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音楽家 ヲノサトル のブログ

ジャニ研!

2013年01月17日 | レビュー


大谷能生・速水健朗・矢野利裕
ジャニ研! ジャニーズ文化論
原書房, 2012



「ジャニーズ? ああ、日本を代表する芸能プロダクション…だよね… 男だけの… 」ぐらいの認識しかなかった当方、ガツンと叩きのめされました。

代替わりしたりメンバーやグループは変転しても、揺るぎなく一貫して続くジャニーズというブランドは、言ってみれば連綿と続く「ファミリー」。しかし、そういった形態が日本芸能界の中でいかに異端的な存在か。アツい語りと妄想によって次々に「証明」していくのが本書だ。

そもそもジャニーズ事務所とは何なのかというミステリーをとく推理小説的な展開にぐいぐい引き込まれ、気がつけば「ザ・芸能界」の歴史と平行して、日本の戦後社会史を追体験しガラパゴス化したこの国の経済と文化について、幅広く示唆を得られる内容。

戦後歌謡史はもとよりミュージカル、ショービジネス、ディスコ、ゲイカルチャー、グレイトフルデッド、タイアップCM、少年音楽隊、歌舞伎、宝塚、オリエンタリズムとエキゾチズム、ディズニー、コンテンツビジネスと鉄道と不動産…等々、呆れるほどの振り幅で、ジャニーズ史と20世紀文化史の間に補助線を引いていく手つきが、とにかく強引で楽しい。

"「ジャニー喜多川」と名乗っているから芸名のように思ってしまうけど、それは錯覚で、彼は根っから日系アメリカ人の「ジョン・H・キタガワ」"

"なぜ「光GENJI」「KinKi Kids」なんていう変なグループ名をつけるのかという謎も、そこから解けるんです"

"「ジャニーズ」とは日本人が洋楽を真似しているんじゃなくて、アメリカ人が洋楽を日本化してわれわれに届ける、一種の占領政策であるというのが、われわれが出した解答です"


…と本書のメッセージは一見かなり突飛だが、ジャニーズ系タレント群のあの何とも言えない過剰さも、何十年もの間オーディエンスを惹きつけ続ける魅力の理由も、そう言われればなんだか理解できるような気がしてくる。(時々ぶつけてくる『スシ食いねェ!』みたいな謎のオリエンタルテイストも…)

ジャニーズのトリビアを語る内輪ネタ本では決してなく(そういう部分もあるけど)ジャニーズという定点から日本を語る一冊。興味をもたれた方はぜひご一読を。


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