風塵社的業務日誌

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T刑務所挨拶禁止令

2014年02月22日 | 出版
また、友人からの手紙を勝手に転載。出版企画が一つできてしまった。(腹巻)

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 お元気ですか。全国的なドカ雪、大寒だったようですが、みんな無事に乗り切れましたか。闘病中の同志や友人たちに、この寒さがこたえなければいいのですが、とにかく暖かくしてください。
 ジャン! T刑務所ではついに、「挨拶禁止令」が発令されました。「あらゆる種類の、あらゆる相手(同囚、職員、参入業者などなど)に対するあらゆる挨拶(オハヨウ、アリガトウ、お願いします、すみません、ごめんなさい、おつかれさま、サヨウナラなどなど)を禁止する」というものです。そのうち「アイサツ」をしたがゆえに罰せられるという、被懲罰者も出るでしょう。すでに「叱責」は日常的になっています(信じられない世界です)。
 「ありがとう」と言ってはいけない理由というのが、「何かをしてもらったとしても、それは仕事としてやっているのであるから、いちいち礼を言う必要はない」というものです。果たして、こんな論理で「人間として」生きていける世界があるでしょうか。これが〝刑務官の世界〟なのでしょう。
 女性刑務官の85%が縁故採用者だと言われています。残る15%もそのほとんどが、数年で辞めてしまうのだそうです。要するに、中年以上の刑務官のほぼ100%近くが縁故採用者ということです。子ども時代を官舎で育ち、学校を終えると塀の中の住人になって、刑務官と結婚して、一生を刑務所世界で生きる人たちです。彼らの世界は、階級がすべてを決する上意下達です。「自分の考え」を持つことも行使することも許されない、軍隊と同じ世界にしか生きたことのない人々に、「社会に復帰できる受刑者指導ができる」と期待する方がまちがっているようです。
 私には、今回の「挨拶禁止令」も、どう考えても私たちを社会復帰させないための、「反社会的人間」を量産しようとする企みとしか思えません。一方では、就労教育だの、社会復帰支援策だのという取り組みが語られています(同じ職員の口から発せられたりする。180度真反対の〝教示〟に学ぶのは〝まったく実のない空語なのだ〟という思いだけですが)。
 10年近く前、私も刑務所にさまざまな幻想を持ってやってきた一人です。入所直後、職員に感心したのは、寒い朝も夕も幹部職員が通路脇に立って行列の懲役に声をかけている姿でした。単純に列からの逃走防止なのかも知れませんが、それだけなら下部職員ですむことです。元気のない人や、すさんでいる人を見ながらの声かけに、拘置所にはない職員の配慮を感じたものです。当然、受刑者の側も元気に挨拶をしていました。
 2、3年前、「行進中に職員に挨拶することを禁じる」と言い出しました。そのころ、仲間たちが言っていたのは、「そういうことを言い出すのは、誰にも挨拶をしてもらえない幹部職員のひがみにちがいない」ということです(まあ、ありうることです。職員にも人気のある人、ない人いますから)。いずれにしても、時と共に刑務所の「反社会性」「非常識度」は、着々と高まっています。「刑務所に入れられたら反社会的人間になります」という本が書けそうです。
 出獄者に、社会の中での居場所作りをと考えていますが、「務所帰りとは、とことん社会性を破壊された〝非社会的人間〟のことだ」ということになりそうで、困難ますます大きくなります。とにかく、法務省が言っていることと、現場がやっていることのギャップの「理由」を明確にし、何よりも受刑者の社会復帰を実現するために……どうするつもりか。法務大臣殿に、問い合わせてみようと思います。

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