世相の潮目  潮 観人

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米国は貿易戦争の緒戦で失敗を犯した

2018年07月14日 | 現代
制裁関税で貿易摩擦を貿易戦争にまで拡大したトランプ政権の狙いは何処にあるのでしょうか? 政策目的と政策手段は適合しているのでしょうか?

トランプ政権は、アメリカ・ファースト政策の名のもとで、二つの違う種類の追加関税を賦課したので、貿易戦争は不必要な混乱を招いています。

最初に発動した鉄鋼・アルミ製品への追加関税は安全保障を理由にしたもので、根拠法律も1962年通商拡大法232条です。対象国は、鉄鋼・アルミを米国に輸出する殆どの国です。

続いて発動した中国からの輸入品にかける制裁関税は、中国の不公正な貿易慣行に対するもので、根拠法律は対外制裁に使われる1974年通商法第301条(通称スーパー301条)です。対象国は、当然中国だけです。

種類の違う二つの追加関税措置を、ほぼ同時期に発動したため、米国の狙いが分かり難くなり、本来の政策目的が全世界から誤解されてしまいます。中国は、それを逆手にとって「米国は保護貿易国であり、中国は自由貿易国である」と詭弁を弄し、逆襲される羽目に陥っています。

そもそも鉄鋼・アルミ製品が過剰に米国市場に流れ込むだけで、何故安全保障上の危険になるのか不明です。しかも、友好国の日本、欧米からの輸入が米国の安全保障を害すると云われると、全く理解に苦しみます。

もし米国の鉄鋼・アルミ産業が損害を受けるだけなら、緊急輸入制限(1974年通商法201条による)を適用するか、 世界貿易機関(WTO)で認められているダンピング関税で防止すれば解決することです。

その場合、ダンピング関税であれば、中国のように政府主導で大規模投資した結果、過剰に生産された鉄鋼・アルミを低価格で輸出するのですから、それを阻止するのは正当で合理的な解決です。

トランプ政権が、真っ先に鉄鋼・アルミ製品に制裁関税を課したのは、今回の貿易戦争の緒戦における米国の失敗でした。今からでも遅くはありません。速やかに鉄鋼・アルミ製品への制裁関税を撤回すべきです。そして、中国の不公正貿易取引に対する、通商法に第301条(通称スーパー301条)による制裁関税に貿易戦争を限定するのです。

さもなくば、前回このブログで指摘したように、トランプ大統領は戦後の自由貿易を支えてきたブレトンウッズ体制の柱の一つ、世界貿易機関(WTO)を壊した愚かな大統領と云われることになります。

しかし、通商法に第301条(通称スーパー301条)による貿易制限は、米国政府の一方的措置であり、世界貿易機関(WTO)で認められたものではありませんが、米国の措置はWTOのルールに照らして正統性があるか否かはWTOの場で議論する価値はあります。

と言いますのは、中国がWTOに加盟(2001年)してから既に20年弱経過したにも拘わらず、中国の経済体制は、共産党指導で運営管理されていて、資本主義諸国の経済体制と異質のままです。これで果たして中国はWTOのメンバーに留まる資格があるか疑問だからです。
(以上)
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