札幌市のギター教室から!

札幌市でギター教室を開いている、Kギタースクールの辻林圭です。ギター&ウクレレを弾きたい方はぜひお越し下さい。

Kギタースクール 生徒の声 その7

2010年11月01日 | 教室【生徒の声】

前回のご紹介から少し間があいてしまいましたが、「生徒の声シリーズ 第2弾」、今回のご紹介はクラシックギターコースの新城 カメさん(仮名)です。

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『ギターとわたくし』

小学生の時に弾き語りをするアーティストにあこがれて、鉄弦ギターを買った。それからずっと、熱心な時とそうじゃない時の波はあるけれどずっとギターをそばに置いておいた。でも、楽譜も読めなかったし、男の子じゃないからディープパープルにもクラプトンにも憧れなかったので、だれでも挑戦する有名フレーズもできない。いつも同じ曲を弾いていた。同じパターンを繰り返すだけの曲だった。

ところで、私は永遠に20歳である。だが、大好きだったアーティストは白髪のオヤジになり、今はその子供が人気となった。また違うアーティストはブッ飛んだ歌で有名だったが、薬をやめ家族のことを歌いだした。知らないうちに時間が経過したと思われる。そういえばその間に、6弦楽器を忘れかけて3弦や4弦の楽器とも熱く浮気をしてしまったこともあった。

だがある日、私は病に倒れた。治療薬は脳を直撃して、雑音と音楽の区別がつかなくなった。全てがやかましい音になり、この世から音など無くなってほしいと本気で思った。仕事もできなかった。そこでも時間が経過したらしい。

そして、やっと悪いところを取り除いて社会復帰しはじめた割と最近、茶屋で茶を飲んでいると隣の席にかりん糖のような太眉毛の男がいた。私はその男の醸し出す不健康な雰囲気と服装の浮世離れっぷりが気に行った。そして知り合いになった。しばらくしてその男がひどくガットギターと歌がうまいことに気付いた。そこでギターを教えてくれと頼みこんだ。だが、演奏がうまいからと言ってそれを教えるのが上手いとは限らない。また、歌がうまいからと言って性格が良いわけでもない。ましてや、教えていただく側のわたくしも穏やかだと言われたことがない火山性で、しかもアクの強い性格である。ほどなくこのタイマン勝負は限界に達して「かりん糖眉毛」とは喧嘩してしまうのだが、この男のギターのボディーを叩いたり、小指まで使ってアルペジオを弾いたり、チャラチャラしたストロークを次々と繰り出す奏法は衝撃的だった。どうしたら自分とその演奏がカッコよく見えるか、ヤツは研究していた。本当に軽薄でイヤなやつである。だが、それはアーティストとしては正しい。今まで自分はポロポロ弾いていたけれどこんなにチャラチャラした弾き方もあるんだな。
これくらい弾けると性格が悪くても女の子にモテそうだ。あ、忘れてた、私は女だった。爪割れ女は逆にモテなさそうか。いいやそんなことはどうでもいいか。

だが、思い出した。思い出したぞ。これまでも路上や公園で演奏している人、小さなライブで良いじゃんと思った人にどんどん声をかけるのが私の趣味だったのだ。そうして出会った人から色々な楽器を楽しむことを覚えたのだ。

音楽やコトバはそれが誕生した土地の文化を強く反映する。だから音楽は音だけを学ぶのではなくて、その音の背景にある文化を学ぶことにもなる。これが今までの出会いからわかったことだ。そして、好きな歌はどんなDVDよりもその時代の自分の気分を思い出させる。いいじゃないか、音楽。やるな音楽。

私は車も、持ち家も、可愛いワンコの存在も、安定した生活もお金もない。なぜなら収入はほとんど目に見えないものに使ってきたからだ。そして、長期の投薬が続いた副作用で爪ももろくなり、割れ放題だ。近年、転職を機にそういうのは卒業して、何やらキラキラしたものを身につけて、ネイルアートをしたオシャレで素敵なお姉さんへ路線変更しようと思っていたが、病気からの復帰時に出会った「かりん糖眉毛」がそれを阻止することになった。だから路線変更がうまくいかないのはあくまでも私のせいではない。奴が悪いのである。繰り返し言うが性格の悪い嫌な奴である。だが私は奴の持っている弾き方のエッセンスは持ちたい。しかし、奴は自分のテクニックを説明できなかった。無理もない。人にそれを教えたことがなかったからだ。
だから、今度こそは生徒を指導した経験を積んだ、教えるのが上手い人に音楽を教わろうと思った。そうしたらもっと体に音楽を取り込めるだろうと思った。早くしないと曲を覚える前にボケてしまう。そんなわけで、このギタースクールにやってきた。そして、演歌だのラテンだの変則的なボサノバコードを教えろなどと初心者レベルにしては
ずいぶんと無理を言って先生達を困惑させているのである。ハタ迷惑な生徒である。だが、かなーり音楽を楽しんでいると言い切ることはできる。聴くだけじゃなくて、歌ったり、弾いてみるとより濃密な時間が過ごせるのである。浮世のことなど忘れられる時間である。また、音楽をやっているということはとりあえず健康で生きているっていうことだと実感することもできる。ああ、わたくしって幸せ。だから、どうですか、あなたもギターをやってみませんか。明らかに自分ひとりで練習するのとは違うはずです。音楽の違う面が見えるよ。スゴく楽しいよ。本当だよ。

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 【講師のコメント】

新城カメさんは、とても音楽的な素養を持たれた、繊細かつ思いやりのある素敵な女性ですので。念のため(笑)。
このちょっとだけおどけた文章の中には音楽の楽しみ方についての本質をついてる部分が、何箇所もあります。お読みになってワハハ、と笑ってから、ぜひもう一度お読みになっていただきたいと思います。
大人になってからギターを習うということは、けっして簡単なことではありません。ですが、習いにいらっしゃる方は必ず過去のどこかで、ギター音楽にあこがれた時があったはずです。ギターを習っていろいろな壁にぶつかった時、そのことを思い出してください。初心に帰る。
カメさんはいつでも、初心を忘れずにいられるとても恵まれた方だと思います。決してハタ迷惑な生徒さんではありませんよ(笑)。

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