東京都の計画によって作られた壁画が、東京都によって壊される前日、最後の記録です。
2005年に作られました。
タイトルは「Visitors」。
多くの人の集まる場になってほしいとの願いで作られました。
描いたのは2005年の1月~2月。
雪の舞う中、冬風に吹かれながら描き上げました。
完成後、ガラスコーティングが施され、長く保存されるはずでした。
そのおかげで、5年経った今も制作当時の鮮やかさのまま。
そのままの姿で壊されてしまいます。
どの程度の耐震補強工事が早急に必要なのかもわからず。
壁画の保存や修復の可能性も話し合われないまま。
この景色は壊されます。
壁画最後の夜。
たくさんの人の、たくさんの思い出と共に。
結局、東京都建設局と話し合いの機会も持たれないまま、明日から橋脚補強工事に入るそうです。
その連絡さえもわずか4日前。
この壁画の姿を直接見られるのは今日を限りに永遠に失われてしまいます。
橋脚を管理しているのは、確かに建設局かもしれませんが、決して彼らの持ち物ではないはず。
橋脚は都民の財産であり、税金で成り立っているもの。また、壁画もみんなの財産であることは間違いないのです。
まるで私物を扱うように、一方的に工程を決め、壁画の制作者にさえ相談することなく工事を進めることは正しいことなのでしょうか?
5年前に、20代最後の傑作を創ろう、遺作となったら代表作になるような作品にしよう、という意気込みで制作した壁画。制作費はおろか、交通費さえ支給されない中、約1ヶ月半の間無償で制作にあたりました。自分が生まれ育った場所に少しでも恩返しができることを喜びとしながら。
壁画があることで公園の魅力が増すような、そんな壁画を目指しました。
事実、ミュージッククリップや雑誌等でも取り上げられ、公園利用者のみならず、駒沢通りを車で通りかかる人たちにも親しまれてきました。
橋脚という性質上、永遠にそのままの状態では保存ができないのはわかっています。
しかし、このような形で、話し合いも持たれないまま壁画が無くなってしまうことは残念でなりません。橋脚補強工事の話が持ち上がった時点で、連絡なり相談はできなかったのでしょうか。
結果は同じだとしても、双方納得の上での工事が可能だったはずです。
「ご理解をお願いします。」
最終的にはこの言葉。
東京のために、と思って制作したはずが、今は裏切られた思いでいっぱいです。
壁画制作当時、親身になって見守って下さった担当の方が今でも担当して下さっていたら、また違った結果になっていたのでしょうか。
組織として問題のない組織はないはずです。だからこそ改善をしてゆくのではないでしょうか。
大切なふるさとであるからこそ、今回苦言を呈したいと思います。
果たしてこれで良かったのか。
明日から壁画は壊されます。
1年もすれば真新しい橋桁になり、そこは「かつて壁画のあった場所」となります。
再び殺風景な、無機質な表情を見せるでしょう。
担当者さえ部署が変わり、やがて忘れてゆくでしょう。
でも、僕にとって東京がふるさとであることに変わりはありません。
これからもずっと。
そしてまた素晴らしい作品を作り続けたいと思います。
ひとつ壊されるのなら、ふたつ新たな作品を生めばいいのです。
壁画最後の日。ちょうどフリーマーケットが開催されていて、多くの人で賑わっておりました。
この壁画のタイトルは「Visitors」。
たくさんの人に訪れてほしい、との思い通りの最終日となりました。
この景色は、もう二度と見られません。
以前記事でもご紹介した、横浜・石川町での展示が7月11日まで会期延長となりました。
見逃してしまった方、もう一度ご覧になりたい方、是非この機会に足をお運びいただけると幸いです。
関連記事:「LIFE」artgene. 佐原和人
http://blog.goo.ne.jp/web-sahara/d/20100529
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君島彩子・佐原和人「LIFE」
会期:2010年3月28日(日)~6月26日(土)
※7月11日(日)まで会期を延長しました(無休)
時間:12:00~18:00 ※会期中無休
出展作家:君島彩子 佐原和人
入場料:無料
会場:Porto Gallery
http://portog.exblog.jp/12231743/
KOTOBUKIクリエイティブアクション:佐原和人
http://creativeaction.jp/artists/2010/03/sahara.html