた。



◆メンバー表を見比べて

2日前に発表になる両チームのメンバー表を見てまず感じたのは、このメンバーなら法政が優位に違いないように見えたこと。現状のほぼベストと思われる選手達が名を連ねている法政に対し、筑波は主力選手をかなり欠いている。とくにFWは先発でバリバリのレギュラーはFWではNo.8の山本くらい。ただ、BKは竹中の戦列復帰が明るい材料。その竹中と久内、FB山下一で組むバックススリーは、絶対的なエースの福岡を欠いていても破壊力は高いと言える。強力な選手達が揃った法政FWに対し、FW戦での劣勢を予想される筑波が、そこをどう凌ぐかがこの試合の私的見どころだ

法政はFWもBKもタレント揃いの陣容と言える。FWではHO小池、No.8西内主将(昨シーズンはFL)が筑波にとっては脅威だし、U20の大会から帰国したLO牧野内も楽しみな選手。BKにしてもCTB金はタックルが持ち味で、両WTBの半井と門間にFB今橋を加えたバックスリーはトライゲッター揃い。そうなってくると、やはり興味は昨シーズンに強い関心をよんだHB団の構成がどうなるかということにになる。本日はSH大政とSO井上が先発で起用された。強いFWを活かす形でテンポ良くボールをBKに展開するような形は生まれるだろうか。



◆前半の戦い ~お互いにミスが目立つも法政やや優位の試合展開~

グランドを斜めに横切るようにやや強い風が吹く中、風上?の筑波のキックオフで試合が始まった。まずは法政がカウンターアタックで小池がタテに力強くボールを運ぶ。No.8西内も含め、今やオープンに展開するよりもFWの力強いタテ突破が法政の持ち味となっている。法政は筑波陣22m内にボールを持ち込むもののノックオンでチャンスを潰す。しかし、直後のスクラムでプレッシャーをかけ、SHからのパスをWTB半井がかすめ取るようにインターセプトして難なくインゴールへ。法政が相手のプレゼントのような形で幸先良く7点を先制した。

筑波もすかさず反撃。自陣22m付近でのPKから素早くオープンに展開して左WTB久内がゴール前までボールを運び、ゴール前でのラックからSH吉沢が抜け出してゴールラインを超えた。GK成功で7-7の同点となる。その後、法政はFWのタテ、筑波はBK展開という形で攻防を繰り返すが、双方ともノックオンなどのミスが多くなかなか得点板の数字が変わらない。

8分には法政が筑波のPKがノータッチとなったところをカウンターアタックで攻め上がる。法政のボールキャリアーが筑波のディフェンダーに囲まれて手詰まりとなったところで昨シーズンも散見されて様なノールックの無責任パス(に見えた)が出てしまいチャンスを逃す。せっかくトライまで行けるところだったのだから丁寧なプレーがあればと惜しまれた。14分、今度は筑波がラインアウトオープン展開でラストパスが竹中に通ればというところで痛恨のノックオン。観客にトライのイメージが見えたところでのミスは痛かったが竹中も苦笑いするしかない。

両チームのアタックにミスが出て膠着状態の中、27分にようやく得点板が動く。法政がカウンターアタックから攻め上がり筑波ゴール前でラック。ここからLO川地が抜け出してトライを奪う。GK成功で法政が14-7と再びリードを奪う。しかし直後の30分、筑波はHWL付近のラインアウトからFWでボールを前に運び法政DFと交錯しながらもNo.8山本が法政ゴール前までボールを力強く運ぶ。そして、フォローしたHO長谷部がゴールラインを超えた。GK成功で再び14-14と試合は振り出しに戻る。

法政はせっかくFWでボールを前に運んでもあと一歩のところで反則を犯し得点チャンスを潰すのに対し、筑波が少ないチャンスを活かして得点し追い付く展開。筑波は法政FWのコンタクトの強さに遭ってFL元田、CTB鈴木が相次ぎ負傷交代を強いられる。ただ、押し気味の法政も高速選手が揃っているはずのバックスリーにいい形でボールが渡らない。法政のオープン展開に対して筑波がCTBで徹底的につぶしにかかる。抜けた!と思っても横からタックラーが現れて強烈なタックルを見舞うところはなかなか圧巻だった。

ただ、前半の終盤はFWの圧力に勝る法政がペースを握る。このままタイスコアで前半終了かと思われた39分、筑波は自陣ゴール前でのマイボールスクラムでまたも痛恨のミス。SHからのパスをFL堺が狙いすましたかのようにインターセプト。堺は難なくインゴールまでボールを運び21-14と法政7点リードで前半が終了した。法政にとってはまたしてもプレゼントしてもらったような得点とは言え、後半に向けていい形で前半を戦い終えることができた。逆に筑波にとっては痛いミス。やはりこの試合は戦前の予想通り法政の勝利におわるのだろうか。

しかし、法政のアタックは強力だが組織的に整備されているようには見えない。FWが大きくゲインしたところで、次のアタックに対する形が見えてこない。この試合は筑波サイドの22m付近の位置で法政の筑波陣でのアタックはほぼ真後ろから観る形になったが、筑波の拡がりがあり整備されたディフェンスに対してどうしても法政の選手達の動きがバタバタしているように見える。後半にとくに顕著になるのだが、ブレイクダウンでしばしばボールが停滞していたのは法政がアタックの局面。筑波がなるべく時間をかけずにシンプルにボールを捌いていたのとは対照的だった。



◆後半 ~建て直しに成功した筑波に対し、殆ど何もできなかった法政~

後半、筑波は両PRを体重の重い選手に入れ替えてスクラムの建て直しを図る。SHのミスとは言え、インターセプトによる2失点はFWがスクラムで劣勢に立たされていたことも大きい。ケアすべきは西内や小池と言った突破力のある選手のタテ攻撃で、それを防ぐためにもスクラムの安定は欠かせない。ここがしっかりすれば筑波の持ち味である組織ディフェンスを機能させることで法政のアタックを止める手がかりが掴める。

前半も終盤辺りからは押し込まれてはいてもゲームをコントロールしていたのは筑波の方だったように感じられた。後半はこのことがとくに顕著になり、法政は殆どいい形を作れなくなる。逆に筑波は切り札の竹中を軸としたアタックが機能し始める。7分の竹中をターゲットとしたキックパスは惜しくもタッチを割ってしまうが、17分、遂に竹中に待望のトライが生まれる。センタースクラムからBKに展開して法政BKの裏に絶妙のキック。これを竹中が拾ってゴールラインを超えた。GKは失敗するが19-21と筑波のビハインドは2点に縮まる。

ここで筑波はFL奥山に代えて目崎を投入。ハイボールにも抜群の強さを見せるパワフルな選手を入れたことで筑波のFWの安定感が増したように見えた。BKに較べるとFWがウィークポイントと見られる筑波だけに、山本に続く強力な選手の存在は頼もしい。劣勢に立つ法政も、ときおり目の覚めるようなアタックを見せて観客席を沸かせる。とくに24分に見せたFWを絡めてショートパスの繋ぎによる強力なタテ突破は、(これも)ノールックのラストパスが丁寧に繋がれば確実にゴールラインまで行けたプレー。ミスに助けられたとはいえ、筑波は命拾いした。

26分、筑波はカウンターアタックから竹中が右サイドのタッチライン際を激走して大きくゲインしCTB亀山雄大のトライをアシストする。GK成功で筑波は26-21と遂に逆転に成功。こうなると竹中は止まらない。31分、トライには繋がらなかったがFB山下から絶妙のタイミングでパスを受けてまたもやラインブレイク。そして34分、筑波は法政陣10m付近のラインアウトからオープンに展開してまたもWTB竹中が右サイドの突破に成功。パスを受けた左WTB久内がトライを奪いGKも成功して33-21とほぼ勝利を手中にしたかに見えた。

しかし、ここからホームでこのままでは終われない法政のスクランブル気味の猛攻が始まる。後半のラスト5分間はスイッチが入ったときの法政の凄まじさを感じさせる時間帯でもあった。オープンに大きく展開すると言うよりはテンポ良く短いパスを繋いでタテを突くというアタックだが、組織DFの筑波は逆に翻弄されてしまう。38分に金がゴールラインを超えたところで牧野内のプレースキックも決まり28-33と法政のビハインドは5点となり、俄然法政サイドの観客席が盛り上がる。それにしても、牧野内のキックは惚れ惚れするくらい安定している。ロングキック1発という局面では彼がGKを蹴る場面も見られることだろう。

終盤には筑波の選手の足も止まりかけており、法政の逆転勝利も視界に入った中、筑波も最後の粘りを見える。元来、厳しい局面に追い込まれたときに強さを発揮するのが筑波の選手達。結局、法政が攻めきれないまま試合終了となった。とくに後半は殆どの時間帯でゲームを支配したのは筑波。しかし終わってみれば5点差の僅差の好ゲームということになっている。ラグビーの評価の難しさを感じさせられた試合だった。



◆僅差の中に感じられた、けして小さくない差

出場メンバー、得点経過、試合結果から見たら、「筑波はこのメンバーでよく勝てた」と「法政はまずまずのスタートが切れたのでは?」という判断になるかも知れない。しかし、実際にゲームを観た感想は、得点差には表れない、けして小さくはない差が両チームの間にあることを感じさせられた試合だった。とくにそれを強く感じたのは、両チームの後半の戦いぶり。端的に言うと、メンバー交代などで建て直しに成功した筑波に対し、有効な手が打てたとは言い難い法政ということになる。

両チームとも緒戦ということもあり、ミスが多かったことは事実。だが、BKに展開して大外で勝負しトライを取るという意図が明確に見えた筑波に対し、法政がどんなラグビーをしようとしていたのかが最後まで見えなかったことが(リーグ戦Gファンにとっては)気になった点。法政のアタックがしばしばブレイクダウンの局面で停滞したことでそんなことを感じた。逆に後半の筑波はシンプルにBKに展開するだけでなく、様々なオプションを試みる余裕も見せた。基本線がしっかりできているから試合中に応用も可能なのだろう。

もちろん、去年の今頃に較べたら法政も状態はいいとは思う。今後、春シーズンの間に試行錯誤を重ねて秋のリーグ戦では優勝争いに絡む強力なチームを作れると思う。しかし、例えばだが、この日対戦した筑波は法政が試行錯誤をしている間にチームを進化させていくだけの下地が既にできていると感じる。法政に限らずリーグ戦G校のチームを見ていてフラストレーションを感じるのはチームができあがるのがとにかく遅いこと。「春はウェイト重視」とか、「チーム作りは選手の成長を見ながら」とか言っているうちに、対抗戦Gのトップ校との力の差が縮まるどころか日々開いていくことに気が付いていないとしたら残念だ。せっかく春に腕試しのチャンスができたわけだから、やられっぱなしでは終わらないように頑張って欲しいと切に願う。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第28回 Seven A Side(関東... | トップ | 帝京大学 vs 大東文化大学(... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

関東大学ラグビー・リーグ戦」カテゴリの最新記事