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人生100年と言われる時代になって久しいのに、姉の82歳の命の灯は日々細くなり、素人目にみても、危うい時が近づいて来ているように思われる。
若い時から親の庇護のもとに、何の苦労も知らず、社会に出て働いた事もない
姉であった。
ノホホンと習い事などして、婚期が来ると親の勧めるエリートと結婚した。
その間の人生には、たった一人の息子を癌で亡くすなど、悲しい経験もした。
旦那様は穏やかな神様のような優しい方だったので、女としての結婚生活に
夫への不満はなかっただろう。
経済的にも豊であった。
その姉と今、私は必死に向き合っている。
自宅からややもすると、片道車で3時間かかる時もあるから、
車を運転してくれる夫も大変だろうに、愚痴も言わずに付き合い、
姉のために動いて助けてくれる。
有難いことである。
夫と私も結婚して半世紀をとおに過ぎた。
共に、白髪のシジ・ババになった。
それこそ、ドラマよりドラマチックな結婚生活だったような気がする。
苦労もした。
恨みもした。
憎みもした。
しかし、良いことも、悪いことも、50年の歴史の積み重ねは、重たい。
今は、この人以外に、私を助けてくれる人はいないと気付く。
「遅かりし由良之助か・・・」
でも、遅すぎることはない。
死ぬまで気づかないこともある。
明日も早朝5時には姉のところへ向かうので、今日はここまで・・
アラームは午前4時に鳴る!
無伴奏 高橋真梨子