「いながわ」という建設省が発行する猪名川の広報冊子がある。
広報「いながわ」1999年10月号で「生きている猪名川」の紹介が載りました。
1999年、生きている猪名川 初版が完成して、この本にかかわったスタッフがこの本に寄せる思いを厚く買ってもらった。あれから20年近くたつが、彼の熱意は冷めることなく「I love inagawa!」だ。
記事を紹介する
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この度、「野生生物を調査研究する会」より猪名川自然学習副読本として『生きている猪名川』が作成され、猪名川流域の小・中学校、高等学校に3000冊寄贈されました。
その本は猪名川や猪名川の自然について、たくさんの写真や図を用いてわかりやすく紹介されています。
実際に調査をされてどんなことがわかったのか。同会理事の牛尾巧先生にお話を伺ってみました。
子どもたちが素足で入れる川づくり
ー「野生生物を調査研究する会」はどんなメンバーで、活動をされているのですか。
牛尾 メンバーは各分野(鳥類、噛乳類、肥虫類・両生類、魚類、昆虫、水生生物、植物)の野生生物を調査・研究している人たちで、公務員と退職された校長先生方です。
活動は①各河川流域の野生生物の生態系の調査、
②コンピューターによる情報提供や副読本などの作成配布、
③市民講座や教育関係者を対象にした研修会などの人づくり支援といった三つをおもな柱にしています。
ー『生きている猪名川』に「野生生物を調査研究する会」は〃子どもたちが素足で入れる水辺空間づくり〃をコンセプトにしていると書かれていますが、
牛尾 私たちは子どもたちが素足で入り、歓声をあげて泳いだり、魚を捕ったり、植物や昆虫にふれあえる、まさに生きている川づくりに貢献できることをめざしています。
鳥や昆虫、水化生物、魚、植物など自然は互いにつながりあって生きています。人間も川の恩恵を受けています。
川は淡水生態系の中核で、その存在は極めて大きいといえます。
川の命である水際を生かす
ー調査結果からあげられる猪名川の特徴はどんな点ですか。
牛尾 猪名川の流域面積は約383k㎡で比較的小さいですが、約170万人が住んでいます。
今回の調査で改めて認識したことは、治水・利水による安全性や水の確保など、猪名川は人々の暮らしの基盤を支える都市河川で、流域の人々は猪名川の水でできているといっても過言ではないほど、猪名川の恩恵によって生きているということです。
二つ側は流域の人々は年間を通して、散歩やスポーツ、魚釣りなどさまざまな形で猪名川を利用しているということです。
ですから、スポーツ施設の充実ともに河畔林をうまく利用したネイチャーランドとして、水際のオギやツルヨシなどの植生を生かし、もっと憩いや遊びの場、学びや育ちの場になればいいなと思います。
ーご専門の野生生物からご覧になった結果はいかがでしたか。
牛尾 猪名川水系は100本以上の支流や枝川から成り立っています。下流域は帰化植物が多く、水の濁った所にすむニゴイやヒル、赤いユスリカ、イトミミズ、サカマキガイなどがいて素足で入る心境にはなりませんが、こうした状況下でもたまりの一角にメダカがいました。
しかし、中・上流域は「こんなにいるの」と言うほど多種多様で身近な動植物がすみ分けています。
例えば、上流域の支流と田畑と雑木林を中心に構成されている里山は、一つの生態系をなしています。
小川にはカワムツやドジョウ、ミズカマキリ、タイコウチなどがいて、初夏にはゲンジボタルが飛び交い、林辺にはオオムラサキが舞い、クヌギ林にはカブトムシやクワガタムシがいて、森林内にはフクロウが生息しています。
このような生態系が今日まで残っているのが猪名川流域の特徴で、今なお「生きた里山」を見ることができます。
流域を上げて猪名川の日を
ー「野生生物を調査研究する会」として、また牛尾先生が望まれる猪名川とは・・・
牛尾 先ほどから申し上げているように、治水・利水を大前提に、人々の幕らしを支え、多種多様な動植物を育み、身近な自然体験ができ、学びや憩いの場でもある川です。
そのためには猪名川にふれあうことを繰り返すことによって興味や愛着がわいてくると思います。
もう一つは自分のまちを流れる猪名川はもちろんのこと、流域全体での広い川づくりを考えることが大切です。
猪名川は流域住民の健康を左右する重要な財産です。
蛇口をひねると出る水道水は猫名川の水です。ですから、自然の残っている川原がゴミ捨て場にならないように、例えば国や県の協力も得て、流域の全市町あげて「猪名
川の日」というのを定め、一斉に猪名川を知る自然体験活動とクリーンアップをしてはどうでしょう。
できれば毎年、当り前の活動として定着すればいいなと思います。
ーそのほか、住民の方々に呼びかけたいことがありましたら...
牛尾 マナーやルールを守らなかったら生命が危険にさらされることがあります。
だから川は恐い、行くな、ではなく、危険・安全面の整備に努め川を身近で雄良の自然体験の場、遊び・憩いの場に変身させたいものです。
そして、各市町で観察会などを行って猪名川インストラクターを養成し、この力と行政や企業、市民グループが連携して猪名川の自然を活川したイベントを行う
など、猪名川が人々の暮らしと一体化した存在として認識されることを願っています。
ーその時にはこの『生きている猪名川』の本が役に立つというわけですね。これからも猪名川の調査・研究を続けてください。ありがとうございました。
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猪名川は版を重ねて3印刷しています。まだ少し残っています