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シャロン・ジョーンズの愛と死

2017-03-30 20:35:22 | 音楽
森友問題やネトウヨの増殖、エロ同人の言葉たちにみられるような倫理的な退廃。「飲む・打つ・買うを通じた自民党独裁」と題し、近く記事にまとめようと。愛国保守は商売になるのだ。わが国だけにとどまらない。ブレグジットやトランプ現象、右翼ポピュリズムが世界を席巻。

老残の哲学者・梅原猛氏は東京新聞の連載エッセイで「明確な理想をもち得ないポピュリズムはニヒリズムであるともいえる。19世紀末にニーチェは来るべき200年はニヒリズムの時代になると予言し、その原因を、弱者が強者を制するためのキリスト教的道徳がまったく通用しなくなったことに求めた」と。それはまたデカダンスとしても表れるという。理性の否定。退廃と戦争の時代—




Netflixでドキュメンタリー映画『Miss Sharon Jones!』(2015年)を見る。シャロン・ジョーンズは昨年11月、がんのため60歳で亡くなった女性ソウルシンガー。ジョージア州生まれ、幼少期にNYに移り住んで教会でゴスペルを歌うようになり、70年代にはファンク・バンドのバックコーラスなどを務めていたが、ソロ歌手としては長らく芽が出なかった。40歳のときにリー・フィールズのバックコーラスに選ばれたことがきっかけでソウル・プロヴァイダーズとリー・フィールズのアルバムに参加。この時のメンバーとシャロン・ジョーンズ&ザ・ダップキングスを結成し、2002年に遂にアルバム・デビュー。エタ・ジェームズやアーマ・トーマスら往年の正統派シンガーを想起させる力強い歌声で人気を博した。映画は2013年に胆管がんを告知された彼女が、手術や化学療法で闘病ののちステージとアルバムで復活を果たすまでを追う。

彼女の子ども時代、黒人で女性であることは米国で二重のハンディキャップだった。さまざまなところに差別が残る。「♫大声で叫べ。黒人であり、誇り高いということを」とジェームズ・ブラウンが歌ったことは、彼女の心を勇気づけた。キリスト教の教えを実践したのは白人より黒人だ。ゴスペルをルーツとし、愛と希望を歌うソウル・ミュージックは60~70年代、アメリカから世界へ発信された。神の前で人は平等であり、人間の魂は悩みや憎しみから解放され自由になれることを、身をもって示した。




50年代初めまでレイス・ミュージック(人種音楽)と呼ばれ隔離された、ブルースなどの黒人音楽。チェス・レコードのチェス兄弟、Hound Dog, Yakety-Yakなどを書いたリーバー&ストーラーら、ユダヤ人や良心的な白人が後押しし、才能ある黒人アーティストが活躍できる場が広がる。やがて黒人資本のレコード会社や映画製作も。しかし、サム・クック、ジャッキー・ウィルソン、ダニー・ハサウェイ、マーヴィン・ゲイ、マイケル・ジャクソン、プリンスなど、大いに成功し名声を博しながらも、非業の死を遂げたり、健康を害して寿命を縮めたりする例は現在まで続く。

ソウル・ミュージックは歌・演奏と聴衆が一体となるグルーヴ感が命だ。練習しなければ技量は下がる。バック・ミュージシャンにも生活がある。↓のプレイリストのように、シャロン・ジョーンズの曲を10曲持っている。私のチャートに3度入り、1位にもなった。それでも、使ったお金は1500円くらい。よい音楽は無尽蔵にあり、過酷な競争原理がはたらく。米国は世界一の市場を持ち、成功すれば世界に道が開けるが、曲ごとのダウンロード販売や定額聞き放題サービスが普及し、消費のあり方やジャンルが多様化する一方で、新作アルバムとライブを連動させて稼ぐ従来のやり方は行き詰まってきている。

ヒト・モノ・カネ・サービスが国境を超えるグローバル経済。米国の音楽はその先駆者だったともいえるが、同時に、競争に追われ、搾取や退廃に直面するアーティストの姿は、グローバル化のもう一つの側面=戦争や、理想なきひたすらな利潤追求の行く末を示してくれていると申せましょう—





iTunes Playlist "Sharon Jones & the Dap-Kings Playlist" 35 minutes
1) How Long Do I Have to Wait for You? (2005 - Naturally)
2) This Land Is Your Land (2005 - Naturally)



3) Nobody's Baby (2007 - 100 Days, 100 Nights)
4) Tell Me (2007 - 100 Days, 100 Nights)



5) I'm Not Gonna Cry (2007 - Soul Time!)



6) Ain't No Chimneys in the Projects (2009 - It's a Holiday Soul Party)



7) The Game Gets Old (2010 - I Learned the Hard Way)
8) Better Things to Do (2010 - I Learned the Hard Way)



9) Stranger to My Happiness (2014 - Give the People What They Want)



10) I'm Still Here (2016 - Miss Sharon Jones! OST)
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