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祝、今季初勝利/燃えよサンウルブズ!

2017-04-14 01:21:54 | 頑張れ!サンウルブズ


ここまで開幕5連敗のサンウルブズ。しかし、1つ2つ勝っていてもおかしくなかった南アフリカ遠征での戦いぶりを見ても、昨シーズンより着実にパワーアップしていることは間違いない。嬉しい誤算と言ったら頑張っている選手達に申し訳ないが、新たに抜擢された選手達の想像以上の活躍で(キングズ戦は除き)安定した戦いができている。欲しいのはとにかく勝利。プロチームである以上、内容がよくても負けが続けば評価されず、スポーツニュースからも消えてしまう。

バイウィーク明けの久々の秩父宮でのゲーム。何となく勝てるのではというそよ風のような気持ちが頭の中を駆け抜けた。チケット入手は2日前だが、たとえバックスタンドB指定の後ろの方の席でもその場に居るのと居ないのとでは全然違う。キックオフ10分前、競技場は既に「今日こそは勝利を」の期待を胸にスタジアムに足を運んだ熱心なファンで埋まっている。昨シーズンも感じたことだが、国は関係なく「いいラグビーが観たい」という想いで足を運ぶ外国人が多いことが華やいだムードを醸し出しているのもスーパーラグビー観戦の楽しさ。心配された雨も小降りとなり、いよいよキックオフ。



昨シーズンは毎試合毎試合がどうなることかの連続で、とくに離脱者が増えた終盤戦は厳しい戦いを強いられたサンウルブズ。そう思うと、フレッシュなメンバーの想定を超える活躍もあり、今シーズンは安心して試合を観ることができる。ここがこのチームの確実な進化を感じる部分。緒戦の大敗したハリケーンズ戦、ミス多発で自滅した感がある2戦目のキングズ戦とは別のチームになっている。課題だった密集周辺のディフェンスが改善されたことと身体能力の高い松島がFBに定着したことでキック処理も安定してきた。アタックでは見せ場を作れるチームだから守備力が上がれば勝利は遠くないはず。

開始早々の5分でさほど難しくないPGを外し、いや~なムードがスタンドを覆ったのも束の間。直後の6分にサンウルブズの持ち味であるテンポの良いパス回しから初スタメンとなるウォーレンボスアヤコのトライで幸先良く先制する。サンウルブズは10分にもPGで加点し、8-0と上々の滑り出しだ。ディフェンスで孔が開くことも殆どない。とくに、FW第1列の3人(山本、庭井、山路)が起き上がりこぼしのように倒れても一瞬のうちに体勢を立て直して守備陣形を整えてしまうところは感動的ですらある。BKに展開されても組織的に面を作って飛び出し気味にプレッシャーをかけるから相手は蹴るしかなくなる。



12分にブルズにラインアウトからの一瞬の隙を突かれてトライを許した後は、お互いに一進一退の緊迫した攻防が繰り返される。23分にサンウルブズがPGを決めて11-7とリードを拡げるが、ブルズも25分にPGを返して11-10の一点差のまま前半が終了。強豪クラブを相手に普通に戦えていることは、かつての日本のラグビーでは考えられなかったことだ。ブルズがキックを多用し、ミスも出たことで助かっている面があるのは確か。バイウィーク明けのサンウルブズに対し、ブルズには遠征疲れがあるのかもしれない。とはいえ、集中力が切れないディフェンスの頑張りが光った前半のサンウルブズだった。

後半はクリップスに替わって田村が司令塔として登場。交替のアナウンスにスタンドから一際大きな拍手が起こったことも頷ける。木津や稲垣といった頼もしい選手達がベンチに控える陣容は昨シーズンなら考えられなかったこと。48分にPGで逆転を許し、ブルズの圧力が増す中でもディフェンスが破綻しなかったのは交代メンバーをフルに使って戦えるから。田村の投入でテンポアップを目指すサンウルブズに我慢の時間帯が続くが見応えのある攻防が続く。63分には攻め込みながらのミスで切り替えされて被弾し点差を9点に拡げられるが、不思議とこのまま行かれてしまうという感じにならない。



残り時間も少なくなった68分、サンウルブズが得意とする小気味よい繋ぎから松島がゴールを目指す。タッチライン沿いの左には福岡が併走する状況でゴールは目前。ここで誰もが松島からラストパスが渡るものと思った瞬間、松島は内側に切れ込んでゴールを目指すがタックルに遭う。福岡が左隅ギリギリの位置に飛び込むイメージが出来ていただけに残念ではあったが、相手選手がプロフェッショナルファウル(倒れ込み)を犯してシンビン。トライ狙いの納得のスクラム選択にスタンドからは手拍子が沸き起こり大いに盛り上がる。

サンウルブズは、左サイドのスクラムを起点としたアタックからラックを連取。右側にスペースが出来たところで田村からの芸術的なラストパスが右WTBの中鶴へ渡った。ボールをインゴールに持ち込むだけだった中鶴だが、落ち着いていた。喜んですぐにボールを置くこともなくゴール中央に回り込んで右中間にトライ。終盤の逆転劇を呼び込んだファインプレーだったと思う。2点差とPG成功でも届かな4点差では大きな違いがあるから、少しでも勝利に近づきたいという強い想いが逆サイドの観客席にも伝わってきた。



いよいよサンウルブズの時間となった74分、田村がPGを冷静に決めて1点差ながら遂に逆転に成功。しかし、簡単には勝たせてくれないのがスーパーラグビー。76分にサンウルブズが自陣で反則を犯したところで観客は思わず天を仰いだ。またしても勝利は遠のくのか。いつもなら相手ボールのPGでも静かに見守る観客がクラウドノイズを発生させる。過去を振り返ってもあまり経験がないことだが、自然発生的に何かをしたい気持ちが起こったことも理解できる。抜群の安定度を誇っていたプレースキッカーのショーマンが交替していたこともあり、PGは外れる。

あとは敵陣でできればボールキープの状態で時計を進めるだけ。ブルズが反則を犯し、ゴール前でのマイボールラインアウトとなったときには残り時間は1分を切っていた。しかし、またしても落とし穴が待っていた。敵陣奥深くとはいえ、ラインアウトでボールをスティールされ、逆転勝利を目指すブルズの死力を尽くしたアタックが続く。だが、サンウルブズの組織ディフェンスが最後まで破綻することがなかった。80分経過を告げるサイレンが鳴っても、とにかくピッチの内も外も我慢の時間帯が続く中でターンオーバーに成功。矢富がボールを冷静にタッチに蹴りだしてサンウルブズが勝利を掴み取った。

昨年度のジャガーズ戦勝利も生体験しているので、その時味わった感動の方がより大きかったことは確か。しかし、やっぱり勝利はいいものだ。最初に書いたように、内容はよくても連敗が重なったら関心が薄れていくのがプロスポーツの世界。後でTV録画を観て判ったことだがサンウルブズのホームゲームの中では空席が目立つ状況だった。だからこそこの勝利の価値は大きい。勝因は最後まで集中を切らすことなくブルズの猛攻に耐えた、いや猛攻と感じさせないくらいに相手を止め続けたディフェンスにあったと思う。「攻撃は最大の防御」だが「防御も最高のアタック」になり得るのがラグビーの面白さだと実感した。



■TMOについて思うこと

この試合がとても引き締まったものに感じられたのは、お互いの力が拮抗していて僅差の接戦になったから。しかし、もうひとつ言えるのはTMOによる集中が途切れる時間帯がなかったこと。トライは文句なしのものばかりだったし、激しいファイトではあったものの際どい反則が少なかったことがTMOを必要としなかったと言える。あるいは、レフリーの技量の高さ、あるいはTMOに対する個人的な好き嫌いがあったのかも知れない。

この試合は、「疑わしきはTMO」のような状況になりつつある現状に対して一石を投じた試合と言えそうだ。一番近くで観ている人が自信を持ってジャッジし続ける状況こそが試合に緊張感をもたらしていたのではなかっただろうかと改めて感じた。



■ひとつでも多くの勝利を

今後もより厳しい戦いが続くサンウルブズ。だが、今シーズンの強みは日本代表との連携が強まり、バックアップ体制がしっかりしていること。パワーアップはあってもパワーダウンはおそらくないはず。だからこそ、ひとつと言わず、2つでも3つでも勝利を掴み取って欲しい。15試合を戦う中で、実質ホームの日本で行われるのは4試合しかない。アタックで世界のファンを魅了する場面を創り挙げて行くことに対する(正当な)対価の獲得も考えなければならない。

奇しくも、ブルズ戦勝利のあとに来シーズンのスーパーラグビーの枠組み変更が発表された。サンウルブズはオーストラリア・カンファレンス、ジャガーズは南アフリカ・カンファレンスに移り3カンファレンス15チーム体制になること。そのために前者から1チーム、後者から2チームが削減対象となること。サンウルブズが削減対象から外れたのは2019年の日本でのW杯開催があることが大きいようだが、戦えないチームだったら(削除要求の)クラウドノイズは大きくなっていただろう。世界のラグビーファンが観たいサンウルブズになって欲しいと切に願う。

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