『ロブスター』 篠田節子 角川書店 2024年 1800円 211ページ
近未来を描いたSFだけれど、現状の延長線上にあるのでファンタジーだと無視することもできない。地球温暖化のせいで最高気温が60度に達する場合もあるし、円安は進み続け富裕層のみが莫大な利益を手にし、サービス業も廃業、社会保障の財源はとうに尽き、ブローカーが労働能力のある人々を飛行機に乗せ、完全個室の宿舎に送り、定型業務の個人作業に従事する。
中には、アメリカのアリゾナの砂漠にある研究所で新薬の実験台にされているなどの噂もあり、個別作業が肉体労働だったなどの情報も出ている。日常食は人造肉やスパム、果汁などは選択肢にはなく、色のついた人工的な飲料などを飲む。タイトルはロブスターだが、実は・・・。
寿美佳は大学卒業後に清掃公社に勤めるが、辞めてネットライターとして生計を立てている。あるときアメリカ人博士の妻から、原始的な生命を人工的に発生させたことで国を追われた博士がオーストラリアの施設に収容されているので、奪還して欲しいと頼まれる。他をあたってもすべて断られたから、と。お金のない寿美佳はそのミッションを引き受けるが、その施設には博士と、去勢されたらしい(2678人も殺した)大量殺人者らといるという。
博士を連れて帰ろうとするも、意外な答えを聞き、寿美佳は、1度は帰国を試みたがアクシデントで収容所に戻ることになり・・・。
世の中で起きつつあることを捉えるのが巧い著者なので、リアルな近未来が描かれている。たいていのSFと同じく、近未来は希望がなく、こんな未来はイヤだというものばかりだが、果たしてこうした予言は当たるのだろうか。
★★★
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