「自然の叡智」をテーマとする愛・地球博は3月25日、一時、吹雪となるなど厳しい冷え込みの中、開幕した。会期は9月25日までの185日間。一部の人気パビリオンでは混雑も見られたが、寒さで客足は鈍り、人出は予想を下回る4万3000人と、静かなスタートになった。
今回の万博の目玉の1つである市民参加のプログラムも幕を開けた。「市民プロジェクト」は、まず若者たちを中心とした4つのプロジェクトから始まった。この日午前中には、市民プロジェクトの舞台となる瀬戸会場・市民パビリオンの対話劇場でオープニングフォーラムが開催され、4プロジェクトに関わる若者たちが一堂に会した。
フォーラムでは、その幕開けに、小川巧記市民参加プロデューサーが「時代のエンジンは、19世紀は国家、20世紀は産業であった、そして21世紀は市民である」と語り、「市民の力をご覧いただきます」と高らかに宣言した。また「自分らしい地球の愛し方を見つけてください」とも語った。
なるほど、今回の万博は「愛・地球博」だ。“愛し方”というからには、人それぞれに様々なやり方があっていい。だからこそ、4つのプロジェクトも、環境、平和、ストリートチルドレン、アフリカの叡智など多様で、自分なりの地球の愛し方を見つけていけばいいということなのだろう。
今回のオープニングイベントがおもしろいのは、これからの市民の主役となる若者を中心にして、世界中の若者たちのネットワークづくりを意識した構成になっていることだ。
自らがストリートチルドレンの経験を持ち、大学で博士号まで取得したというジャン・ピエール(フィリピン)さんは、現在ストリートチルドレンの支援を行っている。路上で生活する子供たちの描いた絵や詩を募集し、今後会場内に展示していくというのが「ストリートチルドレン芸術祭」である。
自国での内戦を体験した高校生のラディ・セビックさん(セルビア・モンテネグロ)は、日本で平和を求める署名活動を行っている高校生とともに、ピアノ演奏、詩の朗読を行った。環境問題、ホームレス支援に取り組む大学生のウィリアム・マッキンリーさん(アメリカ)は、日本でスカベンジ(ごみ拾い)を広めた大学生らとともに、27日に名古屋市内で「スカベンジ作戦」を決行する。
世界の様々な地域から日本にやってきた若者が、ストリートチルドレン−アート、内戦−原爆、環境−スカベンジとそれぞれを結びつけていく中で、日本の若者とのセッションが実現した。オープニングでの彼らのコラボレーションは、世界の若者たちを巻き込むネットワークづくりへと広がっていくのだろうか。