改めまして、9月24日(土)に行いました、「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリーatポレポレ坐Vol.Ⅱ」の報告をいたします。
今回は、今後の定期開催を視野にいれるうえで、率直なところ、動員にこだわっていた。前回とトントンかマイナスになるようなら、一から考え直さなくては……と思っていた。
結果、前回比で1.5倍のお客様においでいただいた。大変にありがたいです。
もちろん、周知はまだまだの上に、まだまだ。音楽ジャンル以外のアナログ・レコードをお聴かせするコンセプトは、何度説明しても、やはりどこか、分かりづらいと思う。
個人運営のウェブサイトやミニコミ誌など、てづくりの媒体で「小さな記事にしてやってもいいぞ」と思ってくださるところ、無いものだろうか……と願っているものの、それも高望みの状態だ。
そんななか、覗きに来てくれた旧知のプロデューサーから翌日、BSの深夜番組の企画にできないかと連絡をもらった。大げさに言うと、初めてのメディアからの接触、というやつだ。構成作家業と聴くメンタリストは、自分の頭のなかで完全に別部署になっていたので、アッとなった。
先方の意向と僕のやっていることにズレはあり、すぐにどう、とはいかなかったのだが。ともかく、流行語も生んだ人気のコマーシャル制作で鳴らした人に、具体的な興味を持ってもらえたので。手探りでやっているぶん、自信になった。よーし、聴くメンタリーが話題を呼ぶまで、あと250歩のところまで来たぜ! という感じ。
以下、当日かけた盤のセットリストです。neoneoでの連載でこれまで取り上げた盤の紹介と、最近掘ったもののお披露目が、半々ずつぐらい。
【前半】
○「あぶさん」江本孟紀(73/テイチク)
○『ガッツ!!カープ ≪25年の歴史≫』(75/東芝EMI)
・球団創設時を説明する部分と、75年初優勝シーズンの巨人戦勝ち越しを決めた実況
○『栄光の756号/王貞治』(77/ビクター)
・756号を打った打席の実況と、試合後のスピーチ
○『園遊会』(78/CBSソニー)
・王貞治、片岡千恵蔵、福田恒存、市丸ほか
○「効果音大全集 家庭・人間」(75/キング)
・赤ちゃんのシャックリ
○『日本の郷愁―失われゆくものの詩 二 四季の野鳥たち』(不明/リーダースダイジェスト)
・ヒバリほか
○『東宝SF特撮映画予告篇集』(83/アポロン)
・「ゴジラ」
【後半】
○『‘78 リオ・カーニバル』(78/キャニオン)
・当日の実況とボーナスディスクの曲「誰もいない海」
○『日本の郷愁―失われゆくものの詩 三 懐かしき物売りの声』(不明/リーダースダイジェスト)
・朝顔売り、浅利売り、辻占売りほか
○「『仁義なき戦い』の果てに ―死にそこねた男のモノローグ―」菅原文太(74/テイチク)
○「七人の侍 ―侍のテーマ―」ジ・オールドタイム・フォークシンガース(不明/東宝)
○『東本願寺 声明集 一』(不明/ミノルフォン)
・正信偈と御文「白骨」
○『美空ひばりオン・ステージ』(75/日本コロムビア)
・ひばりのMCいくつか
前半は、ちらしを王さんにしたのと、プロ野球シーズン大詰めが近いことにちなみ、プロ野球特集。
王さんつながりの『園遊会』は今回、いちばん評判がよかった。
ところが、針の頭出しがいちばん上手くいかず、大反省の盤でもあった。おきかせしたい人が他にもいたのに出せなかったのは忸怩たる思い。ところが、焦って針を置いたところがちょうどピッタシ、昭和天皇の必殺フレーズ「あ、そう」だったりして、「あそこが面白かったよ」と複数人から。フクザツな心境です……。
休憩をはさんで、後半は、リオ五輪に合わせて連載で取り上げるつもりで、忘れてしまっていたリオのカーニバルの実況録音から。
これが、ワサワサした雑踏音の向こうから、うっすらと笛や太鼓が聞こえてくるのみという、なんともいえん代物。
「これでは売り物にはならない」とさすがに日本盤スタッフは考えたらしく、付けたボーナスディスクが、日本語の達者なブラジルの女の子歌唱の「誰もいない海」。
まつりのあとのさびしさを表現したかったのか?
だったとしてもさ、なんで、トワ・エ・モワでヒットしたこれなの?
ゆるゆるな謎に満ちた盤へのお客さんの反応は、けっこうあたたかった。当時のコンテンツが往々にして持っている脇の甘さには、どこか、人をホッとさせるものがあるようだ。僕が買って、外した……となる盤ほど、喜んでもらえる。おもしろい教訓だ。
「『仁義なき戦い』の果てに ―死にそこねた男のモノローグ―」と「七人の侍 ―侍のテーマ―」については、やや強引なセレクトでした。
作詞は、どちらも監督自身。
文太がうなる「ヤッパを抜き合った友情」の物語には、深作欣二がずっとこだわってきた、敗戦直後の焼け跡体験に根差した人間観(勤労動員先の工場で空襲にあい、バラバラになった友達の死体を運んだ経験が強烈な原体験、と本人が語っている。『バトル・ロワイアル』が友情物語に脚色された動因がよく分かる逸話だ)が色濃く出ている。
「七人の侍 ―侍のテーマ―」にも、やはり黒澤明の、『姿三四郎』『酔ひどれ天使』から『赤ひげ』『デルス・ウザーラ』まで一貫する、こういう男を描きたいし、そうでありたいと願う、単独でありつつ孤独を恐れぬ気概を持つ男性像が描かれている。
作詞という作業をすると、どうかすると、演出ノートや自作解題インタビューよりも作り手の赤心、メインテーマが素直に出るらしい。それを、ひとつの間接的ノンフィクションとして解釈させてもらった。
ひばりのMCについては、特に女性からの好意的な感想をいただいた。リアルタイムではそんなに知らない人ほど、ひばりが生きざま、(バッシングに負けたくない)意地を語るところがストレートに響いたみたい。
ライヴ盤の、曲ではなくMCの部分だけお聴かせするなんて、よく考えたら、ヘンな趣向だよなあ。これもアリ、と分かったので、紹介してよかった。
ひとさまの前で何かするからには、スベッてナンボとは言え。
思いだすだけでつらくなる部分は、そりゃーですね、いくつもありましたともさ。今後、場数を重ねて改善・改良したい。
といって、「今回はちょっとお上品でしたね」「おとなしめだった」と言われ、実際少し硬かった(自分のイベント史上最多動員だったもので……)のもまた、痛いほど自覚しているので。
洗練されていく方向では、ないと思います。
今後とも、よろしくおねがいします!