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適切に怖がりつつ安心して食べるために~自分で計算しよう!

2011-03-24 03:41:39 | Weblog

 予想した通り、暫定基準値(暫定規制値)を超える農作物が次々に見つかっている。国が「今、出回っているものは安全です」と言ったそばから出荷規制、さらに摂取の制限まで求めるという混乱した事態である。水道水でも、高い数値が検出された。もはや、一般市民は何を信頼してよいか分からなくなってしまっている。だから、もぐらたたき規制は最悪なのだ。

 適切に怖がりつつ安心して食べるために、基本的な事項をていねいに説明したい。

…………………………………………………………………………………………

適切に怖がりつつ安心して食べるために~自分で計算しよう!

 まず、農作物の放射能汚染とはどういうことか? ということをきちんと知っておきましょう。

 農産物が放射線を浴びて変なことになってしまっている、とイメージしている人もいるようですが、それは違います。農作物に付着したり、中に吸収されたりしている放射性物質を体の中に取り込むことが問題なのです。

 福島第一原発から、放射線を発している放射性物質が大気中に出てしまいました。それが漂い、風にも乗って、周辺の農作物の表面に落ち、付着しています。あるいは、土壌に落ち、水にも溶け、農作物の根から吸収されて農作物の中に入ります。

 現在(3月24日)は、放射性物質が大気中に出てからまだ短く、後者の根から吸収されている分はごくわずか、と考えられ、前者の農作物の表面に付く分を考えればよいでしょう。

 この表面に付いた放射性物質を食べるとどうなるか? 体の中で放射線を発することになります。これが「内部被ばく」です。体に放射性物質が付いた場合、払い落としたり水で流し落としたりすれば、それで放射線の影響はなくなります。ところが、体の中に入った放射性物質は、多くは短期間で代謝されて尿などに混じり排出されますが、一定量は体の中に留まって放射線を発します。したがって、放射性物質を体の中に取り込む内部被ばくはなるべく避けた方がよいのです。

 しかし、放射性物質は自然界にも存在し、普通の農作物、水産物など食品すべてにごく微量ながら含まれており、私たちは常に食べています。放射性物質の体の中への取り込みを完全にゼロにして生き物が生存することは不可能です。私たちは常に、放射性物質と共存しているのです。

 しかも、放射線も微量であれば、私たち人類はその影響をはねのけて健康にまったく問題なく生きられることが分かっています。生き物の細胞は、放射線を受けた時に修復し回復する力を持っています。なので、放射線を浴びても少しの量であれば細胞が頑張ってくれるのです。

 繰り返しますが、自然界にも放射性物質はあり、被ばくする放射線量をゼロにすることはできません。したがって、細胞が頑張ってくれる程度の量に、浴びる放射線を抑えることがとても大事です。放射性物質がほんの少しだけ付いた農作物を食べても、発する放射線量はわずかなので大丈夫です。放射性物質が多く付いた農作物も、1回食べる程度なら人の細胞はまだまだ戦って回復してくれるでしょう。しかし毎日たくさん食べると、体の中に放射性物質がたまり、細胞の戦いは追いつかなくなる恐れがあります。だから、放射性物質が多く付いた農作物は、食べ続けてはダメ、です。

 

 では、どの程度の農作物であれば食べても大丈夫なのか?

 ここで、少し計算をしてもらわなければなりません。

 今、国や自治体の発表、マスメディアの報道では、Bq/kgという単位が使われています。「福島県産のホウレンソウからも4万ベクレル(1kgあたり)を検出した」という具合です。

 このベクレル(Bq)という単位は、おおまかに説明すると放射線を出す能力、つまり放射能を表しています。Bqの数値が大きくなると、放射線を多く出している、ということを意味します。

 しかし、Bqの数値だけでは人体への影響の程度はよく分かりません。放射性物質といっても、ヨウ素やセシウムなどいくつもの種類があり、またそれが発している放射線もα線、β線、中性子線などいろいろと種類があり、それぞれに人体への影響の程度は異ります。そこで、それらをまとめて評価するための指標としてあるのがシーベルト(Sv)です。シーベルトに換算してまとめると、私たちがトータルで放射性物質からどの程度の影響を受けるのか、ということを検討することができます。

 

 Bqの値をSvにするには「実効線量係数」という数字をかけて算出する必要があります。この数字をかけると、放射性物質を体の中に取り入れて50年間にあびる放射線量が算出されます。

 

 成人の場合、次のようなかけ算をしてください。なお、1シーベルト(Sv)=1000ミリシーベルト(mSv)=100万マイクロシーベルト(μSv)です。

 

【放射性ヨウ素131の場合】

 Bq/kg × 0.022 = μSv

 

例えば、放射性ヨウ素が50,000Bq/kgのホウレンソウを1日に200g食べた時の計算をしてみます。

1日分は

50,000×0.022×【200g/1000g】=220μSv=0.22mSv

10日続ければ、2.2mSvの被ばくです。

 

【放射性セシウム134の場合】

 Bq/kg × 0.019 = μSv

例えば、放射性セシウム134が10,000Bq/kg含まれているクキタチナを1日に100g食べた時の計算をしてみます。

10,000×0.019×【100g/1000g】=19μSv=0.019mSv

1週間(7日間)続けて100gずつ食べれば、0.133mSvの被ばくです。

 

【放射性セシウム137の場合】

 Bq/kg × 0.013 = μSV

例えば、放射性セシウム137が5,000Bq/kg含まれているブロッコリーを1日に200g食べた時の計算をしてみます。

5,000×0.013×【200/1000g】=13μSv=0.013mSv

3日間続けて200gずつ食べれば、0.039mSvの被ばくです。

 

 こうして算出できた放射線量(mSv)で、体にどのような影響が出るのかを考えてみましょう。

 まず、1年間に何シーベルトを被ばくすると、どんな影響が体に出てくるのか、これまでの調査研究結果を見てください。

 

4000mSv以上 60日以内に半数の人が死亡

3000mSv以上 脱毛

1000mSv以上 吐き気 がん死亡が生涯で5%増加

500mSv以上 白血球が一時減少 がん死亡が生涯で2.5%増加

250mSv以上 緊急作業従事者の被ばく限度

100mSv 以上 発がんリスクがごくわずか(0.5%程度)増加

10mSv/年 ブラジル・ガラバリ海岸の一部で自然に受ける放射線

2.4mSv/年 一人当たりが自然に受ける放射線の世界平均

 

6.9mSv/1回 CTスキャンを1回受けた時の放射線量

0.6mSv/1回 胃のX線集団検診を1回受けた時の放射線量

 

 近藤宗平さんという有名な科学者は、「年間に50mSvの被ばくは、リスクゼロ。人体は少しの放射線にはびくともしない」と言っています。国は、より安全側に立った判断として、「一般市民が、自然界からの放射線や医療行為(X線撮影やCTスキャンなど)を除いて、受けてもよい限度量」として「1mSv/年」という数字を決めています。

 

 1mSvという数字と比較すると、放射性ヨウ素50,000Bq/kgのホウレンソウを200g食べた時の0.22mSvという数字は約5分の1。したがって、1回食べたからどうかなる、ということはありませんが、結構高いかな、という印象です。これを食べ続けると1mSvは簡単に突破します。でも、50mSvにはほど遠いです。

 

 国は、こうしたことを考慮して、食品に規制値を設けました(急いでいたので、暫定規制値ですが、食品安全委員会が今、大急ぎで評価を行っています)。

 放射性ヨウ素の暫定規制値は、飲料水と牛乳・乳製品が300Bq/kg、野菜類は2000Bq/kgです。放射性セシウムは、飲料水と牛乳・乳製品が200Bq/kg、野菜類や穀類、肉・卵・魚・その他は500Bq/kgです。

 

 これらの規制値は、先ほど計算した50,000Bq/kgとか10,000Bq/kgなどの数値と比較すると、非常に低くなっています。放射性ヨウ素50,000Bq/kgのホウレンソウを200gというかなりの大量食べても1mSvには至らなかったことを思い出してください。

 こうした厳しい規制値で食品を管理することによって、日々の食事で取り込む放射性物質を、細胞が戦って回復できる量にとどめようとしているのです。

 

 基準を超えた食品が見つかったら、それは警告の印。「この食品は要注意だよ」と数値が教えてくれています。その食品を注意していくつも測定してみて、高い傾向であれば国は、出荷停止の措置をとったり、「食べないように」という指示を出したりしています。

 

 もう一つ、付け加えたいことは、放射性物質それぞれの性質です。放射性ヨウ素は、放射線を出すとキセノンという安定した物質に変わってしまいます。放射性ヨウ素の量が半分になるのにかかる日数は約8日間です。したがって、16日間で4分の1、24日間で8分の1になり、日を追うごとにどんどん減って行きます。

 このまま、原発事故が終息に向かえば、放射性ヨウ素については、もう少ししたら、心配しなくてもよくなるでしょう。

 一方、放射性セシウム134が半分になる期間は2年、放射線セシウム137が半分になる期間は30年です。したがって、放射性セシウムが農作物にどれくらい含まれているかについては、今後もしばらくは厳重な注意が必要です。

 

 以上の計算は、農作物を成人が食べる場合について行いましたが、水も同じ計算をします。

 東京都の金町浄水場で22日、210Bq/lの放射性ヨウ素が検出されました。つまり、水道水1リットルを飲むと、210×0.022=4.62μSv=0.00462mSvの被ばく量です。

 

 重要なことは、水道水や農作物に放射性物質があるかないか、ということではなくて、「どのくらいの量を摂取したか」という「量」です。量が少なければ、人の体自身が戦ってくれて、勝利してくれます。心配するまえに、「私は今日、どれくらいの量を食べたかな?」と考えて計算をしてみてください。そうすれば、体の中に取り込んでしまった量は、多くの科学者が「体に影響が出ない」と考えている50mSvにほど遠いことが、自分自身で実感できるはずです。

 

 子どもについては、もっと厳しめに判断した方がよいとされています。ただ、子どもは食べる量も少なく、ホウレンソウを200g食べる、というようなことはありません。

 乳児を粉ミルクで育てている場合は、水道水を1日に500~1000mlくらいは飲ませます。摂取量が多いこともあって、国は非常に用心したスタンスで、水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合には、乳児には与えないように通知を出しています。

 

 ただし、乳児でも自然界から浴びている放射線量は世界の平均で年間2.4mSvです。先ほど計算した210Bq/lの水道水を1l飲んだ時の放射線量は、0.00462mSvで、2.4mSvに比べると非常に小さな値であることを知っていただきたいのです。

 

 私たちはもともと、放射性物質と共存してきました。不幸な事故が起こり、今は大気中に少し多めの放射性物質があります。でも、この状態にも理性的に対処しなければならないのです。パニックに陥らず計算して、適切に怖がり安心して食べて行きましょう。

 

参考文献

緊急被ばく医療研修のホームページ

原子力施設等の防災対策について

原子力百科事典

安全安心科学アカデミー

食品安全委員会・東北地方太平洋沖地震の原子力発電所への影響と食品の安全性について

福島原発の放射能を理解する

厚生労働省「福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道の対応について」

原子力資料情報室

 

 

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Unknown (詐欺師)
2011-03-24 07:51:29
■有名な科学者は、「年間に50mSvの被ばくは、リスクゼロ。人体は少しの放射線にはびくともしない」と言っています。

国際的に議論して定められた安全基準の50倍を浴びても「びくともしない」などといった放言は地獄に行くべきです。
問題は、「人間」じゃなくて、幼児、妊婦、若い女性、への危険性を考慮すべきなのにこんな詐欺師のようなことを言う人のどこが有名なんですか?
Unknown (こめ)
2011-03-24 08:31:09
食べた分・飲んだ分に入ってる放射性物質全てを体内に吸収するというのは、ちょっと乱暴かなと思います。
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa さんはツイッター上の発言で、牛乳中のヨウ素のうち2割を吸収する、と仮定して話してました。
Unknown (ほうれんほう)
2011-03-24 08:57:07
仮定をもとにすぐに安心してしまう(そしてあるいは、周囲にそれを強制する)というのもちょっと乱暴なのでは。 >こめ

大事なのは最新情報と、生活を変えても良いという覚悟。
それらがあれば、むやみやたらに食べたり飲んだりしなくなるでしょうから。
いま大きな「転機」が起ころうとしているかもしれないですが、それが必ず不幸への片道であるとは思わずに、強くたくましく生きていきたいものです。
ありがとうございます (ねこのーと)
2011-03-24 09:46:31
大変わかりやすい文章で、安全の指標を示してもらえたので、「適切に怖がりつつ」食物をとることができることがわかりました。ありがとうございました。
Unknown (うのみ)
2011-03-24 10:19:01
「したがって、16日間で4分の1、24日間で8分の1になり、日を追うごとにどんどん減って行きます。」

どうして、巷間に流通する俗説を鵜呑みにしてもっともらしく書くのでしょうか?

たった一個のヨウ素原子がこの世に存在するのなら、そのような議論は成り立つでしょう。しかし、福島原発は10日以上も前に崩壊し、これからも放射性ヨウ素は継続的に放出されます。8日半減とか言う議論は全くナンセンスです。



Unknown (通りすがり)
2011-03-24 10:46:19
「放射線セシウム137」
放射性セシウム137ですよね?

>うのみさん
食品についた放射性物質は収穫されたらそれ以上増えません。(流通が汚染されていない限り)

さらに「このまま、原発事故が終息に向かえば」という話の流れです。
水の基準について質問です (徳田由美)
2011-03-24 10:48:08
たいへんわかりやすく説明していただいてありがとうごさいます。少し安心しました。今後は数値のレトリックに惑わされず、自分で計算して確認したいと思います。

大変恐縮なのですが、ツイッター上で【3/17に水の基準を300倍引き上げ】という記述を見かけ、またまた不安になっています。これがどういうことなのか、ぜひご意見を伺いたいのです。http://blog.goo.ne.jp/sithux7/e/8377d3404cd1468f6673f28f2e1844c3

質問するばかりでは申し訳ないので、自分でもIAEAのJapan earthquake and tsunami Situation Report No.13という資料を見てみました。
国際的基準(3000Bq/kg)、日本が(300Bq/kg)、日本が10倍厳しいことはわかりましたが、東京都水道局の測定結果の中に、『全α放射能では0.5Bq/リットル、全β放射能では1Bq/リットル』という記述があり、この意味がわかりません。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3i200.htm

お忙しいとは存じますが、もしお時間がございましたら、よろしくお願いします。


大変参考になりました (文系学生)
2011-03-24 13:28:12
この様な目安は自分で判断する為にとても助かります。ただ気になったのが、“この数字をかけると、放射性物質を体の中に取り入れて50年間にあびる放射線量が算出されます”と書いてあるのに、その後は一日の話などで“50年”が何処かに行ってしまっているのですが何故でしょうか。たとえ50年間の放射線量に変わっても上記の計算式以上に値が増えることはありませんが、信用度を高める為にも是非お時間がありましたら御説明をお願いいたします。
納得しましたが、50ミリシーベルトは危険では? (kucifer406)
2011-03-24 16:20:01
非常に分かりやすくまとめられていて、有り難いです。私も、ツイッターなどで質問して、上記と同じ結論にたどり着きました。
ただし、「年間50ミリシーベルトがリスクゼロ」には全く納得できません。
wikipediaからですが、50ミリシーベルトは、
「放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1年間にさらされてよい放射線の限度。」
すくなくとも、子供と女性には推奨できる値ではありません。成人男性でも、普通に健康に生活するには上限ではないでしょうか?
1年間に自然環境から受ける放射線量が2.4ミリシーベルトということを考えれば、その20倍以上です。

「実行線量係数」は放射性物質により違い、表にまとめられたものが、
上記、本文のリンクにある
「緊急被ばく医療研修のホームページ」
緊急被ばく医療ポケットブック > 第4章 付録 > ≪内部被ばくに関する線量換算係数≫
にあります。
本文もここから、数値を出されているのだと思います。
「50年」というのも、この数値の基準が、50年間の積算数値だからですね。
まぁ、成人の場合、死ぬまでの平均期間が50年と想定されているのでしょう。(子供は70年で設定)
文系学生さんの質問に、勝手に答えますと、1日というより「1回から数回」の摂取では、問題ないでしょう、という話です。
継続して摂取していれば、蓄積されていくので、その分被曝の量は増えていきます。
排泄などで自然に排出される分もありますが。(どれだけ排出されるかは私も知らないので聞かないで下さい)
安全基準を元に危険性を考えるのは微妙です。 (代打名無し)
2011-03-24 17:47:29
基準値というのは、これ以下なら安全というギリギリの水準で設定するものではありません。
どの分野であろうと、それよりずっと低く設定するのが基本です。
ですから、元の基準(50mSv/年)は、理屈上、本当の危険性の物差しにはなりえません。
納得できないのはそのとおりかもしれませんが、納得できない根拠として、安全側に設定されている安全基準の数値や、自然被曝量の数値を参照しても無意味なように思います。

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