きょうの世界昔話 gooブログ編

アンデルセン童話やグリム童話など、世界の昔話をイラストと朗読付きで毎日配信。

12月31日の世界の昔話 マッチ売りの少女

2008-12-31 06:14:15 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 12月の世界昔話


12月31日の世界の昔話


マッチ売りの少女



マッチ売りの少女
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細
マッチ売りの少女のぬりえ


 むかしむかし、雪の降りしきる大みそかの晩。
 みすぼらしい服をきたマッチ売りの少女が、寒さにふるえながら、一生けんめい通る人によびかけていました。
「マッチはいかが。マッチはいかがですか。だれか、マッチを買ってください」
 でも、だれも立ち止まってくれません。
「おねがい、一本でもいいんです。だれか、マッチを買ってください」
 きょうはまだ、一本も売れていません。
 場所を変えようと、少女が歩きはじめたときです。
 目の前を一台の馬車(ばしゃ)が走りぬけました。
 危ない!
 少女はあわててよけようとして、雪の上にころんでしまい、そのはずみにくつを飛ばしてしまいました。
 お母さんのお古のくつで、少女の足には大きすぎましたが、少女の持っている、たった1つのくつなのです。
 少女はあちらこちらさがしましたが、どうしても見つかりません。
 しかたなく、はだしのままで歩きだしました。
 冷たい雪の上をいくうちに、少女の足はぶどう色に変わっていきました。
 しばらくいくと、どこからか肉を焼くにおいがしてきました。
「ああ、いいにおい。・・・おなかがすいたなあー」
 でも、少女は帰ろうとしません。
 マッチが一本も売れないまま家に帰っても、お父さんはけっして家に入れてくれません。
 それどころか、
「この、やくたたずめ!」
と、ひどくぶたれるのです。
 少女は寒さをさけるために、家と家との間にはいってしゃがみこみました。
 それでもじんじんと凍えそうです。
「そうだわ、マッチをすって暖まろう」
 そういって、一本のマッチを壁にすりつけました。
 シュッ。
 マッチの火は、とてもあたたかでした。
 少女はいつのまにか、勢いよく燃えるストーブの前にすわっているような気がしました。
「なんてあたたかいんだろう。ああ、いい気持ち」
 少女がストーブに手をのばそうとしたとたん、マッチの火は消えて、ストーブもかき消すようになくなってしまいました。
 少女はまた、マッチをすってみました。
 あたりは、ぱあーっと明るくなり、光が壁をてらすと、まるでへやの中にいるような気持ちになりました。
 へやの中のテーブルには、ごちそうが並んでいます。
 ふしぎなことに、湯気をたてた、ガチョウの丸焼きが、少女のほうへ近づいてくるのです。
「うわっ、おいしそう」
 そのとき、すうっとマッチの火が消え、ごちそうもへやも、あっというまになくなってしまいました。
 少女はがっかりして、もう一度マッチをすりました。
 するとどうでしょう。
 光の中に、大きなクリスマスツリーが浮かびあがっていました。
 枝にはかぞえきれないくらい、たくさんのろうそくが輝いています。
 思わず少女が近づくと、ツリーはふわっとなくなってしまいました。
 また、マッチの火が消えたのです。
 けれども、ろうそくの光は消えずに、ゆっくりと、空高くのぼっていきました。
 そしてそれが、つぎつぎに星になったのです。
 やがてその星の一つが、長い光の尾を引いて落ちてきました。
「あっ、今、だれかが死んだんだわ」
 少女は、死んだおばあさんのことばをおぼえていました。
「星が一つ落ちるとき、一つの魂が神さまのところへのぼっていくんだよ」
 少女はやさしかったおばあさんのことを思い出しました。
「ああ、おばあさんに、あいたいなー」
 少女はまた、マッチをすりました。
 ぱあーっと、あたりが明るくなり、その光の中で大好きなおばあさんがほほえんでいました。
「おばあさん、わたしも連れてって。火が消えるといなくなるなんていやよ。わたし、どこにもいくところがないの」
 少女はそういいながら、残っているマッチを、一本、また一本と、どんどん燃やし続けました。
 おばあさんは、そっとやさしく少女を抱きあげてくれました。
「わあーっ、おばあさんのからだは、とってもあったかい」
 やがて、ふたりは光に包まれて、空高くのぼっていきました。


マッチ売りの少女とおばあさん


 新年の朝、少女はほほえみながら死んでいました。
 集まった町の人びとは、
「かわいそうに、マッチを燃やして暖まろうとしていたんだね」
と、いいました。
 少女がマッチの火でおばあさんに会い、天国へのぼったことなど、だれも知りませんでした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 大晦日
きょうの誕生花 → ゆず
きょうの誕生日 → 1967年 江口洋介 (俳優)


きょうの新作昔話 → 鬼がつくった鬼の面
きょうの日本昔話 → かさじぞう
きょうの世界昔話 → マッチ売りの少女
きょうの日本民話 → おさかべひめ
きょうのイソップ童話 → イヌとオオカミ
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12月30日の世界の昔話 ものしりフクロウ

2008-12-30 03:33:24 | Weblog

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12月30日の世界の昔話


ものしりフクロウ



ものしりフクロウ
ポーランドの昔話 → ポーランドの国情報


 むかしむかし、あるところに、ブラーチョクという人がすんでいました。
 えらい人でもなく、お金持ちでもない、ただのおひゃくしょうでしたが、とてもかしこい人でした。
 ある日、ブラーチョクは町へいきました。
 そして息子のみやげに、目玉のギョロギョロしているフクロウを買いました。
「さあ、日のくれぬうちに村へかえろう」
 ブラーチョクは、フクロウを肩にとまらせてかえりをいそぎました。
 けれども、まだ半分もこないうちに日がくれてしまいました。
「しかたがない。今夜はつかれているし、どこかヘとめてもらおう」
 そう思って、あたりを見まわすと、むこうにあかりのついた家があります。
 ブラーチョクは、さっそくそばへいって、まどからのぞいてみました。
 まっ白なテーブルかけをかけたテーブルに、フカフカのおまんじゅうと、ガチョウのまる焼きと、ハチミツ酒のビンがならんでいます。
 そのそばに若い女の人がすわって、ぬいものをしています。
「しめた。すてきな夕めしにありつけるぞ」
 ブラーチョクはうれしくなって、まどをトントンと、たたきました。
「どなた? メーテック、おまえさんなの?」
「こんばんは。とおりがかりの者です。ちょっと火にあたらせてくれませんか?」
 おかみさんはあわてて、へやじゅうをかけまわりました。
 たちまち、テーブルの上のおまんじゅうは、ねり粉のおけにとびこみ、ハチミツ酒のビンは、箱の中、ガチョウのまる焼きは、だんろの中にかくれました。
「やれやれ。なんてことだ」
 ブラーチョクがガッカリして、まどからはなれようとしたとき、一台のウマそりがはしってきて、その家の前にとまりました。
 中から毛皮のコートを着た人がおりてきて、大声でどなりました。
「おれだ。かえったよ!」
 主人は家へはいろうとして、ブラーチョクに気がつきました。
「どなたですかね?」
「とおりがかりの者ですが、日がくれてこまっています、ひと晩とめていただけませんか?」
 ブラーチョクは、たのみました。
「さあさあ、どうぞ。いつだってお客は大かんげいですよ」
 主人はブラーチョクをつれてうちへはいると、おかみさんにいいつけました。
「お客さんだ。ごちそうしてくれ」
「ごちそうですって? うちには、パンとお塩しかないんですよ」
「それはしかたがない。パンと塩だって、りっぱな食べ物だ。それでいいからだしておくれ」
 主人はフクロウに気がついて、ききました。
「その、ばけものみたいな鳥は、いったいなんだね?」
「これですか。もの知りフクロウといって、りこうな鳥でね。どんなことでも知っていて、うそは大ぎらいってやつですよ」
 ブラーチョクはそう答えると、こっそりフクロウの目玉をつつきました。
 フクロウはビックリして、ヘんな声をだしました。
「おや? フクロウが、なにかいいましたな?」
 主人がききました。
「はい。それが、ねり粉のおけに、まんじゅうがはいってるなんていうんですよ」
「まんじゅうが? おいおい。おけをしらべてごらん」
 けちんぼうのおかみさんは、ギロリと、フクロウをにらみましたが、しかたなくおけを見にいきました。
 そして、さもビックリしたような顔をして、おまんじゅうを出してきました。
 主人とお客は大喜びで、おまんじゅうをたべました。
 ブラーチョクは、また、もの知りフクロウをつつきました。
「こんどは、なんていってますね?」
 主人は聞くと、ブラーチョクはあたまをかしげながらいいました。
「それが、・・・きっと、でたらめでしょうがね。箱の中に、ハチミツ酒のビンがあるなんていうんですよ」
「いや、ひょっとすると、ほんとうかもしれん」
 主人はうれしそうに手をこすりながら、さけびました。
「おい、ためしにのぞいてごらん」
「またそんなことを! あるはずがないでしょう」
 おかみさんは、ますますこわい顔で、フクロウをにらみました。
 それでもテーブルの上には、ハチミツ酒のビンが出てきました。
 主人とお客はさっそくお酒をのみながら、おまんじゅうをたべました。
「だまってろ。このおしゃべりめ!」
 プラーチョクは、また自分でフクロウをつついておいて、フクロウが声をたてると、しかりつけました。
「すこしは静かにしないか。そんなことは、おまえの知ったことか」
 すると、主人がブラーチョクをとめました。
「いやいや、お客さん。そんなにしかったりしないで、あんたのフクロウのしゃべったことをおしえてくれませんか。いったい、こんどはなんていいましたね?」
「まったく、おはずかしい、このおしゃべり鳥めが!」
 ブラーチョクは、もう弱りきったというようにいいました。
「じつは暖炉の中に、ガチョウの丸焼きがあるなんて、・・・まったく、しょうのないやつですよ」
「ガチョウのまる焼きですと! ほほう、そりゃすごい。おまえ聞いたかい? ガチョウだ。それもまる焼きだ! さあ、もってきてくれ。ついでに、まだなにかないかよく見てこい」
 おかみさんは、だまって暖炉をのぞきにいきました。
 そして、ビックリしたように手をたたきました。
「まあ、あったわ。ほんとうにどうしたんでしょう。きゅうにガチョウのまる焼きが出てくるなんて。ふしぎねえ、わけがわからないわ」
 ガチョウのまる焼きが出てくると、主人はブラーチョクに、
「どうです。なんでも知っていて、うその大きらいな鳥のために、もの知りフクロウのために、かんぱいしませんか?」
と、いいました。
 こうして、もの知りフクロウのおかげで、ブラーチョクはごちそうにありつくことができました。
 そして、あくる日も、きのうのごちそうののこりもので、たっぷり腹ごしらえをして家を出ました。
 ブラーチョクを見送りながら、主人はおかしそうに、おかみさんにいいました。
「アハハハハハ。みごとにやられたなあ。あの男はたいしたやつだ。けちんぼうなおまえを、やっつけたんだからな」
 主人は、すべてを知っていたのかもしれませんね。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 正月飾りの日
きょうの誕生花 → やぶこうじ
きょうの誕生日 → 1971年 元木大介 (野球)


きょうの新作昔話 → 小槌(こづち)の柄(え)
きょうの日本昔話 → うぶめにもらったかいりき
きょうの世界昔話 → ものしりフクロウ
きょうの日本民話 → バケモノすっとびかご
きょうのイソップ童話 → かじ屋とイヌ
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12月29日の世界の昔話 仕事のとりかえっこ

2008-12-29 04:23:42 | Weblog

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12月29日の世界の昔話


仕事のとりかえっこ



仕事のとりかえっこ
ノルウェーの昔話 → ノルウェーの国情報


 むかしむかし、あるところに、文句ばかり言っているだんながいました。
 自分は外でまじめに草刈りの仕事をして帰ってくるのに、おかみさんはいつも家の仕事をきちんと終わらせていないと怒って、文句を言うのです。
 おかみさんも文句ばかり言われて、頭にきてこう言いました。
「それなら明日、あたしが草刈りに行くわ。あんたが家の仕事をしてちょうだい。お昼ご飯をよびにくるまで、あたしは外で働くから」
「いいさ。俺は楽ができるんだからな」
 だんなはそう言って、うなずきました。
 次の日、おかみさんは草刈り仕事に出かけて行きました。
 だんなは家で、バターを作ろうとミルクをかきまわします。
 でも、のどがかわいたので、地下室ヘビールを飲みに行きました。
 タルのせんを開けて、コップにビールをついでいると、上でガタガタと音がします。
「なんだ?」
 地下室から階段をかけあがると、開けっ放しのドアからブタがはいって来て、ペチャペチャとミルクをなめているのです。
 床はミルクでベタベタで、もうバターは作れません。
 だんなは怒って、ブタを思いっきりけとばしました。
 すると、ブタはころんだひょうしに頭を打って、死んでしまいました。
「しまった! 大切なブタなのに」
 だんなは頭をかかえて、それからハッとしました。
 ビールのタルのせんを、あけっ放しできてしまったのです。
 あわてて地下室へかけおりると、ビールはすっかり流れだしており、床はビショビショでタルはからっぽです。
「ああ、もったいない」
 だんなは泣きたくなりました。
 でも、泣いているひまはありません。
 お昼ご飯におかみさんがもどって来るまでに、バターを作りなおさなくてはならないのです。
 だんなはミルク小屋へ走って行き、おけいっぱいにミルクを運んで来ました。
 そうしてバターを作っていると、メスウシに草を食べさせていないことを思い出しました。
 けれど、メスウシを草原まで連れて行く時間はありません。
 どうしようかと考えて、だんなはある名案を思いつきました。
「そうだ、うちの屋根に草が生えているじゃないか、メスウシを屋根に乗せりゃいい」
 だんなはそう思って外へ出ようとして、バターのタルをチラリと見ました。
 誰か来て、ひっくり返されたらだいなしです。
 そこでだんなはバターのタルをおんぶして、落ちないように体にしばりつけて外へ出ました。
 メスウシを連れて来ると、だんなはまず水を飲ませようと井戸(いど)に体をのり出しました。
 そのとたん、背中にしょっていたタルからミルクが流れ出し、だんなは首から頭までミルクだらけになりました。
「うわあ、俺も井戸の水もだいなしだ」
 だんなはガックリと、肩を落としました。
 でも、落ち込んでいるひまはありません。
 だんなは、大きな板を屋根に立てかけて、メスウシをうしろから押して、やっとメスウシを屋根の上に乗せました。
「だけどよ。メスウシが屋根からすべり落ちて、首の骨をおったらおおごとだなあ」
 だんなはメスウシの首にロープをくくりつけ、そのロープのはしを煙突(えんとつ)からたらしました。
 それから急いで台所にもどると、煙突からたれているロープのはしを自分の足首にむすびました。
「よし。こうしておけば、メスウシに何かあってもすぐにわかる」
 だんなは大ナベに水と米をいれ、おかゆを作ることにしました。
 ところがメスウシが足をすべらせて、屋根から落ちてしまったのです。
「うわあ!」
 自分の足にゆわえておいたロープがウシの重みで引っぱられ、だんなの体は足首から煙突へとすい込まれて、宙ぶらりんになりました。
 メスウシは首にロープを巻きつけたまま屋根から降りることもできず、苦しそうにあばれています。
 そこへ、お昼を食べにおかみさんがもどって来ました。
「おや、まあ!」
 おかみさんはおどろいて、メスウシのロープをカマで切りました。
 メスウシはやっと地面に降りることができました。
 そして、おかみさんは家の中に入ってビックリ。
 だんながおかゆの入った大ナベにあたまをつっこんで、逆立ちしていたのです。
 その日以来、おかみさんが家の仕事をきちんと終わっていなくても、だんなは文句を言わなくなったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → シャンソンの日
きょうの誕生花 → なんてん
きょうの誕生日 → 1960年 岸本加世子 (俳優)


きょうの新作昔話 → 屋敷を救ったカエル
きょうの日本昔話 → 火正月
きょうの世界昔話 → 仕事のとりかえっこ
きょうの日本民話 → 竜とニワトリ
きょうのイソップ童話 → ヤギの番入と野生のヤギ
きょうの江戸小話 → 他行


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12月28日の世界の昔話 プリンのしおかげん

2008-12-28 04:15:21 | Weblog

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12月28日の世界の昔話


プリンのしおかげん



プリンのしおかげん
アメリカの昔話 → アメリカの国情報


 むかしむかし、あるところに、プリン作りの名人のシンプソンおばさんがいました。
 ある時、シンプソンさんはパーティーをひらいて、みんなにとびきりおいしいプリンをごちそうすることにしました。
 さっそく火をおこすと、プリンをコンロにかけました。
「そうそう。おきゃくさまがみえるんだから、この間にお掃除(そうじ)しましょう」
 テーブルやいすのふき掃除に、ゆか掃除と、シンプソンさんは大いそがしです。
 でもしばらくして、大切なことを思い出しました。
「そうだわ。プリン作りにだいじな、しおを入れわすれたわ!」
 それは、かくし味としての、ほんのちょっぴりのしおです。
 これがないと、プリンがおいしくできません。
「けれども、お掃除で手がまっ黒ね。・・・そうだ、スウにたのむことにしましょう」。
 シンプソンさんには、五人の娘がいました。
 一番上が「スウ」
 二番目が「セイリイ」
 三番目が「パースイ」
 四番目が「ジェニイ」
 五番目が「リル」
 の、五人姉妹です。
「スウ。プリンにしおを入れておくれ。わたしの手はまっ黒だから」
「だめよ、お母さん。今、あたし、くつにあぶらをつけてるの」
「そう。・・・じゃあ、セイリイ、お願いね」
「お母さんごめん。あたし、この服をぬいあげてしまいたいの」
「なら、しかたないわね。・・・バースイ。お前がしおを入れておくれ」
「だめよ。あたしも自転車の手入れで、手がまっ黒よ」
「それならジェニイ。おねがいだから、しおを入れて」
「リルにさせてよ。今、しゅくだいをしているんだから。お母さんも知ってるでしょ、あの先生、きびしいのよ」
「じゃあ、いいわ。・・・リル、お前、しおを入れてちょうだい」
「だめ。今、リボンをさがしてるの。リボンがないと、何も手がつかないわ」
「やれやれ。五人も娘がいるのに、だれもきいてくれないのかね」
 シンプソンさんは、しかたなく手をあらい、自分でプリンにしおを入れました。
 さて、シンプソンさんがふきそうじにもどると、すぐにリルは、お母さんの言いつけをことわったことをこうかいしましした。
 そこでリルは、いそいで台所へ。
 リルが出て行ったあと、ジェニイはお母さんの言いつけをきかなかったことが心配になり、台所へ。
 バースイも、自転車にのるよりもプリンを食べるのが大すきなので、お母さんにたのまれたことをやらなくちゃと思い、台所へ。
 セイリイも、言いつけをことわったのが気にかかり、ミシンをかけるのをやめて台どころへ。
 スウも、くつのあぶらなんて、いつでもつけられると思い、台所へ。
 やがて、シンプソンさんじまんのプリンが、りっぱにできあがりました。
 その夜、おきゃくさんはプリンが出てくるのを、今やおそしとまっていました。
「いや、シンプソン家のプリンをあじわえるのも、かみさまのおかげというものですな」
 まず最初に、牧師(ぼくし)さんが、プリンを切り分けた最初の一切れをとりました。
 とくべつ大きめに切った一切れを、牧師さんが口に入れたとたん、
「ウヒャァー!!」
 すぐに、水さしのびんにとびつきました。
 みんなは何がおこったのかわからず、ポカーンとしていました。
「いったい、どういうことかしら?」
 シンプソンさんは、プリンの味見をして、すぐにわかりました。
「このプリンにしおを入れたのは、お前たちのうち、いったいだれなの?」
 リルがいいました。
「わたしよ!」
 ジェニイもいいました。
「わたしも入れたわ!」
 バースイもいいました。
「わたしも入れたのよ!」
 セイリイもいいました。
「あら、わたしもよ!」
 さいごにスウもいいました。
「わたしも!」
 五人の娘が、口々に言ったものです。
「おやおや。プリンはしおかげんがだいじだっていうことが、これでわかったでしょう」
 シンプソンさんのこの言葉に、だれ一人はんたいする人はいませんでした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → シネマトグラフの日
きょうの誕生花 → くまざさ
きょうの誕生日 → 1968年 星出彰彦 (宇宙飛行士)


きょうの新作昔話 → お雪の伊勢参り
きょうの日本昔話 → 豆つぶころころ
きょうの世界昔話 → プリンのしおかげん
きょうの日本民話 → 順庵先生とふたごのキツネ
きょうのイソップ童話 → オオカミとロバ
きょうの江戸小話 → 借金取りのこうでん


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12月27日の世界の昔話 雪

2008-12-27 11:24:33 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 12月の世界昔話


12月27日の世界の昔話


雪




中国の昔話 → 中国の国情報


 むかしむかし、冬がきて寒くなると、雪のかわりにお砂糖や小麦粉の降ってくる村がありました。
 その村では、初めの日に小麦粉が降ってくると、そのつぎの日は、お砂糖がたくさん降ってくるのです。
 お砂糖と小麦粉が、かわりばんこに空から降ってくる、そんな日が、十日も十五日も続くのです。
「やあ、今年も降ってきたぞ、白い粉が」
 小麦粉の白い粉が降りだすと、村の人たちは、おけや水がめや、そのほか、いろんな入れ物を持ち出して、せっせと粉を集めます。
 そしてそれを袋に入れて、大きな蔵に、いっぱい粉の入った袋をつめこみます。
「やあ、きょうは甘い砂糖だぞ」
 お砂糖も小麦粉と同じで、砂や土がまじらないように、きれいに集めておきます。
 こうして、一年分のお砂糖と小麦粉をたくわえてしまうと、村の人たちは、遊んで暮らせばいいのです。
「やあ、けっこう、けっこう。今年も働かなくていいわけだ」
「ほんとうにありがたいねえ。毎日寝ころがっていればいいんだから」
 この村の人たちは、ほかの村のように、畑をたがやして麦やマメをつくろうとしません。
 おなかがすいたら、おだんごや砂糖がしをつくって食ベればいいわけですから。
 ところが、前の年の小麦粉やお砂糖が、蔵にたくさん残っているうえに、今年の分が集まるものですから、入れる所がなくて、はみ出してしまいます。
 そうなると、村の人たちの心の中に、ありがたいという気持ちはすっかりなくなって、小麦粉やお砂糖をそまつにするようになりました。
 子どもたちまで、小麦粉をおだんごにして、石のように投げてみたり、池にお砂糖を流して遊んだりしました。
 やがて、今年も冬がやってきました。
 けれども、村の人たちは、空からの贈り物を待ってはいません。
 もうあり余るほど、前の年の分が残っていたからです。
 そのうちに、また白い粉が降ってきました。
 みるみるうちに、あたり一面まっ白につもりました。
 そのとき、外で遊んでいた子どもたちがさけびました。
「あれー! 砂糖じゃないぞー!」
「小麦粉でもないぞー!」
「冷たい、冷たい、冷たい!」
「口の中へ入れたら、とけてなくなるよー!」
 それをきいて、おとなたちも外へ飛び出してきました。
「ほんとうだ。冷たくて、口に入れるととけてしまうぞ!」
 空から降ってきた白い粉、それは、ふつうの雪だったのです。
 そしてそのつぎの年も、またつぎの年も、お砂糖や小麦粉は降ってきませんでした。
 やがて、たくわえてあったお砂糖や小麦粉もついになくなり、すっかりなまけ者になってしまった人たちは、たいへん困ったということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ピーターパンの日
きょうの誕生花 → やつで
きょうの誕生日 → 1950年 奈美悦子 (俳優)


きょうの新作昔話 → ハリセンボンになった嫁さん
きょうの日本昔話 → 三郎の初夢
きょうの世界昔話 →
きょうの日本民話 → 米問屋のお礼
きょうのイソップ童話 → ロバとニワトリとライオン
きょうの江戸小話 → おやのおん


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