みすずかる(長野)

2018-08-12 07:38:59 | マスターお薦め曲
みすずかる(長野)


みすずかる
信濃の国の
千曲川
八ガ岳から
佐久平
やがて越後の
信濃川

みすずかる
信濃の国の
浅間山
唐松林の
軽井沢
煙はるかに
小諸城

みすずかる
信濃の国の
善光寺
月は戸隠
おらがそば
遠くアルプス
木曽の山

みすずかる
信濃の国



「みすず飴(あめ)」という長野県の銘菓をご存じの方、おられるでしょうか。

リンゴ、ブドウ、アンズ、ウメなどの果汁液を水飴と寒天で固めた、見た目もきれいなゼリーで、長野県上田市の飯島商店さんが明治・大正期から作り続けている由緒あるお菓子です。

この「みすず」、「みすずかる信濃(しなの)」からきたネーミングだとか。
 
ですが、名前の由来になったという「みすずかる」は、存在しなかったのに存在するという不思議なことばなのです。

と言うのも、この「みすずかる」、辞典によりますと
 
「みすずかる」の「み」は接頭語、「すず」は篠竹(すずたけ)で、その「スズタケを刈る」という意味で、漢字で書くと「御篶刈」。

スズタケは日本特産の主に山地の森林の下草として生える竹のことですよね。

ですから「竹」と覚えていてください。
 
ところで、「みすずかる」は、もともとは『万葉集』に出てくる語なのですが、隣接する短歌二首(巻二・九六、九七)にしか見られません。

いずれも、「水(三)薦刈る 信濃(しなの)の真弓(まゆみ)」の形であるため、信濃にかかる枕詞(まくらことば)だと考えられています。

「真弓」は弓の美称。
 
ところで、注意深い方ならすでにお気づきかもしれませんが、「みすずかる」の漢字表記は「み篶刈」、しかし『万葉集』の漢字表記は「み薦刈」、「篶」と「薦」で字が違います。
 
「薦」と「篶」、読みも意味も全く異なる漢字で、「薦」は「こも」と読みマコモの古名です。

マコモは水辺の生えるイネ科の多年草で、編んでむしろを作ります。
 
「みすずかる」という語は、江戸中期の国学者賀茂真淵が『万葉集』にある「み薦刈」を「み篶刈」の誤字であるとし、それを「みすずかる」と読んだことから、世間一般に広まりました。

江戸後期の俳人小林一茶が、急死した父との最後の日々をつづった『父の終焉日記』にも、

「梨一参らせたく思へども御篶刈しなのの不自由なる我里は青葉がくれに雪のしろじろ残るばかり」とあります。

食欲のなくなった父親にナシの一つも食べさせたいと思うのだが、ふるさとの信濃は不自由な場所にあると嘆いているのです。
 
「みすず飴」が作られたのは「みすず飴本舗飯島商店」のホームページによると明治末年からのようですが、その時代は「みすずかる信濃」という言い方がふつうでした。
 
ところが、昭和に入って国文学者の武田祐吉(たけだゆうきち)が『万葉集全註釈』の中で誤字説を採らず「み薦刈る」のままとし、しかも「みこもかる」と読むべきであると主張したため、現在では、この武田説が主流になっています。
 
「みすずかる」は以上のような経緯で生まれた語で万葉学的には葬り去られた語ですが、辞書的には挙例のような一茶などの用例もあり、立派に存在していることばなのです。

そんなウンチクを知っていれば、みすず飴の味も香りもさらに楽しめるかもしれません、・・・もちろんマスターは製造元の回し者ではありませんので念のため。 (笑)
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