天上の月影

勅命のほかに領解なし

親鸞聖人と浄土真宗(4)

2018年12月29日 | 勉強日誌
 そこで親鸞聖人がいわれる浄土真宗は、まず法然聖人が独立された浄土宗、その真実の法義を指していたということが知られます。ただ法然聖人が浄土真宗という宗名を用いられた例はないのですが、親鸞聖人は浄土真宗の開祖を法然聖人であるといわれるのです。『高僧和讃』「源空讃」に、

  智慧光のちからより 本師源空あらはれて
  浄土真宗をひらきつつ 選択本願のべたまふ(『註釈版』五九五頁)

と詠われたものがそれです。ほかにも「正信偈」に、

  本師源空は、仏教にあきらかにして、善悪の凡夫人を憐愍せしむ。
  真宗の教証、片州に興す。選択本願悪世に弘む。(『註釈版』二○七頁)

といわれています。漢文で示せば「本師源空明仏教 憐愍善悪凡夫人 真宗教証興片州 選択本願弘悪世」とあるものです。ここに「真宗の教証、片州に興す」とあります。また「化身土文類」後序にも、

  真宗興隆の大祖源空法師(『註釈版』四七一頁)

といわれています。このように親鸞聖人にとっては法然聖人が浄土真宗の開祖であったのです。なお『浄土文類聚鈔』の「念仏正信偈」には、

善導独り仏の正意をあきらかにして、深く本願によりて真宗をおこしたまふ(『註釈版』四八八頁)

といわれています。これは中国において真実の仏法である真宗をおこしたのは善導大師であるということでしょう。日本では法然聖人であったのです。そしてその法然聖人の教えは「選択本願」といわれます。それについては後にお話しますし、七祖の教えを勉強されるときに学んでいただくことになりますが、第十八願のことです。それを説いているのが『大経』なので、法然聖人は『西方指南抄』上末「法然聖人御説法事」に、

次に『双巻無量寿経』、浄土三部経の中にはこの経を根本とするなり。(『真宗聖教全書』四・八五頁)

と示されています。それを承けて親鸞聖人も前に述べましたように「浄土三部経」のなかで『大経』を中心に見られるのです。そこで親鸞聖人は『教行証文類』「総序」のあとに、

  大無量寿経〔真実の教 浄土真宗〕(『註釈版』一三四頁)

と標され、また「行文類」の偈前の釈といいまして、「正信偈」の前に、

  『大無量寿経』の宗致、他力真宗の正意なり。(『註釈版』二○二頁)

といわれいます。『大無量寿経』の法義を浄土真宗と名づけるといわれるのです。それは繰り返しになりますが、選択本願すなわち第十八願が説かれているからです。そこで『親鸞聖人御消息』第一通に「浄土宗のなかに真あり、仮あり。真といふは選択本願なり」といい、

  選択本願は浄土真宗なり。(『註釈版』七三七頁)

といわれいます。『大無量寿経』の法義の根幹である選択本願すなわち第十八願の法門を浄土真宗と名づけるというのです。そしてそれは『浄土和讃』「大経讃」に、

  念仏成仏これ真宗 万行諸善これ仮門 
  権実真仮をわかずして 自然の浄土をえぞしらぬ(『註釈版』五六九頁)

と詠われていますように、「念仏成仏」の道です。これが親鸞聖人のいわれる浄土真宗なのです。

 こうして難しい言葉がいくつも出てきてわかりづらかったかもしれませんが、整理をすると、
  ①法然聖人が独立された浄土宗の真実の法義
  ②『大無量寿経』の法義
  ③選択本願(第十八願)の法門
  ④念仏成仏の道
これを浄土即真宗、浄土の真宗として浄土真宗と名づけられたのです。そしてその浄土真宗を『教行証文類』において本願力回向を主軸とする教義体系を樹立されていったのです。それは法然聖人の浄土宗の教義体系とは趣きが異なりますが、本質は変わりません。それでも教義の立て方が違いますので、のちに親鸞聖人を浄土真宗の宗祖と仰がれることになったのです。ただ親鸞聖人自身からすれば、それは違う、自分はどこまでも法然聖人の弟子であるといわれるでしょうが、後の人から見れば浄土真宗の宗祖と仰がずにおれない偉業をはからずも成し遂げられていたのです。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« 親鸞聖人と浄土真宗(3) | トップ | 本願力回向の宗義(1) »

コメントを投稿

勉強日誌」カテゴリの最新記事