植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

季節の話題(3)ツルアジサイの花が咲いている

2007-07-23 17:12:13 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
ツルアジサイ(別名ゴトウヅル)は,ユキノシタ科・アジサイ属。
北海道,本州,四国,九州の山地にはえ,南千島,サハリン,南朝鮮にも
分布。
岩の上に這い上がったり,大木の幹に絡みついて,よじ登り,アジサイより
小さい葉をつけている。
よく眺めると,つる状の茎から気根を出し,気根で,岩や木にへばりついて
いる。
よく似たものにイワガラミがあり,花が咲くまでは,ほとんど区別がつかない。
初夏のころ,ヤマアジサイのような(飾り花が白色,4弁)の花が見えたら,
ツルアジサイ。飾り花(じつは萼片)が1個ずつついていたら,イワガラミ。

どちらも,若芽を摘みとって,食べられる。塩わ入れた熱湯でさっとゆで,
冷水にとり,ゴマあえ,辛子あえ,おひたしに。若葉は,生のまま,天ぷら
など,フライ料理にしてもいい。

両種の詳しい形質は「採って食べる,山菜・木の実(信濃毎日新聞社,¥2200-)」を参照のこと。

なお,両種に,かぶれる体質の人もある,と聞いたことがある。

季節の話題(2) クチナシの花が咲いた

2007-07-22 19:46:26 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
写真は,クチナシの小形園芸品種の花。
花料理につかうこともできるが,花びらの質は,やや硬い。
クチナシの花サラダ,花のゼリー固めなどをつくるときには,
大木に育つクチナシから花冠を抜きとるほうが,質のいいものをつくれる。

実りやすいので,完熟するのを待って,果実を採取し,この
果実で,パスタを真っ黄色に染めると,不思議に食欲が湧き,夏の食欲不振解消の一助となる。

食べられる野生植物大事典「新装版」登場

2007-07-22 13:56:28 | Weblog
2007年8月5日「新装版」(¥3400-プラス税)が発行されます。

たぶん7月下旬には,書店に並んでいるでしょう。

「食べられる野生植物大事典・新装版」を(百点満点で)自己評価
すると,50点くらいの出来ばえにすぎませんが,内容が正確,日本
全土のものをリストアップして,Botanist の立場で,性状,生態,
分布地,各種の食用事情を記載。

巻頭の「日本の植物分布」,「植物学用語の解説」,
巻末の「採取・料理・利用編」にも,他の文献では得られない知識,
情報がいっぱい。

B5版・496ページ,カラー写真図版744点,解説イラスト膨大な本
としてはじつに低価格。確信して自薦します。

2003年7月,¥15,000-で発行された時点と同時,または,
それ以降に執筆したものに,つぎの3書があり,信濃毎日新聞
からの2冊は,中部日本の方々に,さまざまの話題を提供でき
ました。

採って食べる山菜・木の実  (信濃毎日新聞社 ¥2200-)
花と山の幸・信州自然探求術(信濃毎日新聞社 ¥2400-)
野生植物食用図鑑・南九州-琉球の草木(南方新社¥3600-)

つぎには,日本の wild Food の完璧な書を出版したい,そのために,準備もしていますが,個々の種の数は,琉球のみに自生する「種」が非常に多く,それらをすべて記載すると,膨大なページ数に
ならざるを得ません。

出版に伴う経営上のリスクを避けるため,琉球の「種」を,全体から
切り離し,あらかじめ先行出版したのが,
「野生植物食用図鑑・南九州-琉球の草木」です。
そういう訳で,A5,240ページのこの内容は,90%自己満足てきる最高の出来ばえと言えます。

大事典新装版と共に,上記3冊も皆さまの蔵書に加えられますように。

季節の話題(1) コマツヨイグサの花料理

2007-07-21 18:20:45 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
北アメリカ原産の2年草・コマツヨイグサは,北海道から琉球にかけて,海辺の砂地や,後背地に帰化して分布。茎は地面に這うか斜上して,高さ10-30cm,
葉は倒披針形-長楕円形,ふつうは羽状に深裂。
花は6-8月,径2-3cm,クリーム黄色,萎むと橙赤色。夕方早くに,多くは午後3時すぎに咲きはじめ,ディナーの料理に間に合う。
花冠の裏に薄くコロモをつけて姿揚げにしたり,花の辛子ドレッシング,フラワー・デザートなどをつくると,心地よく薫り,すばらしい。

たかが浜辺の月見草,されど,食欲をそそる華やかな黄色と,甘ーく薫る月見草。
浜辺の夏。夏の夕暮れがたのしくなる。

タカクマムラサキ(花)

2007-07-20 21:13:19 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
写真は,タカクマムラサキ(別名ナガバムラサキ)の1型とおもわれるもの。
10倍ルーペで,葉の下面を見ると,小さい小さい黄色の腺点が密生している。
1991年11月22日,垂水市の猿ケ城渓谷から-白山林道-スマン峠-大箆柄岳のほうへ向かう。
登山道の入り口に駐車。日暮れも迫っている山径(やまみち)で,たった1株ではあったが,正真正銘のタカクマムラサキとの出逢いがあった。
紫系色の核果は,径約2mm,明らかな腺があった。日没が近いし,車には妻も待っている。
また,来年撮影に来よう。そう想って,せかせかと車に戻った。
翌年の長雨,大雨でねこのあたり一帯は,家が流されるほどの大水害。もちろん林道もずたずた。毎年のように、この地方は大雨で被害つづき,10数年を経て,「大迂回すれば,現地に近づける」と,市役所の方に教わって,見覚えのある地点
にたどりついた。
でも,その木は,陰も形もない。盗掘されたのかなあ? と諦めるしかなかった。

もし,健康を取り戻せたら,いつの日か,長滞在してでも高隈山山域で,腺のある
実をつけた木を探したい。今もそう願っています。

稀少種に出逢うためには,よほどの執念をもって,辛抱づよく,気長に探し続ける必要がある,いつも,そう実感しています。

木の数が少なくなったアリマグミ

2007-07-19 18:59:43 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
日本の落葉性のグミは,秋に実るアキグミ1種と,6-8月に
実る夏のグミ類に大別される。
夏のグミ類は,葉の下面,葉柄,小枝,花梗,子房,花の外面に,星状毛のある4種(ナツアサドリ,アリマグミ,ハコネグミ,カツラキグミ)と,その部分に
星状毛のない7種(ナツグミ,ニッコウナツグミ,マメグミ,ヤクシマグミ,クマヤマグミ,コウヤグミ,タンゴグミ)に分けることができる。

アリマグミは,兵庫県東部,大阪府の山地,和歌山県北部
など,近畿の中部と,愛知県-静岡県の西部などに分布。
分布のおおまかな西限は,兵庫県三田と,淡路島。
東の三河-遠江地方では,集落近在のアリマグミが多数
伐採されて,ほとんど見られなくなった。

実りが少ないのに,刺が多く,農林作業の邪魔になって嫌われたためかと想像できる。

果実は小さく,倒卵形,長さ7-8mm, 基部は嘴状に細くなり,果梗は長さ2.5-3cm。6-7月に紅熟し,甘くて渋みはない。