きょうの世界昔話 gooブログ編

アンデルセン童話やグリム童話など、世界の昔話をイラストと朗読付きで毎日配信。

10月31日の世界の昔話 しあわせの王子

2007-10-31 06:22:05 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 10月の世界昔話

10月31日の世界の昔話

しあわせの王子

しあわせの王子
ワイルドの童話 → ワイルドの童話の詳細

 むかしむかし、ある町には、美しい「しあわせの王子」の像(ぞう)がありました。
 ピカピカと、金色にかがやく体。
 青いサファイアのひとみ。
 腰の剣には、大きいルビーがついています。
 町の人たちは、このすばらしい王子のように、しあわせになりたいと願いました。
 冬が近づいてきた、ある寒いタ方のことです。
 町に、ツバメが一羽飛んできました。
「ずいぶんと遅れちゃったな。みんなはもう、エジプトに着いたのかなあ。ぼくもあした、旅に出よう」
 ツバメは王子の足元にとまり、そこで眠ろうとしました。
 すると、ポツポツと、しずくが落ちてきます。
「あれれ、雨かな? くももないのに・・・。あっ、王子さまが泣いている。もしもし、どうしたのですか?」
 おどろいたツバメがたずねると、王子は答えました。
「こうして高い所にいると、町じゅうの悲しいできごとが、目に入ってくる。でもぼくには、どうすることもできない。だから泣いているんだよ。ほら、あそこに小さな家があるだろう。子どもが病気で、オレンジがほしいと泣いている。お母さんは一生けんめい働いているのに、貧しくて買えないんだ」
「それはお気のどくに」
「お願いだ、ツバメくん。ぼくの剣のルビーをあそこへ運んでおくれ」
「・・・うん。わかった」
 ツバメはしぶしぶ、王子の腰の剣のルビーをはずして、運んでいきました。
 そして、熱で苦しんでいる男の子のまくらもとにルビーを置くと、
「がんばってね」
 男の子をツバサで、そっとあおいで帰ってきました。
「ふしぎだな。王子さま、寒いのに、なんだかからだがポカポカする」
「それは、きみがいいことをしたからさ、ツバメくん」
 つぎの日、王子はまた、ツバメにたのみました。
「ぼくの目のサファイアを一つ、才能のある貧しい若者に運んでやってくれないか」
「でもぼく、そろそろ出発しなくちゃ」
「お願いだ。きょう一日だけだよ、ツバメくん」
「・・・うん」
 ツバメの運んできたサファイアを見た若者は、目をかがやかせました。
「これでパンが買える。作品も書きあげられるぞ」
 つぎの日、ツバメは、きょうこそ旅に出る決心をしました。
 そして王子に、お別れをいいにいきました。
「王子さま、これからぼくは、仲間のいるエジプトにいきます。エジプトはとてもあたたかくて、お日さまがいっぱいなんです」
 けれど、王子はたのむのでした。
「もう一晩だけいておくれ。あそこでマッチ売りの女の子が泣いている。お金をかせがないとお父さんにぶたれるのに、マッチを全部落としてしまったんだ。だから、残ったサファイアをあげてほしい」
「それでは、王子さまの目が、見えなくなってしまいますよ」
「いいんだ。あの子がしあわせになれるのなら」
 人のしあわせのために、自分の目をなくした王子を見て、ツバメは決心しました。
「王子さま、ぼくはもう、旅に出ません。ずっとおそばにいます。王子さまの目のかわりをします」
「ありがとう」
 ツバメは町じゅうを飛び回り、貧しい人たちの暮らしを見ては、それを王子に話して聞かせました。
「ぼくのからだについている金を、全部はがして、貧しい人たちに分けてあげてほしいんだ」
 ツバメは、王子のいいつけどおりにしました。
 空から雪がまい落ちてきました。
 とうとう、冬がきたのです。
 さむさによわいツバメは、こごえて動けなくなりました。
「ぼくは、もうだめです。さようなら、王子さま。いいことをして、ぼくは、しあわせでした」
 ツバメは王子にキスをすると、力つきて死にました。
 パチン!
 王子の心臓(しんぞう)は、寒さと悲しみのたえかねて、はじけてしまいました。
 つぎの朝、町の人たちは、しあわせの王子の像がすっかりきたなくなっているのに気づきました。
「美しくない王子なんか、必要ない。とかしてしまおう」
 ところがふしぎなことに、王子の心臓は、どんなにしてもとけません。
 しかたがないので心臓だけは、そばで死んでいたツバメといっしょにすてられました。
 そのころ、神さまと天使(てんし)が、この町へやってきました。
「町でいちばん美しいものを、持っておいで」
 神さまにいいつけられて、天使が運んだのは、王子の心臓とツバメでした。
 神さまはうなずきました。
「よくやった。これこそが、この町で一番美しいものだ。王子とツバメはたいへん良いことをした。この二人を天国にすまわせよう。きっと、しあわせに暮らすことだろう」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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10月30日の世界の昔話 サヤエンドウじいさん

2007-10-30 06:03:53 | Weblog

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10月30日の世界の昔話

サヤエンドウじいさん

サヤエンドウじいさん
ポーランドの昔話 → ポーランドの国情報

 むかしむかし、ある村に、イェジーじいさんというおじいさんが、まごたちといっしょにくらしていました。
 とてもまごをかわいがる、いいおじいさんでしたが、ただこまったことに、ほら(→うそ)をふくくせがあって、いつもでたらめばかりいっているのでした。
「わしは、こんなびんぼうぐらしをしてはいるが、いつでも大金もちになれるんだ。というのも、サヤエンドウじいさんという魔法使いがいてな、わしのいいつけならなんでも聞いてくれるからさ」
 もちろん、それはおじいさんのでまかせでした。
 でも、村の人たちになんどもこういっていばっているうちに、ほんとうにサヤエンドウじいさんがいるような気がしてきました。
 さて、ある日のこと、イェジーじいさんは畑の番をたのまれました。
「おい、みんなすごいだろう。ちょっと番をしてやるだけで、あげまんじゅうと、スイカと、上等のハムがもらえるんだぞ」
 イェジーじいさんは、さっそくいばりましたが、けれどもおじいさんが本当にもらったのは、小さなキャべツが三つきりでした。
「やれやれ、まごたちが腹をすかせてまってるのに、これじゃなんのたしにもならん。こまった、こまった」
 おじいさんは頭をかかえて、畑のあぜにすわりこみました。
 そのとき、おじいさんはハッと思いだしました。
「そうだ! サヤエンドウじいさんにたのめばいい」
 イェジーじいさんは、大声でさけびました。
♪サヤエンドウじいさん、
♪きておくれ、
♪しあわせを持って、きておくれ。
 もちろん、サヤエンドウじいさんなんて、イェージーじいさんのほらだったのですが、不思議なことにエンドウの花がゆらっとゆれて、小人のおじいさんがとびだしてきたのです。
 マメ色のうわぎとボウシをかぶっていて、手にはつえをもっています。
 イェジーじいさんが考えていた、サヤエンドウじいさんにそっくりでした。
「わしが、サヤエンドウじいさんだ。なんなりとのぞみをかなえてあげよう。しあわせにもしてあげよう。だが、もう二どとうそをついてはいけないよ」」
と、小人はいいました。
「わしが、うそなんかつくものかね」
と、イェジーじいさんはつぶやきました。
「さあ、それではしあわせをさがしにでかけよう。まごのことは心配しなくていい。近所の人がせわをしてくれるから」
 イェジーじいさんは、小人のサヤエンドウじいさんにつれられて旅にでかけました。
 小人は、小ムギで焼いたもちを持っていきました。
 二人は、野をこえ山をこえて旅をつづけました。
 そのうちに、焼いたもちはだんだんヘって、あと二つきりになりました。
「こんやはがまんして、朝までのこしておこう」
 サヤエンドウじいさんは、そういってねました。
 でも、イェジーじいさんは、おなかがすいてねむれません。
 とうとう、夜なかにそっとおきだして、焼いたもちを一つたべてしまいました。
 よく朝、サヤエンドウじいさんはイェジーじいさんに聞きました。
「おや? ゆうべ、たしかにもちは二つあった。・・・さては、おまえさんが一つたべてしまったんだね。正直にいってくれ」
「とんでもない! たベやしないよ。おまえは自分がたべておいて、うそをついているんだろう!」
「・・・やれやれ」
 小人は、ため息をつきました。
 でも、なにもいわずにのこったもちを二つにわって、イェジーじいさんにもわけてやりました。
 二人はまた、旅をつづけました。
 しばらくして、大きな村につきました。
 サヤエンドウじいさんはイェジーじいさんをのこして、食べ物をさがしにでかけました。
 イェジーじいさんは村の人たちと話をしていましたが、そのうちに、いつものようにでまかせをいいはじめました。
「オホン! わしは火の中にだってとびこむことができる。火事のときにはいつも火をくぐって、人や財産(ざいさん)をたすけだしてやるんだ。あつくもなんともない。火事だって消してやるのさ」
 村の人たちはすっかりかんしんして、お酒や肉だんごをごちそうしました。
 そのとき、だれかが大声でさけびました。
「火事だー! 火事だー!」
 さあ、あたりは大さわぎになりました。
 火事になった家の主人は、さっそくイェジーじいさんにすがりつきました。
「どうぞ、おたすけください。火事を消してください。だいじな財産を持ちだしてください」
 そんなことをいわれても、できません。
 イェジーじいさんは、ただオロオロして、まわりをうろつきまわるだけです。
 そのうちに、村の人たちはおこりだしました。
「どうしたんだ! さっきの話は、うそだったのか?!」
「うそなものかね、見ているがいい」
 こうなれば、しかたがありません。
 おじいさんは思いきって、火の中へとびこみました。
 でも、とびこみはしましたが、どうすることもできません。
 いまにも、焼け死にそうです。
 おじいさんは、夢中でさけびました。
「サヤエンドウじいさん、たすけてくれえ!」
 するとたちまち、サヤエンドウじいさんが大きなジョウロを持ってやってきました。
「イェジーじいさん、たすけてやろう。だがそのまえに、ほんとうのことをいいなさい。もちをたベなかったとか、火事を消せるとか、うそをついたろう」
 イェジーじいさんは、そんなことをうちあけるくらいなら、焼け死んだほうがましだと思いました。
「いいや、たベたりしない。おまえがたべたんだろう。火事を消せるなんて、いったおぼえもない」
「・・・やれやれ」
 サヤエンドウじいさんは大きなため息をつくと、ジョウロの水を火にかけました。
 火はたちまち消えて、イェジーじいさんはたすかりました。
 さて、二人はまた、森をこえ山をこえて旅をつづけ、やがてひろい川のそばにやってきました。
 川のむこうの丘の上に、美しい町が見えました。
 サヤエンドウじいさんは、その町をさしていいました。
「あの町でしあわせが見つかるだろう。だが、ほらをふいたりうそをつくと、とんでもないさいなんがふりかかってくるからな」
「だいじょうぶ。うそなんかつくものか。やくそくするよ」
と、イェジーじいさんはやくそくしました。
 ところが、サヤエンドウじいさんが昼ねをしているまに、川岸で遊んでいた子どもたちを集めて、もう、ほらをふきはじめました。
「わしは、もぐりの名人だ。一日じゅうだって、水の中にもぐって泳ぐことができるんだよ」
 こういいながら、川にかかった小さな橋の上で、泳ぐまねをして見せました。
 ところがそのとたんに、橋がボキンとおれてしまい、おじいさんは川へまっさかさまに落ちてしまいました。
 イェジーじいさんは、ほんとうは、すこしも泳ぐことができないのです。
 たちまち流されて、おぼれそうになりました。
 おじいさんは、死にものぐるいでさけびます。
「サヤエンドウじいさん、たすけてくれえ!」
 サヤエンドウじいさんは、目をさましてとんでくると、イェジーじいさんの髪の毛をつかんでいいました。
「たすけてやるが、ほんとうのことをいいなさい。もちをたベただろう。ほらも、ふいただろう」
 イェジーじいさんは、いまにも息がとまりそうでしたが、それでも大声でいいはりました。
「もちをたべたのは、おまえだ! ブクブク。わしは、ほらなんかふくものか! ブクブク」
「・・・やれやれ」
 サヤエンドウじいさんは、ため息をつきました。
 でも、だまってイェジーじいさんをたすけあげると、むこう岸の町へつれていきました。
 町の市場では、ちょうど、この国のおきさきのおふれが読みあげられるところでした。
『おきさきさまお気に入りの、はたおり娘のバーシャとスターシャが、頭もあがらないおもい病気。おきさきさまは、たいヘんなお悲しみ。二人の病気がなおらなければ、新しいきものをおめしになれない。そこでおきさきさまは、おふれをだされた。二人の病気をなおしたものには、金貨を山ほどくださると。だが、もしうまくいかないときは、首きり役人にひきわたす』
 サヤエンドウじいさんは、イェジーじいさんをご殿につれていきました。
 王さまの前ヘでると、サヤエンドウじいさんはこういいました。
「わたくしが、はたおり娘の病気をなおしましょう。ただ、一人ずつでなくてはこまります。まずバーシャをなおし、それからスターシャをなおしましょう」
 王さまは、承知(しょうち)しました。
 サヤエンドウじいさんは、にえ湯をいれたカマと、氷水をいれたカマを用意させました。
 それからハチミツのツボと、クリームのツボと、マメをひと袋持ってこさせました。
 すっかりしたくができあがると、死んだようになっているバーシャがはこばれてきました。
 サヤエンドウじいさんは、
「イェジーじいさん。ヘやの戸をしめてくれ。だれもいれちゃいけないよ」
と、いいつけました。
 戸がしまると、サヤエンドウじいさんはバーシャのからだじゅうに、ハチミツとクリームをぬりつけました。
 そして、マメを二つのカマにばらまきました。
 それからバーシャを、さいしょはにえ湯の中につけ、つぎには氷水の中につけて、息を三度ふきかけました。
 するとバーシャは、たちまち元気になり、すぐにとびおきて、美しいレース糸をおりはじめました。
「きょうはこれでいい。スターシャをなおすのは、あすにしよう」
 サヤエンドウじいさんは、そういってどこかヘでていきました。
 さて、バーシャがはたをおる音を聞きつけて、ご殿じゅうの人が集まってきました。
 王さまとおきさきもビックリです。
「まあ、バーシャ。いったいどうしてそんなに元気になったの?」
 バーシャがこたえるまもなく、イェジーじいさんがすすみでてはなしだしました。
「王さま、おきさきさま。バーシャをなおしたのはこのわたくしでございます。あの小人は、ただのてつだいでございます。スターシャだって、かんたんになおしてみせますよ」
 これを聞いたおきさきは、すぐにスターシャの病気もなおすように、イェジーじいさんにいいつけました。
 おきさきは、はやく新しいきものがきたかったのです。
 イェジーじいさんはこまりましたが、でもしかたがありません。
 にえ湯のカマと、氷水のカマと、ハチミツのツボと、クリームのツボと、マメをひと袋用意させました。
 そこへ、スターシャがはこばれてきました。
 イェジーじいさんはヘやの戸をしめると、サヤエンドウじいさんのしたとおり、マメをカマにまき、スターシャにハチミツとクリームをぬりつけました。
 ところが、にえ湯につけたとたん、スターシャはものすごい声をだしました。
 あわてて氷水につけると、もっとものすごいさけび声をあげました。
「たすけてぇー!」
 王さまやおきさきさまが、かけつけてきました。
 見ると、ハチミツとクリームをベッタリからだにつけたスターシャが、いまにも死にそうなようすです。
 イェジーじいさんは、汗をタラタラ流しながら、スターシャにいっしょうけんめい息をふきかけています。
 王さまとおきさきはおこって、イェジーじいさんの首をはねるようにいいつけました。
 そしてとうとう、イェジーじいさんは首きり台の前につれていかれました。
 イェジーじいさんは、なきなきさけびました。
「サヤエンドウじいさん、どこへ、いってしまったんだ。たすけてくれ、たすけてくれ」
 するとたちまち、サヤエンドウじいさんがすがたをあらわしました。
「もちをたべたと、正直にいうかね? ほらをふいたと、正直にいうかね?」
「もちをたべたのは、おまえだ! わしは、ほらなんかふくものか!」
と、おじいさんはいいはりました。
「・・・やれやれ」
 サヤエンドウじいさんは、ため息をつきました。
 でも、王さまにイェジーじいさんの命をたすけてやってくださいとたのんで、スターシャの病気をなおしました。
 王さまとおきさきは、やくそくどおりの金貨の山を、サヤエンドウじいさんにわたしました。
 サヤエンドウじいさんは、船のように大きなマメのさやに、イェジーじいさんと金貨を乗せると、魔法のことばをとなえました。
 すると船は、矢のように空をとんで、イェジーじいさんがはじめてサヤエンドウじいさんにであった畑につきました。
「さあ、この金貨を持っていくがいい。これでおわかれだが、たすけのほしいときは、いつでもいってあげよう。だが、うそをついているうちはたすけてやらないよ」
 イェジーじいさんは、サヤエンドウじいさんにいくどもお礼をいって、まごたちのいる村へ帰っていきました。
 村の近くまでいくと、むこうに赤いうわぎをきた、まごが立っていました。
「おおっ、いま帰ったぞ!」
 おじいさんは、いそいでかけよろうとしました。
と、そのときです。
 とつぜん、おそろしい地ひびきをたてて、小山のようなあばれウシが走ってきました。
 ウシは、赤いうわぎをきた、まごをめがけておそいかかろうとしました。
「サヤエンドウじいさん。たすけてくれ!」
 イェジーじいさんは、大声でよびました。
 サヤエンドウじいさんは、またたくまにあらわれました。
「もちをたべたと、正直にいうかね?」
「たべた! たしかに、わしがたべた! ほらをふいたことをゆるしてくれ! もう、金貨もなにもいらない! おねがいだ! たいせつなまごをたすけてやってくれ!」
 それを聞くと、サヤエンドウじいさんはニッコリ笑って、ウシをシラカバ(→カバノキ科の落葉高木)の木にかえてしまいました。
 それからはイェジーじいさんは、もう二度とほらをふかずに、しあわせにくらしたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 香りの記念日
きょうの誕生花 → ペチュニア
きょうの誕生日 → 1979年 仲間由紀恵(俳優)

きょうの日本昔話 → どうもと、こうも
きょうの世界昔話 → サヤエンドウじいさん
きょうの日本民話 → ほらふき村は子どもまで
きょうのイソップ童話 → おばあさんと目医者
きょうの江戸小話 → 貧乏医者

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10月29日の世界の昔話 わるがしこいクモ

2007-10-29 06:01:10 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 10月の世界昔話

10月29日の世界の昔話

わるがしこいクモ

わるがしこいクモ
ナイジェリアの昔話 → ナイジェリアの国情報

 むかしむかし、ひでりがつづいて、食べ物がなんにもとれない年がありました。
 たくさんの子どもをかかえたクモがいましたが、たべるものがなんにもないので、みんな、やせていくばかりです。
 ある晴れた日に、クモはゾウの王さまのところへでかけていきました。
「王さま、いつまでもおさかえになりますように。わたくしは、水のカバ王のおつかいでまいりました。あちらには、さかなはすてるほどございますが、ケーキをやくムギがございません。ほんのすこしばかり、ムギをゆずっていただけませんでしょうか。さいしょのとりいれのあとで、カバ王の一番りっぱなウマをお礼にさしあげたいとぞんじます。この話は、ゾウ王さまのお耳にだけいれるようにと、カバ王が申しておりました。ですから、どうぞだれにもおっしゃらないでくださいませ」
 ゾウ王はこたえました。
「よし、カバ王のたのみはひきうけた。だが、なぜひみつにしなければならないのか、わからんのう」
 ゾウ王はさっそく、家来のゾウたちに、百カゴぶんのムギを川へはこばせました。
 クモは先にたって、道案内をしました。
 さいごのゾウがカゴをはこんでしまうと、クモは、
「みなさん、もうあとはわたしがひきうけました。どうか帰って休んでください」
と、いって、ゾウたちを帰しました。
 ゾウたちがいってしまうと、クモは大いそぎで家ヘ帰って、妻や子どもたちをよび集め、ムギをひとつぶのこらず自分の家へはこんでしまいました。
 あくる日、クモは川の中にある、カバ王のご殿へいきました。
「王さま、いつまでもおさかえになりますように。わたくしは陸のゾウ王のおつかいでまいりました。ゾウ王のところには、ケーキをやくムギはいくらでもございますが、スープにいれるさかなが一匹もありません。そこでおねがいでございますが、さかなを百カゴいただけませんでしょうか。さかながふえて、たくさんとれるようになりましたら、一番りっぱなウマをお礼にさしあげると、ゾウ王は申しております」
 カバ王はうなずきました。
「よろしい。ゾウ王ののぞみどおりにしてあげよう。さっそく、みなの者にそうだんして」
 クモは、あわてていいました。
「王さま。ゾウ王からカバ王さまのお耳にだけいれるようにと、かたくいいつけられてまいりました。どうぞ、ひみつにしてくださいませ」
 カバ王はしょうちしました。
 そしてさっそく、家来たちに百カゴのさかなを川岸ヘはこばせました。
「みなさん、あとはわたしがひきうけました。どうか帰って休んでください」
 こういってクモは、カバ王の家来たちを帰しました。
 そして家へとんで帰ると、妻や子どもたちをよび集め、百カゴのさかなを自分の家へはこんでしまいました。
 これで、食べ物の心配はなくなりました。
 クモはどこにもいかないで、一日じゅう、妻や子どもたちと、せっせとつなをつくりはじめました。
 長い長いつなが、できあがりました。
 そして何百万もの貝がらを、そのなわにとおしました。
 さて、とりいれのときがくると、ゾウ王はクモをよびました。
「カバ王がウマをくれるというやくそくを、わすれてはいまいな」
「どうかご安心ください。ちょうどウマをとりにいこうと思っていたところでございます。三日でもどってまいります」
 クモはゾウ王のご殿から帰ると、なわをもって森へでかけました。
 クモは、まいたつなをほどきながら歩いていきました。
 ちょうど、半分ほどといたところで、のこりのつなをおいて、ゾウ王のところへひきかえしました。
「王さま」
 クモは、つなのさきをゾウ王にわたしていいました。
「あしたの夜あけに、カバ王はウマを水からひきだします。このつなの片方のはしにウマをしばります。あすの朝まで、木のみきにつなをまきつけておいてください。木がゆれはじめたら、カバ王のウマがしばられてあばれだしたしるしです。それをごらんになったら、一番力もちの家来たちに、つなをひっぱらせてください。ウマがひきずりよせられるまで、けっしてやめてはいけません」
 ゾウ王はクモのいうとおりに、つなを一番ふとくてガッシリした木のみきにまきつけました。
 その間に、クモはカバ王のご殿ヘかけつけました。
「ゾウ王が、おやくそくのウマをさしあげるようにと申しましたが、わたくし一人では、とてもつれてこられません。そこでウマにつなをつけて、つなをひっぱりよせていただくことにしました。つなの先を川岸の木にしばりつけておきますから、あすの朝、一番力もちの家来たちにひっぱらせてくださいませ。ウマが岸にくるまで、おやめになってはいけません」
 あくる朝はやく、カバたちは川岸にでてみました。
 川岸の大きな木のみきに、つながまきつけてあります。
 カバたちはつなをつかんで、自分のほうヘひっぱりはじめました。
 ゾウたちも、つなをまきつけた木がゆれはじめると、ありったけの力をだして、片ほうのはしをひっぱりはじめました。
 カバがむちゅうでひっぱれば、ゾウもすごい力でひっぱります。
 とうとう、日がくれました。
 ゾウもカバも、つかれきってねむりました。
 そして夜があけると、またもやいっせいにつなひきをはじめました。
 けれどもこのつなひきは、いつまでたっても勝負がつきません。
 日が高くのぼったころ、カバ王は家来にいいました。
「こんなにしてもひっぱれないとは、いったいどんなウマだ? 見てまいれ。カバがウマにかなわないなどという話は、いままで聞いたこともない」
 ちょうどそのころ、ゾウ王も家来にいいつけていました。
「カバ王がくれるというウマは、いったいどんなウマだろう? いってしらべてまいれ。ゾウがウマにかなわないなどという話は、聞いたこともない」
 カバ王とゾウ王の家来たちは、森のまんなかでバッタリ出あいました。
 ゾウは、カバに聞きました。
「みなさん、おそろいでどこへいくのですか?」
 カバは、こたえました。
「あなたがたの王さまから、われわれの王さまにおくられたウマがどんなウマか、見にいくところですよ。つなをつけて一日じゅうひっぱっても、まだひきずってこられないのですからね。ところでみなさんは、どこへいくんですか?」
「われわれも、あなたがたの王さまからのおくりものだという、ウマを見にいくところですよ」
 すると、カバの家来たちはビックリしていいました。
「カバ王がゾウ王にウマをおくるなんて、そんな話はなにも聞いていませんよ。川岸からつなをたどってここまできたんですが、どこにもウマなんていませんでしたよ」
 カバとゾウは、それぞれの王さまのところへひきかえしていきました。
 カバ王はこれを聞くと、火のようにおこりました。
「わしがウマをおくるだと? とんでもない! 百カゴのさかなをおくったではないか。さては、あのクモめがだましたな!」
 ゾウ王も家来の話を聞いておどろきました。
「ウマをもらうのはわしのほうだ。百カゴのムギを、こちらからおくったではないか。さては、クモめがだましたな!」
 ゾウ王はカバ王を、たずねていきました。
「もう、おたがいにむだなつなひきはやめましょう。それより、あのけしからんクモを見つけて、こっぴどくこらしめてやりましょう」
 そのころクモは、ジッと家にかくれて、ゾウ王からだましとったムギと、カバ王からだましとったさかなをたべて、のんきにくらしていました。
 ところが、とうとうムギもさかなも、たべつくしてしまいました。
 だからまた、食べ物をさがしに外へ出なければならなくなりました。
 でも、ゾウやカバに出あいたくはありません。
 クモがあたりを見まわしていると、道ばたに病気で死んだカモシカの皮がありました。
 たちまち、うまい考えがうかびました。
 クモはカモシカの皮をかぶって歩きだしました。
 けれども、そのカモシカのひずめは地面をひきずるだけですし、頭はプラプラとゆれています。
 まったく、見るもあわれなカモシカです。
 すると、むこうからゾウ王がやってきました。
 ゾウは、ヨボヨボのカモシカを見て声をかけました。
「カモシカよ。クモをさがしてくれないかね。わしとカバ王をだましたわるいやつだ」
 クモは、カモシカの声をまねしてこたえました。
「クモをさがすんですって? しーっ、大きな声をださないでください。とんでもないめにあいますよ。わたしをごらんなさい。クモとけんかしたばっかりに、わかい元気なわたしがこのありさまです。クモが足をわたしのほうへむけたとたんに、からだがドンドンとしなびてしまったんですよ」
「ほんとうか!」
 ゾウ王はおどろきました。
「ほんとうですとも。どんなものでも、クモに足をふりあげられたらさいご。骨までしなびてしまいますよ」
 ゾウ王は、おそろしくなって、
「クモをさがすのはやめた。クモにあっても、わしのことはだまっていてくれ。たのむ」
と、あわててにげだしました。
 クモはいそいでカモシカの皮をぬぎすてると、先まわりをしてゾウをまちました。
 そして、すました顔で、
「もしもし、わたしをさがしておいでのようですが」
と、いいながら、足をふりあげるまねをしました。
 ゾウはガタガタとふるえながらさけびました。
「い、いや、ちがう、ちがう。あっちヘいけ。いってくれ、はやく」
 クモは足をふりあげて、思いっきりおどすと、ゆうゆうとひきかえしました。
 そしてまたカモシカの皮をかぶって、こんどは川岸にいきました。
 ちょうどそのとき、カバ王は川岸をさんぽしていました。
 カバ王はカモシカを見て聞きました。
「カモシカよ。クモを見なかったかね? わしはクモをこらしめてやりたいのだ」
 クモは、カモシカの声をまねしていいました。
「おそろしいものをおさがしですね。クモのおかげで、わたしはこんなあわれなすがたになったんですよ。ついさっきまで、元気に走りまわっていたのに、クモに足をふりあげられたとたん、みるみるやせて、しなびてしまいました。あなたも気をつけたほうがいいですよ」
 カバ王はふるえあがって、
「たのむ、わしがさがしていたなどと、クモにいわないでくれ」
と、いうなり、水のなかへもぐってしまいました。
 クモはいそいで皮をぬぎすてて、カバのあとを追いかけました。
「カバはどこだ? 出てこい! クモはここにいるぞ!」
 クモは水にむかって、大きな声でどなりました。
 カバ王はビックリして、深く深くもぐってしまいました。
 そしていちばん深いところまできて、カバはやっと安心しました。
「やれ、やれ。命びろいをした」
 ほんとうに命びろいをしたのは、クモのほうですのにね。

おしまい

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10月28日の世界の昔話 金髪姫

2007-10-28 06:46:55 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 10月の世界昔話

10月28日の世界の昔話

金髪姫

金髪姫
チェコの昔話 → チェコの国情報

 むかしむかし、あるところに、年をとった王さまがいました。
 あるとき、一人のおばあさんが、一匹のさかなを持ってご殿にやってきました。
「王さま、このさかなを焼いてめしあがってごらんなさい。陸を走るけもの、海をおよぐさかな、空をとぶ鳥、どんないきもののことばも、わかるようになりますよ」
 王さまはおばあさんにたくさんのほうびを持たせて帰すと、さっそく、家来のイルジックをよびました。
「このさかなを焼いてまいれ。だが、ひと口もたべてはいかんぞ。たべたら命はないものと思え」
 イルジックは、いつもとちがう王さまの命令をふしぎに思いました。
「それにしてもおかしなさかなだなあ。まるでヘビのようだ。ちょっと味をみるぐらいならいいだろう」
 さかなが焼けると、イルジックはほんのちょっぴりつまみぐいをしました。
 するととつぜん、どこからか、小さな小さな声が聞こえてきました。
「ぼくたちにも、おくれよ!」
 イルジックは、キョロキョロとあたりを見まわしました。
 けれども、二、三匹のハエが台所をとびまわっているだけで、だれもいません。
「おかしいなあ?」
 イルジャックが首をかしげていると、こんどは外で、
「どこへいくんだい? どこへいくんだい?」
と、ふとい声がしました。
「粉屋のところへ」
と、ほそい声がこたえました。
 イルジックがまどからのぞくと、オスのガチョウと、メスのガチョウが外にいました。
「そうか、そうだったのか。このさかなをたべると、動物のことばがわかるんだな」
 イルジックは、もうひと口つまみぐいをしてから、しらん顔で王さまのところへさかなの皿をはこびました。
 ごはんのあとで、王さまはイルジックをおともに、ウマに乗ってさんぽにいきました。
 みどりの野原を通りかかったとき、イルジックのウマが、たのしそうに笑いだしました。
「ああ、ゆかいだなあ。イルジックはかるいから、山だってとびこせそうだよ」
「うらやましいねえ」
と、王さまを乗せているウマが、ためいきをつきました。
「おれもとびはねてみたいよ。だが、このヨボヨボの王さまを乗せていちゃ、むりな話さ。首でも折られちゃたいへんだからね」
「かまわんじゃないか。じいさんが首をおったら、こっちのわかいのを乗せて走りゃいいさ」
と、イルジックのウマがいいました。
 思わず、イルジックはクスッと笑いました。
 王さまは、ジロリとイルジックをにらんでたずねました。
「なにを、笑ったのだ!」
「その、ちょっと、おかしいことを、思いだしまして」
 イルジックは、あわててごまかしましたが、王さまはきげんをわるくして、ひきかえしました。
 ご殿につくと、王さまはイルジックに、お酒をつぐようにいいつけました。
「このさかずきに、ちょうどいっぱい酒をつげ。少なすぎたり、あふれさせたりしたら首をはねるぞ」
 イルジックは、お酒をつぎはじめました。
 ちょうどそのとき、まどから二羽の小鳥がとびこんできました。
 一羽の小鳥は、くちばしに美しい金の髪の毛を三本くわえていました。
「かえせ、かえせ。ぼくのだよ!」
「いやだ。ぼくがひろったんだもの」
「だけど、あの美しいお姫さまが髪の毛をとかしていたとき、髪の毛がおちたのを見つけたのはぼくだよ。二本でいいから、かえしてくれ」
「一本だって、やるものか」
 二羽の小鳥がとびながらうばいあいをしているうちに、一本の髪の毛がゆかにおちてスズのような音をたてました。
 イルジックはつい、そっちのほうをふりむいて、お酒をあふれさせてしまいました。
「もう、おまえの命はないぞ!」
と、王さまはさけびました。
「だが、この金の髪をもつ姫を見つけて、わしのところにつれてくるなら、ゆるしてやろう」
 しかたがありません。
 イルジックはウマに乗って、あてもない旅にでかけました。
 イルジックが森のそばを通りかかると、牧童(ぼくどう→カウボーイ)たちが、しげみを焼いていました。
 しげみの下にはアリづかがあって、いまにもほのおに焼かれそうでした。
 たくさんのアリたちがタマゴをかかえて、オロオロと、にげまわっていました。
 イルジックはウマからとびおりると、しげみをきりはらって火を消し、アリたちをたすけてやりました。
 アリは喜んで、なんどもお礼をいいました。
「ありがとうございます、イルジックさん。なにかこまったときは、わたしたちを思いだしてください。きっとたすけにいきますよ」
 しばらくしてイルジックは、高くそびえたモミの木のそばを通りかかりました。
 モミの木のいただきには、カラスの巣(す)がかかっています。
 木の根もとで二羽のカラスの子が、悲しそうにないていました。
「お父さんもお母さんも、自分のエサをさがしにとんでいってしまったの。ぼくたちはまだとべないし、おなかがペコペコなの」
 イルジックはウマからとびおりると、ウマをころして、その肉をカラスの子にやりました。
 カラスの子は、大喜びでさけびました。
「ありがとう! イルジックさん。こまったときには、きっとたすけにいきますよ」
 ウマがなくなったので、イルジックは歩かなければなりません。
 いく日もいく日もかかって、森を通りぬけると、はてしない海がひろがっていました。
 海べを歩いていくと、二人の漁師がけんかをしていました。
 二人はアミにかかった金のさかなを、うばいあっていたのでした。
 イルジックは持っていたお金をぜんぶやって、さかなを買いとりました。
 それから、さかなを海へはなしてやりました。
 金のさかなは、うれしそうに水から頭をだして、
「ありがとう、イルジックさん。こまったときには、きっとたすけにいきます」
と、さけんで、波のあいだに消えていきました。
 イルジックは二人の漁師に、金の髪の毛をもつ姫を、あてもなくさがしていることをはなしました。
 すると運のいいことに、漁師たちはその姫のことを知っていました。
「ほら、むこうに島が見えるでしょう。あの島のスイショウのご殿にすむ王さまの姫がその方ですよ。姫はいつも夜あけに金の髪をとかします。そのときは空も海もキラキラと光りますよ。あなたはこんなにたくさんのお金をくださったから、お礼に島まで船でつれていってあげましょう。だがお気をつけなさい。王さまには十二人も姫がいるんですが、金髪姫はその中のたった一人ですからね」
 島まで漁師たちに送ってもらったイルジックは、スイショウのご殿の王さまにいいました。
「主人のつかいで、金髪姫に結婚を申しこみにまいりました」
「よろしい、ご主人に娘をさしあげよう。だがその前に、三日のあいだ、わしのいいつけをやりとげてもらわなくてはならない」
 つぎの朝、王さまはイルジックに、第一のしごとをいいつけました。
「金髪姫が野原へ遊びにいったとき、首かざりの糸がきれて、草の中に宝石がちらばってしまった。ひとつのこらずひろい集めて、首かざりをつくってきなさい」
 いってみると、そこはひろいひろい野原でした。
 イルジックは、あちこちさがしましたが、なにも見つかりません。
 時間は、どんどんたっていきます。
「ああ、ここにあのアリがいてくれたらなあ」
 イルジックは、ためいきをつきました。
 すると、
「いますよイルジックさん。なんのご用ですか?」
 いつのまにか、たくさんのアリがイルジックのまわりをはっているではありませんか。
「宝石をひろい集めなくてはならないのに、ひとつも見つからないんだ」
「なんでもありません。すぐ集めてあげましょう」
 アリたちは、サッとちらばっていったかと思うと、たちまち宝石をひとつのこらず集めてきました。
 イルジックはかんたんに、首かざりをつくることができました。
 それを見て、王さまはいいました。
「よくやった、イルジック。だが、あしたのしごとはもっとむずかしいぞ」
 つぎの朝、王さまは二番目のしごとをだしました。
「金髪姫は海で水あびをしているときに、金の指輪をおとしてしまった。その指輪をさがしてきなさい」
 イルジックは、海岸にでてみました。
 しかし、このひろびろとした深い海の、いったいどこに指輪はおちているのでしょう。
 ボンヤリ海岸を歩きまわっているうちに、時間はどんどんたっていきます。
「ああ、ここにあの金のさかながいてくれたらなあ」
 イルジックは、深いためいきをつきました。
 すると、波間がキラキラとかがやいたかと思うと、金のさかなが顔をだしました。
「いますよ、イルジックさん。なんのご用ですか?」
「海の中から、金の指輪をさがさなくてはならないんだ。だが、どうしていいかわからない」
「ああ、さっきカマスにあったら、ひれにその金の指輪をはめていましたよ。すぐにとってきましょう」
 金のさかなは、またたくまに金の指輪を持ってきてくれました。
「よくやったな。イルジック」
 王さまは、指輪をうけとっていいました。
「だが、あしたのしごとはもっとむずかしいぞ」
 つぎの朝、王さまはさいごのしごとをだしました。
「命の水と死の水を持ってきなさい。そうしたら、おまえの主人に金髪姫をやろう」
 いったいどこへいけば、そんな水が見つかるのでしょう。
 イルジックは、でたらめに歩きつづけました。
 そうしているうちに、深い森の中にはいりこみました。
「ああ、ここに、あのカラスの子たちがいてくれたらなあ」
 イルジックは、深いためいきをつきました。
「いますよ、イルジックさん。なんのご用ですか?」
 どこからともなく、すっかり大きくなった二羽のカラスの子がとんできました。
「命の水と死の水をとってこなければならないんだ。いったいどこへいけばいいんだろう?」
「なんでもありません。すぐに持ってきてあげますよ」
 たちまち二羽のカラスは、ふたつの筒を持ってきました。
 ひとつには命の水が、もうひとつには死の水がはいっていました。
 イルジックは大喜びで、王さまのご殿へいそぎました。
 そのとちゅう、森の道にクモの巣がかかっていました。
 巣のまんなかに大きなクモがいて、つかまえたハエの血をすっていました。
 イルジックは、死の水をクモにふりかけました。
 クモはパタッと地面におちて死にました。
 そこで、命の水をハエの死がいにふりかけました。
 するとハエは、みるみるうちに生きかえって、クモの巣をやぶってとびだしました。
「ありがとう、イルジックさん。お礼にあなたを、きっとしあわせにしてあげますよ」
 ハエは、ブンブンうなりながらとんでいきました。
 さて王さまは、イルジックがいいつけられたしごとをやりとげたのを見ると、金髪姫をイルジックの王さまのおきさきにすることをしょうちしました。
 王さまは、イルジックを大広間につれていきました。
 そこには大きなまるいテーブルがあって、十二人の美しい姫がすわっていました。
 みんな頭に、雪のように白いきれをかぶって、髪をかくしていました。
 どの姫の顔もそっくりで、髪の毛を見なくては、だれが金髪姫か見わけがつきません。
「ここにいるのは、みなわしの娘だ。この中から金髪姫を見わけたらつれていくがよい」
 いくら見ても、わかりません。
 イルジックは、考えこんでしまいました。
 すると耳もとで、だれかがブンブンいっています。
「さあ、テーブルのまわりをまわりなさい。わたしが教えてあげますから」
 イルジックは、テーブルのまわりをまわりはじめました。
 一ぴきのハエがそばをとびながら、小さな声で教えてくれます。
「ちがう。・・・ちがう。・・・ちがう。・・・この姫ですよ、金髪姫は」
「この方です。わたしが王さまのおきさきにいただきたいのは!」
 イルジックは、大声でさけびました。
「みごと、そのとおりじゃ」
 王さまは、おどろきの声をあげました。
 金髪姫はたちあがって、白いきれをとりました。
 中からは、すそまでとどく金の髪があらわれました。
 大広間は、まるで太陽がのぼったようにあかるくなりました。
 金髪姫は王さまや姫たちにわかれをつげ、イルジックといっしょに年よりの王さまのところへきました。
 金髪姫をひと目みて、王さまはとびあがって喜びました。
 ご殿では、さっそく結婚式のしたくにとりかかりました。
 ところが、王さまは、
「イルジック。おまえはウマをころしてカラスにたべさせたそうだな。首つりにでもしてやりたいくらいだが、首をきるだけでゆるしてやる」
と、いって、イルジックの首をきらせてしまいました。
 金髪姫は王さまにたのんで、イルジックの首とからだをもらいました。
 そして、首とからだをならべて死の水をふりかけました。
 すると、首とからだがピッタリくっついて、きずのあともなくなりました。
 金髪姫は、こんどは命の水をふりかけました。
 そのとたん、イルジックは元気よくおきあがりました。
 王さまはそれを見ておどろきました。
 イルジックは、ますますわかく美しくなったのです。
 年とった王さまも、わかがえりたくなりました。
「わしの首もきってくれ。わしにもふしぎな水をふりかけてくれ」
 いいつけどおり、王さまの首をきりました。
 まず、命の水をふりかけましたが、どうしても首とからだがつきません。
 そこで死の水をふりかけると、首とからだはつきましたが、もう命の水はのこっていませんでした。
 ですから王さまは、生きかえることができませんでした。
 けれども、国に王さまがいなくてはこまります。
 そこで動物のことばも聞きわけられる、かしこいイルジックが、新しい王さまにえらばれました。
 そして金髪姫と結婚して、しあわせにくらしたということです。

 このお話しは、チェコの民話の中でも、たいへん有名です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1982年 倉木麻衣(歌手)

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10月27日の世界の昔話 ふしぎなブドウ

2007-10-27 06:19:56 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 10月の世界昔話

10月27日の世界の昔話

ふしぎなブドウ

ふしぎなブドウ
中国の昔話 → 中国の国情報

 むかしむかし、ある村に、とても心のやさしい娘がいました。
 この娘のひとみの一つが、ブドウのようにかがやいていたので、村の人びとは娘のことを「ブドウ姫」と、よんでいました。
 娘が十二才になったとき、お父さんとお母さんが病気でなくなってしまいました。
 娘は、おばさんの家にひきとられることになりました。
 このおばさんは、たいそういじわるな人で、いつも娘につらくあたっていましたが、ある日とうとう、娘を家からおいだしてしまったのです。
 しかし、娘は悲しんで泣いたりはしません。
 昼は村のガチョウのせわをし、夜は川のほとりのやなぎの木にもたれてねむりました。
 一人ぼっちの娘の友だちはガチョウたちで、さびしくなると、ガチョウをだいて歌をうたいます。
 するとガチョウたちも、娘の歌にあわせて「ガア、ガア」と、うたうのでした。
 それから一年ほどたったころ、おばさんに女の赤ちゃんが生まれました。
 この赤ちゃんは生まれつき、目が見えませんでした。
「ブドウ姫にいじわるをしたから、きっとバチがあたったんだ」
 村人たちは、こんなわるくちをいいました。
 おばさんは、くやしくてなりません。
 さて、お月見の夜のこと。
 娘は川岸にすわって、水にうつる月の光をボンヤリとながめていました。
 するとそこへ、おばさんが通りかかりました。
 町へお月見のごちそうを買いにいった帰りなのでしょうか。
 おいしそうなブドウがはいったカゴをかかえています。
「おばさん」
と、娘はいいました。
「わたしにそのブドウをひとふさわけてくださいな。朝からごはんをたべていないので、おなかがすいてなりません」
 おばさんは立ちどまり、おそろしい顔で娘をにらみつけました。
「そういえば、だれかがおまえの目を、ブドウのようだとかいっていたね。どれ、見せてごらん」
 おばさんはそういうと、いきなり砂をつかんで、娘の目の中にグイグイとすりこんだのです。
「キャーーーァ!」
 かわいそうに娘は、目をつぶされて川のほとりで泣きつづけました。
 泣きながらふと、むかしお母さんからきいた話を思いだしました。
「遠い山のなかに、野ブドウがなっているの。それはふしぎなブドウで、たべるとどんなに目のわるい人でもすぐになおるそうよ」
 娘はそのふしぎなブドウをさがそうと、川の流れにそってあるきはじめました。
「ふしぎなブドウさえ見つかれば、わたしの目も、おばさんの赤ちゃんの目もなおるし、ほかの目のわるい人にもきっとよろこんでもらえるわ」
 こうして十日もあるきつづけていると、とつぜん、クマのうなり声がしました。
 娘はそばの木によじのぼって、ジッとしていました。
 クマはグルグル木のまわりをまわっていましたが、そのうちに、むこうの谷のほうへ行ってしまいました。
 ホッとしていると、こんどはきゅうに、木がグラグラとゆれました。
 木の上に、一羽のタカがまいおりたのです。
 タカのつばさは木をスッポリとおおいかくしてしまうほど大きく、ツメは鉄の針のようでした。
 するどい刀(かたな)のようなくちばしで、木をつっつくたびに、木はガッガッと音をたててゆれます。
 娘はどうなることかと、ガタガタふるえていました。
 しかしタカは、娘に気づかずに、
「ギャオ!」
と、ないて、とびたっていきました。
 でもそのとき、風がピューとふいてきて、娘は木の枝からふきとばされてしまいました。
 地面に落ちたときに、足をくじいてしまったので、娘は、はっていくことにしました。
 こうして、また十日がすぎていきました。
 娘の着物はボロボロにやぶれ、顔や手に血がにじんでいます。
 ひどいつかれのために、娘の黒くつややかだった髪も、いつのまにかまっ白になってしまいました。
「どこまで行ったら、あのふしぎなブドウが見つかるのでしょう」
 娘は、なんどもあきらめて、ひき返そうとしました。
 しかしそのたびに、勇気をふるいおこして、前へ前へと進んでいきました。
「いちど心にきめたことは、さいごまでやりとおさなくては」
 そのうちに、つめたくてやわらかなものにぶつかりました。
 それは、大きなヘビでした。
 でも娘は目が見えないので、へいきでそのヘビの背中の上をまっすぐはっていきました。
 そのとき、ヘビがみぶるいをしたので、娘はあっというまにふかい谷底へまっさかさまです。
「ドシーン!」
 娘は谷底にたおれたまま、動くこともできません。
「わたし、このままここで死んでしまうのね。・・・お母さん」
 娘は、まぼろしのお母さんにむかっていいました。
 そのとき、娘の顔に、フワッと何かがふれました。
 さわってみると、草のつるのようなものです。
 そしてそのつるの先に、水の玉のようなものがぶらさがっていました。
 (もしかしたら)
 娘は水の玉をひきちぎって、そっとなめてみました。
 すると、いままでとじていた目がパッとひらき、光がいちどにとびこんできたではありませんか。
 水の玉だと思ったのは、さがしていたブドウだったのです。
 見えるようになった目で、あたりを見回してみると、いちめんにブドウがしげり、キラキラと光をはじいています。
 野の花がさき、小鳥たちが楽しそうにさえずっています。
「目が見えるということは、こんなにすばらしいことだったのね」
 娘はブドウのつるの上にすわって、歌をうたいはじめました。
 うたいながらブドウのつるで、カゴをひとつあみました。
「はやく村へかえって、目のわるい人たちに、ブドウをわけてあげましょう」
 カゴいっぱいブドウをつみおわったとき、あたりがきゅうに、くらくかげってきました。
「どうしたのかしら?」
 すると、うしろのほうから、
「おーい」
と、よぶ声がしました。
 ふりむいてみると、大男が山をまたいでくるところです。
 大男は肩に緑の布をまとい、頭に金のかんむりをかぶり、足に水晶(すいしょう)のクツをはき、手に銀のつえをもっています。
「娘よ。ここへ、なにしにきた!」
 高い高い空の上から、大男の声がひびいてきました。
 娘は、すこしもおそれずにいいました。
「はい、ふしぎなブドウをさがしに」
 大男はうなずいて、
「わしは、この森と草原と山の王だ。どうだ娘。わしといっしょに、このすばらしい国でくらさないか?」
と、娘をだきあげて、森をゆびさしました。
 そこには、めずらしい宝石がかぞえきれないほどたくさんきらめいていました。
「ここにあるくだものも、宝石も、みんなおれのものだ。どうだ。おれの娘にならないか。そうすればわしの城にすみ、しあわせにくらすことができるのだぞ」
「ありがとう。でも、わたしは村へ帰らなければなりません。村に帰って、目が見えなくて悲しんでいる人びとに、ブドウをあげなければ」
「バカもの!」
 大男はおこって、娘をふきとばしました。
 娘は空高くふきあげられ、星のきらめくなかをグルグルとまわって落ちてきました。
 大男は、娘をうけとめると、
「村へ帰っても、つらいことばかりだろう。どうだ。わしのそばでくらすか?」
「いいえ。わたしはどうしても村へ帰ります」
「・・・そうか、わしはおまえのようなこころのやさしい、すばらしい娘とくらしたいと思っていた。だがあきらめよう。さあ、村へ帰るがいい」
と、娘に一本の緑の小枝をわたしました。
 大男からもらった緑の小枝をにぎりしめると、風のように早く走ることができました。
 娘はブドウのカゴをかかえて、なつかしい村へ帰っていったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → テディベアの日
きょうの誕生花 → ななかまど
きょうの誕生日 → 1966年 高嶋政伸(俳優)

きょうの日本昔話 → テングの羽うちわ
きょうの世界昔話 → ふしぎなブドウ
きょうの日本民話 → 洪水から村をすくった若者
きょうのイソップ童話 → ねむっているイヌとオオカミ
きょうの江戸小話 → 鬼のたまご

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