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『ゴジラ』

2006-09-20 20:55:36 | 映画(映画館)

ラピュタ阿佐ヶ谷にて、本多猪四郎監督(1954年)。
水爆実験により太古の眠りから目覚めた大怪獣ゴジラが東京に上陸!
日本に特撮怪獣映画というジャンルを打ちたてた記念碑的作品。
本多猪四郎の本篇演出と円谷英二による特撮の融合が見事で、伊福部昭作曲の音楽も実に効果的。

直立して歩く、尻尾を引きずって歩くということは、ライフデザインの面から見ると、まったく合理性に欠ける。
引きずって歩くくらいなら、巨大な尻尾なんて退化しちゃうはずじゃん…
でも、そーゆーことじゃないんだよ、ハリウッド版ゴジラやグエムルの描写は、生物学的には正しいかもしれないが、そこには「荘厳さ」のかけらもない。
原典のゴジラが姿を現すとき、スクリーンは「美」とか「神秘」といったものでいっぱいに満たされるのだ。
昨晩のウルトラセブンの再放送は「アンドロイド0指令」だったのだが、宇宙人(チブル星人、IQ50000でちたっけか)は終盤にちょこっと出るのみで、子供たちに強力な兵器に変わるリアルなおもちゃを与える「おもちゃじいさん」の企みを描く濃密なSFミステリーが、30分の枠いっぱいを使って展開される。
あれ?チブル星人の回ってこんなに面白かったっけ?というより、当時のスタッフの志の高さに圧倒されるのである。
啓蒙という言葉があって、説教とは少し違う、オラの文章が説教臭くなってしまうのは欠陥だらけの人格ゆえなのだが、当時の特撮はまさに啓蒙だったのだなとつくづく思う。
子供たちに、知的なもの、美しいもの、気高いものに対する関心を抱かせ、その生涯にわたって生産的、創造的な道に導いてくれるという。
今日のオリジナルの『ゴジラ』、遠い昔にテレビで1回見たのみだったのだが、やはり歴史的な作品は映画館で見ておきたい。
ゴジラが火を噴く直前に背ビレが発光する、そのモノクロームの映像美を映画館の暗闇で他人と共有できるのは素晴らしい体験だ。
実はオラは日本映画の頂点とされる『七人の侍』を見たことがないのだが、いつか必ず映画館で見られる日を心待ちにしているのである。

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8 コメント

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東京大空襲 (さすらい日乗)
2006-09-20 23:28:04
『ゴジラ』以下の特撮映画の最大のカタルシスは、怪獣に壊される大都市だが、そこには第二次大戦下、米軍の大空襲の悪夢がある。



そう気づいたのは、メロドラマの名作大庭秀雄監督の『君の名は』第一部の空襲のシーンを見たときだった。

松竹映画だが、特撮シーンは円谷英二で、すごい迫力。あれは、実際に経験し、恐怖を味わった者でなければ出来ないものだ。
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同時代性 (冬のマーケット)
2006-09-21 00:00:41
呉智英氏が『はだしのゲン』について「災厄のフォークロア」と書かれていましたが、そうした同時代の記録というか、集合記憶というか、作品によって歴史が記述されていくような重みがありますね。

過去ログを読まさせていただいてますが、『戦艦大和』が吉田満氏の記録からかけ離れた世界観の映画に成り果ててしまう、歴史が風化していくということなのでしょうか…
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映画館で・・・ (imapon1960)
2006-09-21 13:20:31
「ゴジラ」はビデオで見ているしDVDを購入しようという気もあるので今回は見送ろうと思っているのですが・・・

貴殿の「歴史的な作品は映画館で見ておきたい」の言葉に、ウーム、気持ちが揺れる・・・

また、機会がある事を期待して、グッと堪えよう。今月、映画行きすぎ・・・

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こんばんは! (冬のマーケット)
2006-09-21 20:59:03
テレビでも映画館でも、できれば「他人と共有」したいですね。

imaponさんウルトラマン映画を家族でいっぱいご覧になっているようでうらやましい。

ところで「ピット星人の女性は今の基準だとかわいくない」と書きましたが、チブル星人の部下のアンドロイド少女は今の基準でも美人でしたね~。

『僕たちの戦争』の「中田英寿みたいな男の子」、森山未來クンでちゅな?彼の歌とダンスの実力は、それはもう日本人ばなれしている…

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こんばんは! (moccho)
2006-09-22 01:18:45
こんばんは。

「ゴジラ」は良いですよね!

我々の世代には円谷英二さんの存在は大きいですね。あの人が私のイマジネーションに与えた影響は計り知れないと思います。



しかしチブル星人ってどんなんでしたっけ?思い出せません…。



すご~く古い記事で申し訳ないのですが、トラックバックも頂きました。
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チブル星人 (冬のマーケット)
2006-09-22 11:36:21
こんにちは!

ほら、クール星人と似たデザインの着ぐるみでない巨大な頭の(なにしろIQ50000でちから)…

ゴジラのメインテーマ、映画が後半に進むに連れて迫力を増しますね、スペシャルな映画音楽として記憶に刻まれました。

ところで『ペット・サウンズ』の40周年メモリアル2枚組が出ましたね、ボブ・ディランの新作もやっと買いましたが輸入盤なのでmocchoさんの解説を手がかりに聴いてみようと思います。

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チブル星人! (moccho)
2006-09-22 13:06:24
こんにちは!

トラックバックありがとうございました。



やっぱりチブル星人が思い出せないので、ネットで調べてみましたら、すぐ出てきました。チブル星人ってあれですか~!

あの造型、セブンの中でも優れものの一つですね。なんか久々にイイヤツを思い出せてちょっと嬉しいです。



ボブ・ディランの新作、私の解説はあてにならないと思いますが、私はあのアルバム好きです。ちなみにペット・サウンズは、恥ずかしながら昔聴いてその良さが分からず、それ以来敬遠気味なのです。ダメですね…。



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ディラン全米1位! (冬のマーケット)
2006-09-22 21:00:43
驚いたニュースでした、この2作ほどのスタジオ作の成果の積み重ねでしょうか。

ゴドラ星人とかペガッサ星人とか、セブンの渋めの宇宙人の造形は、ホント一生ものですね。
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