風塵社的業務日誌

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横浜へ(1)

2017年12月20日 | 出版
某日曜日を前にし、妻に「どこか近くの山に行きたい」と言ってみた。要するに、金のことでイライラしているとき、都会でウダウダしていたくないのだ。人里から離れたどこか近郊の低山で、遠くを見ながらポケーとしていたいという願望を伝えたわけである。ところが妻は難色を示す。ちょうどテレビには江ノ島が映っていた。「山じゃなくて江ノ島に行こう」などと話をすり替えようとする。江ノ島は人が多いだろとは思うものの、東京から離れられるのならどこでもいいやという気分でもある。ところが妻の気分はすぐに変わり、「江ノ島じゃなくて、鎌倉でもいいかなあ」などと言い出した。「それに私、横浜のタオル屋さんに行きたいんだよねぇ」などと、小生の希望から話はドンドン逸脱していくことになった。
そして、その日曜となる。朝食を食べながら「結局どこに行くんか?」とたずねれば、「横浜に行きたい」。エー、なんでせっかくの休みに、街場に行かなきゃならないのか。「そのタオル屋ってどこにあるの?」「元町」。そこではたと気がついた。小生、横浜の元町って行ったことがないかもしれない。神戸の元町はさておき、横浜の元町ってどこにあるのだろうか。妻に場所をたずねると、「横浜球場を通り過ぎると川にぶつかるから、そこを左に曲がってどのくらい歩くのかなあ」と曖昧な答えが返ってくる。「じゃあ、電車で関内まで行けばいいの?」とたずねると、「多分、そう」。
それならばJRで行くかと池袋まで歩いていく。そして湘南ライナーのホームで電車を待っていると、とにかく風が冷たい。冬だなあと実感することになった。これまで経験した駅のなかで一番寒かったのは、新札幌のホームかな。横殴りの吹雪がホームを襲っているわけである。地元の人はそんなことわかりきっているから、電車が入ってくるまで階段のかげに隠れている。そんなことを気にかけずホームに出ようとしたら、吹雪に負けてあわてて小生もかげに逃げ込んだというわけだ。しかし、池袋のホームがそこまで寒いわけがない。ようやく電車が入ってきたので、横浜方面に向かうことになる。
『聖書考古学』(長谷川修一著、中公新書)を読んでいるうちに横浜に到着。乗り換えて乗った電車が桜木町止まりだ。もうお昼で腹が減ってきた。妻に「野毛で昼飯食べて、歩いて関内まで行くか?」と聞くと、「野毛ってどんなとこ?」「新宿のション横とゴールデン街が一緒になったような感じ」「まさか怖いところじゃないでしょうね」「怖いって、まだ昼間だぞ。それよりも、日曜の昼に開いているお店があるかどうかが心配」「まあ、いいや。そこに行ってみよう」。ということで、野毛に向かうことにする。そもそもが、小生がみなとみらいなんてガラではないだろう。平岡正明さんの著作に『野毛的』というのもあったように記憶はしているが、読んだことはない。
地下をくぐって野毛に。いやあ、久しぶりの野毛である。20数年ほど前は、Y書店の方々とよくここで飲んでいたものではあるけれど、そのお店の場所なんて覚えているわけがない。イギー・ポップのようなオヤジが、「東京じゃ食えねえような刺身を出してやる」と少しばかり厚切りにした普通のマグロの赤身を出してくるから、なかなかファンキーなところだなあと感心したものである。それはともかく、小生の不安は的中し、空いているお店が少ない。しかも、わずかに空けているのは焼き鳥屋とか焼肉屋ばかりだ。腹はますます減ってくるし、妻は不機嫌になってくる。そのうえ右足に痛みを覚えるようになってきた。どうしたのだろう。
どこか魚系の店はないかなあと探していると、「魚」の看板が光っているのが目に付き、そこに飛び込むことにした。入るとそこは、立ち飲み用のカウンターしかない。足が痛いので立ち飲みは勘弁してもらいたい。奥に目を向けると、階段があるではないか。店の主人に「2階を借りちゃあダメですか?」とたずねると、「2階はコース専用のお客さんだけなんですよ」「コースっておいくら?」「お一人さま2000円です」「じゃあ、それでお願いします」と妻が言い、われわれは狭い階段を上り4畳半ほどの2階の座敷にへたりこんだ。本当に、ゴールデン街によくありそうなお店の造りである。
とりあえず瓶ビールをお願いし、あとは料理が運ばれてくるのを待つだけである。有線かなにかで流しているのはJBかだれかのファンクビートだ。さすがは野毛である。そして、料理が結構美味しかった。日本酒もいくつか置いてあったので、なんとかの辛口なるもの(銘柄を忘れちゃった)を1合追加でお願いしておく。最後に出てきたものがサンマの煮付けだった。そもそも、サンマを煮付けにしたものなんて食べたことがない。しかも、一口目は甘く感じるのだが、噛んでいるうちにさっぱりしてくるという不思議な味付けだ。ショウガが効いているせいなのか。お店の女性に白飯をお願いすると、小生の後ろにあったジャーからご飯を盛ってくれて、「勝手にお代わりしないでくださいね」と言って渡してくれる。すっかり満足してお店を出ることになった。足の痛みも感じなくなっていた。

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