WATCH (サミット人権監視弁護士ネットワーク / Watch Human Rights on Summit)

WATCHは2008年洞爺湖サミット警備による人権侵害に対処するため、弁護士を中心に結成されたグループです。

サミット前後の入管実務の対応について(マニュアル)【その1】

2008-05-04 14:28:04 | 入管マニュアル
サミット前後の入管実務の対応について(マニュアル)
―会議その他会合のために「短期滞在」で入国する事例を中心として―


サミット人権監視弁護士ネットワーク



第1 外国人の入国・上陸手続の流れ等について


Q1 外国人の入国・上陸手続の流れはどのようなものか。査証・在留資格とはどのようなものか。会議その他の会合で来日する場合、外国人は必ず査証を取得しなければならないか。


1 外国人の入国・上陸手続の流れと査証について

外国人は「旅券」(PASSPORT)・「査証」(VISA)を所持して来日することになっています。

  ↓

日本の出入国港において、旅券・査証・出入国記録カード(「EDカード」)を入国審査官に提示して上陸申請しなければなりません。

     ↓

入国審査官が上記の資料に基づき上陸審査し、上陸の条件に適合していると認めたときは、旅券に上陸許可の証印をうけることになります。

     ↓

「在留資格」を付与され、日本に上陸が許可されることとなります。

(2) 査証(VISA)

来日前に海外にある日本の大使館・領事館によって発給されるものであり、1.外国人が所持している旅券が有効であることを「確認」するとともに、2.外国人を日本に入国させても支障がないという「推薦」するという性質を持つ文書です。

  ↓

査証を発給するかどうかは、外務省の権限に属しているところ、条約又は確立した国際法規に反しない限り、政府の裁量に属する事項であって、拒否されたとしても、違法の問題が生ずる余地はないとされています。つまり、査証を得ていても入国できない場合もあると言うことです。

  ↓

このように、査証の発給により、直ちに上陸が許可されるわけではなく、入国審査官の上陸審査の結果、上陸を拒否されることもあります(後述する在留資格をVISAと呼称することもあるが、査証(VISA)と在留資格は異なることに注意)。

  ↓

査証には、1.海外にある日本の大使館・領事館限りで発給できる場合と、2.外務省本省・法務省本省との協議(査証事前協議)を必要とする場合があるが、後者の場合は相当の時間が必要となり、概ね2~6か月程度であるとされています。



2 在留資格について

(1) 在留資格

外国人が、日本に在留する間に行う一定の活動あるいは一定の身分又は地位に基づき、日本に在留して活動することができる入管法上の資格のことです。



入国審査官は、上陸許可に際し、外国人の入国・在留の目的に応じ、在留資格・在留期間を決定し、外国人は、在留資格の許容する範囲内の活動と通常の社会生活上の活動が可能です。

(2) 在留資格の種類

a 27種類(詳細は、法別表第1・第2を参照)

b 別表第1が一定の活動に基づく在留資格であり、別表第2が一定の身分又は地位に基づく在留資格です。

c 朝鮮・台湾などの旧植民地出身者とその子孫については、「特別永住者」という在留資格(「日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」)がありますが、詳しい説明は省略します。

(3) 在留期間

「外交」、「公用」、「永住者」を除き、3年以内の一定の期間(詳細は、規則別表第2)とされます。

3 「短期滞在」と査証について

(1) 「短期滞在」

a 「短期滞在」に該当する活動は、日本に短期間滞在して行う、次のいずれかに該当する者としての活動です。今回サミットに際して入国を希望される方のほとんどはこの資格であると思われます。

1) 観光、娯楽、通過等の目的で滞在する者

2) 保養、病気治療等の目的で滞在する者

3) 競技会、コンテスト等に参加する者

4) 親族、知人等を訪問する者

5) 工場の見学、視察等の目的で滞在する者

6) 講習会、説明会等に出席する者及び講習会、説明会等において講演等を行う者

7) 会議その他の会合に参加する者

8) 外国に職業活動の基盤を有して業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査等短期商用活動を行う者

b 「短期滞在」の在留期間は、活動の期間等に応じ、15日、30日又は90日

c 「短期滞在」では、一切の就労活動を行うことはできないが、業として行うものではない次に掲げる活動に対する謝金、賞金その他の報酬を受けることは可能です。(法19条1項1号、規則19条の2)

1) 講演、講義、討論その他これらに類似する活動

2) 助言、鑑定その他これらに類似する活動

3) 小説、論文、絵画、写真その他の著作物の制作

4) 催物への参加、映画又は放送番組への出演その他これらに類似する活動

(2) 「短期滞在」と査証・査証免除措置・査証取得勧奨措置

  a 原則

    「短期滞在」の在留資格を付与され、日本に上陸するためには、原則として、海外にある日本の大使館・領事館に査証を申請した上、査証の発給を受けることが必要です。

      ↓

    査証の申請の手続・必要書類については、国籍別に異なっており、詳細については、外国人の居住地を管轄する日本の大使館・領事館に事前に問い合せることが必要です。

  b 査証免除措置

    日本は、2006年8月31日現在、62か国・地域に対し、一般旅券所持者に対する査証免除措置を行っている

   (http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/annai/visa_2.html

      ↓

これらの国・地域の旅券を所持する者は、日本への商用、会議、観光、親族・知人訪問等を目的とする「短期滞在」の場合、査証を取得することなく上陸の申請が可能です。

c 一時停止・査証取得勧奨措置

    もっとも、バングラデシュ・パキスタン人については1989年1月15日以降、イラン人については1992年4月15日以降、査証免除措置が一時停止されていますので、注意して下さい。

      ↓

    また、マレーシア(1993年6月1日以降)・ペルー(1995年7月15日以降)・コロンビア(2004年2月1日以降)・チュニジア(2008年4月1日から同年7月9日までの期間)については、査証取得勧奨措置が実施されており、査証を得ることなく上陸の申請を行った場合、非常に厳格な入国審査を受けることになりますから、査証を取得して上陸するのが望ましいといえます。

サミット前後の入管実務の対応について(マニュアル)【その2】

2008-05-04 14:27:02 | 入管マニュアル
第2 外国人の上陸の手続・条件等について

Q2 外国人が日本に上陸する手続・条件は具体的にどのようなものか。具体的にどのような場合に上陸が拒否されるのか。会議その他の会合で来日する場合、どのような理由で上陸が拒否されることが予想されるか。


1 外国人の上陸の手続について(別図)
(1) 上陸の申請
外国人は旅券・査証を所持して来日します。(ただし、前記第2、3(2)bのとおり、査証免除措置を実施している国・地域の旅券の所持者で「短期滞在」の場合は査証は不要です)(法6条1項)

日本の出入国港において、旅券・査証・出入国記録カードを入国審査官に提示します。(法6条2項・規則5条・別記6号様式)
  ↓
入管実務上、空港においては、上陸審査場(PASSPORT CONTROL)で入国審査官に旅券・査証・出入国記録カードを提示することが上陸の申請となります。

(2) 入国審査官の上陸審査
   入国審査官は、外国人が後記2の上陸の条件に適合しているかどうかを審査し(法7条1項)、適合していると認定したときは、旅券に上陸許可の証印をし、在留資格を付与しなければならない。(法9条1項・3項)
     ↓
   後記2の上陸の条件に適合していないと判断した場合は、当該外国人を特別審理官に引き渡さなければならない。(法9条4項)
     ↓
   空港においては、上陸審査場の付近の事務室に特別審理官室があり、入国審理官が上陸の条件に適合していないと判断した場合は、直ちに特別審理官室に連行され、後記(3)の口頭審理を受けることになります。

(3) 特別審理官の口頭審理
 特別審理官は、引渡を受けたときは、当該外国人に対し、速やかに口頭審理を行わなければならないとされており(法10条1項)、入管実務上も、空港に到着した後、数時間で口頭審理は終了してしまうことも多くあります。
     ↓
   口頭審理においては、代理人の立会が認められており(なお、代理人の資格に制限はない)、証拠の提出や証人尋問が可能とされているほか(法10条3項)、特別審理官の許可を受けて、親族又は知人の一人を立ち会わせることができるとされています。(法10条4項)したがって、弁護士でなくても、日本の会議主催者が連絡を受けて立ち会うことも可能ですが、迅速に行動しないと間に合わないと言うことになります。
     ↓
   特別審理官は、口頭審理の結果、当該外国人が後記2の上陸の条件に適合していると認定したときは、直ちに旅券に上陸許可の証印をし、在留資格を付与しなければならない(法10条8項)
     ↓
後記2の上陸の条件に適合していないと認定したときは、速やかに理由を示してその旨を知らせるとともに、異議を申し出ることができる旨を知らせなければならず、当該外国人がその認定に服したときは、日本からの退去を命じなければならないとされています。(法10条10項・11項)

(4) 法務大臣への異議の申出
   後記2の上陸の条件に適合していないという特別審理官の認定に異議があるときは、その通知を受けた日から3日以内に不服の事由を記載した書面を提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができるとされています。(法11条1項)
     ↓
   直ちに異議の申出をしない場合は、その間、空港であれば、ターミナルビル内の上陸防止施設又はその付近のホテルなどにとどまることになります。このホテル代などは本人に請求されます。

(5) 法務大臣の裁決
   法務大臣は、前記(4)の異議の申出に理由があるかどうかを裁決し、その結果を主任審査官に通知しなければなりませんが、理由がない場合でも、「特別に上陸を許可すべき事情」があると認めるときは、その者の上陸を特別に許可(上陸特別許可)することができます。(法11条3項・12条1項)
    ↓
主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知又は上陸特別許可の通知を受けたときは、直ちに旅券に上陸許可の証印をしなければなりません。(法11条4項・12条2項)
     ↓
   主任審査官は、法務大臣から異議の申出に理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに当該外国人に対しその旨を知らせて、日本からの退去を命ずるとともに、当該外国人が乗ってきた船舶等の長又はその船舶等を運航する運送業者にその旨を知らせなければなりません。(法11条6項)
     ↓
   入管実務上、異議の申出から裁決までの期間は事案に応じて異なっており、直ちに裁決がされない場合は、その間、空港であれば、ターミナルビル内の上陸防止施設又はその付近のホテルなどにとどまることになります。この間のホテル代なども本人に請求されることになります。

(6) 退去命令
   退去命令を行う場合において、当該外国人が船舶の都合等の事由により直ちに日本から退去することができないと認めるときは、当該外国人に対して、その指定する期間に限り、空港であれば、ターミナルビル内の上陸防止施設又はその付近のホテルなど、出入国港の近傍にあるその指定する施設にとどまることを許すことができるとされています。(法13条の2)
     ↓
   退去命令を受け、遅滞なく日本から退去しない場合、退去強制手続が開始され(法24条5号の2)、入国管理局収容場に収容されます。(法39条)

(7) 仮上陸許可
   主任審査官は、上陸の手続中において特に必要があると認めるときは、その手続が完了するときまでの間、当該外国人に対し仮上陸を許可することができます(法13条1項)
     ↓
   仮上陸の許可を与える場合には、主任審査官は、当該外国人に対し、住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付し、かつ、200万円を超えない範囲の保証金を納付させることができます。(法13条3項)

2 外国人の上陸の条件について
(1) 上陸条件適合性
入国審査官は、上陸の申請があったときは、当該外国人が以下に掲げる上陸のための条件に適合しているかどうかを審査しなければなりません(法7条)
1. その所持する旅券及び、査証を必要とする場合には、これに与えられた査証が有効であること(法7条2項1号)
2. 申請に係る日本において行おうとする活動が虚偽のものではなく、当該在留資格を有する者としての活動に該当し、かつ、当該在留資格について法務省令で定める基準に適合すること(法7条2項2号)
3. 申請に係る在留期間が法務省令の規定に適合するものであること
4. 当該外国人が後記3の上陸拒否事由(法7条1項4号)のいずれにも該当しないこと
   ↓
入国審査官は、上記の条件に適合していると認定したときは、旅券に上陸許可の証印をし、在留資格を付与しなければならない(法9条1項・3項)
  ↓
査証の発給と異なり、上陸の審査は政府の裁量に属するものではなく、上陸の条件に適合している場合の上陸許可は羈束的である、つまり必ず許可しなければならないと考えられています。

(2) 立証責任
   上陸の審査を受ける外国人は、上陸のための条件に適合していることを自ら立証しなければなりません(法7条2項)

日本に上陸しようとする外国人が「短期滞在」の在留資格を取得するためには、次の資料などの必要書類を提出して申請に係る日本において行おうとする活動について立証しなければならない(規則6条・別表第3)
1. 日本から出国するための航空機等の切符又はこれに代わる運送業者の発行する保証書
2. 日本以外の国に入国することができる当該外国人の有効な旅券
3. 在留中の一切の経費の支弁能力を明らかにする資料
4. その他参考となるべき資料
 たとえば、小樽港で入国が拒否されたドイツ人の方の場合などは、帰国のための旅費などをもっていなかったことから、出国の手段がない、あるいは経費の支払いの能力がないと見なされた可能性が高いといえます。

3 上陸拒否事由(法5条1項1号ないし14号)
(1) 4号
   「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、1年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない」
  a 「刑」
    刑は、日本国の法令違反により、日本の裁判所で処せられたものか、外国の法令違反により、外国の裁判所で処せられたものかを問わない
  b 「刑に処せられた
   「刑に処せられた」とは、歴史的事実として刑に処せられたことをいい、刑の確定があれば足るとされている
      ↓
刑の執行を受けたか否か、刑の執行を終えているか否かを問わず、執行猶予期間中の者、執行猶予期間を無事経過した者も含まれると考えられますが、単に身柄を拘束されたことがあるだけで起訴されていないケースは含まれないと考えられます。

(2) 5号の2
「国際的規模若しくはこれに準ずる規模で開催される競技会若しくは国際的規模で開催される会議(以下「国際競技会等」という。)の経過若しくは結果に関連して、又はその円滑な実施を妨げる目的をもって、人を殺傷し、人に暴行を加え、人を脅迫し、又は建造物その他の物を損壊したことにより、日本国若しくは日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられ、又は出入国管理及び難民認定法の規定により本邦からの退去を強制され、若しくは日本国以外の国の法令の規定によりその国から退去させられた者であって、本邦において行われる国際競技会等の経過若しくは結果に関連して、又はその円滑な実施を妨げる目的をもって、当該国際競技会等の開催場所又はその所在する市町村の区域内若しくはその近傍の不特定若しくは多数の者の用に供される場所において、人を殺傷し、人に暴行を加え、人を脅迫し、又は建造物その他の物を損壊するおそれのあるもの」
  a 「国際的規模で開催される会議」
各国の首脳又は閣僚級の代表が参加する会議で、例えば、サミット、APEC、WTOなどの会議が該当するとされている
b 「出入国管理及び難民認定法の規定により本邦からの退去を強制され」
入管法に定める退去強制手続に従って日本から退去を強制されたことをいい、自らの費用による出国も含まれる
c 「日本国以外の国の法令の規定によりその国から退去させられた」
日本の入管法に基づく退去強制処分に相当する処分により、他国で国外退去を強制された場合のみならず、退去・出国を命ずる処分を受けて自主的に退去・出国した場合や、入国・上陸を拒否された場合も含まれる
  ↓
法務省は、警察庁・外務省と連携しながら、他国から情報収集を行っており、過去のサミット、APEC、WTOなどの国際会議の関連で他国で退去強制など処分を受けた者の情報は蓄積され、日本の入管当局との間で情報共有されているものと考えておく必要があります。
  d 「おそれ」
    入国時期と国際競技会等の開催時期との近接性、入国目的、滞在予定期間、訪問先・滞在予定場所、過去の処分後の時間の経過、それらの処分の原因となった競技会等と日本で開催される国際競技会等との同一性、関連性などを総合的に判断して決定されるとされています。
      ↓
    入管実務上、過去に開催された国際会議の関連で他国で処分を受けたことがあれば、「おそれ」があるものとして、上陸拒否事由に該当するとされる可能性が高いと考えられます。したがって、これまでのサミットについての抗議活動を行って、逮捕され、刑を受けたり、退去強制の処分を受けた方の日本入国には、大きな困難があることになります。

4 外国人の上陸拒否の状況
(1) 上陸拒否の状況
   2007(平成19)年における外国人の上陸拒否数は10,424人
(2) 上陸拒否者の国籍別内訳
2007(平成19)年の上陸拒否者の国籍別内訳は、1.韓国3,565人、2.フィリピン1,031人、3.台湾928人、4.スリランカ812人、5.中国770人
(3) 上陸拒否の理由別内訳
a 入国目的に疑義のある事案
不法就労活動が目的であるにもかかわらず、観光、短期商用又は親族・知人訪問と偽って上陸申請を行うなど、入国後の活動に疑義が認められた事案であり、7,459人の多数に及んでいます。今回もサミットに抗議する活動で入国するものが、単に観光という目的しか告げなかった場合、入国目的に疑義があるとされ、上陸拒否される可能性があります。また、入国拒否を防止するためには、参加する予定の会議の案内や招請状などを所持していることも有効な場合があります。先日韓国から入国しようとして、いったん拒否された方が、翌日入国が許可された事例では、最初は集会主催者の発行したチラシなどを何も所持していなかったが、翌日に再来日した際にはこのような資料を持参したため、上陸が許可された可能性があります。
b 有効な査証等を所持していない事案
    371人
c 上陸拒否事由該当事案
1,085人
    上陸拒否事由があるとされて入国できなかったものは、入国できなかった者の約1割に過ぎません。入国拒否事由の有無だけでなく、入国目的を明確にすることの重要性がわかります。
d 偽変造旅券を行使するなどの不法入国事案
479人
(4) 港別内訳
2007(平成19)年の上陸拒否者の港別内訳は、1.成田空港5,810人、2.中部空港1,781人、3.関西空港1,673人、4.羽田空港260人、5.大阪港175人

サミット前後の入管実務の対応について(マニュアル)【その3】

2008-05-04 14:26:23 | 入管マニュアル
第3 外国人の上陸の申請までの対応について

Q3 会議その他の会合に出席するため、外国人を日本に呼び寄せるには、具体的にどのような手続が必要か。また、具体的にどのような点に注意して準備する必要があるか。



1 事前の準備
(1) 査証の申請の手続・必要書類の準備
a 査証の申請の手続の調査
  会議その他の会合のために呼び寄せようとする者が、査証免除措置が実施されている国・地域の外国人か、査証免除措置が実施されていない又は査証取得勧奨措置が実施されている国・地域の外国人かを確認することとなっています。
    ↓
査証免除措置が実施されていない又は査証取得勧奨措置が実施されている国・地域の外国人であれば、査証の取得の手続が必要になります。
  ↓
査証の申請の手続については、国籍別に異なっていることから、外務省のホームページを確認するとともに、詳細については、当該外国人の居住する地域を管轄する大使館・領事館に問い合せるようにして下さい。
    (http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/kokuseki/kokuseki.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/zaigai/index.html
b 必要書類の準備
    査証の取得が必要になる外国人においては、査証申請のために次の必要書類を準備することになるが、後記3の上陸の申請の準備として、同様の必要書類を複数の部数準備しておくのが望ましい。
      ↓
査証免除措置が実施されている国・地域の外国人についても、後記3の上陸の申請の準備として、同様の必要書類を複数の部数準備するのが望ましい
(外国人側が準備するもの)
1. 旅券
2. 査証申請書
3. 写真
4. 航空便又は船便の予約確認書/証明書
5. 在職証明書
6. 渡航費用支弁能力を証する資料

(招へい機関・個人側で準備するもの)
1. 招へい理由書
2. 会議その他会合関係の資料
3. 滞在予定表
4. 身元保証書
5. 招へい機関の団体概要説明書/個人招へいの場合は在職証明書
6. その他参考となるべき資料
  これらの資料を事前に本人送付し、持参してもらうことが大切です。
(2) 上陸拒否事由の調査
  会議その他の会合のために呼び寄せようとする者について、前記3の上陸拒否事由に該当する事由がないかどうかを確認することとなります。
    ↓
  当該外国人の居住する地域を管轄する大使館・領事館が上陸拒否事由を知っているとは限らず、上陸拒否事由に該当する事由がある場合は、査証を取得することができたとしても、上陸を拒否されることになってしまいます。

2 査証の申請
(1) 原則
   前記1(1)aで調査した査証の申請の手続に基づき、前記1(1)bで準備した必要書類を当該外国人の居住する地域を管轄する大使館・領事館に提出して査証の申請を行います。
     ↓
外務省本省・法務省本省との査証事前協議となった場合は、概ね2~6か月程度の相当の時間を要することになることから、大使館・領事館に進捗の状況を確認をした上、大使館・領事館限りで査証を発給するよう電話・ファックスで交渉します。
(2) 例外
  a 上陸拒否事由がある場合
前記1(2)のとおり、上陸拒否事由がある場合は、査証を取得することができたとしても、上陸を拒否されることになることから、あらかじめ査証事前協議を前提として大使館・領事館に査証の申請を行います。
      ↓
   上記の場合の上陸は、上陸特別許可が前提となることから、前記1(1)bの必要書類のみならず、「特別に上陸を許可すべき事情」を裏付ける資料を提出することが必要必要となります。
  b 査証事前協議の流れ
   大使館・領事館は、外務省領事局外国人課に対し、査証発給拒否の伺いを行い、同課は、法務省入国管理局入国在留課に対し、当該外国人の査証の発給についての意見を求める
      ↓
   法務省入国管理局入国在留課は、自ら調査を行うほか、地方入国管理局に対し、事案の調査を行うことがあり、同局は、身元保証人からの事情聴取、資料の提出の求めなどを行う
      ↓
地方入国管理局は、調査結果に意見を付して法務省入国管理局入国在留課に送付し、同課は、外務省に対し、意見を提示し、外務省は、原則として当該意見を尊重することになる

3 上陸の申請
(1) 上陸の申請の準備
a 外国人側の準備
査証の取得の要否にかかわらず、日本において行おうとする活動についての立証が必要になった場合の準備として、前記1(1)bの必要書類を国際郵便で送付し、当該外国人においてこれらを所持
  ↓
上陸の審査の結果、入国審査官に上陸の条件に適合していないと判断され、特別審理官に引き渡された場合のため、招へい側機関・個人、代理人の連絡先を事前に確認し、口頭審理のための委任状等の書類も所持しておくのが望ましい
b 招へい側機関・個人側の準備
   前記1(1)bの必要書類を準備するとともに、事前に航空機・船舶の到着時間を確認し、外国人の連絡先を確認した上、当該外国人が上陸の申請を行う空港・港において待機
(2) 上陸の申請の対応
a 外国人側の対応
日本の出入国港において、旅券・査証(ただし、前記第2、3(2)bのとおり、査証免除措置を実施している国・地域の旅券の所持者の場合は査証は不要)・出入国記録カードを入国審査官に提示
  ↓
    入国審査官から、日本において行おうとする活動についての立証を求められた場合は、前記1(1)bの必要書類を提示

    上陸の審査の結果、入国審査官に上陸の条件に適合していないと判断され、特別審理官に引き渡された場合は、直ちに招へい側機関・個人、代理人に連絡するとともに、これらの者から事情を聴取するよう求める
      ↓
    口頭審理のための委任状等を提示するとともに、代理人又は招へい側機関・個人の口頭審理への立会いを求める
b 招へい側機関・個人側の対応
   外国人が予定された時間になっても現れない場合は、当該外国人に連絡するとともに、当該出入国港を管轄する地方入国管理局に連絡
    (http://www.immi-moj.go.jp/soshiki/index.html
      ↓
    外国人が、入国審査官に上陸の条件に適合していないと判断され、特別審理官に引き渡されたことが判明した場合は、地方入国管理局に対し、代理人又は招へい側機関・個人の口頭審理への立会いを求める

サミット前後の入管実務の対応について(マニュアル)【その4】

2008-05-04 14:25:59 | 入管マニュアル
第4 外国人の上陸が拒否された以降の対応について

Q4 会議その他の会合に出席するために来日した外国人が上陸を拒否された場合、具体的にどのような対応が必要か。また、具体的にどのような点に注意する必要があるか。



1 特別審理官の口頭審理
(1) 代理人・親族又は知人の立会
   前記第2、1(3)のとおり、口頭審理においては、代理人の立会が認められており(なお、代理人の資格に制限はない)、また、特別審理官の許可を受けて、親族又は知人の一人を立ち会わせることができる

外国人が、入国審査官に上陸の条件に適合していないと判断され、特別審理官に引き渡されたことが判明した場合は、地方入国管理局に対し、口頭審理の立会いを求める
(2) 証拠の提出・証人尋問
   前記第2、1(3)のとおり、口頭審理においては、証拠の提出や証人尋問が可能とされている
     ↓
   外国人において、前記1(1)bの必要書類を提示していない場合、代理人又は招へい側機関・個人から必要書類を提示する
     ↓
   当該外国人について、「特別に上陸を許可すべき事情」があれば、これを裏付ける参考となるべき資料も提出する
     ↓
   必要に応じ、証人尋問を実施するよう求める
(3) 審理の記録
  a 調書の作成
    特別審理官は、通訳人を介し、事情聴取を行った上、調書を作成し、読み聞かせを行った上、外国人、代理人又は立会人の署名・押印を求めるものとされている
      ↓
    通訳人が適正かつ公平な通訳を行っているかどうかを確認するとともに、外国人の供述が正確に記載されているかどうかを確認する
b 書証の認否
    実務上、書証の認否を記録として作成することになっており、一括して認否させることも多いが、個別に確認するように注意する

2 法務大臣への異議の申出、法務大臣の裁決及び退去命令
(1) 法務大臣への異議の申出
特別審理官が上陸の条件に適合していないと認定した場合、認定に服した上で出国するか、又は、法務大臣への異議の申出を行うかを判断することになる
  ↓
認定の直後に判断するか、又は、空港であれば、ターミナルビル内の上陸防止施設又はその付近のホテルなどにとどまり、面会を行った上で判断することになる
(2) 法務大臣の裁決
   法務大臣への異議の申出を行った場合、上陸の条件に適合していることを裏付ける参考となるべき資料を入国管理局に追加して提出する
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「特別に上陸を許可すべき事情」がある場合、これを裏付ける参考となるべき資料を入国管理局に追加して提出する
(3) 退去命令
 法務大臣が異議の申出に理由がないと裁決した場合、退去命令書により退去命令が行われ、その中で出国日・出国便が指定される(規則別記第11号様式)
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遅滞なく日本から退去しない場合は、退去強制手続が開始され(法24条5号の2)、入国管理局収容場に収容される
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   退去命令に服した上で出国するか、又は、退去強制手続内において争うかについて、ターミナルビル内の上陸防止施設又はその付近のホテルにおいて、面会を行った上で判断することになる

3 仮上陸許可
上陸の続中において特に必要があると認めるときは、その手続が完了するときまでの間、該外国人に対し仮上陸を認めるよう求めることも考えられる
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主任審査官の職権により、人道的配慮を要する事情その他特別の事情に鑑み、仮の措置として外国人の上陸を許可することができるとされているが、入管実務上、仮上陸許可が認められた事例は少ない

(参考文献)

・ 出入国管理法令研究会編「注解・判例 出入国管理・外国人登録実務六法」(日本加除出版)
・ 坂中秀徳=斎藤利男「出入国管理及び難民認定法逐条解説(改訂第三版)(日本加除出版)
・ 入管実務研究会「入管実務マニュアル」(改訂版)(現代人文社)
・ 東京弁護士会外国人の権利に関する委員会編「実務家のための入管法入門」(現代人文社)
・ 日本弁護士連合会「入国・在留手続マニュアル」