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飼い主が亡くなり、電気や水道が止まった真夏の部屋で飼い主を待ち続けた犬

2023-06-03 06:11:51 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

電気や水道が止まった真夏の部屋
 高齢犬は飼い主の帰りを待ち続けた
 「じゃあ殺処分してもらいます」引き取りを求められた親族の非情な言葉

2023年5月18日(木)


ある日突然いなくなった飼い主を待ち続けたワンコ、ごうくん

2022年初夏、あるワンコと一緒に過ごしていた高齢の飼い主が寝たきりとなり、施設に入所することになりました。
暮らしていた部屋は賃貸物件。
隣県で暮らす息子は、家の中の荷物を全て引き払い、電気や水道なども止めて、部屋の契約も解約しました。
しかし、非情にもワンコを部屋に置き去りにしたのです。

◆電気・水道のない暗い部屋で飼い主を待ち続けていた
置き去りにされたのは15歳の高齢犬、名前を「ごうくん」といいます。
暑さが厳しくなる中、電気も水道もない真っ暗の部屋の中で、ごうくんは飼い主が帰ってくることを、ご飯も食べずに我慢して待ちました。


電気も水道も止められた真っ暗の部屋の中で飼い主の帰りを待ち続けていました

飼い主の息子はごうくんを置き去りにして、どうするつもりだったのでしょうか。
飼い主はその部屋には帰ってこないし、ごうくんがひとりぼっちで生きていけないことは、もちろん想像できることでしょう。
置き去りにされたごうくんの境遇を知った、近所の心ある人がいました。
この人は自宅からその部屋まで電気を引っ張り、扇風機と小さな電灯をごうくんに提供してくれてました。
追い打ちをかけるような事態が待っていました。

◆良心に反して突きつけられた「お金の話」
この賃貸物件の家主が、この人に家賃料を請求するようになったのです。
もちろん家主の言い分もあるでしょう。
しかし、老犬のことを考えると、「何とか柔軟に対応してもらえないか」とも感じます。
ごうくんを助けようとした人は「お金」という問題を抱えることになってしまいました。
飼い主の息子をなんとか探し出し、「ごうくんを連れ出しお世話をしてあげてほしい」と説得しました。
しかし息子の返答は思いもよらないものでした。

◆「じゃあ保健所で殺処分してもらいます」
「そうですか。じゃあ保健所で殺処分してもらいます」
ごうくんを支えていた人はまたもがく然としました。
ある日突然いなくなった飼い主を、真っ暗な部屋の中で待ち続けるごうくん。
そして「殺処分していもらいます」と言い放つ飼い主の息子。
ごうくんを支えていた人は「殺処分するなんて絶対にさせない」と里親さんを募集したり、保護団体に問い合わせるなどをし、その命を救おうと奔走しました。
里親希望者が見つかり、胸をなで下ろしましたが、ごうくんが新しい生活になじめませんでした。
トライアルをしましたが、ごうくんは元の飼い主の部屋に帰りたくて大暴れしてしまいます。
残念ながらごうくんは正式な家族として迎えてもらうことはできず、そしてまたあの真っ暗の部屋でひとりぼっちで飼い主を待ち続けることになってしまいました。


人間の非情さが、次々と降りかかったごうくん

◆元飼い主はごうくんをとてもかわいがっていたようだった
そんな中、高齢夫婦が連絡したのが一般社団法人SORA小さな命を救う会(以下、SORA)という保護団体でした。
日頃から愛護センターや保健所はもちろん、繁殖業者や多頭飼育崩壊現場からワンコを引き出し、新しい里親さんへと譲渡を行う団体です。
ごうくんの話を聞いたSORAのスタッフは、すぐにその部屋へ向かいました。
ごうくんはやはり真っ暗の部屋の中でとても寂しそうに、こちらを見つめていました。
ごうくんの首には、刻印式の電話番号入りの首輪がありました。
また、玄関には脱走防止ゲートも設置されていました。
きっとごうくんは、施設への入所した飼い主さんにとても大切にされていたことがうかがえました。
それだけにごうくんも飼い主さんを信頼し、部屋の中で耐え続けていたのかもしれません。
とはいえ、このままこの部屋にいられるわけではありません。
スタッフはごうくんを保護するために抱き抱えようとしました。
すると、ごうくんは「叩かれるのではないか」とブルブル震えます。
「怖くないよ。大丈夫だからね」と声をかけながらごうくんを抱きかかえ、無事保護することができました。

◆「ごうくんは一度も噛みついたことがない」
SORAのシェルターで検疫検査などを行うため、2週間ほどを過ごしたごうくんは、同団体に登録する優しい預かりスタッフの元で新しい生活を始めました。
当初こそ震えていたごうくんも少しずつ心を開き始め、穏やかな表情を浮かべるようになりました。
ごうくんを支えてくれた心ある人からは「ごうくんは一度も噛みついたことがない」「本当に穏やかなワンコだ」と聞いていました。
この言葉通り、本来のごうくんはいたって穏やかで優しいワンコであることが、長い時間を過ごすうちにスタッフも感じることができました。
後に「ごうくんを迎え入れたい」という里親希望者さんが現れ、関東からSORAがある名古屋まで会いに来てくれました。
とても優しそうな里親希望者さんだったため一度トライアルを実施した後、ごうくんを正式に迎え入れてもらうことになりました。
大変な思いを経験したごうくんでしたが、心ある人たち、優しい人たちの想いがつながり、現在、新しい里親さんのもとで幸せな第2の犬生をおくっています。


心ある高齢夫婦が言うように、ごうくんは穏やかで優しいワンコでした

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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