世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

政治家は官僚を如何に使うかが問われている

2018年04月09日 | 政治
財務省に続いて防衛省、その前は厚生労働省と官僚の資料管理の悪さは目に余ります。この際、官庁資料の管理体制を抜本的に見直す必要があります。政治家は官僚機構を使って政治を行うのですから、政策判断の基礎となる資料が存在しなかったり、誤っていては、まともな政治は行えません。

しかし、今回の各省の資料管理の改善は、その気になって取り組めば、解決するのにさして困難はありません。しかし、資料管理体制が整備されても、政治家と官僚組織の関係には容易に改善し難しい問題があります。資料管理が適切に行われても、政治家に必要な情報が官僚から届かないことが起こり得るからです。。

それは資料管理の問題ではなく、政治家と官僚の信頼関係にあります。民主主義国では必ずしも立派な政治家が選ばれる訳でも無く、立派な政権が樹立される訳でもありません。それでも、民主主義国家では当然のことですが、選挙で選ばれた政治家は、官僚に命じて政治を行います。

しかし、国家統治の実務経験のある官僚から見たら政治家の統治行為が国益を害する虞があると判断されるとき、官僚は政治家の命令に従うのを躊躇することがあります。それに至るまでの間に官僚から政治家への説明や説得もありますが、それが通じないと思われたとき、官僚は全てを報告することを差し控えるかもしれません。

これは官僚の越権行為として処罰されるべきものですが、国益を守る使命感から敢えてそうする官僚も過去に居ましたし、今後も出るでしょう。今回の場合ではないかも知れませんが、口が軽い、利権に走りやすい、感情的になり易い、統治能力に疑問があると言う政治家が大臣に任命されたことが過去にありましたが、そのような場合には起こり得ます。

更に、政治家の個人的資質に欠陥がなくても、同じ事が生じることがあります。その原因は政治家と官僚の信頼関係に依存するのです。政治家は官僚に命令する強い立場ですから、官僚の意見を聞かずに一方的に命令を実行させることが出来ますが、官僚と相談し、意見を聞きいた上で実行することも出来ます。組織を上手に使うのは後者の場合で、上司と部下に信頼関係が生まれるからです。

政治家と官僚の相互不信が極端に現れた時代がありました。それは民主党政権の時代(2009年から2012年)に現実に起きています。官僚を信用しない政治家が自ら行政事務を執行し、行政知識の乏しさから失敗をしていました。

政治家は官僚を如何に使うかが大事なのですが、それには両者の信頼関係が先ず必要なのです。それは、官僚は政治家の意図を理解して、その実現のための方策を提案し、政治家は官僚の能力を信用して効果的に使うことによって、両者の信頼関係が高まるのです。そこで潤滑油になるのが嘗ては「忖度」と「惻隠の情」でした。しかし、今では、部下への「惻隠の情」は薄くなり、上司への「忖度」は罪深いことになりました。
(以上)
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