転戦、転戦、また転戦

人間なかなか度量が広くなれない。先日はぐっすり眠れたので、我輩も人間として一回り大きくなったかと思っていたが、今朝は4：00に目が覚める。飛び起きようかと思ったが、思いなおす。ここで起きても、どうせろくなことはない。それならばもう少し寝よう、と。そうはいっても5：30起床。8：30出社。
まずは残高確認。幸か不幸か、今日も我が社は生き残っている。そろそろ命脈が尽きてもいいんだけどとは思いつつも、生き残っているという事実をささやかな幸せとして噛みしめるべきなんだろうな。そんなわけで、長江渡河作戦は15日に順延か。この３連休のＭ作戦が大変である。
こういうつまらないドタバタなんかよりも、日常のほうが大切なのである。昨日、ブログを更新し一まず不貞寝し、それからようやく取り掛かった伝票の整理を元に、取次への請求書を発行。たったこれだけの作業に何日を費やしたのだろう。資金不足という心理的負荷が仕事の障害となっている。試験前になると急に部屋の掃除を始めるダメな中学生にかかる負荷の、数十倍、いや数百倍の負荷なのである。こういうとき、部下がいれば楽だと思う。部下はこの心理的負荷を共有できるわけがないので、きっとテキパキすませてくれることだろう。
午前中、吉原印刷から『シュルレアリスト落語宣言』（平岡正明著、白夜書房）の昔でいう青焼き校正が届く。47折半（16ページ×47台＋８ページ＝760ページ）もあるので、かなり分厚い。この出力は面倒だったことだろう。
午後は、今夜予定の編集会議用に資料の作成。15：30終了。３月末には刊行したい原稿が溜まっているし、請負の仕事もいただいているし、本当は滅茶苦茶に忙しいはずである。しかし一方で資金繰りとは退却戦を演じ、かたや心理的負荷とは積極的に戦わなければならないので、弱音を吐くようでみっともないが、精神的に大変でやるべき作業が進んでいない。年末年始に酒を呑みすぎたのと、囲碁ゲームに逃げているという反省はあるけれど、そうでもしないと自我が崩壊してしまうのだ。この窮地を趙治勲先生のようにしのぎきれば、明るい明日が待っている（のかもしれない）。
ところで、毎日毎日毛沢東の持久戦論をネタにくだらないことを書いていて気がついたけれど、中国共産党の建国神話は『項羽と劉邦』のようで面白い。いまだ現在進行形の問題であるし、イデオロギーから脱却できない部分もあるけれど、天下取りの人間ドラマと考えれば、壮大なエンターテイメントとして充分に楽しめる。
国民党側は蒋介石が項羽で宋美齢が虞美人で張学良が范増。共産党側は、毛沢東が劉邦で周恩来が蕭何、朱徳が張良、林彪が韓信、彭徳懐が樊カイで小平が陳平、ついでに江青を呂公に対応させれば、役者も錚々たる顔ぶれである。そうすると日本はさしずめ匈奴だな。野蛮なだけである。ここに米ソ対立を軸にした複雑な国際関係が絡みあい、金持ち側の国民党と貧乏人側の共産党というわかりやすい争点もあり、講談さながらである。結果的に、貧民集団が匈奴の侵攻を利用して、金持ち軍団を叩きのめして天下泰平を築いたという明るいオチまでついているんだから、いまの反中国感情が強い日本の状況では売れないと思うけれど、『項羽と劉邦』よりもよっぽど生臭くて面白いのではないだろうか。
一方で、中国共産党もこうした講談調を大衆宣伝に利用してきたであろうし、また毛沢東を中国に伝統的な義賊が天下を取る近代ヴァージョンだとする見方もある。そういうお堅い話は抜きにして、ぼんくらで猜疑心が強く泣き虫の毛沢東が、不思議な人間的魅力を発揮して窮地を脱し、優秀な部下の助けで天下を取ってしまうという話は、スケールの面で日本が真似のできないものだ。かわぐちかいじのマンガに、石原莞爾が延安の毛沢東を訪れるというのがあったような気がするが、立派な日本人が出てきては鼻白んでしまう（石原が立派という意味ではなく、マンガ中の石原がヒーロー役だったような記憶がある）。

画像は『シュルレアリスト落語宣言』の出力紙。厚いです。本文の背中に入っている黒いラインは背標といい、折丁の順番を示す数字です。

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