風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

富士行 2

2008年07月22日 | 出版
しかし山頂は寒く、どこも人で埋まっている。我々もとりあえずはやることもないので、閉まっている山小屋の窓の出っ張りに腰掛け、しばしボーッとすることに。以前高尾山の山頂で、元旦にご来光を待っていたときの寒さを思い出す。動かないと寒さが襲ってくるので暖かいものがほしくなり、自動販売機でDyDoコーンスープ(四百円也)を一缶買う。しかし、あっという間に飲み干す。仕方なく、吉田口の山頂付近をブラブラしてみる。お鉢巡りに出かけようかと思うが、強風なのと暗くて道がよく見えないので後送りにし、山小屋の裏でビバーク。妻がアルミのブランケットに体を包んで休んでいる間、I氏と二人で火口をのぞきに行く。ロープが張られているので、ロープの限界まで降りていくと、遠くに剣ヶ峰が浮かんでいる。「まるで地獄のようですね」とI氏。確かに火山岩の世界で、生物の気配はまったくない。火口の方には雪渓が見えるが、暗くてそれ以上はよくわからない。確かに地獄のようだ。風塵社のようだとも表現できる。その地獄に向かって二人で放尿。
その後I氏と、トイレの裏に移動し、しばし臭いと寒さに耐えていると、そこは須走(すばしり)口の登り口のようで、下からドンドン人が上がってくる。しかしあまりに寒いので、いよいよ体を動かすことにする。寒さのなかにうずくまっている妻に、お鉢巡りに行こうと声をかけると、「動きたくない」と言うので、二人で行くことにする。ちょうど山口山荘を始め、吉田口の山荘が店を開け始めたので、妻をそこに残していく。
3:30、日の出までまだ1時間。しかし、少しだけ空が明らんできたような気がする。そこでお鉢巡りにスタート。富士山頂といっても巨大なカルデラで、広大なスペースなのである。そのカルデラのどこかにたどり着けば登頂したことになるらしいが、来た以上は最高地点まで行ってみたいというのがやはり人情というものだろう。登り口もいくつかあり、我々の到着した吉田口から剣ヶ峰を臨むとはるか遠くに見え、お鉢1周に約1.5時間の道程だそうだ。
ところがスタートした途端、霧が深くなり、尾根なので強風にもまれ始める。それでも最初はまだ余裕もあり、たいしたこともないと思っていた。道順を示すロープも張られていたが、途中からポイントにしかロープがない。そして高度のため、少し歩くと疲労が襲い、息が切れるようになる。そこで元気いっぱいのI氏に先を歩いてもらい、必死にその後ろをついていく。
途中、メインの火口と小さな別の火口との間を歩く。霧がいよいよ深くなり、先を歩くI氏の姿も朧にしか見えない。ヘッドライトだけが頼みだ。何も見えないと恐怖にとらわれる。呼吸もますます荒くなり、大変苦しい。周囲にはほかの人影はなく、ようやく富士山の醍醐味に触れることができた。
時間の感覚を失い必死に歩いていると、前方に二人登山客の姿を発見。彼らを追い越すと、ようやく剣ヶ峰のふもとに到着。もう使われていない測候所の建物があり、あちこちに人影がある。最高峰で日の出を迎えようとしているのだろう。小生はそれどころではなく、ようやく最高峰に着いてバタンQ。携帯で最高峰の碑を写真に収めようとするが、暗くてろくに写りもしない(画像)。
しばし休憩していると、よゆうのI氏はすぐにも動きたそうだ。それで彼について移動することにするが。下り坂になったとたんに尻餅をつく。さらに下るとコンクリの上に出てしまい、すべってまたコケる。最高峰で2回もコケてしまった。
歩いているとなだらかになっていき、疲れが癒されていく。ようやく山小屋のあるところまでもどる。そこで妻のいる山荘を探すが、それらしきところが見当たらない。アレ?おかしい。何かがおかしい。とりあえず二人で先に進んでみると、そろそろ日の出なのだろう。登山客が全員、日の出の方向を見ているが、吉田口での日の出の方向と若干向きがちがう。その間をぬって先に進むと、登山客がまばらになっていく。仕方なく太陽が昇ってくるのを見ているとI氏が、「こんなのの、どこがいいんでしょうねえ」。4:45。
日の出を見てから二人でもどるってみるがしかし、山小屋の始まるところまで行っても、どこにも見たはずの光景がない。完全に迷ってしまった。どうもここは、富士宮口の登頂であるということにI氏が気がつく。そこで前方の山を越えて、先に進むことにする。途中、富士山頂郵便局があったりしたが、それには目もくれずに通り過ぎ、ようやく吉田口の山頂に。ところがそこは、登山客でごった返しており、まるで朝の新宿駅のようだ。5:00、ようやく妻のいる山口荘に到着し、ビールを頼んでへたり込む。
ところがビールを一口飲んだら、もうお腹がいっぱいだ。あんなに飲みたかったビールがなかなか飲めない。高度のためだろうか。それでもようやく飲み干してひとごこちすると、「寝ている方、早く起きて!」とお店の人の檄が飛び交う。小生の後ろでは、「このお汁粉、お餅が入ってない」とお店の人に文句をたれているネーチャンがいる。アホか。お店を出てから、3人でベンチに座り、朝食用にもらってきたお弁当を広げると、おにぎり二つと焼き鳥の缶詰が入っている。缶詰は、いやがるI氏に無理やり押し付け、おにぎりを頬張ることにする。
どこもかしこも人だらけで、下を見れば、登山客の列が長く長く延びている。便意をもよおしてきたのでトイレに行きたいが、トイレの前には何十人と並んでいる。しかし疲れると、便意をもよおしやすいものなのだろうか。それで下のトイレに行こうと、下山することにした。6:00。
須走口が下山ルートなので、そこから降りていくが、このコースはずうっとガレ場が続くので、砂を蹴って降りると早い。かかとでガレの上を滑っていく要領だ。1時間もかからず8合目のトイレまで到着。無事に大を噴出(金壱百円也)。10年前に登ったことがある妻によると、トイレはかなりきれいになり、山のゴミもだいぶなくなったそうだ。これで一安心して、トイレと下山ルートの分岐点で他の二人を待つが、まったく姿が見えない。一服し、水を飲み、おやつを食べて待っているが、待てど暮らせど降りてこない。携帯に電話してみるがつながらない。これは先に降りたのだろうと、こちらもあとを追うことにする。
先ほどの要領で、ズザー、ズザーと降りていく。疲れで膝の裏が痛んでくるがお構いなしだ。すると、7合目近くでI氏が待っているのを発見。「かみさんは?」とたずねると、まだ来ていないとのこと。二人で妻を待つことにする。I氏は、小生より5分くらい早かったらしい。それで山頂を見上げると、視界の届く範囲、人間がジグザグに連なっている。待つこと30分ほど、妻がコケながら降りてきた。ドンくさいやつだ。ようやく全員が合流し、下山ルートを辿ることになる。
6合目まで出ると、登りの時も少し気になった往路とは別のルートがあった。二人と別れ、1人そのルートを進むことにしてみる。下っていくと、日蓮の銅像はあるし、6合目の山小屋とか5合目の山小屋なんてのに出くわし、なんだか得をしたような気持ちになる。要するに、このルートが本来の吉田口の旧道なのだ。のちにスバルラインができて、ルートが変更になってしまったのだろう。
そこで最初の問題にぶち当たる。小生は、スバルラインの登山口を「吉田」と呼ぶのだと思っていた。5合目の山小屋でそこにいたオジサンに、「吉田はこっちでいいですか?」とたずねると、「そうだよ、大変だけどがんばってね」と答えられ、そんなに遠いはずでもないのにと、少々いぶかしく思いながらも示されたほうへと進む。アスファルトで舗装された道路を横切り、「吉田」という標識どおり山道に分け入っていく。ところがその山道にはあまり人影がなく、いつまで経っても目的地には着きそうにない。方向もちがうように感じる。
多分道を間違えているのだろうと思い始めていると、廃屋が2軒連なり、変なプレートが建っていた。それを読むと、この道がむかしの登山道で、下っていけば馬返(うまがえし)という、むかしの出発点に出ること、小御嶽神社に出るわき道があることが記されている。そのわき道を探してみるが、どこにも見つからない。そこはジョギングルートになっているようで、たまに下からジョギングしながら登ってくる人がいる。そこでジョギングしている人を捕まえて道をたずねるが、まったく要領を得ない。地元の人にとって「吉田」という地名は、スバルラインの終点を指すのではなさそうだ。
仕方なくもとの道を引き返そうと山道を登っていると、そこに丸刈りの若い男性が、富士の登山杖を片手に勢いよく降りてきた。そして小生に、「吉田はどちらですか?」とたずねるではないか。それで、こちらも富士登山者で、道を間違えているようだと、これまでの事情を伝える。同行者ができると、とたんに心強くなる。二人で5合目の山小屋まで早足でもどり、スバルラインの登り口をたずねると、まったく正反対の方向を示される。クソッ、遠くに下山客の姿が見えるではないか。
彼と二人でスバルラインの登り口を目指して歩いていると、ようやく6合目からの下山ルートと合流。最初、学生かと思っていた彼は、名古屋から家族で来ていて、現在32歳、明日は仕事だそうだ。「それは大変ですね」「いやあ、なかなか休みが取れなくて」。帰りの車も運転しなければならないらしい。そのため、はぐれてしまっている家族のことを大変気にかけている。
ようやく、終点に到着。最敬礼で彼と別れ、「みはらし」3Fの休憩室でようやく本体に合流。どっと疲れる。妻に頼んでビールを買いに行ってもらう。するとI氏が1Fから発泡酒を買ってきてくれた。礼を言って飲み干そうとするが、山頂と一緒でなかなか飲めない。不思議なものである。
着替えてから少し仮眠。11:00集合のところ、渋滞でバスが遅れている。一度集合場所に出てみるが、そのため集合が12:00に変更。ところが、さらに出発が延期。3Fにもどっても休憩室は休むところがなくなっている。1時間ブラブラすることにする。昼食をとろうと2Fの食堂に行くと、IPhoneバカのグループがいた。彼らの様子を観察していると、IPhoneバカは仲間内で浮いているようだ。ようやく12:45にバスに乗り込み、帰路につく。チビキャンどもはさすがに静かだ。動き出すなり早々に寝込んでいるのだろう。途中、富士吉田市の泉水なる健康ランドで温泉につかり汚れを落とす。16:00にそこを出発し、7/20(日)18:00過ぎ、熟睡していたら新宿に無事到着。
あーーー、面白かった。次は八ヶ岳か。しかし、ネットでも調べてみたが、いまだにスバルラインの終点の地名がわからない。

富士山 村山古道を歩く
畠堀 操八
風濤社

このアイテムの詳細を見る


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ほな (腹巻オヤジ)
2008-07-24 16:43:25
齢とってからだとつらいから、来年行こか。
返信する
日本一の山 (shige)
2008-07-24 15:20:15
死ぬまでに一度くらい登るんだろうか・・・俺
返信する

コメントを投稿