ウィーンわが夢の街

ウィーンに魅せられてはや30年、ウィーンとその周辺のこと、あれこれを気ままに綴ってまいります

バート・ガスタインからのハイキング・トレッキング (4)  ナスフェルト

2012-10-04 10:35:52 | バート・ガスタイン
第4日目 ナスフェルト Naßfeld

半日コース
シュポルトガスタイン・ナスフェルト周辺のハイキング


(1) で書きましたように、私たちは昨年シュトゥープナー・コーゲルからシュポルトガスタインに下りて、バスでバート・ガスタインに戻りました。今回は逆コースで、バスでシュポルトガスタインに行ったところからスタートです。

バスはÖBB駅前から、9時始発で毎時00分、1時間に1本、シュポルトガスタイン行きがでます。
夏場7月7日~9月9日までの間は午前は9時半、10時半にも増発されます ( 2012年の時刻表 )。
30分ほどで終点のシュポルトガスタインに到着です。ここはすでに標高1589メートル。ナスフェルトの入り口です。

鉄道はバート・ガスタインを出ると、べクシュタイン Böckstein から先左手に進んで、しばらくアンラウフタール Anlauftal に入ってトンネルとなり、州境を越え、トンネルを出たところは隣のケルンテン州となります。
バスはべクシュタインから右手に進み、ナスフェルダータール Naßfelder Tal を川沿いにおよそ標高差500メートルの山道を駆けのぼるようにしてシュポルトガスタインに向かいます。

ナスフェルトは直訳すれば「湿原」という意味の地名です。
標高1,600メートルに開けた広大な湿原地帯。尾瀬ヶ原のような場所です。ただ、ここは名前ほどいたるところが湿地になっているわけではなく、どちらかと言えば大部分はアルムで、放牧が盛んなところです。

私たちが2012年にたてた計画は、ほとんど標高差のないこの広大なナスフェルトのアルムを、ゆっくり、のんびりまわりの山々を眺めながら散策し、お昼近くなったらいくつか点在する生産農家直営のレストランのどこかで自家製のチーズ、シュペック ( 豚ベーコンですね )、そしてパンをいただいて戻ってくる、というものでした。

実際に出かけてみた結果からご報告すれば、あくせくしないで、のんびり過ごす予定であれば、まったく無計画に、朝、バスに乗ってここまでやってくるだけで、十分散策を楽しむことが出来ます。いきあたりばったりOKということです。ハイキングコースもいくつかあって、どこかに誰かがストックをもって歩いている姿が見えますから、いくらも寄り道、道草ができます。

バス停のすぐ近くに、Marie-Valerie-Haus という小屋があり、ここが一番有名どころとなっています。十分ハイキングを楽しんだ後戻ってきて、このレストランでお昼というのが一般的なのかも知れませんが、人気のある小屋なので、ヨハンたちが通りかかった時にはテラスには一杯のお客さんが座っているようでした。

歩いた後戻ってきて、あてにしていたレストランが満席で座れないとなると、ダメージが大きくなりますから ( バス停まで戻ってきてしまうとこの Marie-Valerie-Haus しか休憩できるところがないので、頭に入れておく必要があります ) ヨハンは歩いて行った先の農家のレストランでお昼を済ませてしまう方をお薦めします。

また、氷河を頭にいただいたアルプスの山を多少は手近に眺めたいと思うのであれば、そして(1)でご紹介したボックハルトゼーヒュテ Bockhartseehütte (1,933m) を訪れてみたい気持ちがあれば、ナスフェルトのハイキングをしばらく楽しんだ後に、山道をこの山小屋目指して登山気分で上がっていくというコースも考えられます。標高差344メートルの登りは結構満足できるものになると思います ( 険しい道だけでなく、だらだら登っていく車道もありますから、帰りは楽して下ってくることも可能です )。
  

  
2012年8月17日撮影                  拡大写真

というわけで写真は、ナスフェルト側からみたボックハルトゼーヒュテです。手前の山の稜線の中ほどに見えています (右の写真)。山の向こう側に下ると湖 Unterer Bockhartsee ウンテラー・ボックハルトゼー です。写真の画面下、右端にバス停、左端に屋根だけ見えているのがマリー・ヴァレリー・ハウスです。


また、バス停の直ぐ脇には Kreuzkogel 山頂に登る ロープウェイ Goldbergbahn の乗り場があります (山頂駅は 2,686m)。夏場は特別なイベントの日に限って運転しています。2012年のカレンダーで確認すると
4月21、22日と4月28日~5月1日の運転、夏は7月21、22日と8月11、12日の4日間の運転です。ヨハンたちがバート・ガスタインを訪れたのは8月15日でしたから、乗ることはできませんでした。これに乗って山頂までいけばおそらく、直ぐ目の前にシャレックもゾンブリックも、また少し離れた先にグロックナーも手に取る近さで見えたに違いないと思うととても残念です。
日程をこのロープウェイが動く日に合わせて組み立てるしかありません。下にご紹介するURLから入り、Bad Gastein を開くとロープウェイの営業日が確認出来ます。



2012年8月17日撮影
バス停からいよいよナスフェルトへのハイキング開始。歩き始めて直ぐのところにおかれたベンチ。独特のマーク ( これは色がついていませんが、下記のURLに使われているロゴはブルーになっているので、Enzian かとも思われます。でも、花びらがぎざぎざしているところからはエーデルワイスを表しているのかもしれません。多分オーストリア・アルプスを代表するふたつの花がミックスされたのでしょう ) がザルツブルク州一帯のアルムのハイキングコースに目印として置かれています。
ベンチの背もたれのところには SalzbuergerLand Almenweg と刻まれています。このロゴが示している道を歩けば正しいコースを進んでいると言うことになります。URLから検索してみるとこの Almenweg は総距離で350kmあるようです。

http://www.salzburger-almenweg.at/

Das SalzburgerLand hat die größte Dichte an Almen unter den österreichischen Bundesländern. Von den 1.800 Almhütten sind rund 550 Hütten in Salzburg für den Wanderer geöffnet und verwöhnen die Besucher mit herzhaften Almspezialitäten.
「アルムはザルツブルク州に密集しており、その総規模はオーストリア連邦諸州のなかでもっとも広大です。1,800あるアルム小屋のうちほぼ550がザルツブルク州内にあって、心をこめてつくられるアルムの特産品でハイカー、訪れる人々をもてなしています」

ベンチの背後に見えているのが Marie-Valerie-Haus です。



2012年8月17日撮影
自然の恵みをもたらしてくれる神に感謝をこめて、いたるところにこうしたキリスト像が建てられています。



2012年8月17日撮影
このようにアルム小屋はお客さんの訪れるのを待っています。Naßfeldalm はバス停からだと1km少々歩いたところにあります。そこまでで16メートルの登りなので、ほとんど平坦な道を歩いていく気分です。
ここでは自家製のバターとチーズを売っていますよ、というPRです。

私たちが最初に予定していたのはこの先をもう少し歩いた Moaralm という小屋までハイキングして、お昼にして、バス停に戻るというものでしたが、みなさんがどんどん先を歩いて行かれるのにつられて、結局この日はアルムが終わり、そこから更に山に登っていくのについていってしまいました。お昼をとったのは山から戻ってきたあとで、ナスフェルトの一番奥のアルム小屋でした。その小屋については次の全日コースの方でご紹介することにします。

 

全日コース
ハーゲナー・ヒュテを目指しての登山


アルムが終わって、そこから先は山になるという場所に大きな地図看板が立っていました。
私たちがそれを見ていると、同じようにドイツ人の少し年配のご夫婦も地図を確かめに立ち止まりました。
どこまで登られるんですか? と聞くと、ハーゲナー・ヒュテ Hagener Hütte との答えでした。私たちの事前の計画には全く浮かんでさえもいなかった名前でしたが、下のアルムをこちらに向かって歩いている間も、大勢の人がどんどんどんどん山道に上がっていっている姿が見えていましたし、看板に描かれた地図を見るとコースはずっと一本道で迷うようなこともなさそうでした。そして、そのドイツ人のご夫婦に「その山小屋までどれくらいかかるんですか?」と一応念のためにお聞きしても、ここから2時間くらいとのことでした。目標の標高は2,448mです。これからおよそ800メートルの登山です。私たちの過去の経験からすれば、700メートル以上の登りは相当覚悟しないと無理です。ふらっとやってきて予定にない山登りを敢行しても多分途中で挫折することは間違いなかったのですが、どんどんどんどんあんなに大勢の人が登って行くのはやはり相当人気のコースであることも間違いありません。私たちとさほど年齢もちがわないようにお見受けしたご夫婦が登ると言うのであれば、まあ、いけるところまででもついていって見ようかと、急きょ私たちもハーゲナー・ヒュテを目指して登ることにしました。

登り始めたのが10時半くらいだったでしょうか。12時くらいまで登っていってそのあとのことはまた考えよう、とそんな気持ちでした。
地図看板には途中一か所だけ小屋マークが見られました。Unterstandshütte で、そこが標高2,099メートル。食事が出来るような山小屋ではなくて、悪天候などに遭遇した時に安全を確保するための避難小屋です (ここからおよそ454メートルの登りです)。
少なくともそこまでは登ってみよう。
私たちも出発しました。



2012年8月17日撮影
登り始めて15分もすれば、ナスフェルト全体をこうして上から眺望できるようになります。

正面右手にずっとボックハルトゼーヒュテの位置も確認できます。
あそこが自分たちの目線の位置にくれば、私たちのいる場所もほぼ標高2,000メートルに近くなってきたということです。
それを励みにナスフェルトの眺望を楽しみながら、登っていきます。



2012年8月17日撮影
私たちの行く手を牛がふさいでいました。
まわりの山腹にも放牧されている牛の姿があちらにも、こちらにも、結構な高さのところににも見えています。牛は山で夜を明かすわけではないので、朝のぼってきて、また夜にはお家に帰るのでしょうが、人間が登るのさえしんどいのに、牛の歩みとは言え、すこーしずつ、すこーしずつ登って行った結果なんでしょうね、積み重ねの力は偉大なり。なんのこっちゃ



2012年8月17日撮影
これはちょうど今の牛がいた場所の近くにありました。
国立公園ホーエ・タウエルン
ロザーリウムが「最後の Kernzone ってどういう意味?」と聞きます。
恥ずかしながら知りません。「核心的ゾーン」って言う意味の言葉です。後日確かめましたが辞書にはありませんでした。ネットで検索すると Totalreservat がヒットします。

Der Begriff Totalreservat wird bei der Kategorisierung von Schutzgebieten in Natur- und Landschaftsschutz verwendet, um Gebiete zu beschreiben, die vor menschlichen Einflüssen weitestgehend geschützt und der natürlichen Entwicklung überlassen werden sollen.
「Totalreservat は自然・景観保護における保護地域のカテゴリーで使われる概念で、人的影響を出来る限り受けないように保護し、自然の生育発展のままに任せられるべき地域のことを指す」

花をとったり、ゴミを捨てたりなどはもってのほか。また水を汚すことも厳禁です。
道を邪魔する牛を「しっしっ」と追っ払ってもいけません。人間の方が回り道をします。
ドイツ人の奥さんの方が、「わたし牛が嫌いなの」と可愛らしいことを言いながら、ご主人に先導されて、牛の傍らをよじ登ります。ヨハンとロザーリウムも真似してよじ登り、みんなでお食事中の牛を迂回して進みました。



2012年8月17日撮影
上がるにつれホーエタウエルンの山々がいただく氷河 Gletscher が陽の光を浴びて輝いてみえてきます

登り始めておおよそ1時間40分ほど、ようやく避難小屋に到着。
その間もちろんドイツ人のご夫婦はどんどん先を進んで行ってしまっていましたが、この避難小屋でランチタイムをしていました。



2012年8月17日撮影 Unterstandshütte
ここが標高2,099メートルです。
ここまであがってきたらもう少し周りの山の頭にかぶっている氷河がよく見られるかと期待していましたが、見られる方角があまり良くないのでしょうね。下から眺めていた時よりはもちろんはっきり氷河が姿をみせていましたが、意外と期待外れでした。
この日はアルムの小屋でお昼をする、と言うのが最初からの予定で来ているので、わたしたちは飲み物以外は何もおなかの足しになるようなものはもっていません。時間はもう12時をとうに過ぎていました。
そしてこの避難小屋の看板表示 「ハーゲナー・ヒュテまであとおよそ1時間」




2012年8月17日撮影
この避難小屋に到着する途中で山から下りてきた人に「ハーゲナー・ヒュテはあとどれくらいですか?」と聞いたときにも、「あとたっぷり一時間はあるよ gut eine Stunde 」と聞かされていたので、間違いはありません。
その人の話では、「山のてっぺんに旗 Fahne がひらめいているから、そこが目標の山小屋だよ」とも聞かされていましたので、探してみました。写真では見えにくいですが、向こうに見えている山のてっぺんに小屋らしい姿と、旗らしいものが確認できました。

なるほどね。あとまだここから350メートルほど登っていかなくてはなくてはならないのか。

ランチをしていたドイツ人のご夫婦は、ここでリタイヤするのかと思いきや、いつの間にか出発していました。
みなさんたくましいです。
私たちはこの日夕方にホテルの Grillabend に参加することを予約していましたので、あまりぎりぎりの時間に戻るわけにはいかないし、結局ここで山を降りることにしました。

ちなみにハーゲナー・ヒュテが建っている山の稜線がザルツブルク州と隣のケルンテン州との州境になっていて、今登ってきたこの山道のコースも、あの山の向こう側に続くコースもずっとルート E10 で、おそらく向こう側に下りていけば、どこかで同じようにバスの停留所に出るのかもしれません。

今手元の地図で確認すると、ルート E10 はその先ケルンテン州の Mallnitz という村に出て、トンネルを抜け出てきた鉄道の最初の駅に至るようです。
日本で手に入る情報が少ないので、自分で地図とにらめっこしながら、また、ネットでいろいろ検索して調べなくてはなりません。いつかは山小屋を経由して向こう側に出るプランを立ててみるのもいいかな、ということで、今回は宿題を残して、下山。



2012年8月17日撮影
この避難小屋別角度から撮影するとこんなでした。嵐がきたら飛んでいきそうです。



2012年8月17日撮影

下りはやはり楽でした。
およそ1時間少々で麓にでます。
もうおなかはぺこぺこです。


2012年8月17日撮影
幸い直ぐ近くにの農家のレストランが営業中で、お客さんでにぎわっていました。( この写真は私たちが帰るときに撮影したので、他のお客さんももうほとんど帰ったあとです )


2012年8月17日撮影
自家製チーズ各種の盛り合わせ Käseplatte。向こう側に写っているのは、シュペックとソーセージの盛り合わせ。

とても食べ切れない量なので、パンにはさんでサンドウィチにして翌日 (18日、グラウコーゲル山頂付近でお昼をしたとき、これをいただきました ) のお昼用に持ち帰らせていただくことにしました。



2012年8月17日撮影
こんなところにエーデルワイス。

後日ロザーリウムが「あのエーデルワイスは別の品種だね」と言います。確かに。アルプスに咲くエーデルワイスは絶対に採取が許されるものではないはずです。栽培可能な品種だったんでしょうね。天然自然の花はもうすこし綿のようにふわふわしている気がします。

この日は15時半のバスでバート・ガスタインに戻りました。バスの往復の時間を入れて全行程6時間半。


2012/09/24 ヨハン


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