酸いも甘いも・・・


酸いも甘いも、もっと経験してから、鈍行各駅停車の汽車でゆっくり
行きましょうか・・・

絶対に許してはなりません!

2020-07-08 14:09:13 | 日記
2年前の事になるが
ある小冊子に掲載された原稿のコピーが出てきた。
それは母への詫び状だった。

    「 許してはなりません!」

母が天国に旅立って、幾年が過ぎたのだろう。
後、三年で私は、母の逝った八十歳になる。

私が忙しく仕事をしていた五十代の頃、
母に「アルツハイマー」が発症した。

まだ、「マダラボケ」程度の時、見舞う私に母は哀願するように言った。
「ヤスコちゃん!  お父さんと行った江ノ島・鎌倉へ死ぬ前に行きたいの!
連れて行って頂戴!」と・・・

その当時、体が二つも三つも欲しいほど、忙しい仕事を自営でしていた。
従業員を二十名以上、抱えていたので、仕事を休んで母を旅に連れて行く
時間的な余裕はなかった。
それは厳しい現実であった。

「そうね!
そのうちにね!」
そんな言葉一つで聞き流し、母を旅に連れて行くことはなかった。

母はそんな不実な娘と知ってか、知らずか、その後病院で一人寂しく
逝ってしまった。

まだ一欠片の、人生で一番幸せだった父との記憶が残っていたものを・・・
仕事にかまけて、
新婚旅行の思い出の地を巡ることさえしてやらなかった。

「お母さん!  こんな不実な娘を絶対に許してはなりません!」




倍賞千恵子 かあさんの歌