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大東文化大学 vs 拓殖大学(関東大学リーグ戦G1部-2016.10.23)の感想

2016-10-27 00:14:06 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


第5節を迎えて関東大学リーグ戦グループはちょうど折り返し点。前年度の上位校と下位校の間で行われる言うなれば「チャレンジシリーズ」はこの日で終了し、次節からはいよいよ熾烈な優勝争い(または入替戦回避のサバイバル戦)が始まる。しかし、今年はまだ観ていないチームが3つもある。秩父宮の流経と関東学院の試合も気になるが、この日は熊谷ラグビー場Bグランドの大東大vs拓大戦をセレクト。優勝候補のひとつ大東大はここまで3連勝中。対する拓大は3連敗中で順当にいけばそれぞれのチームが連勝/連敗を1つずつ伸ばす結果になるはず。

しかし、大東大は今まで観た感じではまだ盤石とは言えない状態。この日はタラウとアマトのファカタヴァ兄弟の名前がリザーブにもなく、FWの2、3列は1年生と2年生がそれぞれ2人ずつ名を連ねている。対する拓大はFWに拘りを持つチームでスクラムでは東海大を真っ二つにしたというような話を聞くと大東大ファンにとっては不安一杯のメンバー構成と言える。実は拓大のメンバーにも変化があった。ここまでNo.8を務めていたルーキーのマシヴォウ・アセリがCTBとして12番を付けて出場する。果たして拓大に戦術変更はあるのか。もっとも拓大は今シーズン初観戦だからそれも判らないわけだが。

好天に恵まれ絶好のラグビー観戦日和となった熊谷Bグランド。埼玉ラグビーサポーターズクラブの会員証のおかげで招待券を受け取って入場するのも3試合目となった。観客も少なめで今日はメインで観戦しようかと一瞬思った。が、屋根の下の席は部外者には入りづらい雰囲気。少し離れた場所でもチーム関係者用のテントが(障害物となって)建つはずなのでバックスタンドに向かうことにする。例えばの話、コンパクトなキヤノングランドのような形のスタンドだったら、むしろAグランドより観やすいラグビー場になっただろうという想いを捨てきれない。

バックスタンドに向かう途中、北側のゴール裏では拓大の選手達がアップに励んでいる。選手1人1人を見ると例年になく各選手の身体が出来上がっているように感じられた。今シーズンに限らず拓大の選手はFWでも小柄の選手が多い。190cm以上の選手はシオネ・ラベマイだけで、次に大きな選手は184cmのPR具という状況。しかしながら、ビルドアップされた状態で身体を動かしている選手達を観て、もしかしたら?の期待が高まった。



◆前半の戦い/サウマキ砲が炸裂の大東大に対しモデルチェンジした拓大が追いすがる

大東大のキックオフで試合開始。大東大は基本的にパスラグビーで、SH小山を起点としてどんどんオープンに展開する。片や拓大はFWに拘りゴリゴリかと思われたが、大東大に負けじとBKに展開して攻める。マシヴォウをCTBに起用した意図はここにあったわけだ。本来目指している形かどうかはまだクエスチョン。だが、ここまでの強いFWを持つチームとの戦いで自信を掴んだことは間違いなさそう。スクラムに拘りを持つチームではあっても、伝統的に拓大はボールをワイドに動かすランニングラグビーを信条としている。

序盤戦は両チームともに堅さからかミスが目立つ。そんな中で先にチャンスを掴んだのは大東大。拓大の選手のタックルが高めでレフリーに注意も受けていた中で10分、同じプレーを繰り返したSO大塚にシンビンが適用される。大東大はPKから22m内でのラインアウトを起点として攻める。スローイングは後ろに流れてしまうが、大東大はボールを失わずに素早く左オープンに展開。ラストパスを受け取ったサウマキが幸先良く先制トライ(GKも成功)を奪う。リスタートのキックオフが圧巻だった。ここでも大東大は自陣から蹴らずに左オープンに展開してボールがサウマキに渡る。当然拓大もこの選手をマークしており2人のタックラーがサウマキを挟み込むように同時に低く刺さる。はずだったが、何とサウマキは2人ともなぎ倒して前進する。

前にもう1人いたタックラーも(パワーは単純に1/2なので)敵ではなく、サウマキは左タッチライン際を約60m走りきってゴールラインまで到達する。強い選手に対するダブルタックルは下(足)と上(ボール)に入るのが原則だが、2人同時に同じ低さで入ってしまったのは失敗。サウマキは重心が低いので下に入ってもなかなか倒せない選手だが、2人でもダメとなると手の施しようがない。力強くはあっても不思議と強引さは感じさせない選手。ここが抜群の身体能力の高さを誇るサウマキの持ち味でもある。FWに不安がある大東大はファカタヴァ兄弟が揃って先発することが多いが、得点力アップを考えるならサウマキがスタメンの方がチームの威力は増すように思う。



エースによるトライが続き、しかも2本目はノーホイッスルトライと拓大にとっては苦しい立ち上がりとなる。しかしFW戦で想定したとおり優位に立っていることもあり、意気消沈したような雰囲気は感じられない。リスタートのキックオフでは大東大陣22m付近のラックでターンオーバーに成功。大東大が犯した反則に対するアドバンテージが出る中で、インゴールへのキックに反応したFB大國がタッチライン際でボールのグラウンディングに成功。右サイドの難しい位置からのゴールキックを拓大のゲームキャプテン林謙太が鮮やかに決めて7-14と拓大が一矢報いた。大東大のサウマキがトライショーなら拓大の林謙太は確実なプレースキックでそれぞれ魅せる。2人の競演はここからがスタート。

続く大東大リスタートのキックオフはノット10mとなり、拓大ボールのセンタースクラム。ここでアクシデントが発生。拓大の具がボールを持ったところで低くタックルに入った大東大のCTB畠山が昏倒する。逆ヘッドのようなタックルになってしまい頭を強打したように見えた。畠山がまったく動かない中、約6分が経過したところでようやく選手交替。ハイタックルは相手にとって危険なプレーだが、ロータックルでとくに逆ヘッドの状態はタックラーにとって危険なタックルと言える。リスクを負っての勇気あるプレーという評価は妥当ではない。ロータックルも時に選手生命を奪う危険性があることをプレーヤーも自覚する必要があると思う。

しばらく間が開いてスクラムから試合再開。ここで大東大がコラプシングの反則を犯し、大東大は自陣ゴール前に釘付けの苦しい時間帯を迎える。拓大はラインアウトからモール、ラックで攻めるものの、ゴールまであと一歩のところを攻めきれず得点できない。サウマキの快走もあって効率よくトライが取れる大東大に対し、拓大ファンのフラストレーションは溜まっていく。そんな拓大を尻目に大東大は26分に自陣10m付近右サイドの位置でのスクラムを起点として左オープンに展開してサウマキがハットトリックを達成。SHの小山は自ら仕掛けることを封印してパサーに徹している感じだが、それも左の大外に絶対的なエースが居るから。サウマキが11番を付けているときの大東大は左サイドで観るのが断然面白い。

拓大が攻めきれない中で33分、大東大に私感ながらこの日のベストトライが生まれる。左オープンへの展開からボールは大外のサウマキへ。拓大選手だけでなく観客の目も殆どが11番の選手に集まる中、サウマキからのリターンパスが絶妙のタイミングで内側にフォローしていたCTB戸室に渡る。前には誰も居ないような状態なので俊足ランナーの戸室は難なくゴールラインを突破。大東大は、1人の選手が抜けても必ずフォロワーがパスを受け取れる位置にしっかり付いている。サウマキ本人はもとより、併走している戸室あるいはFB大道へのリターンパスも大東大の武器のひとつ。拓大のタックルが高めで甘いことも前進を許してしまっている面がある。

だが、24-7と大東大に楽勝ムードが漂い始めた前半の終盤に拓大が盛り返す。40分、大東大ゴール前でのラインアウトを起点としてFWがボールをキープしながらじわじわと前進。最後はPR3の具がトライを決めた。さらに42分、拓大は今度も大東大陣ゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進し、あっさりとトライを奪う。いずれも右中間から右サイドのやや難しい位置ながら、林謙太が鮮やかなゴールキックを決めて21-24で前半が終了。モールディフェンスが泣き所の大東大とっては自陣での反則が続いたことが響いた。なお、大東大は42分の被トライの際に司令塔のSO川向も足を痛めて負傷退場してしまいピンチとなる。



◆後半の戦い/失点の多さに冷や汗たっぷりの大東大だが明るい材料も

ゲームは3点差まで肉薄し、逆転勝利の可能性も見えてきて意気上がる拓大。しかし拓大ボールのキックオフで始まった後半開始早々にそんな野望は無残にも打ち砕かれる。自陣でボールを確保した大東大がタッチキックを蹴らずに(得意の)左オープンに素早く展開しボールは左翼のサウマキへ。ここでもサウマキは豪快なランを見せて左サイドをぶち抜く。拓大にとっては残念でもあり、ショッキングな失点。GKは失敗するものの大東大のリードは29-21と8点に拡がる。

FW戦に過度に拘ることはやめ、BKに積極的に展開してバランスのいいラグビーを見せるこの日の拓大。しかしながらパスミスが多いなどプレーの精度に問題があり、なかなかチャンスを活かせない。また、BKでウラに抜けるビッグチャンスも数回あったが、大東大にあって拓大にはないのが分厚いフォロー。ゴール前まで攻め込みながらのラックでのターンオーバーは本当に痛かった。13分にはクルーガー・ラトゥがトライを奪って大東大は36-21とリードをさらに拡げる。そして17分にもラインアウトからのモールを起点としてPR中村がトライを追加。GKは不成功だったが、41-21とリードはどんどん拡がっていく。



3点のビハインドがついに3トライ3ゴールでないと逆転できない点差になってしまった。だが拓大は諦めない。林謙太のプレースキックが絶好調なので、失点せずに「3つトライを重ねれば逆転」のチャンスは残っている。20分、拓大は大東大陣でのスクラムを起点としたオープン攻撃から右WTB濱副がトライを奪う。GK成功はデフォルトで28-41と拓大のビハインドは13点に縮まる。一度は意気消沈していた拓大応援席に活気が戻ってきた。しかしそれも束の間。23分、大東大は拓大陣10mのスクラムからBKに展開し、戸室が鋭いステップワークを見せてボールをゴールラインに運ぶ。とにかくボールを動かせばトライラインまで到達できるのが大東大の強み。GK成功で48-28と大東大のリードは再び20点に拡がる。

残り時間が少なくなっていく中、30分にサウマキが危険なプレーでシンビンを適用されるものの拓大に残された時間は10分あまり。直後の30分に大東大ゴール前でのラインアウトからモール、ラックで攻めてトライを奪いGKも成功する。だが残り時間が殆どないなかでの13点差は重い。拓大は38分にもCTBマシヴォウがウラに抜けて大東大ゴールに迫るものの痛恨のターンオーバー。今シーズン初勝利まであと一歩のところまできたものの、大東大の4連勝に対し拓大の4連敗というかたちで試合終了となった。



◆試合後の雑感/手応えを掴んだ拓大と来シーズンの不安が払拭されつつある大東大

戦前の予想ではFW戦に拘ると思われた拓大だったが、展開ラグビーに活路を見いだすバランスのよいラグビーを見せてくれた。サバイバルマッチとなる後半戦ではおそらくこの形で勝負するものと思われる。この日初めてCTBとして起用された大型選手でスピードランナーのマシヴォウ・アセリはキープレーヤーとしての活躍が期待される。残る3戦の相手もけして楽に勝てる相手ではないが、3連勝の可能性は十分にあるとみる。そのためにも、この試合で散見されたパスミスやラックでターンオーバーされることを減らすなど、プレーの精度を上げたいところ。冒頭にも書いたとおり、身体は出来上がっている。あとは丁寧なプレーを心がければチャンスは拡がるし、来シーズン以降の展望も開けると思う。

拓大でもう一つ強く印象に残ったのが、5本のゴールキックをすべて決めた林謙太の安定したプレースキック。角度のある難しい位置からのキックもほぼ2本のポストの真ん中に収まったことは特筆に値する。下級生だった頃から既にチームの牽引者的な存在感を見せていて、現在はゲームキャプテンを務める(主将は松崎)。いわば拓大の精神的な支柱となっている選手の正確なプレースキックがホンモノなら、「残り試合3連勝」に向けての大きな武器となるだろう。

ファカタヴァ兄弟の欠場に加えて下級生中心で2、3列を組んだ大東大。相手がFW戦に自信を持つ拓大ということもありどうなるかと思われたが、取り越し苦労だったようだ。この試合の苦戦の原因がFW戦での劣勢にあったことは間違いないが、下級生でとくにNo.8の佐々木が予想以上の頑張りを見せたことで勝利を掴んだことは大きな収穫とも言える。優勝がかかった後半戦はもとより、来シーズン以降の展望が開けたことも大きい。小山、川向、戸室、菊地、大道、サウマキといった1年生から活躍を続ける選手達が揃って抜ける来シーズンに大いなる不安を抱かせる大東大ではあるが、FW中心のチームに変貌を遂げることも十分に考えられる。今年は4年目の集大成であると同時に、来シーズン以降に向けてのチーム構想も練られているとみていいと思う。

ファカタヴァ兄弟の不在でもうひとつ分かったことがある。大東大はエースのサウマキにボールを集める形がもっとも強いチームになり得ると言うこと。この日はアマトの突破力という選択肢がひとつ消えたことでむしろ焦点が定まった戦いが出来ていたように思えるのだ。大東大のBK展開の生命線は起点となる小山の球捌き。自ら仕掛けることよりもBKラインにアタックを託すことでサウマキの4トライと戸室の2トライが生まれた。あくまでも私見だが、サウマキは後半から出てくるインパクトプレーヤーではなく、スターターとしてトライを重ねてチームに活力を注入する選手だと思っている。残り3試合、どのような選手起用になるか興味津々だが、サウマキがスタメンを務める形が定着することを期待したい。

ラグビーマガジン 2016年 12 月号 [雑誌]
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