風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

台風の夜に

2019年10月15日 | 出版
最近の台風被害に遭われたかたがたには、お悔やみ申し上げます。不便な生活を強いられる人々も多いでしょうが、早期の復旧を期待しております。
さて、台風15号が通り過ぎてしばらくしてから、房総にお住まいのSさんと久しぶりにお会いすることがあった。「台風の被害どうでした?」と小生がたずねると、「その前に香港に行っていたの」「ヘー、それじゃあ、デモにも参加して?」と聞くと、Sさんはニヤリと笑みを浮かべ、それ以上は答えない。その答えに代わり「それで帰ってきたら台風で停電でしょ」「やはりそうですか」「しかもやっと電気が通ったと思ったら、今度は断水なのよ」「エーッ」「やっと復旧したけど、本当に不便だったわ」。ウワッつらいなと思いつつも「それはそれは」としか、小生は口にできない。
それからの19号である。15号に似た進路となりそうだとの予想なので出社などするわけがなく、金曜日に某印刷所が発送すると言っている某ゲラは、台風が接近してくる土曜日に自宅で受け取ることにした。そのため、金曜の夜は某氏とバカ話をしながら痛飲することになる。小雨のなか無事に帰宅し、あとは爆睡。
明けて土曜の朝。妻の罵声と雨の音とで目が覚めると、すでに9:00を過ぎている。腹が減ったなあと布団からはいずり出し、妻に作っていただいた朝食にありつく。TVを点ければ、すでに台風関連のニュースが流れ始めていた。朝食を終えて片付けもすましたものの、とにかくゲラが来なければ動きようがない。午前着の予定で送ってもらうことになっていたから、とにかく昼まで待とうと床に転がって再び仮眠となる。
ところが、お昼を過ぎたのに宅急便屋さんは現れない。そこでようやく、もしやと気がつき、スマホでY運輸のHPを見てもらえないかと妻に頼むと、案の定、台風のため土曜の配達は中止になったということだ。困ったなあ。当初の作戦では、午前にゲラを受け取り、午後からその校正に集中するというものであったけれど、校正作業は台風が通り過ぎてからということになってしまった。
そうすると、さらには端的にやることがない。やることがなければ読書三昧といきたいところなのに、妻がいるので読書もできない。しょうがないからラジオを聴きながら寝転がっていると、「しゃあしか!」と妻に怒鳴られる。段々腹が立ってきたと同時にタバコも吸いたい。雨がザンザン降りのなか、ここは一度外に出ていくことにしよう。冷蔵庫を開けて「タマゴとか切れているけど、ほかにも必要なものがあれば、本格的に台風が来る前に買ってくるぞ」と、外出する口実を作る。「ああ、そう。じゃあ、これとこれを買ってきて」「でも、お店が開いているかどうかもわからないから、全部買えないかもしれない」と断りをいれ、妻からお駄賃を預かり、大雨のなかドアを開けてあえて家の外に出てみた。
まずは、近くのパチンコ屋の駐輪場の屋根の下にもぐりこんで一服。朝から切らしていたので、とにかく美味い。前出某氏と以前(金曜の晩ではない)某所で落ち合ったことがあり、そのときの用件にはまだ時間があったので「すみません。ちょっとタバコ吸ってきます」と伝えたところ、某氏まで喫煙所に付いてくる。なんだろ、緊急の話でもあるのかなと思ったら、某氏もタバコを取り出すではないか。「あれ、やめたんじゃないの?」とたずねると、「最近ねえ、これがないと気分がシャンとしてこないのよ」などと言いながら美味そうに煙を吐き出す。「タバコも依存性がありますけど、それでもシャブやってるよりはましでしょ」なんて小生が応えると、「そうなのよ。私の獄友、みんなシャブから抜け切れなくて、またムショにもどっちゃった」げな。これには苦笑するしかない。
人間とは弱いものである。まずはその弱さに向き合わなければ、なにごとも始まらない。偉そうな理想や理念も、「かくあるべし」という道徳も、すべてクソくらえである。目指すべき方向などではなく、とにかくおのれの弱さこそをまずは直視すべきである。この世のどこかに、社会から超然と独立・屹立した個人などありうるわけがない。一方でまた、その弱さをさらけ出せない人間ほど弱いやつもいない。
その弱い人間はどうするのか。なにかに依存することによってしか心の平安は保てない(ウェーバー的な結論)。その依存先がタバコなりシャブなり酒なりという可愛いレベルであるうちは、まだ健全とみなすべきだろう。ところが、そこを否定してしまうと、次の段階はギャンブルとなり、さらにはイデオロギー(マンハイムのいう虚偽意識)やら宗教やらということになっていく。つまり、意識レベルの低い段階に依存していればそこそこの出費ですむものが、高い段階に(つまりは美しいレベルに)依存度を深めていけばいくほどかなりの出費になるという構造である(シャブは高額であるかもしれないが、それはこの構造の問題とは別次元の話である)。そこで、このアイディアの元々はMさんのものであり、それをF社社長から聞いたものを小生が自分なりにアレンジしてこういう定式化したにすぎないものであることは断っておく。

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