思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

基本的に横文字嫌い

2006-06-20 22:00:56 | 出版・言葉・校正
2006年1月5日の本ブログ開設当初から文体というか文章表現で特に気をつけていることとして、できるだけ横文字は記さないようにしよう、というのがある。当初の自己紹介でも少し触れたが、最近の若者や各種媒体への出演者による外国かぶれっぽくてこれ見よがしな横文字を多用していることが生意気だ、と思っている。中田敦彦(オリエンタルラジオ。あっちゃん)が「しゃらくせぇーーー!!」とよく叫んでいるように、僕も(横文字表現の意味をきちんと理解していないまま使っているであろう)そういう表現がしゃくに障る。大嫌い。

また、それとともに、せっかく日本人に生まれてきてこれまでに日本語の読み書きをしているのだから、やはり現代仮名遣いの漢字かな混じり文、つまり母国語である日本語をもっと尊重しながら使っていこうよ、とも思っている。よって、僕も本ブログではできるだけひらがなと漢字による表記にこだわっていきたい。
インターネットに接続できれば世界各国の人々が見られるウェブサイトやブログであっても、それよりもまずは身近な同じ日本国内の方々に覗いていただけるように意識している。

試しに、例えば「アウトドア」「ゲット」「プロジェクト」など、僕が横文字表現が苦手というか嫌いだということを示すため、最近の代表的な事例を以下に挙げてみる。

◆僕個人的に嫌いな、というか生意気だと思っている横文字表現

アンチ・エイジング(老化防止)
インスパイア(奮い立たせる、感動させる)
エグゼクティブ(管理職、重役)
オピニオン(意見、持論)
カリスマ(超人的な資質・能力、大衆を引き付ける力)
キャスティング・ボート(決定権)
コンセプト(概念)
サブカルチャー(異種文化、副次的文化)
シチュエーション(状況、立場)
スキル(技量、技能)
ステータス(地位、状態)
チョイス(選択)
ディベロッパー(開発業者)
トレンド(流行)
ニーズ(要求、需要)
ナチュラル(自然の、生まれつきの)
ネーム・バリュー(知名度がある、有名さ)
パラドックス(逆説)
プリミティブ(原始的な、素朴な)
ペンディング(保留)
ポテンシャル(可能性)
マーチャンダイジング(商品化計画)
メソッド(方法、順序)
モチベーション(動機付け)
ラグジュアリー(贅沢な、高価な)
リスペクト(尊敬)
リーズナブル(手頃な)
ルックス(容姿)
レクチャー(講義、講演)
ロジカル(論理)

以上の言葉なんかを聞くと、日本語で言ったほうが伝わりやすいにわざわざ横文字にして小難しくして、オレはこんなことも知っているんだぜ! とこれ見よがしに強調して上から目線で気取っている感じでえらく生意気だよな、と思ってしまう。それに、逆にこれらの言葉をあえて使ったために文章の意味が理解しにくくなることもある。
また、これらの言葉を挙げたうえでよく考えてみると、行政や一般企業のなかで使われている用語が多く、現在は官公庁にも民間企業にも職員・正社員として終身雇用的に勤めていない僕にとっては無意識のうちに、それらを多用している職員や会社員にちょっとした反発心というか違和感があるということの表れなのかもしれない。
僕は以上のような言葉を見聞きすると少々イラッとするのだが、ほかの方はどうなんだろう?

ただ、横文字表現でも、日本語だけでは感じにくいおおまかな概念を納得できたり、日本語の複雑な(複数の)意味合いをすべて包み込んでわかりやすく簡潔に表現できていたりして、すでに世間では日本語同然に浸透している言葉もある。例えば、「キャラクター」「ストレス」「メジャー」など。その事例も以下に挙げてみる。

◆すでに世間で浸透していて、もう目くじらを立てるほどではないかな、という横文字表現

アマチュア(素人)
イメージ(印象)
オリジナル(独創的な、原本)
カーブ(曲線)
クレジット(信用、信用借款)
コンビニエンス(便利な)
サービス(優遇、奉仕)
システム(組織、制度)
スタイル(方式)
セルフ(自己、自分)
ダビング(再録する、複製する)
チーム(一団)
ツーリング(観光旅行)
ディスカウント(額面減価)
ドア(扉)
ナレーション(語り)
ニュース(報道、新しい情報)
ヒアリング(聞き取り)
フリー(自由な)
ベルト(帯、地帯)
ボランティア(志願者、有志者)
マニアック(狂人、熱中的愛好者)
ミネラル(鉄・カルシウムなどの鉱物性栄養素)
メンテナンス(維持、保守)
モデル(型、手本)
ユーザー(使用者、消費者)
ライフワーク(一生をかけた仕事・事業)
リサイクル(再循環)
レンタル(賃貸の、賃借の)
ローン(貸付け)

まあこのへんの言葉は僕の目と耳でもすっと受け入れることができる。

また、似たような意味の言葉でもかな・漢字よりもカタカナの横文字のほうが柔らかく感じる印象を受けることもあり、それはそれで良いことである。
その具体例としてここでは僕にも関係のある、登山を好む人たちが集まる団体でよくある「山岳部」と「ワンダーフォーゲル部(以下、ワンゲル)」を挙げて比較してみる。前者(日本語)と後者(ドイツ語)のふたつを見比べて、一般的にはどちらの団体のほうが語感が柔らかくて、とっつきやすくて、なんとなく洒落ている、という印象を受けるかを考えると、やはり後者のほうだと思う。

ちなみに話は少々脱線するが、実際には一般的な印象のとおり、どちらかと言うとワンゲルよりは山岳部のほうが厳しい地形・気象条件のなかでより激しい、より身の危険を感じざるを得ない大自然のなかに身を置いたうえで困難なルートを辿って山を登る傾向はたしかに強いが、学校・団体の気風、そこに属する面子や先輩(OB・OG)の経験や力量、部員一人一人のやる気の度合いによっては、山岳部よりはやや軟派集団に見られるワンゲルでも山岳部同様、いやそれ以上にバリバリ活動している人もいたりすることもある。
野球やサッカーや陸上などの一般的な運動部と同様に、個性・能力が突出した人がいる年代はその団体の器の大小や過去の歴史を問わず、活動が特に活発になる時期ってどこの団体でもあると思うのだが(プロ野球の「松坂世代」みたいなやつ)、僕が大学のワンゲルに所属していたのはちょうどそんな感じの血気盛ん? で勢いのある時期だった。

個人単位でだが、ワンゲルに所属しての日本国内の山への登山のみならず、それに加えて社会人山岳会にも所属して(つまり、ふたつの団体の掛け持ち)、登山の舞台がアメリカや中国やネパールなどの外国の高峰や難ルートにまで飛躍する上昇志向の人が結構いたのだ。まあこれは、最近活躍しているスポーツ選手を見ればわかるように、この頃の若者はあらゆる手段によって世界各地の情報に数多く触れられるようになって精神的に国際化が進み、経済的にもパックツアーや格安航空券の競争激化によって、ひと昔前よりは数段、外国に飛び出しやすくなったということもあるんだけど。

諸外国から輸入? された横文字が各所で氾濫している昨今だが、せっかく日本人として日本に生きているんだったらもっと母国語である日本語で表現して、後世にもきちんと受け継いでいこうよ、と僕は最近よく考える。冒頭に事例として挙げた横文字も、日本語で表せる場合は日本語にしようよ、とも思う。「アウトドア」であれば「野外、野外の」、「ゲット」であれば「得る、獲得する」、「プロジェクト」は「計画」でいいじゃん、何のために横文字でカッコつけているのだろうか? あなたは日本人でしょ? とよく思う。

日本の野外の自然を遊び倒して熟知したカヌーイストの野田知佑は自著で「アウトドア」という言葉をよく使うが、その道の熟達者が使うぶんにはまだよい(それに彼は早稲田大学の英文科を卒業していて、しかもそれ以前に高校生の頃から英語の本を原書のまま読んでいたくらいに英語は堪能だし)。しかし、「野外に出かける、遊ぶ」というその言葉の世界観を始めから積極的に知ろうとしないというかマジメにかかわろうとしない、通りすがりの青二才が何の恥じらいもなくそれを堂々と使うのはカッコワルイ。登山やキャンプなどの野外での遊びを年に数回、大型連休や年末年始のようなまとまった休日にしかやらないのに趣味だとか生きがいだとか偉そうに吹聴しながら、野外のキャンプ場でテントを張って寝袋を使って泊まるのにもかかわらず音響設備やら過剰な照明・電化製品やらを持ち込んで普段の屋内生活と同様の便利さを求めたり、河原でバーベキューをしたあとの食材の残りや紙・缶などのゴミをまったく片付けずに立ち去るような、いわゆる“なんちゃってアウトドアズマン”には「アウトドア」という言葉を軽々しく使ってほしくないよな、とそれらに(ときには生死の境に立ったりもしながら)真剣に取り組んでいる僕としてはつい訝しく思ってしまう。

とはいえ、最近はパソコンや携帯電話をいじくり回して使い倒して、さらには外国の文化にも容易に触れられるようになってきてそれらの影響によって形成されつつある新しい文字表現を目の当たりにして、『古事記』や『万葉集』や『枕草子』の時代から連綿と続いている活字文化の変遷に想いを馳せるのはそこそこ楽しかったりするので、今後も世間での横文字の活用のされ方をきっちり見守っていきたい。

それから、外国の地名・人名や各種スポーツの専門用語や料理(カステラ・カツレツ・コロッケなど)、それに日々の時事問題などでどうしても横文字のままのほうがわかりやすいものや日本語での言い換えが難しい言葉については、仕方ないが横文字の言葉を使用することはある。
例えば、僕が得意な登山関連の言葉であれば、アイゼン(クランポン)、カラビナ、ザイル(ロープ)、ザック(リュックサック、バックパック)、シュラフ(スリーピングバッグ)、テント、ハイキング(トレッキング、トランピング)、ハーケン(ピトン)、ピッケル(アイスアックス)、ヘッドランプまたはヘッドライトなど。日本の登山で使われる横文字表現の用語は基本的にドイツ語が多いのだが、近年は英語の言葉も徐々に使われるようになり、さらにはドイツ語・英語よりは使用頻度は低いがフランス語やイタリア語の言葉が使われることもあり(本来の音楽会の「独奏」という意味のほかに、単独登山やそれを行なう人を指す「ソロ」など)、現在はそれらが混在していて非常にややこしくなってきている。でもまあ僕の場合は、自分が使い慣れている言葉を使おうとは思っている。

また、自転車関係の言葉であれば、ケイデンス、サドル、スポーク、チェーン、ハンドル、ピスト、ペダル、マウンテンバイク、リム、ロードレーサーなど。自転車も元々は明治時代頃に欧州から横文字のまま入ってきたものだから、まあ元の表現を尊重するためには仕方ないかな、言葉の言い換えも難しいし、と思う。
そして、最近急速に浸透してきているパソコン(PC)関係の言葉であれば、アプリケーション、インストール、サポート、セットアップ、ツール、デジタル、ドキュメント、バックアップ、プロパティ、メモリ……など多種多様である。
これも同様に大半は日本製の言葉ではないから(たまに「ホームページ」のような和製英語もあるが)、情報化社会? にどっぷり浸かっていく人の割合が年々高まっていくこれからの時代は徐々に慣れていくしかない。ここ2、3年、パソコンやインターネット関連の横文字表現のみを集めた事典もいくつか出版されているし、この分野の言葉は今後もっと使われて浸透していくのだろうな。東京都港区六本木の六本木ヒルズや森タワーとその周辺に拠点というか本社を構えている情報通信技術(IT)関連企業ではやはりこういう横文字が氾濫しているのかな?

また、本来は日本語ではあるが、その言葉を強調するためにあえてカナ表記にすることもたまにやる。オレ(俺)、クルマ(自動車、車)、セリフ(台詞)、ダメ(駄目)、マンガ(漫画)、モノ(物)など。旅する作家・椎名誠が雑誌連載や自著で、シアワセ(幸せ)、タタカイ(戦い・闘い)、ドレイ(奴隷)、モノカキ(物書き)、ヨロコビ(喜び・悦び・歓び)などの日本語をカタカナ表記にして頻繁に使っているが、それにかなり影響を受けている。

先の「ワンゲル」のように、場合によっては漢字表記よりもカタカナ表記のほうが柔らかいというか温かみのある表現になったり、さらには人間の心情が良くも悪くもより露になって読者にとっての著者がより身近な存在になりそうだ、というのはあると思う。まあこのくらいの比較的意味がわかりやすい日本語であれば、わざとカタカナで書いても意味はきちんと通じるだろう。
これらのような例外もあるが、本ブログでは基本的には横文字は使わないように心がけている。

「アウトドア」と表現するのは野田知佑や椎名誠や加藤則芳のような、日本国内のみならずアメリカや北極圏など諸外国・地域の自然とそこでの野遊びや生活事情も熟知し尽くした人のみ、「ゲット」と言うのはピカチュウなどのポケットモンスターを自在に操るサトシのみ、「プロジェクト」という言葉を冠するのはNHKで良くも悪くも反響が大きかった、田口トモロヲの過去形口調の語りが印象的なあの番組のみで充分、と僕は思っている。

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