マガジンひとり(ご訪問ありがとうございます。年内に閉鎖を予定しています)

書肆マガジンひとりとしての小規模な同人活動を継続します。

旧作探訪#16『アラバマ物語』

2008-03-06 21:57:14 | 映画(レンタルその他)
To Kill a Mockingbird@NHK-BS2、ロバート・マリガン監督(1962年アメリカ)
物語は田舎町の弁護士を父に持つ小学生の兄妹の妹スカウト(メアリー・バダム)の視点から語られる。
スカウトや兄ジェム(フィリップ・アルフォート)は隣家に頭のおかしい「BOO」と呼ばれる息子がいて地下室に幽閉されているという噂を聞きつけ、ほんとうかどうか探ろうとして危険な目に遭ったりすることもある好奇心いっぱいの年頃。
二人の父であるアティカス・フィンチ(グレゴリー・ペック)は義に篤い人柄から町の人たちの信頼を集めていたが、レイプの罪で告訴された黒人青年の弁護を担当することになったため、差別感情が根強く残る町でフィンチの行為を敵視し危害を加えようとする者も現れる…。

それまでに4回、アカデミー主演男優賞にノミネートされながら受賞できず、大根役者よばわりされることもあったというグレゴリー・ペックが5回目にして初受賞。またこのアティカス・フィンチ役はそれにとどまらず、2003年に全米映画協会が選んだ「アメリカ映画の偉大なヒーロー」の堂々第1位に。
人種のるつぼで競争を勝ち抜いたアメリカン・ドリームの体現者、というよりはリベラルな弁護士で頼りがいのある優しい父親、が選ばれたのは現実には殺伐とした弱肉強食の論理がまかりとおる社会になりつつあることの裏返しでしょか。
レイプ裁判をめぐる大人たちの姿が、小さな子ども(兄が小4くらい?妹が入学したばかり)の目によってあぶり出されるという描き方が秀逸。そして、陪審制による裁判のゆくえは、必ずしもフィンチの訴える理想のとおりに進んでゆくわけではない。
そんな本筋の苦い展開に対して一筋の希望の光を差し込んでくれるのが、隣家の「BOO RADLEY」にまつわる幻想的なエピソード。あんまし実体験してるからといってえらそげに語りたくないが、精神障害者に対する健常者の偏見・差別ってのはどえらいもんでっせ。
そんななか、世を捨ててひっそり生きるBOOの、成長していく子どもたちへの静かなメッセージに心救われる思い。ここに想を得たのか90年代イギリスにBOO RADLEYSと名乗るバンドもいたっけか。
オラにもBOO RADLEYとして成長を見守っている、母方のイトコの子どもたちがあります。先日の『洗礼』は小さい頃そのイトコの姉ぇーちゃんの部屋で見かけたのが最初でしたが、再読を終えてその姉ぇーちゃん家へ送りつけたところ寝しなに読んで「レクター博士を思い出して怖かった!」そうな。
先の全米映画協会の選定は「英雄と悪漢」という企画だそうで、悪漢部門の第1位にはアンソニー・ホプキンスによる御存知!身の毛もよだつ『羊たちの沈黙』のレクター博士が。


コメント