天上の月影

勅命のほかに領解なし

本願力回向の宗義(2)

2019年01月06日 | 勉強日誌
 では「本願力回向」とは何か、分解すると「本願」「力」「回向」になります。それぞれの意味を見ていきましょう。はじめに「本願」とは「本」に因本と根本の義があります。因本の義で「本願」というときは広く四十八願を指します。それは阿弥陀仏が阿弥陀仏と成られる前、法蔵菩薩とお名告りであったときに建立された願です。『大経』を詳しく説かれています。『註釈版』九頁からです。

仏、阿難に告げたまはく、「乃往過去久遠無量不可思議無央数劫に、錠光如来、世に興出して無量の衆生を教化し度脱して、みな道を得しめてすなはち滅度を取りたまひき。次に如来ましましき、名をば光遠といふ。次をば月光と名づく。

等といって、次々に仏陀がお出ましになられた五十四番目、十一頁です。

そのときに、次に仏ましましき。世自在王如来・応供・等正覚・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊と名づけたてまつる。時に国王ありき。仏(=世自在王仏)の説法を聞きて、心に悦予を懐く。すなはち無上正真道の意を発す。国を棄て王を捐てて、行じて沙門となる。号して法蔵といふ。高才勇哲にして、世と超異す。

とあります。これは阿弥陀仏の因果を説くなかの因のところです。世自在王仏がお出ましになられたとき、一人の国王があって世自在王仏の説法を聞いて、いたく感動し、そのまま国王という地位も名誉も財産もまるで破れ草履を投げ捨てるようにかなぐり捨てて修行者となり、名を法蔵とお名告りになったというのです。法蔵菩薩や世自在王仏の名は「正信偈」に出てきます。「法蔵菩薩因位時、在世自在王仏所」とあります。続いて『大経』は「世自在王如来の所に詣でて仏足を稽首し、右に繞ること三匝して、長跪合掌して、頌をもつて讃めてまうさく」とあり、いわゆる「讃仏偈」を述べられます。「光顔巍巍 威神無極」等です。「讃仏偈」というのはここに出てくるものなのです。それを取り出しておつとめに用いているわけです。そして省略しますが、五劫があいだ思惟して、四十八通りの願を建立されたのです。十五頁から二十四頁までです。それが四十八願です。すべて「たとひわれ仏を得たらんに」からはじまり「正覚を取らじ」で終わっています。たとえ私が仏陀と成り得たとしても、何々ができなければ決して仏陀とは成りませんというのですから、単なる願いではなく、誓いでもあります。そこで誓願ともいわれるのです。また広弘誓願の意味で弘願とか弘誓ともいわれます。それは法蔵菩薩という因の位において建立された願ですから、因本の意味で本願と呼ぶわけです。そのときは四十八願全体を指します。ところが四十八願のなかで根本となるのは第十八願です。前に浄土真宗は第十八願の法義であるといいましたが、それは根本願であるからです。そのように見るのが浄土真宗の七祖の伝統なのです。とくに法然聖人は「四十八願のなかに、すでに念仏往生の願(=第十八願)をもつて本願中の王となす」(『七祖篇』一二二八頁)といわれています。けれども他の人は第十九願を中心と見ます。たとえば源信僧都の師であった良源(九一二~九八五)などです。おみぐじの元祖とか正月の三日に亡くなられたので元三大師と呼ばれる人です。また法然聖人滅後、親鸞聖人の弟弟子になる覚明房長西(一一八四~一二六六)という人は第二十願によって諸行本願義と呼ばれる教えを説きました。これは法然聖人の教えを根幹から揺さぶるもので、親鸞聖人が浄土真宗として浄土宗の真実義を開顕せねばならない一つの要因になりました。こうした第十八願・第十九願・第二十願を生因三願といい、とくに重要な問題ですので後にお話をします。いまは第十八願を根本と見られたのが七祖であり、親鸞聖人であったということにとどめましょう。そこで根本という意味で第十八願を本願と呼ぶのです。いま「本願力回向」というときの「本願」は広くいえば四十八願ですが、それらを総摂した第十八願を指しています。「たとひわれ仏を得たらんに、十方の衆生、至心信楽して、わが国に生ぜんと欲ひて、乃至十念せん。もし生ぜずは、正覚を取らじ。ただ五逆と誹謗正法とをば除く」(『註釈版』一八頁)というものです。漢文のまま示せば、「設我得仏、十方衆生、至心信楽、欲生我国、乃至十念、若不生者、不取正覚、唯除五逆、誹謗正法」です。これは漢文のまま覚えていただきたいのですが、たとえ私が仏陀と成り得たとしても、あらゆる生きとし生けるものが、本当に間違いなく我が国に生まれると思うて、たとえわずか十返でも念仏せしめよう。もしもその者を生まれさせることができなければ、私は決して仏陀とはなりません。ただし五逆の罪を造る者や正法を誹謗する者は除くというのです。その詳しいことはまた後にお話をします。
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