ウイスキーの刻 ~Whiskyのとき~

耳を澄ませば聴こえるウイスキーのメロディ。
『ウイスキーの刻』は、その真実を探し求めていきたいと思います。

『新千歳空港に降り立って』⑮

2020-05-16 19:19:19 | 日記
 こんばんは。Aokiです。

 ご納得されたミス・ザンギは、遅ればせながら、
 余市蒸溜所名物?石炭直火焚きのポットスチルを
 真剣な眼差しで確認していらっしゃいます。

 他のお客さまたちも、珍しそうに楽しんで
 いらっしゃいます。

 私はといいますと、たくさんの見学者を
 観察してこられた警備の方に、最近の
 お客さまの動向などをお聞きしております。


 「ガイドさん、あそこに付いているのは、
  しめ縄でしょう?」

 麦わら婦人(だんだん扱いが雑になってきました)が、
 尋ねられます。

 「はい、竹鶴政孝の実家が広島県の造り酒屋ですので、
  つくりの場は神聖な場所ということで、
  しめ縄を飾っているのです。」

 「面白いわね~」

 妙に感心していらっしゃいます。

 まさか、ポットスチルにしめ縄が飾られているなど、
 想像できないことでしょう。

 石炭をじっと見つめていらっしゃる方や、
 炉の扉を珍しそうに見ていらっしゃる方など、
 関心の的は十人十色です。


 そんな折、袖引きさっちゃんが、
 私に教えてくださいます。

 「あれ、レゴみたい。」

 お目が高い。

 この子に注目したのは、私の知る限り、
 二人目です。

 詳しくは、2020.02.11掲載の
 『リタの瞳と政孝の眼差し』②を
 ご参照ください。

 ということは、さっちゃんと私は同じ目線?

 光栄です。

 そこへ、お母さんもご参加。

 「ほら、さっちゃん。大きなヤカンが、
  たくさんあるわね。」

 さっちゃんは、別のことを考えているようです。

 「なんか、大きなウ・(ピー)・みたい。」

 お子さまは本当に好きですよね、このキーワード。

 そこへ、

 「ガイドさん、石炭で熱すると、どのくらいの
  温度になるのかね~?」

 居酒屋三人衆の長老、敏さんがご質問されます。

 「約1,200℃ほどになります。」

 「それはすごい高温だね。」

 「はい、パイプに蒸気を通す間接加熱は
  130℃くらいですので、10倍近い温度ですね。」

 「そんなに高温で熱したら、中の・・・
  何て言うんだっけ?」

 「モロミ、発酵モロミですね。」

 「そう、そのモロミが焦げ付かないのかね?」

 「ご推察とおりです。そのために、
  あのポットスチルの底には、『ラメジャー』
  という、鎖や箒のような形の銅製の器具が
  取り付けられており、それが回転することで、
  焦げ付きを防止しているのです。」

 「へえ~、よく考えるもんだな~」とは、
 うっかり八兵衛さん。

 この場所では、時おり、スチルマン(蒸溜担当者)が
 炉に石炭をくべているところに遭遇します。

 開かれた炉の中で真っ赤に燃え盛る炎と、漆黒の石炭は、
 ひとしずくのスピリッツが湛える静けさの奥に、
 知られざる情熱が宿っていることを教えてくれます。

 焚火を囲み、皆がただ炎を見つめるように、炎には、
 人を惹きつける何かがあるようです。

 そして、炎すら存在できない高温高圧の下で
 生まれる結晶・・・

 ダイヤモンド?

 いえ、それは固いけれども壊れます。

 ・・・

 そう、それです。

 ただし、お気をつけください。

 世の中に決して壊れないものがあるとすれば、
 それは、「すでに壊れているもの」・・・ですので。


             ~ to be continued ~


                  Z.Aoki
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