夏バテからなかなか抜け出れない。台風が吹き荒れた前後は気温も下がり、小生も元気になったものの、台風が抜けて暑さが戻ってくると、急に意欲が減退してしまう。もしかして、これは夏バテなどではなく、ただの労働拒否症なのかもしれない。
そんなある日、三崎町のKYさんと酒を飲む。いい加減酔っ払ってきて、記憶が途切れがちになったころ、「腹巻さんは反日派だけれど、それって、日本にいい国になってほしいということじゃないですか？」とご指摘を受ける。
これには、まったくもって虚を衝かれた。中国人や韓国人の標榜する反日とは、日本を批判することによって、自国や自身に利益をもたらそうとする動きを指す（利益とは関係のない真摯な運動もある）。しかし、日本人が反日非国民を標榜するとなると、連帯すべき相手は中国内の反中派や、韓国内の反韓派ということになるのだろうか。
してみると、日本人が反日を主張するということは、日本にいい国になってほしいという願望を裏返した表現じゃないのか、というのがKYさんのおっしゃっている主旨である。なるほど、ごもっともだ。
日本人の反日派ならば挙げそうな具体的な政策課題を並べてみれば、天皇制廃止、自衛隊廃止、安倍政権打倒、TPP反対、死刑制度廃止、原発即時廃炉、戦後保障の解決、経済格差の緩和といったところだろうか。もれがあるかもしれないのと、各項目の現実可能性や妥当性はさておき、天皇制を廃止して人民民主主義を拡充し、他国への侵略的な経済・軍事活動のない世界や日本の弱者を助ける日本を目指しましょうというのが、反日派の大きく目指すイメージになることだろう。
してみると、日本をいい国にしましょうというのが、小生の指す反日の中味だということになってしまい、KYさんのご指摘のとおりである。これにはまいった。そこで、「いやあ、そんなつもりじゃないんですけどねえ。根底には日本に対するルサンチマンもあると思うんですよねえ」などと苦し紛れに言ってみたものの、言った端から、それほどのルサンチマンがあるわけでもないなあと気がつく。
「ぼくも前は天皇制廃止だったけれど、最近はそうでもなくて。ただし、京都に帰ってくれとは思いますけどね。京都で伝統文化を守っていればいいんですよ。彼らが東京のど真ん中にいるだけで、どれだけ我々が迷惑していることやら」とKYさんは続ける。
この話は昔からある議論ではあるけれど、天皇制廃止よりは現実的な内容だと思う。小生の大好きな廃止論ならば、宮中祭祀を筆頭に日本の伝統文化をどうするよ、という意見がどうしても出てきてしまう。それならば、天皇とは京都で日本の伝統文化を保持する職柄だとしてしまえば、学術的な価値も生じる。
したがって、そこでKYさんに指摘されているのは、いい日本を目指すのならば、そんなに急進的にものを考えなくてもいいんじゃないのか、ということだと解釈する。そのご意見は正しいなあと思うのだけれども、しかし、小生の中には割り切れないものが残る。そのわだかまりは、いったい何なのだろうか。
一つは、先ほど触れたルサンチマンだろうか。しかし小生の場合、奥崎謙三氏のような強烈な戦争体験があるわけでもなし、せいぜい、学校の教員が気に入らなかったとか、うだつのあがらない現実を送っていることが気に入らないというものでしかない。
二つ目に、日本の近代における、近隣諸国への加害責任は真剣に考えなければならないだろう。そこで、小生は鉄砲を担いでいって中国で女性を強姦したり、慰安所に並んでいたわけではない。しかし、近代日本の他国侵略による経済繁栄を結果として享受している側である。
70年代、某左翼組織がその２点目を主張し、某活動を行うことになる。後年、小生はそれを知り、「反日、最高！」となるわけである。したがって、反日を主張することは、べつに日本にいい国になってほしいということではない。つまり、日本の繁栄の基盤に何があるのかを考えようという姿勢を、反日と表現しているだけなのだ。
ところが現在、日本はそれほど繁栄しているわけではない。そうすると、いま述べた議論の前提が崩壊しているということになる。そうはいえど、これまで世界ナンバー２の経済大国だとうぬぼれていたわけであり、その点を白井聡氏の『永続敗戦論』はうまく衝いているなあと思っているのだけれど、しかしそれだけに、KYさんのご指摘は小生にとって衝撃的であった。
あれ？結局、反日派であることのわだかまりが、自分なりにまだうまく説明できていない。どうして述べることができないのだろうか。自分の内部に堆積している地層を掘り起こすのが大変ということなのか、そもそも、何もないということなのか、それすらもよくわからない。
思いもかけなかったところで、KYさんに重い宿題を出されたなあと感じざるをえないけれど、夏休みといえば、宿題と決まっているのである。
そんなある日、三崎町のKYさんと酒を飲む。いい加減酔っ払ってきて、記憶が途切れがちになったころ、「腹巻さんは反日派だけれど、それって、日本にいい国になってほしいということじゃないですか？」とご指摘を受ける。
これには、まったくもって虚を衝かれた。中国人や韓国人の標榜する反日とは、日本を批判することによって、自国や自身に利益をもたらそうとする動きを指す（利益とは関係のない真摯な運動もある）。しかし、日本人が反日非国民を標榜するとなると、連帯すべき相手は中国内の反中派や、韓国内の反韓派ということになるのだろうか。
してみると、日本人が反日を主張するということは、日本にいい国になってほしいという願望を裏返した表現じゃないのか、というのがKYさんのおっしゃっている主旨である。なるほど、ごもっともだ。
日本人の反日派ならば挙げそうな具体的な政策課題を並べてみれば、天皇制廃止、自衛隊廃止、安倍政権打倒、TPP反対、死刑制度廃止、原発即時廃炉、戦後保障の解決、経済格差の緩和といったところだろうか。もれがあるかもしれないのと、各項目の現実可能性や妥当性はさておき、天皇制を廃止して人民民主主義を拡充し、他国への侵略的な経済・軍事活動のない世界や日本の弱者を助ける日本を目指しましょうというのが、反日派の大きく目指すイメージになることだろう。
してみると、日本をいい国にしましょうというのが、小生の指す反日の中味だということになってしまい、KYさんのご指摘のとおりである。これにはまいった。そこで、「いやあ、そんなつもりじゃないんですけどねえ。根底には日本に対するルサンチマンもあると思うんですよねえ」などと苦し紛れに言ってみたものの、言った端から、それほどのルサンチマンがあるわけでもないなあと気がつく。
「ぼくも前は天皇制廃止だったけれど、最近はそうでもなくて。ただし、京都に帰ってくれとは思いますけどね。京都で伝統文化を守っていればいいんですよ。彼らが東京のど真ん中にいるだけで、どれだけ我々が迷惑していることやら」とKYさんは続ける。
この話は昔からある議論ではあるけれど、天皇制廃止よりは現実的な内容だと思う。小生の大好きな廃止論ならば、宮中祭祀を筆頭に日本の伝統文化をどうするよ、という意見がどうしても出てきてしまう。それならば、天皇とは京都で日本の伝統文化を保持する職柄だとしてしまえば、学術的な価値も生じる。
したがって、そこでKYさんに指摘されているのは、いい日本を目指すのならば、そんなに急進的にものを考えなくてもいいんじゃないのか、ということだと解釈する。そのご意見は正しいなあと思うのだけれども、しかし、小生の中には割り切れないものが残る。そのわだかまりは、いったい何なのだろうか。
一つは、先ほど触れたルサンチマンだろうか。しかし小生の場合、奥崎謙三氏のような強烈な戦争体験があるわけでもなし、せいぜい、学校の教員が気に入らなかったとか、うだつのあがらない現実を送っていることが気に入らないというものでしかない。
二つ目に、日本の近代における、近隣諸国への加害責任は真剣に考えなければならないだろう。そこで、小生は鉄砲を担いでいって中国で女性を強姦したり、慰安所に並んでいたわけではない。しかし、近代日本の他国侵略による経済繁栄を結果として享受している側である。
70年代、某左翼組織がその２点目を主張し、某活動を行うことになる。後年、小生はそれを知り、「反日、最高！」となるわけである。したがって、反日を主張することは、べつに日本にいい国になってほしいということではない。つまり、日本の繁栄の基盤に何があるのかを考えようという姿勢を、反日と表現しているだけなのだ。
ところが現在、日本はそれほど繁栄しているわけではない。そうすると、いま述べた議論の前提が崩壊しているということになる。そうはいえど、これまで世界ナンバー２の経済大国だとうぬぼれていたわけであり、その点を白井聡氏の『永続敗戦論』はうまく衝いているなあと思っているのだけれど、しかしそれだけに、KYさんのご指摘は小生にとって衝撃的であった。
あれ？結局、反日派であることのわだかまりが、自分なりにまだうまく説明できていない。どうして述べることができないのだろうか。自分の内部に堆積している地層を掘り起こすのが大変ということなのか、そもそも、何もないということなのか、それすらもよくわからない。
思いもかけなかったところで、KYさんに重い宿題を出されたなあと感じざるをえないけれど、夏休みといえば、宿題と決まっているのである。
