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『紅いコーリャン』

2008-11-05 21:24:43 | 映画(映画館)
紅高梁@新宿・K's cinema(中国映画の全貌2008), 張芸謀監督(1987年・中国)
『紅いコーリャン』は、日本映画における『羅生門』に匹敵する中国映画だ――それは神話と美の世界を開く。【ドナルド・リチー】
「紅」を基調とした鮮烈な映像で神話的なエピソードを描いて内外から驚きをもって迎えられ、中国映画の歴史を画する作品となった。1988年ベルリン映画祭・金熊賞。
1920年代末、中国山東省。18才になる九児チウアル(コン・リー)が嫁入りの御輿にゆられていく。親子ほど年の離れているうえ、ハンセン氏病を病む造り酒屋の李リー大頭のもとへ嫁ぐ道すがらである。彼女の父はラバ一頭で李に娘を売り渡したのだった。御輿をかついでいるのは李の使用人たち。彼らが真っ赤なコーリャン畑のなかを進んでいると、覆面の強盗に襲われる。強盗が彼女をさらおうとしたとき、彼女を救い、強盗を殺したのは御輿をかついでいた余占鰲ユイチャンアオ(チアン・ウェン)だった。女のなかに余に対するほのかな慕情が芽生える。
当時、新婦は新郎の家で結婚式のあと3日間すごし、里帰りする慣習があった。父親に連れられラバに乗って実家に戻る途中、またコーリャン畑にさしかかる。九児はふたたび覆面の男に襲われ、コーリャン畑の奥深くへ連れ去られる。が、今度の男は余だった。そして二人はコーリャン畑で愛を交わす。
嫁ぎ先に戻ると、新郎の李は行方不明になっており、余が殺したとの噂がたつ。結局、九児は嫁ぐと同時に未亡人となり、酒屋を引き継ぐ。そして余と九児は結婚する。番頭の羅漢ルオハン(トン・ルーチュン)の協力を得て商売は繁盛し、使用人たちにも慕われ、平和な日々が続く。
ある日、この一帯に名のとおった匪賊、秀三炮シウサンパオ(チー・チュンホァ)の一団が酒造場を襲い、九児をさらっていく。羅漢が3000元の身代金を工面して彼女を無事連れ戻す。だが、髪を乱した九児の姿に激怒した余は、秀の行きつけの肉屋へ駆けつけ、彼の喉元に包丁を突きつける。秀は「神かけて女には触れてない」と許しを乞う。彼が家へ戻るや九児と使用人たちがなごやかに新酒をくみかわしているのを見て、余は腹立たしさを覚え、コーリャン酒の甕のなかに放尿する。数年後、その甕の酒は不思議なことに香ばしい美酒に変わっていた。九児は後にこの酒を十八里紅と名づける。その夜、羅漢は村から姿を消してしまう。
コーリャン畑で九児が身ごもった豆官トウコアンも9才になった。この地方にも日本軍がやって来て、土地の人びとをかき集め、コーリャン畑をつぶして道路建設を強制していた。日本軍は人びとへの見せしめのため、抗日活動家となった羅漢を吊るし、村の肉屋に彼の生皮を剥がすよう命じる。羅漢は恐怖の色も見せず、日本軍を罵倒する言葉を吐きながら絶命する。
その夜、九児は9年のあいだ寝かせてあった十八里紅を掘り出し、男たちにふるまう。彼らは酒神曲を歌いつつ、日本軍への抵抗を誓いあう…。



チラシから引き写した結果、映画のおもしろいところ全部言っちゃったみたいになってますが、この後にさらに大きく盛り上がりますだ。余ユイと九児チウアルは、語り手にとって祖父母にあたる。われわれみんながみんな先祖代々歴史の中を生き抜いて、よくぞめぐり合った精子と卵子、てな感慨をもたらす。
この映画は中国国内でも賛否両論の反響を巻き起こしたともいわれるほど、当時の中国人、特に男たちを野生児のように描く。集団となっても社会化される感じではない。古代・中世・近代が渾然一体となってるかのよう。聞けば、中国で万里の長城が築かれたころ日本列島では弥生式土器が使われてたとか。
映画の後半に日本軍が現れるけれども、その様子は整然と秩序だっている。集団が機械のように組織されている。
ここに民族性の違いというよりかは、大陸と島国の時間の流れ方の違い、歴史の進み方の違いを感じますね。
おそらく向こうでは時間が直線的に進んでない。曲がりくねって行ったり来たり、進んだり戻ったり、それらが混ざり合ったり。
とともに、元来内向き志向と思われる日本人がどうして大陸に侵攻して戦争への道を突き進んだのか。泰平をむさぼってたところを強引に開国させられた屈辱感というものが、阿片戦争に負けてこのかた混乱してまとまってなくて食いものにされてた当時の中国へ向けて噴き出したという一面があるのではないか。ウラミハラサデオクベキカ。魔太郎がくる!!
映画の中で日本兵たちの使う言葉「コラ!バカヤロー!ハヤクシロ!」直線的でタメがない。条件反射的に暴力へ向かうんじゃなくて、もうちょっとゆとりを持ってものごとを受け止めてゆきたいものである。いろんなことが混在してる現在の中国からも学べることはまだまだいっぱいあるような気がしますだ。
中国映画の全貌2008ではこれから『ラスト、コーション』や『中国の植物学者の娘たち』も上映されるみたいなので、エロ目的の方も足を運んでみるとよいのでわ。

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